BLEACHへの転生者   作:黒崎月牙

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テテテテテ テ~ン♪

京夜「みなさん、新年あけまして」

『おめでとうございます』

京夜「漸くこの作品も1周年となりました」

ルキア「よく続けていると思うぞ。本当に・・・」

雛森「予定では現世編もとい茜雫編は年内に終わらす予定だったのにね」

茜雫「えっ!?そうだったの!?」

七緒「作者の更新スピードが鈍間な亀ですからね。全く、しっかりしてほしいものです」

乱菊「まあまあ、しょうがないじゃない。色々あるのよ。い・ろ・い・ろ・と」

卯ノ花「話は変わりますが、どうやら、私の人気が高いようですね。みなさん、ありがとうございます」

京夜「90度くらい話を変えた!?」

蜂砕「待て。卯ノ花、それには異論がある。私の方が人気がある」

卯ノ花「あらあら、背も低く、胸もないロリ体系なあなたが人気?フフフ、さぞかし、変態さんたちを支持しているのでしょうね」

蜂砕「な、なんだと!?」

乱菊「卯ノ花隊長~。私も人気ありますよ~。もちろん、変態ではなく、純朴な男子たちにですけど~」

ルキア「そ、そしたら、私も支持率は高いほうです!それに、原作でもメインヒロイン-----」

雛森「原作では織姫ちゃんだからね。ついでに、私も中々、人気ありますから」

茜雫「そ、そしたら、私だってあるよ!劇場版から採用されて、しかも、長編作ってくれたし!」

七緒「それは、作者がパッと出た思いつきで始めたからではありませんか?しかも、当の本人はちょっと長すぎて後悔してますし・・・。というか、私はあまり人気がないような・・・」

『ぐぬぬぬぬ・・・・・』(七緒以外)

京夜「あ~あ、新年早々、喧嘩しちまってるし・・・。まあ、直にほとぼりがさめるだろ」

『お兄ちゃ~ん!』

京夜「ん?・・・おお!焔、アキ!」

焔「おせち買ってきたよ~」

アキ -----甘酒もある

京夜「お、アキ、気が利くね~。2人ともおつかいご苦労様。いいこいいこ~」

焔「へ、へへ・・・」

アキ -----・・・くすぐったい。でも、気持ちいい

京夜「そんじゃ、食べると-----」

『きょーうーんんん!!!』

京夜「ん?ぐぼらっ!?」

やちる「ごめんね、きょううん。遅刻しちゃった」

京夜「ゲホッ、ゲホッ!あ、ああ、別にいいよ・・・。それよりも、鳩尾にツッコまないで・・・」

やちる「うん、わかった!」

京夜(本当にわかっているのだろうか・・・)

やちる「あ!きょううん!今日は特別ゲストがいるよ!」

京夜「え?そんなの聞いてないよ?ってか、誰-----」

剣八「よぉ、京夜・・・」

京夜「・・・・・・・・」

ダッ!

