BLEACHへの転生者   作:黒崎月牙

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今回も早めに投稿できてテンションがハイです!
どうも、みなさん、アンケートにつきましては、ありがとうございます。

こんなにアンケートに答えてくださるなんて思ってなかったです!
まだまだアンケートは実施中です。
活動報告にてお答えください。

さて、今回は日常・ラブコメ・シリアスと、なんともカオスな話となっております。
今回、京夜に、地獄に落ちろ!と思った方は感想、お願いします。

※途中、少々残酷な描写が挟む恐れがあります。ご注意を。


現世に行くことに意味がある~縮まる2人~

店から移動し、遊園地に来ている俺と茜雫。

平日の夕方だからか、人があまりいない。

 

「イィィヤッホオオオォォォッ!」

 

「はあ・・・」

 

遊園地で茜雫は謳歌していた。

それはもう果てしないほどに。

最初、観覧者に行くとか言ってたのに、途中見つけたジェットコースターに興味を惹かれ、今楽しんでいる。

 

俺がいるから乗れてるのわかってんのか?

俺以上に楽しんでいるな・・・

 

「いや~、爽快!何回乗ってもいいものね!」

 

「飽きた・・・」

 

これで3回目。

さすがの俺も飽きてきた。

てか、遊園地に来て、まだジェットコースターしか乗っていない。

他のも乗れよ・・・時間ねえけど。

 

「さ、次行きましょ~!」

 

「お、おいおい!?まだ乗るのか!?観覧者はどうした!?」

 

「最後でいいわよ!とにかく、他行きましょう!」

 

そう言い、俺の意見なんて露知らず。

茜雫は俺の腕を引っ張り、次なる乗り物へ向かった。

 

か、金がなくなる・・・

 

「まわせ、まわせ、回せ~~~!!!」

 

「うおおおおおぉぉぉぉ!!!」

 

お次はコーヒーカップ。

茜雫に促され、俺は回しまくった。

 

今までの鬱憤をここで晴らす!

そして、茜雫を酔わせてやる!

ちょっとした仕返しだ!

 

「うぷ・・・」

 

「なに、酔ってんのよ」

 

コーヒーカップから降りた俺と茜雫。

 

な、なんてこった・・・

茜雫に仕返しさせるつもりが、自分で酔ってしまうとは・・・

これじゃ、本末転倒だ・・・

 

「あんなに回すからいけないのよ」

 

「なに・・・自分関係ねえ・・・みたいな顔してやがる・・・おえっ」

 

こいつ・・・回してねえからって・・・

てか、なんで茜雫は酔ってねえんだよ・・・

あんだけ回したのに・・・

 

「はいはい、次行くわよ」

 

「ま、待て・・・まだ気持ち-----」

 

「知らないわよ。今日はとことん楽しむんだから!」

 

だ、だれか・・・助けて・・・

 

俺は再び茜雫に引っ張られた。

 

「京夜~~~!」

 

「・・・おう」

 

次に来たのはメリーゴーランド。

茜雫は一番大きい馬に乗り、俺に手を振ってる。

ちなみに、俺は隣に設置してあるベンチに座ってる。

 

まだ酔いが覚めない・・・

 

「姫って、呼んでもいいんだよ~!」

 

「・・・誰が呼ぶか」

 

茜雫が姫ぇ?

はっ、笑わせんな。

あんなの破天荒でじゃじゃ馬娘じゃねえか。

姫なんて柄じゃ・・・

 

ドカッ!

 

「いてぇ!?」

 

「あんた、今失礼なこと考えてたでしょ!?」

 

いつの間にか降りていた茜雫が俺の頭を殴っていた。

 

なぜ、わかったんだ・・・?

