BLEACHへの転生者   作:黒崎月牙

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お待たせしました。
長らく待たせてすみません。
漸く、完成しましたが・・・、先にお詫びします。
いつもより短めです!
ただ、話の都合上、どうしてもここで区切らなければ、ダラダラと長く続いてしまうので・・・。
では、駄文ですが、どうぞ。


原作介入することに意味がある

「あぁ~!やっと終わったね~!」

 

「そうだな。流魂街全区の虚の調査は完了。長い遠征の終わりだ」

 

瀞霊廷内にある道を歩いているのは、十三番隊第四席、鬼柳院 京夜。

その傍らで、伸びをしているのが、その部下、鬼柳院 茜雫。

2人は流魂街での長い遠征を終えたのだった。

 

「ねえねえ、この後、ご飯食べに行こう!折角、終わったことなんだしさ!」

 

「報告が済んでからな。それに、その後の、残務整理とか残ってるのを忘れてないか?」

 

「うっ・・・、そ、それは~・・・。あ、あはは~・・・」

 

「全く・・・」

 

茜雫は視線を逸らし、乾いた笑みを浮かべる。

それを見て、京夜は呆れる。

 

「しかし、茜雫も成長したな」

 

「えっ!?そ、そうかな!?」

 

急な京夜の褒め言葉に茜雫は驚く。

 

「ああ、そうだ。この遠征中、幾度か、虚との戦闘があった。けど、お前は臆することなく、1人で倒せる時もあった」

 

「へ、へへへ~」

 

「だが、詰めが甘い。まだまだ未熟だけどな」

 

「・・・ふーんだ。抜けが多い、未熟者ですよーだ」

 

茜雫は頬を膨らませながら、京夜から視線を外す。

京夜は微笑みながら、頭を撫でる。

 

「その通り。だから、まだお前は俺の部下として動き、俺と一緒にいるべきだぞ。自分が立派に成長するまでな」

 

「・・・うん!」

 

茜雫は少し間を空けると、頬を染めながら、笑顔を向ける。

そして、京夜の手をギュッと握る。

 

「京夜、ずっと一緒だよ!」

 

「ずっとは困るな。けど、一緒にいてやる」

 

京夜も茜雫に笑顔を向ける。

まるで、その光景は本当の兄妹のようで、仲睦まじく、微笑ましい光景だった。

 

「おう、テメエら、帰ったか。帰還早々、見せつけてんな、コラ」

 

「「・・・・・・・・」」

 

・・・しかし、それをあまり良く思わない人物もいた。

その1人が2人の目の前にいる、海燕だった。

2人は、ピタッと動きが止まる。

見ると、十三番隊隊舎の目の前だった。

 

「「あ、あはは~・・・」」

 

(このバカップルめ・・・)

 

京夜と茜雫は苦笑いしながら、サッと握ってた手を放す。

海燕はそれを見て、1つ溜め息を吐いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「―――――以上で、報告を終わります」

 

「おう、お疲れ」

 

「は~、ったくもう。海燕も人遣い、いや、死神遣いが荒いよね~。疲れちゃったよ」

 

隊舎に入った京夜と茜雫は海燕に遠征の報告を済ませていた。

茜雫は肩を叩き、上司である海燕にブツクサと文句を吐く。

 

ガシッ

 

「海燕『さん』だ、コラ!いつになったら、テメエは呼び捨てが直るんだ、アァ!」

 

「しゅ、しゅみまへん・・・」

 

海燕は茜雫の両頬を掴み、青筋を立てながら、メンチを切る。

茜雫は入隊し始めた頃から、海燕のことを呼び捨てだ。

何故か、浮竹にはきちんと『隊長』と付けるのだが。

 

「ま、まあまあ、海燕さん。その辺にして下さい。茜雫も悪気があって言ったわけじゃないんですから」

 

「・・・はぁ、ったく、テメエは甘すぎんだよ。だから、茜雫が―――――」

 

「・・・海燕は心が狭すぎなんだよ。京夜みたく、もっと寛大な心を持つべきだね」

 

「・・・テメエ・・・!」

 

海燕が拳を固め、震えると同時に、茜雫は京夜の背中に隠れる。

頬を抑えながら。

京夜は相変わらずのやり取りに、呆れてしまう。

 