剣八「あっ!?テメエ、逃げんじゃねえ!?」

京夜「新年早々、あんたの顔は見たくねえんだよ!?心臓に悪すぎる!」

剣八「ハッハッハ!褒めても何も出ねえぞ!」

京夜「言葉の意思疎通がない!?」

剣八「語り合うんだったら、剣で語ろうぜぇ!」

京夜「嫌だ!ぜってぇー逃げ延びてやる!」

やちる「キャハハ!待って~、けーんちゃーん!きょうう~ん!」

焔「あ・・・お兄ちゃん、行っちゃった・・・」

アキ -----いつも大変そう。私たちだけで楽しもう

焔「うん、そうしよう!多分、帰ってくるだろうしね!」

蜂砕「そうだ、京夜の支持をとった方が勝ちというのはどうだ?」

茜雫「それいい!」

ルキア「なら、呼ぼう。お~い、京夜~-----って、あれ?」

乱菊「いないわね?京夜どこに行ったのかしら?」

焔「お兄ちゃんなら、向こうに逃げて行ったけど?」

雛森「ひどい!?京夜、私たちのこと置いていった!?」

卯ノ花「・・・まさかとは思いますが・・・別の女に・・・」

『・・・・・・・・』

七緒「・・・有り得なくはないようですね」

『京夜~~~~~!!!!!』

焔「・・・なんだか、ドタバタ騒がしかったね」

アキ -----けど、これで静かになった

日番谷「な、なんだ!?いきなり大勢が飛び出してきたぞ!?」

白哉「兄の気にすることではない。それより-----ルキア、それはおせちか?」

アキ -----私、ルキアじゃないのに・・・

焔「(アキ姉ちゃん、きっと勘違いしているんだよ)そうだよ、これおせち。2人とも食べる?」

白哉(初対面でしかもこの私に敬語無しだと!?)

日番谷「ああ、そんじゃ、いただくぜ」

白哉「・・・鬼柳院はどこだ?」

日番谷「ああ、そうだ。あいつに呼ばれたのにいねえんだよな」

焔「ああ、お兄ちゃんはどこかへ逃げちゃったよ。でも、すぐ帰ってくるね」

日番谷「そうか、そんじゃ、先に食べながら待つか」

アキ -----どうぞ、甘酒です

白哉「む、礼を言う。ルキア」

アキ -----だから、ルキアじゃない・・・




はい、ということで、改めまして、あけましておめでとうございます。

ついに1周年を迎えたこの作品。
みなさんの支えがあったからこそ、ここまで続けられることができました。
更新が遅く、いつ終わってしまうかわからない作品ですが、末永く愛読してくださると、嬉しいです。
・・・その前に原作入りしないとな。

さて、今回は特に特筆すべきものはありませんね。
話の繋ぎみたいなものです。
すみません、ダラダラと長くなってしまって・・・

では、どうぞ。


現世に行くことに意味がある~垣間に訪れる日常~

翌朝、俺は先に起床し、朝食を作っていた。

 

朝だし、軽くて簡単なものでいいか。

焼いたパンにベーコンと目玉焼きをのせたものと、白身魚のムニエル、サラダ、コーンスープって感じでどうだ。

 

そうして、朝食をせっせと作っていると、茜雫が起きてきた。

 

「ふああ~~~。おはよ~・・・」

 

「おう、おはよう」

 

眠そうな瞼を擦りながら、朝の挨拶をする茜雫。

 

あ~あ、髪がボサボサだ。

どうやったら、そんなに毛が跳ね返っているんだ。

 

「・・・・・・・・」

 

すると、茜雫が俺をボーっと見ていた。

 

「どうした?」

 

「えっ!?あ、いや・・・」

 

頬をほんのり染めながら、目を泳がす。

 

なんだ?寝ぼけてんのか?

 

「その・・・昨夜はゴメン・・・」

 

「何のことだ?」

 

「えっと・・・寝るの邪魔しちゃって・・・迷惑だったでしょ」

 

ああ、そういうことか。

茜雫のことを話したから、寝るのが遅くなっちまったもんな。

ったく、そんな気にしなくていいのによ。

まあ、一緒の布団で寝るのは予想外だったけどな。

 

「気にすんなよ。昨日は茜雫にとって色々あったからな」

 

「で、でも・・・」

 

「いいから、この話は終いだ。それより、顔を洗ってこい。あと、髪も整えとけ」

 

「・・・は~い」

 

渋々といった感じでその場から離れる。

 

全く、人のことは気にするくせに、自分のことになると無頓着というか、なんというか。

 

それから、2人で朝食を摂った。

 

「「いただきます」」

 

どれどれ・・・うん、美味い。

自画自賛だけどな。

 

「うん、美味しい!」

 

「そうか、そりゃ、よかった」

 

茜雫が料理を口にした瞬間、ニッコリと笑った。

 

うんうん、喜んでくれて何よりだ。

やっぱ、女の子は笑顔が一番!