ルキアといい、茜雫といい、女は怖い・・・

 

「それにしても・・・ん~~~!楽しかったぁ!」

 

「これで満足か?もう夜になりかけてるんだが・・・」

 

陽が消えかかっている。

いつの間にか遊園地が閉園しようとする頃だ。

 

こんなの予定になかったからな。

夕飯、遅くなっちまうな・・・

 

「まだよ!乗りたいものは最後に取っておくものだからね!」

 

そう言いながら、観覧者を指さす。

 

ああ、まだあったんだっけ・・・

 

「はあ、ここまで来たんだ。最後まで付き合ってやるよ。これで本当に最後だからな」

 

「うん、いいよ!早く行こう!」

 

茜雫が俺の腕を引っ張りながら、観覧者に向かった。

 

観覧車に乗った俺と茜雫。

ゴンドラが頂上付近にまで辿り着こうとしていた。

 

「うわ~!見て見て!町があんなに小っちゃい!」

 

「ああ、そうだな」

 

ったく、子どもみたいにはしゃぎやがって。

まあ、観覧車に久しぶりに俺も乗れたからいいかな。

 

「あ、あの川・・・」

 

「ん?川がどうした?」

 

茜雫が川を見つけると、急に懐かしむ顔をする。

 

確か、あの川って・・・

 

「あの川ね・・・。お父さんとの思い出の場所なんだ・・・」

 

茜雫がポツリと呟いた。

 

「小さい頃にお父さんと帰ってた・・・。笑顔で私を抱いて-----っ」

 

一瞬、本当に僅かだが、茜雫の様子が変わった。

 

記憶が入り混じっているみたいだな。

茜雫、それはお前の記憶じゃない。

他の、偽りの記憶だ。

けど、今そんなこと口にできない。

したとしても、茜雫は受け入れないだろう。

 

「川、か・・・」

 

劇場版のことを頭に思い浮かべる。

 

一護たちが茜雫を助ける際に、あの川を使ってたよな。

確か、川に映されている月、が入り口だったよな。

 

(ここからでも見れるか・・・?)

 

俺は川の方に視線を向け、目を凝らす。

運よく、今は陽が落ちていて、月がでている。

 

川には月が照らされていた。

その月なんだが・・・ちょっと違っているように見えた。

 

(あれ、黄色か?灰色のような・・・。遠くからだとよくわからねえな)

 

ここからだと距離があって判断がつかねえ。

まだあそこが入口だと確証は得られないな。

 

「ねえ、京夜」

 

「ん?」

 

ふいに茜雫が聞いてきた。

 

「明日、あの川に一緒に行ってくれる?」

 

「別にいいが・・・いいのか?」

 

「なにが?」

 

「俺なんかと行って。思い出の場所なんだろう?」

 

「いいわよ。京夜となら楽しいし・・・」

 

寂しげな顔でそう言った。

まるでそれが建前で、本音を隠そうとしているように見えた。

 

「それに、京夜、私に奢ってくれるしね!」

 

「おい・・・」

 

と、思ったのも束の間、茜雫はキシシッと笑いながら、とんでもないことを言った。

 

好きで金を出してんじゃねえんだぞ!?

お前が無一文だから、仕方なく出してやってるんじゃねえか!?

はあ・・・胃が痛い・・・

 

それから、俺と茜雫は観覧者から降りた。

空はすっかり暗くなり、閉園時間となっていた。

 

「あ~あ、楽しい時間ってあっという間ね」

 

「まあ、そういうもんだろ。」

 

茜雫は大満足という感じだな。

俺は・・・まあ少なからず、って所かな。

出費に関しては目を瞑るとだが。

 

すると、突然、どこからか、変な音が聞こえた。

 

グウゥゥゥ~~~

 

「・・・・・・・・」

 

「あ、あたしじゃないわよ!?」

 

とかなんとか言ってるけど、音がした方面がお前からなんだが・・・

 

俺はジト目で茜雫を見続けていたら-----

 

ギュルルルゥゥゥ~~~

 

「「・・・・・・・・」」

 

「フッ」

 

「は、鼻で笑うな~~~!」

 

そう言いつつも、お腹を触っている茜雫。

 

やっぱり、生理現象には敵わないか。

 

「飯にするか。今から夕飯作ったら、遅くなるし、どっかで食べるとしよう」

 

「そ、そうね!そうしましょう!」

 

「行くぞ、正直で我侭な小娘」

 

「や、やかましい!!!」

 

俺たちは閉園する遊園地から出て、駅の近くのラウンジで夕飯を摂ることにした。

ファーストフードか。

懐かしいぜ。

 

「ん~!おいしい!」

 

「人の金だからって、貪りすぎだろう・・・」

 

おいおい・・・女なのにそんなに食べていいのか・・・?