「まあ、いい!無事に遠征も終わったことだしな!お前らには―――――」

 

「おっ!休みですか!」

 

京夜が目を輝かせる。

此度の遠征で流石に疲れているのだ。

ゆっくり休みたい所だ。

 

「―――――次の仕事が控えている」

 

「なん・・・だと・・・!?」

 

「本当、死神遣い荒いよね・・・」

 

京夜は目を見開き、茜雫は深い溜め息を吐く。

しかし、そんな暗い空気を消すように、海燕は仕事内容を言った。

 

「大丈夫だ!そこまで重い任務じゃねえよ!ただ、ルキアの様子を見に行くだけだ」

 

「ルキアの様子・・・?」

 

「そういえば、ルキアの姿を見かけてないね・・・」

 

京夜と茜雫が辺りを見渡しても、ルキアの姿が無い。

 

「当たり前だ。お前らが遠征に行った後に、ルキアは現世で駐在任務で行ったからな」

 

「っ!・・・場所は?」

 

「空座町だが?」

 

「!!!」

 

京夜が驚く。

それはそうだ。

内容が、ルキアが現世、つまり、空座町で駐在任務を行うということ。

それは、原作が開始されることを意味するのだった。

 

(そうか、もうそんな時期だったのか・・・。だとしたら、マズイな・・・)

 

「空座町か~。久しく行ってないな~」

 

「だろ?空座町には、京夜と茜雫が詳しいと思ったからな」

 

「いつ、行けばいいですか?」

 

「京夜?」

 

2人は京夜が急に真剣な表情をしたので、呆気にとられる。

まるで、切羽詰まった表情だ。

あまり見ない表情だった。

 

「・・・明日から3日間の間に行けばいいが・・・だから、2日は休め―――――」

 

「わかりました。なら、明日には出発します」

 

「京夜!?」

 

茜雫は驚いた。

もちろん、海燕もだ。

 

「・・・珍しいな、普段は休みを欲しがってるじゃねえか。一応、理由を聞こうか」

 

「理由、ですか・・・」

 

ここで原作のことを言うのは得策ではない。

だからと言って、あやふやな理由だと、目の前にいる上司は納得しないだろう。

だから、京夜は咄嗟の判断で答えた。

 

「・・・ルキアが、心配だから」

 

「「・・・・・・・・」」

 

「え、なに?2人の視線が痛いんだが・・・」

 

2人は呆れたような、かつ、諦めたような視線を京夜に向ける。

それから、海燕はニヤニヤと笑みを浮かべ、茜雫は不機嫌になる。

 

「へ~、ルキアが心配ね~。隣に茜雫がいるのにね~」

 

「どういうことですか?」

 

「だとよ、茜雫」

 

「ふん!京夜なんか知らない!」

 

「えぇ!?」

 

京夜は驚くが、なぜ茜雫が不機嫌になっているのか、わからない。

まあ、この鈍感王子の死神は一生わからないだろう。

そして、この後の海燕と茜雫の会話も、わからないだろう。

 

「茜雫、もしかしてだが、遠征中は何もなかったのか?」

 

「な、ナニって!?」

 

「は~、京夜に襲ってないのか・・・」

 

「な、なななななななっ!?」

 

茜雫は顔を真っ赤に染め上げる。

白昼堂々、女の前で何を言ってるんだ。

 

「海燕さん、茜雫が俺を奇襲するわけないじゃないですか」

 

「・・・テメエも男なら男らしく襲っちまえばいいのによ」

 

「何を言ってるんですか。俺が仲間を、部下を裏切る訳ないじゃないですか」

 

「そうじゃなくてだな・・・。はぁ、せっかく茜雫は―――――」

 

(わ、私だって、襲うと思えば襲えたんだけど、ほら、やっぱり、そういうのって、男の方からされたいもんだしさ!それに、遠征中はテントで交代しながら、見張り番でいたし!1度だけ、一緒に寝ようって誘ったけど、虚に襲われたらどうすんだって、断られたし!わ、私はいつでも準備万端だったんだよ!毎日、身体は隅々まで綺麗に洗ったし、可愛いお気に入りの下着も着けてたし、毎晩、香りのいい香水とか付けて、いつでも相手出来るようにしてたんだよ!あとは―――――)

