どうも、みなさん、アンケートにつきましては、ありがとうございます。
こんなにアンケートに答えてくださるなんて思ってなかったです!
まだまだアンケートは実施中です。
活動報告にてお答えください。
さて、今回は日常・ラブコメ・シリアスと、なんともカオスな話となっております。
今回、京夜に、地獄に落ちろ!と思った方は感想、お願いします。
※途中、少々残酷な描写が挟む恐れがあります。ご注意を。
店から移動し、遊園地に来ている俺と茜雫。
平日の夕方だからか、人があまりいない。
「イィィヤッホオオオォォォッ!」
「はあ・・・」
遊園地で茜雫は謳歌していた。
それはもう果てしないほどに。
最初、観覧者に行くとか言ってたのに、途中見つけたジェットコースターに興味を惹かれ、今楽しんでいる。
俺がいるから乗れてるのわかってんのか?
俺以上に楽しんでいるな・・・
「いや~、爽快!何回乗ってもいいものね!」
「飽きた・・・」
これで3回目。
さすがの俺も飽きてきた。
てか、遊園地に来て、まだジェットコースターしか乗っていない。
他のも乗れよ・・・時間ねえけど。
「さ、次行きましょ~!」
「お、おいおい!?まだ乗るのか!?観覧者はどうした!?」
「最後でいいわよ!とにかく、他行きましょう!」
そう言い、俺の意見なんて露知らず。
茜雫は俺の腕を引っ張り、次なる乗り物へ向かった。
か、金がなくなる・・・
「まわせ、まわせ、回せ~~~!!!」
「うおおおおおぉぉぉぉ!!!」
お次はコーヒーカップ。
茜雫に促され、俺は回しまくった。
今までの鬱憤をここで晴らす!
そして、茜雫を酔わせてやる!
ちょっとした仕返しだ!
「うぷ・・・」
「なに、酔ってんのよ」
コーヒーカップから降りた俺と茜雫。
な、なんてこった・・・
茜雫に仕返しさせるつもりが、自分で酔ってしまうとは・・・
これじゃ、本末転倒だ・・・
「あんなに回すからいけないのよ」
「なに・・・自分関係ねえ・・・みたいな顔してやがる・・・おえっ」
こいつ・・・回してねえからって・・・
てか、なんで茜雫は酔ってねえんだよ・・・
あんだけ回したのに・・・
「はいはい、次行くわよ」
「ま、待て・・・まだ気持ち-----」
「知らないわよ。今日はとことん楽しむんだから!」
だ、だれか・・・助けて・・・
俺は再び茜雫に引っ張られた。
「京夜~~~!」
「・・・おう」
次に来たのはメリーゴーランド。
茜雫は一番大きい馬に乗り、俺に手を振ってる。
ちなみに、俺は隣に設置してあるベンチに座ってる。
まだ酔いが覚めない・・・
「姫って、呼んでもいいんだよ~!」
「・・・誰が呼ぶか」
茜雫が姫ぇ?
はっ、笑わせんな。
あんなの破天荒でじゃじゃ馬娘じゃねえか。
姫なんて柄じゃ・・・
ドカッ!
「いてぇ!?」
「あんた、今失礼なこと考えてたでしょ!?」
いつの間にか降りていた茜雫が俺の頭を殴っていた。
なぜ、わかったんだ・・・?
ルキアといい、茜雫といい、女は怖い・・・
「それにしても・・・ん~~~!楽しかったぁ!」
「これで満足か?もう夜になりかけてるんだが・・・」
陽が消えかかっている。
いつの間にか遊園地が閉園しようとする頃だ。
こんなの予定になかったからな。
夕飯、遅くなっちまうな・・・
「まだよ!乗りたいものは最後に取っておくものだからね!」
そう言いながら、観覧者を指さす。
ああ、まだあったんだっけ・・・
「はあ、ここまで来たんだ。最後まで付き合ってやるよ。これで本当に最後だからな」
「うん、いいよ!早く行こう!」
茜雫が俺の腕を引っ張りながら、観覧者に向かった。
観覧車に乗った俺と茜雫。
ゴンドラが頂上付近にまで辿り着こうとしていた。
「うわ~!見て見て!町があんなに小っちゃい!」
「ああ、そうだな」
ったく、子どもみたいにはしゃぎやがって。
まあ、観覧車に久しぶりに俺も乗れたからいいかな。
「あ、あの川・・・」
「ん?川がどうした?」
茜雫が川を見つけると、急に懐かしむ顔をする。
確か、あの川って・・・
「あの川ね・・・。お父さんとの思い出の場所なんだ・・・」
茜雫がポツリと呟いた。
「小さい頃にお父さんと帰ってた・・・。笑顔で私を抱いて-----っ」
一瞬、本当に僅かだが、茜雫の様子が変わった。
記憶が入り混じっているみたいだな。
茜雫、それはお前の記憶じゃない。
他の、偽りの記憶だ。
けど、今そんなこと口にできない。
したとしても、茜雫は受け入れないだろう。
「川、か・・・」
劇場版のことを頭に思い浮かべる。
一護たちが茜雫を助ける際に、あの川を使ってたよな。
確か、川に映されている月、が入り口だったよな。
(ここからでも見れるか・・・?)