 

茜雫の前にある料理はハンバーガーやパニーニ、ホットドック、ポテト、チュリトスなど合計5つもある。

対する俺はハンバーガーとナゲットだ。

 

すげえ、食うな。

これじゃ、どっちが男のだかわかんねえぜ。

暴飲暴食には気をつけろよ?

 

「そんなに食べて平気なのか?仮にも女だろ?」

 

「仮にもじゃなくて、正真正銘の女だから!それに、高校生は活発だから、栄養摂らないといけないのよ」

 

「・・・その栄養はどこに行ってんだか。頭と胸には行ってな-----イッタア!?」

 

「フン!」

 

いきなり茜雫が俺に足蹴りしてきた。

そのせいで、俺は机に俯いてしまう。

 

す、脛に当たったぞ!?

くっそ~・・・滅茶苦茶イテエ・・・

 

「て、テメエな・・・・・って、あれ?」

 

視線を机から茜雫に移動したら、目の前にいなくなっていた。

 

って、はあ!?

 

「あ、あいつどこに行きやがった!?」

 

行く時くらい何か言えっての!

 

と、その時、取り付けられてある電飾が一斉に輝きだした。

どうやら、時間式らしいな。

 

「見て見て!あの子!」

 

「ん?」

 

近くにいた一般人が上の方に指差している。

 

なんだ?・・・って!?

 

「せ、茜雫ぁ!?」

 

茜雫が電柱に立っていた。

 

そうだ!思い出したぞ!

あいつ、高い所好きだから、ああいう所に登るんだった!

ということは、これから行うのは綱渡りだな。

ええと、それから、落下はするけど、なぜか、無事で、ここにいる人たちを驚かせるんだったな。

 

「いいこと思いついたぜ」

 

ピーン!とある事が頭に閃き、すぐに行動した。

 

茜雫の思い通りにさせるかよ。

 

俺は電柱のすぐ近くにある木に、俊敏性を生かして、登った。

 

「到着っと。よし、ちょうどいいタイミングだな」

 

葉や枝の陰に隠れているから、ほかの人たちには見えない。

もちろん、茜雫にも。

茜雫は電飾が繋がれているコードの上を綱渡りしようとしていた所だった。

 

「・・・そろそろか」

 

俺の予想通りに茜雫の足が縺れ、落下する。

その瞬間、俺は木から飛び出し、茜雫に迫る。

 

「茜雫ぁ!!!」

 

「え!?京夜!?―――って、うわっ!?」

 

空中で茜雫をキャッチし、落下する。

落下中に1回転し、綺麗に着地。

 

フッ、キマッた。

 

『おぉ~~~!!!』

 

パチパチと拍手活性の嵐。

 

うん、悪い気はしないな。

これを茜雫は独占しようとしていたのか。

 

「ハッハッハッハ!いや~、どうもどうも」

 

「棒読みなんだけど・・・」

 

お姫様抱っこされながら、茜雫はジト目で俺を見る。

 

そんな目で見られても、俺は一切ぶれないぞ!

 

『カッコイイ~!』

 

『素敵・・・』

 

『是非、我が事務所に来てくれませんか!?』

 

おっと、このままいたら、大騒ぎだな。

そろそろいなくなりますか。

 

「それでは、さよなら、みなさん!姫!共に行きましょう!」

 

「は、はあ!?」

 

そう言い残し、俺と茜雫はその場から離れていく。

 

王子は姫を攫ったのだ!

 

「―――よし、ここまで来ればいいだろう」

 

「さっきの何よ、姫って」

 

「その場のノリだ。気にするな」

 

だって、あの雰囲気じゃね~。

ただ立ち去って行くのも面白くないし。

何かの演劇だと思ってくれた方がいいな。

 

「ま、また姫って呼んでもいいのよ?」

 

「云わん。金輪際2度と」

 

「なによ!ケチ!」

 

ケチ・・・俺が・・・?