 

「昨日も思ったんだけど、京夜の料理ってどうしてこんなに美味しいの?」

 

「え?そりゃあ・・・俺が優しいからな」

 

「うっそ。そんなに優しくはないね」

 

「おいおい、どこにそんな根拠が-----」

 

「私の髪を引っ張ったくせに」

 

「あ・・・」

 

あ、あれは、しょうがないだろ!

咄嗟に行動した結果なんだよ!

 

「それに、色んな女の人を襲うし」

 

「待て、あれは俺じゃない」

 

あれはキョウスケだ。

俺はそんなことは断じてしない!

あれ?この説明したような・・・

 

「まあ、優しい所もあるかな。こうやって家に置いてくれるし、助けてくれたし・・・」

 

「ん?なんだって?」

 

「なんでもな~い」

 

なんだ?声が小さくて聞き取れなかった。

澄ました顔をしているから、そんな大したことじゃないだろう。

 

「あとは・・・」

 

「まだあるのかよ・・・」

 

勘弁してくれ・・・

これ以上、自分のしでかしたことを聞きたくない・・・

 

「わ、私の裸見たくせに・・・」

 

「はあ・・・まだ根に持ってるのかよ・・・」

 

だから、あれは事故というか、タイミングが悪かったんだ。

故意でやったわけじゃない。

 

「そりゃ持つわよ!?家族以外で見られたの初めてなんだから!?」

 

「だからって、ぶり返さなくてもいいだろ。第一、お前には家族がいn―――--あ・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

茜雫は顔を俯いてしまった。

 

しまった・・・つい口が滑った。

はあ、何やってんだよ、俺。

 

「わ、悪い。失言だった・・・」

 

「別にいいわよ。昨日の話で理解しているから・・・」

 

そうは言うものの、どこか暗い雰囲気を感じとってしまう。

 

くそ、自分を殴りてえ。

あの言葉は簡単に言っていいものじゃねえだろ。

 

そこからは、あまり会話がなく、淡々と朝食を終わらせてしまった。

 

うう・・・朝から暗いのは嫌だ。

俺が原因なんだけどよ・・・

 

「・・・私ね」

 

「うん?」

 

茜雫が唐突に口を開いた。

 

「・・・決めた。私、やっぱり生きたい」

 

まっすぐに俺を見つめていた。

 

そうか、考えてくれてたんだな。

だけど・・・

 

「・・・いいのか?記憶を消してしまうんだぞ?家族の記憶が・・・」

 

「いいんだよ。自分で決めたしね。覚悟はできてる。それに-----」

 

茜雫は一度言葉を区切り、再び口を開いた。

 

「この記憶の主であった人たちの分まで、生きなくちゃいけないと思ったからさ」

 

「・・・そうか。そうだな」

 

決意は固いようだな。

雰囲気でわかった。

ならば、俺からは何も言うまい。

 

「じゃあ、早速、穿界門を-----」

 

「待って」

 

茜雫に止められてしまった。

なぜ、止める?

善は急げという言葉を知らないのか?

 

「行く前に寄りたい所があるんだ」

 

「寄りたい所?」

 

「うん、この記憶がある思い出の場所に。せめて、失くす前に一度だけ」

 

そうか、なくなったら、場所もわかんなくなるしな。

最後に残しておきたいんだな。

思い出せなくなる前に・・・

 

「わかった。じゃあ、早く支度をしよう」

 

「うん!」

 

俺たちは出かける準備を始めた。

茜雫の記憶に写る場所に向かうために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私と京夜は支度をしている最中だ。

突然のことなのに、京夜は私に合わせてくれた。

 

ありがとね、私のわがままに付き合ってもらっちゃって・・・

 

さっきは優しくないとか言ったけど、中々、京夜は優しい男だ。

最初は私に服を買ってくれたこと。

あれには驚いた。

まさか、一式全部買うなんて。

けど、嬉しかった。

私も女の子だから、服は多ければ多いほどいい。

 

次に墓で私を助けてくれたこと。

あの時は死ぬかと思った。

まさか、1日会ったばかりの人が颯爽といたんだもん。

おかげで私はこうして、生きていられるけど。

 

あとは、自然になっているけど、行き場のない私をこの家に置かせてくれていること。

ご飯もお風呂も使わせてもらえているし、本当に感謝している。

・・・娯楽がないのが、ネックだけどね。

 

他には無一文の私を遊園地で遊ばせてもらったし、真子たちと楽しく騒げたし、わがままな私に合わせてくれる等々・・・

って、あれ?けっこう優しい面が多いな?