 

茜雫は頭から湯気を吹かせながら、固まり、頭で遠征中の出来事がぐるぐると回っていた。

 

「―――――準備してたみたいなのによ」

 

「なるほど・・・(茜雫は虚とかに奇襲された時、すぐに対応出来るように準備してたのか。想像以上に立派になったな)」

 

「・・・なんで、誇らしげに頷いてんだよ・・・」

 

鈍感死神京夜は放っておき、海燕は茜雫にある名案を出す。

 

「茜雫、ルキアの様子を見終わったら、現世で自由にしていいんだぞ」

 

ピクッと茜雫が反応した。

 

「例えば、2人で現世で買い物しに行ったり、出かけたり―――――」

 

「京夜!!!」

 

「うわっ!?な、なに!?」

 

さっきまで固まっていた茜雫が、突然、京夜に迫ったので京夜はたじろぐ。

 

「すぐに行こう!明日からでもいいよ!ううん、明日にしよう!」

 

「お前、切り替え早くねっ!?」

 

「私、海とか遊園地行きたいな~!あっ、その前に買い物して~、欲しいもの買ってからかな~」

 

「はー・・・。遊びに行くんじゃねえんだぞ。仕事で行くんだ。しかも、絶対。俺に払わそうとしているだろ・・・」

 

茜雫のテンションに着いてこれず、呆れてしまう京夜。

 

「まあ、京夜、そんな肩張らずに、今回は気軽に行け。少しは羽目を外しても罰は当たんねえよ」

 

(・・・そうしたい所なんですけどね・・・。どうやら、羽目は外せそうにないです・・・)

 

心の中でそう呟く京夜。

原作を知っているからこそ、わかってしまう、京夜だけの危機感。

もしかしたら、既にルキアは・・・。

 

「ま、そういうことだから、2人にはルキアの様子を見に行く、という任務を任せる。期間は、ルキアが帰還するまでか、こっちからの帰還命令が出るまでだ」

 

「はーい!」

 

「はい・・・」

 

茜雫は明るく元気に、京夜は静かに返事をした。

 

「そんじゃ、2人とも解散していいぞ。疲れた体をゆっくり休めておけ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

所変わり、現世。

黒崎家。

一護は、母、真咲がいる台所へ赴いていた。

 

「おふくろ、今日も夜食食べるな」

 

「あら?今日もなの?最近、食べるわね」

 

「ま、まあな・・・。成長期、だからかな・・・」

 

一護は視線を逸らしながら、そう答える。

実際に食べるのは、一護ではなく、一護の部屋の押し入れに住み着いている、死神“であった”ルキアにである。

一護がルキアから死神の力を貰い受けた後、ルキアは自身の霊力が回復するまで、一護に死神業務を行ってもらうことにした。

そして、住み着く所がないルキアは一護の部屋の押し入れに住み着くことにした。(勝手に)

しかし、ルキアの存在を家族に公にする訳にもいかず、一護はこうして、夜食と称して、ルキアに夕飯を持って行っているのであった。

 

「フフ、だからといって、あんまり食べすぎると、健康に悪いわよ」

 

「わかってるって。程々にしてるからよ」

 

そう言いながら、炊飯器を開ける。

しかし、そこには米粒1粒もなかった。

 

「あれ?ご飯が無え」

 

「あ、夜食なら、もう持って行ったわよ」

 

「えっ!?」

 

一護は驚く。

いつの間に持っていったのかと。

さらに、嫌な汗が出る。

 

(ルキアのことバレテないよな・・・)

 

内心、焦る一護とは対照的に、真咲は微笑みを浮かべる。

 

「フフフ!」

 

「?」

 

「何だか、今の一護、おかしな顔してるわね。まるで、部屋に隠し物がバレテないか、不安そうな顔してる」

 

「!?」

 

さらに驚く一護。

自分の心を見透かされたような感じだった。

本当にバレテしまったんじゃないかと思った。

 

「安心しなさい。私はただ、夜食を持って行っただけだから。何にも詮索してないわ」

 

「そ、そうか・・・」

 