あれだけ金を出しておきながら、ケチと言うか・・・

隊長、抜刀の命令を!―――あ、ダメ?

 

「それじゃ、もう遅いし、ご飯も食べたし、私帰るね」

 

「え・・・?」

 

帰る・・・?

茜雫が・・・?

どこへ・・・?

 

「お前・・・帰るのか?」

 

「なに?帰っちゃ変?」

 

「いや、変じゃねえけど・・・」

 

確か、原作だと家がなかったような・・・

というか、無一文だし・・・

どういうことだ?これは歪みか?

 

「あ、もしかして寂しいんだ~」

 

「はあ?寂しいはずがねえよ。せいせいしたわ」

 

「とか言ってるけど、顔背けちゃって~。素直じゃないんだから~」

 

「・・・・・・・・」

 

くっ!こいつ・・・!

隊長!やはり、抜刀の許可を-----え?お前が切られろって?

 

「じゃあさ、明日、一日中遊ぼう!」

 

「じゃあ、ってなんだ。じゃあ、って。てか、一日中?」

 

「うん!川以外にも行こう!」

 

俺の仕事は虚退治くらいだからな。

基本、オールフリーだ。

差支えないし、茜雫の近くにいた方がいいか。

 

「わかった。別にいいぞ」

 

「やったー!じゃあ、明日の朝、さっき食べた所に集合ー!」

 

腕を上げて、テンションを上げる茜雫。

 

いつもテンション高いな。

このテンションが無駄に栄養をなくさせているのか。

そのテンションさえなければ、発育に-----いや、なんでもない。

 

「じゃ、また明日!バイバーイ!」

 

「あ、ああ・・・。じゃあ、な・・・」

 

茜雫はどこかへ行ってしまった。

 

俺はその背中をただただ見つめていた。

自分の家に帰らずに・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私の名は茜雫。

苗字は忘れちゃった!

いつ生まれたのかも、自分がいつからここにいたのかもわからない。

けど、私は今ここにいる。

私という存在がいる限り、私が生きている証拠になる。

 

だからだろうか、ここに来ると、ある記憶を思い出させる。

その記憶は私を混乱させる。

 

「・・・私の墓・・・」

 

私は墓地に来ていた。

ここに来ると、頭痛がする。

けど、懐かしいからか、何度も足を運んでしまう。

 

「っ!」

 

脳裏に浮かぶのはあの光景。

 

お母さんが泣いている。

私の遺影がある。

 

なんで泣いてるの?

なんで私の遺影があるの?

私は生きてる!

今、この場に、この時間に生きてる!

 

「・・・一体、なんなの・・・」

 

私は顔に手を置き、悩まされる。

 

この記憶はなんなの?

わからない、わからない。

どんなに考えても、どんなに思い出そうとしても、肝心な所でボヤける。

 

「っ!」

 

さっきの記憶が引き金なのか、再び別の記憶が浮かび上がる。

 

お父さんが私を殴る。

先ほどとは別人のお母さんが悲鳴をあげる。

 

なんで殴るの?

お母さん、なの?

なんで、2人もお母さんがいるの?

 

「・・・一体、なんなのよっ!!!」

 

誰もいない、夜の墓地に私の声が響いた。

 

その時、草むらから人影が現れた。

 

「やっと、見~つけた!」

 

「だ、誰!?」

 

男が出てきた。

黒い服に黒いマント、黒ずくめだ。

両手にはチャクラムのような刃物を持っていた。

間違いなく、普通の人ではないのがわかった。

 

「誰でもいいだろ。そんなことより、お前。俺らの元へ来るんだ」

 

「・・・何がいいたいのか、わからないわね」

 

私は男に警戒する。

全く、次から次へとなんなのだろう。

 

「そう言うってことは、実力行使でもいいんだな?」

 

「やれるものなら、やってみれば?ちょうど、鬱憤が溜まってた所だったし」

 

男が両手のチャクラムを構える。

 

「なら・・・遠慮なく行かせてもらうぜ!」

 

「っ!」

 

男は飛び上がり、私を潰そうとしてきた。

私は後ろへ回転しながら、避ける。

 

あ~あ、折角の服が汚れちゃった。

 

「乙女の服を汚した罪は重いわよ!」

 

私は瞬時に死神化する。

そして、すぐさま、男の懐に潜り、斬魄刀を振るった。

 

キン

 

「へっ!よわっちいな!」

 

「なっ!?」

 

今、完璧に捉えたはず!