やっぱり、京夜は優しいよ、憎いくらいに。

口には出さないけどね。

 

「生きる、か・・・」

 

生きる理由は、何も死にたくないから、ということじゃない。

昨夜に京夜から話された自分の真実。

私は存在しちゃいけないのに、京夜は快く私を受け入れてくれた。

さらに、私を救う方法まで考えてくれてた。

多分、他の人だったら、私を受け入れず、そこまで考えてくれなかっただろう。

京夜に出会えて、私は運がよかったと思う。

だって、ここまでよくしてくれる人なんていないよ。

 

私が生きる本当の理由、それは-----

 

「京夜がいたから・・・京夜と一緒にいたいから・・・」

 

それが本心だ。

もっと、ずっと京夜と一緒にいたい。

このまま京夜と暮らしたい。

私にとって、京夜は唯一信頼できる、大切な存在だから・・・

 

「はっ!?」

 

はっ、と我に返った。

 

わ、私は一体何を口にしていた!?

京夜と一緒にいたい・・・?!わーわーわー!?

な、何、告白紛いなこと言ってるの!?

会って、まだそんなに経ってないんだよ!?

それなのに・・・私はバカか!?

 

・・・改めて思うけど、私って京夜のことけっこう考えちゃっているんだよね・・・

どうして、こんなに・・・?

優しいから・・・?それもあるかもしれない。

けど、一番の理由じゃない気がする。

こんなに考えてしまうってことは、余程だよね。

関心がなかったら、そう思わないもんね。

 

なんでだろう・・・?

京夜のことを考えると、心がポカポカする時もあるし、モヤモヤする時もある。

これは一体なんだろう・・・?

ま、まさかとは思うけど、そんな・・・

いやいや、ないない、気のせい、気の、せい・・・のはず

 

はあ、なんだろう、この感じ・・・

京夜なら、何か知ってるかな、って思ったけど、京夜に聞いてはいけないって、本能が言ってるんだよね。

はあ、自分のことがまたわかんなくなってきちゃったよ・・・

 

「はあ・・・」

 

「溜め息吐く前に支度をしろ」

 

「ほえ・・・?」

 

見ると、私の眼前に京夜の顔があった!?

 

「どわあっ!?」

 

「そこまで驚くなよ・・・」

 

お、驚くでしょうが!?

いきなり、目の前に京夜の顔があったら、普通こういう反応するっての!

ああ、もう・・・さっき京夜のこと考えていたから、なんか頭の中がおかしいよ・・・

な、なんか、顔が熱くなってきちゃったし・・・

 

「な、なに!?何か用!?」

 

「・・・俺の話聞いてたか?早く支度しろって。お前が言い出したのに、行かないつもりか?」

 

「あ・・・」

 

そうだった、まだ支度中だったんだ。

京夜はいつの間にか用意できてるし、私も準備しなくちゃ!

といっても、服はもう着替えたし、あとは髪を縛るだけだ。

 

「あれ?リボンがない?」

 

周りを見渡すが、リボンが見当たらない。

さっき、そこに置いといたのに・・・

 

「ほら、俺が持ってる」

 

「あ、ありがとう・・・って、京夜が持ってたの!紛らわしいよ!?」

 

もう、焦ったじゃないか!

ともあれ、これで髪が縛れる・・・あ、そうだ!