それを聞き、ホッと胸を撫で下ろす一護。

どうやら、バレテないようだ。

 

「ありがとな。じゃあ、俺は部屋に戻るから―――――」

 

「あ、ちょっと待って!」

 

真咲はそう言い、慌てて、駆け出し、どこからか紙袋を持ち出してきた。

 

「はい、これ」

 

「は?何だよ、これ?」

 

「開けてみなさい」

 

そう言われ、渋々袋を開ける一護。

そこには小さめな女物の服が数点入っていた。

 

「最近、遊子ちゃんの服がいくつか無くなっているのよ」

 

それは一護も知っていた。

遊子が自分に対し、聞いてきたからだ。

まあ、原因は押し入れにいるルキアが着用しているせいなのだが。

 

「だからって、何で俺に?」

 

 

しかし、真咲の次の言葉に一護は目を見開いた。

 

「遊子ちゃんの服、借りてるでしょ?一護が着る訳でもないのに」

 

「!」

 

「それと、注意しとくわね」

 

「お、おふくろ・・・?」

 

一護は掠れた声で、そう返した。

 

「・・・女の子っていうのは、誰でも、色んな種類の服を着たいものよ。でも、気を遣って、わがままを抑え込んでいる。だから、相手が気を遣うんじゃなくて、一護がもっと気を利かせなさい。女の子が住みやすいように、ね」

 

「・・・・・・・・」

 

一護は言葉が出なかった。

真咲は、ルキアのことを知っている・・・。

 

「フフ、お母さんに家の事で隠し事は無理よ。家のことは全部知っているんだから」

 

「おふくろ、知って―――――」

 

「私、何か言ったかしら~?嫌だな~、最近、物忘れが酷いのよね~。歳かしら~」

 

一護が真咲に言いかけたが、真咲は一護の言葉を遮り、すっとぼけた表現をする。

一護は真咲の優しさだと感じ、フッと笑う。

 

(棒読みだよ、おふくろ)

 

「な~に、笑ってるの、一護?」

 

「何でもねえ。んじゃ、今度こそ、部屋に戻るわ」

 

「うん。おやすみ、一護」

 

一護は踵を返し、部屋に戻ろうとする。

数歩、進んだ後、背中越しに真咲に言う。

 

「おふくろ、ありがとう」

 

「・・・どういたしまして」

 

真咲は微笑みながら、一護が部屋に戻るのを見送ったのであった。

 

 

 

 

 

一護の部屋。

ルキアは正座をしながら、床に置いてあるソレを見続けていた。

 

「・・・・・・・・」

 

黒崎家の夕飯である。

ご飯からは湯気がたち、さっさと食べないと冷めてしまうのに、ルキアは口に付けようとはしなかった。

なぜなら、いつもと違うからだった。

いつもは―――――

 

 

 

『お~い、ルキア。晩飯持ってきたぞ~』

 

『おおっ!待っていたぞ!』

 

 

 

―――――という流れで、一護から声が聞こえるはずなのだ。

しかし、今回は違かった。

 

 

 

カチャ カチャ カチャ・・・

 

(・・・?夕飯にはまだ早くないか・・・?)

 

足音と共に、近づいてくる。

 

コト・・・

 

(一護の声が聞こえない・・・?)

 

一護の声が聞こえず、足音は遠ざかった。

訝しげになりながら、ソッと押し入れの扉を開いた。

そこにはほかほかの夕飯が置いてあったのだ。

 

 

 

そして、冒頭に戻る。

一体、誰が・・・。そう考えていると、お盆の下に紙きれが見えた。

紙切れにはこう書かれてあった。

 

 

 

『こんな形で申し訳ありません。

初めまして、一護がお世話になっております。

母の真咲です。

 

貴方がどうして一護の部屋にいるのか、何があったのか、どうして私たち家族に打ち明けないのか、私はあえて聞きません。

一護の部屋に住みたいのであれば構いません。

私は貴方を家族の1人として受け入れます。

ですので、私や一護には気を遣わなくていいですからね。

貴方に心地よく生活してほしいので。

 

一護は私とお父さんに似て、優しい子です。

けれど、人一倍、責任感の強い子です。

ですので、一護が苦しんでたり、悩んでいたりしていたら、どうか、支えてやってください。

 