なのに、防がれた!?

いや、男の速さが速かったんだろう。

この男・・・できる!

 

「いつまでもいるんじゃねえ!」

 

「ぐっ!」

 

男が力任せに振ったことで私は吹き飛ばされる。

けど、なんとか、体勢を立て直した。

 

「お前がここにいたって、何の意味もねえんだよ。全く、俺たちの元へ来れば、有用に扱えるのによ」

 

「そ、それってどういうことよ!」

 

私がここにいる意味がない・・・?

それはどういうこと?

私には存在価値がない・・・?

 

「どうもこうも、お前が気にすることじゃねえよ!」

 

「くっ!」

 

男が私に迫る。

速いっ!?

 

「ぐわっ!」

 

かろうじて、防いだが、勢いは殺せなかったみたいだ。

近くの墓石に背中から当たってしまう。

男はすかさず、私の首を掴み、持ち上げた。

 

「あぐっ・・・は、離せ・・・」

 

「殺さずに、ってのは難しいな。まあ、半殺しくらいなら、大丈夫か」

 

男の手に力が加わる。

 

く、苦しい・・・

 

「あ・・・が・・・」

 

ああ、ここで私は消えてしまうのか・・・

助けて、誰か-----と言ってもここには誰もいない。

そもそも私は独りだ。

そんな孤独の私なんか死んでもいいのではないのか・・・?

 

もし、もしも・・・

 

こんな私でも生きたいと願えるならば・・・

 

危機的状況で助けを求めていいのなら・・・

 

私を救ってください・・・

 

(京夜・・・)

 

孤独な私と一緒にいてくれた、たった1人。

今日会ったばかりのあいつに助けを求めてしまう。

私には・・・京夜にしか頼る人がいない。

 

(お願い・・・助けて)

 

その時だった。

突然、私は浮遊感を感じる。

男の手が緩んだ・・・?

 

「ゲホッ、ゲホッ!」

 

「グアアアアアッ!?」

 

男の腕から鮮血が舞っていた。

腕から先がなくなっていた。

 

斬られている・・・?

一体、誰が・・・?

 

その疑問はすぐに解かれる。

 

「よう、茜雫」

 

「あ・・・京夜・・・」

 

私が頼れるたった1人の男が私の横に立っていた。

 

「な、なんで、ここに・・・?」

 

「いやな、歯磨き粉忘れてたから、買ってたんだよ。それで、家に帰ってる最中に、お前が襲われてるのを見えてな」

 

と、言っているが、京夜は嘘をついている。

 

「嘘ね。買った袋がないもの」

 

「・・・捨て-----」

 

「商品は?」

 

「・・・・・・・・」

 

京夜は何も言えなくなってしまった。

 

素直に助けに来たって言えばいいのに。

でも、助かった。

私の願いが叶うなんて思わなかった。

 

「お、お前ぇ!お、俺の腕を!?」

 

「夜道で女に手を出すからイケねえんだ。そのくらいの代償は払ってもらうぜ」

 

男が苦しみながら、京夜を睨んでいる。

 

代償が重すぎない・・・?

 

「くっ・・・ここは退かせてもらう!この借りはいつか返させてもらうぞ!」

 

「あっ、待て!」

 

そんな雑魚キャラ的な置きセリフを残して、男は空へ逃げてしまった。

 

「ったく、逃げ足の速い奴だ」

 

「・・・・・・・・」

 

私はソーッと忍び足で逃げようとしていた。

なぜかって?

ほら、こんなことがあったら、聞かれそうだからさ。

聞かれても、知らないんだけど。

 

「どこへいく・・・」

 

「ひゃい!?」

 

いつもより低く、重い声で京夜は私を睨んでいた。

思わず、変な声だしちゃった・・・

てか、怖い!