 

「京夜が髪縛って」

 

「え?俺がか?」

 

「うん、ちょうど、持っているんだしさ」

 

「別にいいけどよ・・・下手かもしんねえぞ?」

 

「いいよ、別に」

 

一度やってほしかったんだよね!

お母さんにも-----あ、私のお母さんじゃないんだっけ・・・

とにかく、京夜にやってもらいたいんだ!

 

「それじゃ、髪をとかすからな」

 

「うん、お願い」

 

京夜が手櫛で私の髪を整えてくれる。

うん、中々いい感じ-----って、うわあ!?

 

「ひゃあ!?」

 

「うおっ!?ど、どうした!?」

 

「く、首は触らないでよ!くすぐったいから!」

 

「へ~、お前首弱いのか・・・」

 

「なによ、悪い」

 

「いいや・・・(茜雫の弱点1つ発覚、と)」

 

なんだろう・・・

京夜が悪い顔をしているような・・・

そんなハプニングがあったけど、京夜はそのままとかすのを続けてくれた。

この感じ・・・優しくて、安心するな・・・

 

「京夜、上手いね。お母さんがやってくれた時みたい」

 

「・・・そうか」

 

うん、気持ちいい。

京夜にやらせて正解だったね。

そのままやり続けてくれたんだけど・・・

ふわあ~・・・心地よくて、眠くなってきちゃった・・・

 

ウトウトし始めた時、京夜の声で目が覚めた。

 

「はい、出来たぞ」

 

「ふえ?あ、本当だ・・・」

 

すごい、いつの間に縛ったんだろう。

気づかなかった。

これからは京夜に縛ってもらおうかな。

 

「さて、準備も済んだことだし、出かけるか」

 

「うん!」

 

私と京夜は出かけた。

私の記憶の中の思い出の場所へと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時間は昼時。

今、俺と茜雫は住宅街を歩いていた。

 

「方向はこっちで合ってるのか?」

 

「多分。あの公園に見覚えあるから」

 

向かう先は中学時代にいたと言う家。

公園の周りを沿いながら、向かっていた。

 

「けど、いいのか?苦い思い出がまた蘇ってくるだろ?」

 

「うん・・・。だけど、いいんだ。自分のけじめとして、見ておきたい」

 

茜雫がそう言うなら、俺はもう口出ししない。

茜雫にある記憶は、恐らく大分前のものだろう。

果たしてどうなっているのやら・・・

 

「あ・・・」

 

「うん?」

 

茜雫が突然、立ち止まった。

場所はちょうど、公園を通り過ぎた辺り。

 

「・・・ここだ」

 

「・・・そうなのか?」

 

「うん。間違いない」

 

「でも、ここって・・・」

 

俺はその場所に目をやる。

そこにはある看板があった。

 

『只今、工事中』

 

そう、民家を建て壊していた。

どうやら、マンションを建てようとしているみたいだ。

 

まさか・・・こんなことって・・・

 

「・・・私が住んでいた家、壊しちゃったみたいだ」

 

「・・・そうみたいだな」

 

俺は気の利いた言葉がでなかった。

 

今、茜雫はどんな気持ちなんだろうか・・・

記憶の中にある、住んでいた家が壊されていて・・・

苦しいのか・・・?

それとも、吹っ切れたか・・・?

 

「・・・ある意味、よかったのかも」

 

「え・・・?」

 

「中学の記憶の私はね、大分親に反抗してたみたい。お父さんと喧嘩もしょっちゅうだし、殴られたからさ」

 

「茜雫・・・」

 

何て声をかければいい・・・

よかったな、か?・・・いや、ちがうな。

同情しても、茜雫は何も喜ばない。

 

「次、行こう。次は小学の頃の場所」

 

「・・・ああ」

 

結局、俺は何も言えなかった。

けど、これでよかったのかもな。

変に言葉を投げかけても、ありがた迷惑だ。

俺は茜雫に付き添ってあげればいい。

支えになるように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次に向かった場所は住宅街から程遠い、大通りの近く、人や車通りが激しい。

その大通りから横道に逸れた飲食店が立ち並ぶ場所。

その中にある民家に俺と茜雫は立ち寄った。

 

「・・・ここか」

 

「うん・・・。家はまだあるみたいだね」

 

表札には『柏木』と書いてあった。

とても普通の家だ。

 

しかし、立ち寄ったはいいものの、どうすればいいんだ?