一護はここ最近、少しずつ変わってきています。

きっと、貴方と出会ったおかげでしょうね。

そんな貴方なら、一護の支えになってくれると信じています。

 

迷惑をかけると思いますが、息子をよろしくお願いします。

 

一護の部屋に住む誰かさんへ   黒崎真咲より』

 

 

 

「・・・・・フッ」

 

ルキアは微笑んだ。

心の中が温かくなった気がした。

初めて味わう気分だった。

 

(母親の温もり、というものは、こういうものなのだな・・・)

 

ルキアには母はいない。

それは例外ではなく、死神や流魂街の住人の多くは親の顔を知らない。

だからこそ、ルキアの心には真咲の温もりが、深く心に沁みこんだ。

 

「・・・ありがとうございます。一護の母上」

 

ルキアはそう呟き、紙を懐にしまう。

それと同時に、一護が部屋に入った。

 

「おう、ルキア」

 

「む、戻ったか、一護」

 

一護の手には紙袋があった。

ルキアはそれに目をやるが、すぐに一護の顔に視線を向けた。

 

「え~と、その、晩飯、さ・・・」

 

「知ってる、貴様の母上が持ってきたのだろう?」

 

一護はキョトンと呆けた。

 

「お前、知ってたのか・・・」

 

「まあな、私も家族の一員だからな」

 

「何だよ、それ」

 

「ほっとけ」

 

いつものようなやり取りを交わす2人。

一護はルキアがまだ夕飯を手に付けてないのに気付いた。

 

「早く食べろよ、冷めちまうぞ」

 

「わかっておる。いただきます」

 

パクッと一口。

口の中に、美味しさと同時に温かさも入り込んでいく。

 

「・・・美味いな」

 

「当たり前だ。何せ、おふくろの手料理だからな」

 

「流石だ」

 

一護もルキアも称える真咲の手料理。

美味しさだけではなく、気分を良くしてくれる温かさも混じってくるのだ。

きっと、真咲の愛情、というやつだろう。

 

その後、夕飯に箸を進めていくルキア。

途中、一護がルキアに紙袋を渡した。

 

「ほら」

 

「それは・・・?」

 

「お前の服だ。遊子の服は返せよ」

 

「私の服だと!?それは本当か!?」

 

急いで紙袋を取り、中身を見る。

小さめの女物の服数点が入っていた。

 

「おおっ!全部可愛らしいな!」

 

「・・・ま、気に入って何よりだ」

 

「何を自分が買ったようにしているのだ。これを買ってきたのは貴様の母上だろう?」

 

「それも知ってるのかよ・・・」

 

「貴様がここまで気を利かせられるとは思わんからな」

 

「ぐ・・・。悪うございましたね」

 

一護は両手を挙げ、肩を竦める。

ルキアはホクホクと笑顔になり、紙袋を一旦置き、再び夕飯に手を付ける。

ルキアの笑顔を見て、一護また小さく笑顔を零す。

 

ルキアが夕飯を食べ終わる頃には、一護は勉強を始めていた。

 

「ごちそうさま」

 

「おう」

 

「・・・一護」

 

「あん?」

 

「私も貴様も幸せ者だな」

 

「・・・そうだな」

 

一護は単調に答えたが、その言葉にはどこか感慨深さがある。

 

「良い、母を持ったな」

 

「まあな。良すぎて、敵わねえよ」

 

思い浮かべたのは、先程の台所でのやり取り。

真咲は最初から気付いていたのだろう。

しかし、あえて、今まで言わなかった。

きっと、真咲なりの配慮なのだろう。

 

「母上を、大切にするのだぞ」

 

「ああ!」

 

一護は微笑みながら、力強く答える。

ルキアはそれを聞き、満足げに嬉しそうに笑う。

 

そんな穏やかな時間が過ぎる夜だった。

 

一護が死神の力を手に入れて、1週間が経っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、穿界門前にて。

そこには京夜が佇んでいた。

時間を見ると、集合時間まで差し迫っている。

欠伸を零し始めた時、目的の人物が来た。

 

「京夜~!」

 

「おう、来たか、茜雫」

 