なんか、目が光ってる!?

 

「そんなに怯えなくたっていいじゃねえか・・・。で、なんで、逃げ出そうとしてたんだ?」

 

「だ、だって・・・色々聞かれそうだったから・・・」

 

「はあ・・・」

 

呆れながら、京夜は溜息を吐く。

 

そ、そこでどうして溜息を吐くの!?

 

「なら、聞くが、お前はあの男のことを知ってるのか?」

 

「知らない」

 

「だろうな・・・」

 

だろうな、とはなによ。

ほ、本当に知らないんだから、仕方ないじゃない!

これっぽっちも身に覚えがないわよ!

 

「茜雫、俺の家に来るんだ」

 

「は、はあ!?」

 

いきなり京夜からとんでもない言葉が来た。

 

こいつ、何考えてんのよ!

 

「襲われかけてただろ?今後もそういうことが有り得る。だから、俺の元にいれば、1人よりかは安全だ」

 

「い、嫌よ!なんで、あんたとなんか!」

 

私は自由でいたいの!

なのに、それを奪おうとするなんて・・・

とにかく、嫌!

 

「帰るとか言ってたよな?それが、どうして、こんな所に来てるんだ?」

 

「う・・・」

 

返す言葉がでない。

い、一応、帰ったわよ!?

家族に・・・記憶の中でだけど・・・

 

「それに、買った服を汚しちまうし」

 

「あ・・・」

 

そうだった。

折角、買ってもらった服を汚してしまった。

不可抗力とはいえ、申し訳ないな・・・

 

「あと、風呂とかどうしてるんだ?」

 

「そ、それは・・・」

 

そこから先が言えなかった。

風呂は-----ゴメン、ここから先は言いたくない・・・

 

「それから-----」

 

「ああ、もう!わかったわよ!行けばいいんでしょ!行けば!」

 

「そんなにムキにならんでも・・・。まあ、いいや。行くぞ」

 

我ながら、とんでもないことを口にしているな。

やけくそ混じりに男の家に行くなんて・・・

 

私は京夜の後をついて行き、泊まらせてもらうことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから、茜雫が俺の部屋に泊まることになった。

 

あの男を取り逃がしたのは、失敗だった。

捕まえりゃ、敵の戦力は減るし、確かな情報が手に入れられた。

もし、俺があの男を追いかけて、その間に茜雫が別の敵に襲われたら、大変だ。

だから、動けなかった。

 

多分、次も襲ってくるはずだ。

その時に捕まえるとするか。

 

「たっだいま~!」

 

「そのセリフは俺が先に言うべきなんだが・・・」

 

茜雫が俺に断わりもなしに、玄関を開ける。

 

おい、ここの宿主は俺だぞ。

宿主より先に入るな。

 

「お~!中々、広いじゃない!殺風景だけど」

 

「やかましい。殺風景は余計だ」

 

部屋に入った直後、茜雫は感想を述べた。

 

俺の部屋は至ってシンプルな木製中心の部屋だ。

玄関入ってすぐ右にトイレ、反対面に浴室。

右前方に寝室、左前方にリビング。

リビングの奥にダイニングとキッチン、といった間取りだ。

 

まだ現世に来たばかりだから、必要最低限の家具しか置いていない。

一応、雑誌やTVも置いてある。

 

「先に風呂に入っちまえよ。汚れた服は洗濯機に入れとけよ」

 

「え?お風呂いいの?」

 

「構わねえ。それに、俺の後よりはいいだろ」

 

「そういうことなら、お言葉に甘えるね」

 

いそいそと茜雫は風呂場に入っていく。

 

さて、少し部屋を整理するか。

あまり汚れてはいないけど、茜雫が来るとは思ってなかったからな。

布団を追加で用意しなくちゃいけないし、多少、細部を整理しなくちゃな。

 

俺は部屋の整理に取り掛かった。

 

そして、数十分後-----

 

「けっこー、かかってんな」

 

未だに茜雫が風呂場から出て来ない。

 

やはり、女の風呂は長いものなんだな。

俺なんかとっくに出ていてもいいな。

 