ただただ、ここで人の家を見てたら、不審者扱いをされないか?

 

そう思った矢先、玄関がガチャ、と開いた。

 

「じゃ、お母さん、行ってきます!」

 

「はい、いってらっしゃい」

 

玄関から、 20代前半らしき女性と初老の女性が見えた。

恐らく、親子なんだろう。

その光景を見た瞬間、茜雫がビクッと反応した。

 

「っ!」

 

「茜雫・・・?」

 

どうしたんだ?

あの2人に見覚えがあるのか?

 

女性が玄関から歩き、俺たちの横を通る。

 

「こんにちは」

 

「あ、はい、こんにちは」

 

「・・・・・・・・」

 

向こうが会釈をして、挨拶をしてきたので、俺も素直に返す。

しかし、茜雫は顔を俯き、無言だった。

女性が通り過ぎたので、心配になった俺は声をかけた。

 

「茜雫?どうし-----」

 

俺の言葉を遮るように、茜雫は俺の服の袖を掴んでいた。

その手は-----震えていた。

 

「・・・あの女の人・・・私の妹だ・・・」

 

「え・・・!?」

 

妹だって・・・!?

で、でも、茜雫は高校生-----ああ、そうか。記憶が古いんだよな。

時の流れで、向こうは先に成人を迎えてしまっている。

 

「・・・妹だとわかる確証は?」

 

「あの右耳と口元にあるホクロ、それとあの眼の形で・・・」

 

そこまで言われたら、反論はできないな。

まさか、妹が成人をしているとは予想もつかなかっただろう。

俺も茜雫自身も。

 

「・・・無反応だった・・・。私の妹・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

「本当の妹じゃないけど・・・記憶の中ではあの子は私の妹なんだ・・・それが・・・」

 

「茜雫」

 

俺は茜雫の手を優しく握る。

 

少しでも茜雫を落ち着かせるために。

 

「もう記憶とは決別しよう。これでわかっただろう。過去の記憶を持っていても、お前が苦しむだけだ」

 

「・・・うん」

 

最初は記憶にある場所と照らし合わせるだけだった。

けど、予想外の連続だった。

こうなることはわかっていたのかもしれない。

でも、茜雫にとって、けじめとしてこうして意を決して来たんだ。

無駄だったわけじゃない。

 

「・・・少し歩こうか」

 

「・・・お願い。急に色々起こりすぎたから・・・」

 

こんな状態で尸魂界に向かっても、不安を煽ぐだけだ。

落ち着かせるためにも、少し歩こう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大分、落ち着いたようだな」

 

「うん。ありがとう、気遣ってくれたんだよね」

 

「別に・・・そんな大したことはしてない」

 

あの場から離れ、適当にぶらついた俺と茜雫。

それが効果覿面だったのか、茜雫は落ち着きを取り戻していた。

 

今回のはけっこう堪えたかもな。

でも、いい機会だったのかも。

これで、迷うことはなくなった。

あとは、茜雫の記憶を消すのみだ。

 

程なく歩いていると、目の前に男の子が泣いていた。

 

「ヒック・・・ヒック・・・」

 

「どうしたの?」

 

茜雫は男の子に声をかける。

 

あれ?この光景、どっかで見たことあるような・・・

 

「あの、ね・・・お父さんがいないの・・・」

 

「そっか・・・。お父さんとはぐれちゃったのか・・・」

 

見ると、男の子の胸には因果の鎖が繋がっていた。

恐らく、そのお父さんというのも、既に他界しているのかもな・・・

 

あ・・・これって、劇場版でやっていたような・・・

 