笑顔で手を振りながら、京夜の横に合流する茜雫。

前日の通り、京夜と茜雫はルキアの様子を見るという任務で、こうして集合している。

 

「待った?」

 

「ああ、結構待ったよ」

 

「嘘!?だって、時間はまだ・・・」

 

「10分位な」

 

「全然待ってないじゃない!」

 

プクッと頬を膨らませ上目使いで睨む茜雫。

京夜はハニカミながら笑う。

しかし、その表情もすぐに消え、真剣な顔つきになる。

 

「茜雫、行くぞ」

 

「うん!あ、現世に行ったら、何する?私はね~―――――」

 

「茜雫」

 

茜雫の言葉を遮る京夜。

茜雫がキョトンと呆けた顔になる。

 

「・・・楽しみな所悪いが、恐らく、そう悠長に出来ないと思うぜ」

 

「京夜・・・?どういう―――――」

 

「・・・先、行くぞ」

 

「あ、ちょ、ちょっと~!」

 

京夜と茜雫は穿界門を潜った。

 

 

 

 

「―――――よっと」

 

「着いたね」

 

京夜と茜雫は現世に降り立った。

道中、茜雫は京夜に先程の言葉はどういう意味なのか聞いたが、頑なに答えなかった。

2人は辺りを見渡す。

懐かしい空気が身に沁みこんだ。

 

「ん~!久しぶり、この空気!」

 

「ああ、そうだ―――――っ!」

 

しかし、感傷に浸っている時間は無かったようだ。

京夜は感じた。

異様な負の霊圧を。

 

「地獄の門だと・・・!?」

 

「どうしたの?」

 

「・・・茜雫、気を緩めすぎだ。集中して辺りの霊圧を感じてみろ」

 

「う、うん・・・。っ!こ、これは!?」

 

茜雫は驚き、目を丸くする。

京夜は苦虫を噛み締めた表情をする。

 

(やはり、遅かったか!ルキアは死神の力を・・・。ということは、原作通りならば・・・!)

 

「ちょ、何で、地獄の門が!?どういうこと!?技術開発局からはそんな報告・・・」

 

「とにかく、向かうぞ!ルキアもそこにいるだろう!」

 

「う、うん!」

 

京夜と茜雫は全速力で現地へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

所変わり、地獄の門前。

そこには、突然地獄の門が現れ、驚き、冷や汗を流す一護と、血を流し、傷だらけのルキアがいた。

 

「な、何だ!?一体!?」

 

「・・・地獄だ」

 

ルキアは淡々と一護に説明をする。

 

「・・・斬魄刀で斬った、全ての虚が尸魂界へと行ける訳ではない。生前に大きな罪を犯した虚は・・・地獄の連中に引き渡す契約となっている!」

 

地獄の門が、開く。

 

ガラララララララ

 

『ギャアアアアアア!!!』

 

一護とルキアと戦っていた虚は苦悶の声を出し、そして―――――

 

ザクッ

 

一護の身長倍はあるだろう刃を、虚の身体の中心に突き刺した。

 

『・・・ヴヴ・・・ルルル・・・・・フフ・・・フフ・・・・・フフフハハハハハハハ!!!!!』

 

バタン

 

奇怪な声を荒げながら、地獄の門はその役割を終え、消えた。

 

「・・・地獄に・・・堕ちたのか・・・」

 

一護がそう呟いた時、背後から、この場に似合わない呑気な声が聞こえた。

 

「・・・久しぶりに見たな、地獄の門」

 

「はぁ、はぁ、私を置いてかないでよ!」

 

「「!?」」

 

ルキアと一護は勢いよく振り向く。

そこには2人の死神がいた。

 

「だ、誰だ・・・?」

 

「・・・京夜?・・・茜雫?」

 

「え・・・」

 

一護は訝しげに見た。

ルキアはどうしてあの2人がここにいるのか、訳がわからず、ただ呟くだけだった。

 

「久しぶりだな、ルキア」

 

目の前にいる京夜は笑顔を作らず、ただただ淡々とその言葉を送った。

 

 




いかがでしたでしょうか?

やっとこさ、京夜を原作へ介入出来ましたよ・・・。
さて、次回はいつになるか・・・。
読者の皆さんは気長に待っていてください。

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