「あ、そうだった。バスタオル用意しとくの忘れていた」

 

まだ所々、見落としてたり、用意してなかったりがあるな。

 

俺はバスタオルを持ち、風呂場へ向かった。

 

「どうやら、まだ入ってるようだな」

 

片目だぇ覗いて、茜雫が出ているか確認。

幸運なことに、脱衣所には茜雫が見えなかった。

 

ほ、安心した。

入って行って、ばったり鉢合わせしたら大変だ。

 

俺はさっさと済ませようと、バスタオルを置いた。

 

「ここにバスタオル、置いとく-----」

 

ガチャ

 

俺が言うのと音が聞こえたのは同時だった。

 

あれ?扉の開く音?

嫌な予感が・・・

 

「ふ~、いい湯だっ-----」

 

風呂場から出てきたのは茜雫だった。

当然、その姿は生まれたての赤ん坊の姿と一緒だった。

 

「な・・・?」

 

「た・・・?」

 

一瞬、時が止まった気がした。

俺と茜雫は鉢合わせしてしまい、硬直したまま、目を合わせていた。

 

こ、こんなことが・・・あっていいのか・・・!?

確認した意味って・・・

 

「「・・・・・・・・」」

 

お互いに状況を飲み込めず、無言。

 

茜雫って、けっこうスタイルいいんだな。

肌は若干白いし、肉つきもほどよい。

童顔な顔だからか、濡れた髪がいい感じにマッチしている。

僅かな膨らみを持つ、矮小な胸もその身体となら悪くはない-----

 

(はっ!?)

 

茜雫が今の状況に気付いたようだ。

 

ああ・・・ここから先の展開が読めてしまう・・・

 

「き、キャアアアアアァァァァァ!?」

 

「うおあああああああっ!?」

 

茜雫は身体を腕で隠しながら、悲鳴をあげる。

 

や、やめてくれ!

近所に迷惑だから!

変な噂が流れてしまう!

 

「な、な、な、なんでここにいんのよ!?この変態!覗き魔!!!」

 

「ち、ちがっ、これには訳が・・・」

 

と、俺が弁明しようと1歩踏み出した瞬間だった。

 

「ち、近寄るな!死ね!」

 

「ちょ、まっ-----ゴハッ!?」

 

避ける間もなく、綺麗に右ストレートを繰り出された。

その衝撃で俺は脱衣所から吹き飛ばされる。

 

「フンッ!」

 

勢いよく脱衣所の扉を閉める。

 

わ、わざとじゃないのに・・・

茜雫って、意外と力あるのな・・・ガクッ。

 

 

 

 

 

 

 

 

あの騒動の後、俺はリビングで思案していた。

 

絶対に怒ってるよな~・・・

どうやって、機嫌を直してくれるかな・・・?

 

そう考えていたら、扉がまた勢いよく開く音が響いた。

 

「京夜ーーー!!!」

 

「な、なんだよ!?」

 

ドドド!と音をたて、風呂場から俺の元へ駆けてきた。

 

な、なんだ!?俺はまた何かやらかしたか!?

 

「こ、これは何よーーー!?」

 

「これって・・・」

 

そこにはウサギがいた。

いや、ウサギの着ぐるみの形をした寝間着を茜雫が着ていた。

茜雫は風呂に入ったから、体温が上がってるからか、頬が赤い。

だが、恥ずかしさと怒りが混じった顔をしている。

 

「ああ、それか。もう1着買っといたんだよ」

 

「だ、だからって、なんで、これを・・・!」

 

「いや~、ウサギの寝間着って可愛かったからさ、つい」

 

本当は茜雫に似合うかなって思った。

制服と合わせて、2着しかないのは女として可哀想だったからな。

 

「くっ!さっきのことといい、この寝間着といい、京夜は碌なことしないわね!」

 

「さっきのは事故だ・・・。まあ、それで機嫌を直してくれ。3割増しに可愛くなってるから」

 

「なっ!?」

 

瞬間、茜雫の顔の赤みがさらに色濃くなる。

 

元々、茜雫自体可愛いからな。

それがウサギのコスチュームしているんだ。

可愛くならないはずがない。

 