「君のお父さんはきっともう先に逝って-----おい、茜雫、そんな怖い目で俺を見るな」

 

「だって、絶対に酷いこと言おうとしたでしょ」

 

「あ~・・・え~・・・」

 

できれば、ここで魂葬したいんだよな。

恐らく、劇場版通りならば、お父さんがいる場所は神社だ。

で、厳龍たちに襲撃されるんだよな・・・

そんな死亡フラグはへし折りたい所だけど・・・

 

「君、名前は?」

 

「僕・・・智司」

 

「そっか、智司君って言うんだ。安心して、私とこのお兄さんが一緒に探してあげるから」

 

「ほ、本当!?」

 

「うん、任せなさい!」

 

そうなるよね~・・・はあ・・・

 

「お前の性格上、そう言うと思った・・・」

 

「なによ、京夜はこの子を見捨てるほど人でなしなわけ?」

 

「見捨てるとは一言も言ってないだろう・・・。まあ、乗り掛かった舟だ。探すの付き合うぜ」

 

仕方ない。

劇場版の流れで行くとするか。

もしかしたら、歪みのせいで、厳龍たちが来ない可能性もあるだろうしな・・・

 

「全く、素直に言えばいいのに。じゃあ、智司君、お父さん探そうか!」

 

「おー!」

 

「おー・・・」

 

さてさて、どうなることやら・・・

 

俺たちはとにかく、情報収集が必要だ。

だから、色んな人に聞き込みを行った。

 

「すみません、智司君のお父さん見たことないですか?」

 

「さあ、知らないな?」

 

「すみません、智司君のお父さん見たことないですか?」

 

「わかりませんね・・・。そもそも空座町の者なのですか?」

 

茜雫の収穫-----0

 

「すみません、智司君のお父さん知りませんか?」

 

「知らないわね~。それよりも、あなたイケメンね。どう?一杯やってかない?」

 

「すみません、智司君のお父さん知りませんか?」

 

「お父さんになんて興味ないからわからないわよ。それより、あなた、年下で銀髪で顔も整ってるし、私好みね。今から一緒にイイことしない?お姉さんがたっぷりと-----」

 

京夜の収穫-----0

 

「収穫なし、か~・・・」

 

「ああ、そうだな-----って、なんだ、今の描写・・・?」

 

茜雫は普通だったのに、俺だけ返ってくる答えがおかしいぞ!?

まるで、俺がそっち系の人たちにしか聞いてないみたいじゃないか!?

違うぞ、他のきちんとした人にも聞いてたからな!

あれは、一部だ!

 

「うぅ・・・お父さん・・・」

 

「ごめんね、智司君。知ってたらでいいんだけど、お父さんが行きそうな所とかわかる?」

 

「・・・約束したんだ。神社で一緒に祭りを楽しもうって」

 

「じゃあ、もしかしたら、お父さん、神社に居るかも!よし、行こう!」

 

そう言うや早く、智司君と茜雫は走り出した。

俺も追いかけるように後を追い、茜雫の隣に来る。

 

「おい、いつまで続ける気なんだ。大体、祭りなんてこの辺りじゃやっていないぞ?」

 

先に歩いている智司君には聞かれないように、音量を抑えて茜雫に話かける。

 

「・・・続けるよ。お父さんに会わせるまで。だって、可哀想じゃん。このままお父さんに会わずに魂葬されるなんてさ」

 

茜雫はまっすぐに、嘘偽りのない目で俺を見ながら、言葉を続けた。

 

「だから、せめて、叶えてあげたいんだ。魂魄の最後のお願いを。それが私が一番いいと思ったことだから」

 

「フッ・・・。たまには、そういうのもアリかもな。付き合いますよ。お姉さま」

 

「ちょっと、バカにしてるでしょ!?」

 

「べっつに~」

 

まあ、茜雫の意見も一理ある。

魂魄にとってはそうして成仏した方が理想的なんだろう。

それに、いちいち死神化して刀抜くのも面倒だしな。

時間はかかるけど、いい方法だ。

俺がこんな悠長にしていられるのも、原作知識があるからなんだろうな。

なかったら、とっとと、魂葬している。

この後は、神社でお父さんと出会い、無事に成仏できるのだから・・・

 

「お姉ちゃ~ん!神社だよ~!」

 

「本当!?今、行くね!」

 

茜雫は駆け出し、神社に入っていった。

俺も後を追い、神社に入っていく。

 

しかし、そこに入った途端、不思議な感覚を感じた。

 

「・・・・・・・・」

 

風車が回り始める。

屋台があり、そこらかしこで人がいてにぎあっていた。

まるで、それは季節外れの祭りを思う。

 

「智司---!」

 

「お父さん!」

 

見ると、中年の男性がこちらに駆けてきた。

恐らく、智司君のお父さんだろう。

2人は確かめ合うように抱き合っている。

 

「よかったね、お父さんと無事に出会えて」

 

「あなたのおかげです」

 

「私の?」

 

お父さんから発せられた言葉は普通の返答だ。

だが、この言葉は別の意味で捉えてほしい。

茜雫が探したからではなく、茜雫がいたから、だ。

 

「そうだよ!お姉ちゃんがいてくれたから、お父さんと出会えた!」

 

「私が、いたから・・・?」

 

「ええ、そうです。・・・もしや、あなたは自分のことを認識できていないのですか?」

 

「!」

 

そう、この親子の出会いは運命的なものではなく、茜雫がいたから、出会えたようなもの。

思念珠である茜雫に魂魄が集まってきたのだ。

この親子も例外ではない。

 

「私が・・・思念珠、だから・・・」

 

「理解していたのですね。なら、話が早い。私たちはあなたに吸い寄せられるように来たのです。他の方も同様にですよ」

 

「・・・・・・・・」

 

茜雫は俯いていた。

その眼は困惑しているように、目が泳いでいた。

 

改めてわかったのだろう。

自分が思念珠だと。

普通じゃないと。

 

「これで無事に成仏できます」

 

「ありがとう!バイバイ、お姉ちゃん」

 

「あ・・・」

 

それを最後に親子は消えてしまった。

同時に神社の景色も変わった。

 

「っ」

 

音を立てていた風車は鳴りやむ。

あれだけいた人が今はいない。

無論、屋台に人はいなかった。

見ると、廃人のような人たちが歩いていた。

まるで魂が抜け落ちたように。

そう、これが、現実だ。

 

「私は・・・私は・・・」

 

「茜雫、おちつ-----」

 

「いやっ!」

 

俺が茜雫に手を翳そうとしたら、茜雫が恐怖の目でこちらを見ていた。

 

マズイな、酷く混乱している。

仕方ない、目を覚まさせるか。

 

「茜雫っ!!!」

 

「っ!」

 

ビクッ!と茜雫は驚く。

俺はその肩に優しく手を置いてやる。

安心させるために・・・

 

「大丈夫だ。お前は茜雫だ。俺が思念珠というしがらみを取り除いてやるから。安心しろ」

 

「あ・・・京夜・・・」

 

茜雫の肩はとても震えていた。

怖かったろう・・・

でも、大丈夫だ。俺が傍にいるから・・・

 

茜雫が落ち着いてきた、そんな時だった。

 

「っ!?」

 

突然、不可思議な反応を感知した。

 

これは・・・虚でもない。

ましてや、死神のものでもない。

まさか!?

 

俺は上空に目をやる。

そこには-----

 

「やあ、お2人共。-----いや、思念珠と憎き死神よ」

 

黒いマントを身に纏った4人組がいた。




いかがでしたでしょうか?

次回は戦闘シーンです!
実は戦闘シーンをまとめて書きたかったので、こんな中途半端な形で区切りました。

ですので、次の更新は早めにできたらいいな、と思っています。
・・・そう言うと、フラグ立ててんのかも。
とにかく、更新をお待ちください!

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