「か、可愛くなってるんだったら、許してやってもいいかな・・・」

 

「そりゃ、どうも」

 

そっぽを向きながら、そう呟く茜雫。

その間も顔を赤らめている。

 

あ、おもしろいこと思いついたぞ。

 

「そうだ、茜雫、ピョン!って言ってみてくれ」

 

「は、はあ!?な、なんでよ!?」

 

「いや、なんとなくだ。いいから、やれ」

 

本当になんとなく、思いついただけだ。

この格好の茜雫がピョン、なんて言ったら-----想像できないな。

とにかく、おもしろそうだ。

 

「絶対にやらないわよ!ただでさえ、恥ずかしい恰好なのに!」

 

「ほう・・・茜雫よ、今日は俺があれだけ奢ってやったのに、何の礼もなしか・・・」

 

「う・・・」

 

「さらに、衣食住、洗濯、風呂、飯つきで泊まらせてあげてるのにも関わらず、俺に何も返さないのか・・・」

 

「うぅ・・・」

 

「・・・で?やるのか?やらないのか?」

 

「・・・わ、わかったわよ・・・」

 

我ながら、少々悪いな。

けど、今日は散々、こいつに振り回されてきた。

だから、今は・・・そう、ちょっとした仕返しなのだ。

 

「い、1度しか言わないわよ・・・」

 

「おう」

 

「・・・・・・・・」

 

頬を染めながら、沈黙する茜雫。

 

そして、沈黙を破った。

 

「・・・ぴょ、ぴょん・・・」

 

顔をイチゴ並みに真っ赤にして、モジモジとしながらも、そう囁いた。

 

うわお・・・ちょっと、ときめいちまった・・・

こんなに破壊力があるとは・・・

恥じらう茜雫、恐ろしや・・・

 

「ああ~!恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい・・・!」

 

「ハハッ!いいもの見れてよかったぜ!」

 

茜雫は壁に向かい、ガンガン!と壁を叩く。

もちろん、顔を真っ赤にしてだ。

 

「は~・・・疲れたわ。もう寝ましょう・・・」

 

「そうだな、もう遅いしな」

 

このままでは茜雫が可哀想だったから、追撃をやめる。

 

俺たちは寝室に向かった。

寝室にはベッドが1つ。

その横に寝布団が1つ。

 

「・・・私の寝る所はどこ?」

 

「何言ってんだ。ここに決まってんだろ」

 

「・・・あんたが寝る所は?」

 

「もちろん寝室-----」

 

「い、嫌よ!なんで、あんたと一緒の部屋で寝なくちゃいけないのよ!」

 

「だって、寝室は1つしか-----」

 

「だったら、向こうの部屋で寝ればいいじゃない!」

 

「え~・・・」

 

こいつは自分の立場がわかってんのか?

俺は宿主で、君は泊まらせてもらってる身だぞ?

なのに、宿主をリビングで寝かせるというのか・・・

 

俺と茜雫が不毛な言い合いをしている時、呼び鈴が鳴った。

 

ピンポーン

 

「珍しいな。こんな夜遅くに。俺が出るから、茜雫は先に自分の好きな場所で寝てくれ」

 

「私はここで寝るから。あんたは絶対に、リビングで寝てよね!」

 

「あ~・・・はいはい」

 

全く、この我儘娘は・・・

 

しかし、誰だ?

俺はここに来たばかりだから、客人なんてそうそういないんだが・・・

 

「はいはい、どちら様ですか?」

 

俺は玄関の扉を開けた。

そこには原作で知っているが、まだ会ったことのない男が立っていた。

 

「よう、京夜くん!久しぶりやな!元気にしておったか!」

 

「ゑ・・・?」

 

おかっぱ頭の男が笑顔で話しかけてきた。




いかがでしたでしょうか?

京夜はラッキースケベですね~。
しかも、あの状況で、身体を調べてしまってるんですもの・・・

茜雫のウサギコスチュームか・・・おっと、鼻血が・・・

さて、次は平子メイン。
平子の誘いに対して、京夜はどうするのか!

全力疾走で執筆します!

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