俺は川の方に視線を向け、目を凝らす。
運よく、今は陽が落ちていて、月がでている。
川には月が照らされていた。
その月なんだが・・・ちょっと違っているように見えた。
(あれ、黄色か?灰色のような・・・。遠くからだとよくわからねえな)
ここからだと距離があって判断がつかねえ。
まだあそこが入口だと確証は得られないな。
「ねえ、京夜」
「ん?」
ふいに茜雫が聞いてきた。
「明日、あの川に一緒に行ってくれる?」
「別にいいが・・・いいのか?」
「なにが?」
「俺なんかと行って。思い出の場所なんだろう?」
「いいわよ。京夜となら楽しいし・・・」
寂しげな顔でそう言った。
まるでそれが建前で、本音を隠そうとしているように見えた。
「それに、京夜、私に奢ってくれるしね!」
「おい・・・」
と、思ったのも束の間、茜雫はキシシッと笑いながら、とんでもないことを言った。
好きで金を出してんじゃねえんだぞ!?
お前が無一文だから、仕方なく出してやってるんじゃねえか!?
はあ・・・胃が痛い・・・
それから、俺と茜雫は観覧者から降りた。
空はすっかり暗くなり、閉園時間となっていた。
「あ~あ、楽しい時間ってあっという間ね」
「まあ、そういうもんだろ。」
茜雫は大満足という感じだな。
俺は・・・まあ少なからず、って所かな。
出費に関しては目を瞑るとだが。
すると、突然、どこからか、変な音が聞こえた。
グウゥゥゥ~~~
「・・・・・・・・」
「あ、あたしじゃないわよ!?」
とかなんとか言ってるけど、音がした方面がお前からなんだが・・・
俺はジト目で茜雫を見続けていたら-----
ギュルルルゥゥゥ~~~
「「・・・・・・・・」」
「フッ」
「は、鼻で笑うな~~~!」
そう言いつつも、お腹を触っている茜雫。
やっぱり、生理現象には敵わないか。
「飯にするか。今から夕飯作ったら、遅くなるし、どっかで食べるとしよう」
「そ、そうね!そうしましょう!」
「行くぞ、正直で我侭な小娘」
「や、やかましい!!!」
俺たちは閉園する遊園地から出て、駅の近くのラウンジで夕飯を摂ることにした。
ファーストフードか。
懐かしいぜ。
「ん~!おいしい!」
「人の金だからって、貪りすぎだろう・・・」
おいおい・・・女なのにそんなに食べていいのか・・・?
茜雫の前にある料理はハンバーガーやパニーニ、ホットドック、ポテト、チュリトスなど合計5つもある。
対する俺はハンバーガーとナゲットだ。
すげえ、食うな。
これじゃ、どっちが男のだかわかんねえぜ。
暴飲暴食には気をつけろよ?
「そんなに食べて平気なのか?仮にも女だろ?」
「仮にもじゃなくて、正真正銘の女だから!それに、高校生は活発だから、栄養摂らないといけないのよ」
「・・・その栄養はどこに行ってんだか。頭と胸には行ってな-----イッタア!?」
「フン!」
いきなり茜雫が俺に足蹴りしてきた。
そのせいで、俺は机に俯いてしまう。
す、脛に当たったぞ!?
くっそ~・・・滅茶苦茶イテエ・・・
「て、テメエな・・・・・って、あれ?」
視線を机から茜雫に移動したら、目の前にいなくなっていた。
って、はあ!?
「あ、あいつどこに行きやがった!?」
行く時くらい何か言えっての!
と、その時、取り付けられてある電飾が一斉に輝きだした。
どうやら、時間式らしいな。
「見て見て!あの子!」
「ん?」
近くにいた一般人が上の方に指差している。
なんだ?・・・って!?
「せ、茜雫ぁ!?」
茜雫が電柱に立っていた。
そうだ!思い出したぞ!
あいつ、高い所好きだから、ああいう所に登るんだった!
ということは、これから行うのは綱渡りだな。
ええと、それから、落下はするけど、なぜか、無事で、ここにいる人たちを驚かせるんだったな。
「いいこと思いついたぜ」
ピーン!とある事が頭に閃き、すぐに行動した。
茜雫の思い通りにさせるかよ。
俺は電柱のすぐ近くにある木に、俊敏性を生かして、登った。
「到着っと。よし、ちょうどいいタイミングだな」
葉や枝の陰に隠れているから、ほかの人たちには見えない。
もちろん、茜雫にも。
茜雫は電飾が繋がれているコードの上を綱渡りしようとしていた所だった。
「・・・そろそろか」
俺の予想通りに茜雫の足が縺れ、落下する。
その瞬間、俺は木から飛び出し、茜雫に迫る。
「茜雫ぁ!!!」
「え!?京夜!?―――って、うわっ!?」
空中で茜雫をキャッチし、落下する。
落下中に1回転し、綺麗に着地。
フッ、キマッた。
『おぉ~~~!!!』
パチパチと拍手活性の嵐。
うん、悪い気はしないな。
これを茜雫は独占しようとしていたのか。
「ハッハッハッハ!いや~、どうもどうも」
「棒読みなんだけど・・・」
お姫様抱っこされながら、茜雫はジト目で俺を見る。
そんな目で見られても、俺は一切ぶれないぞ!
『カッコイイ~!』
『素敵・・・』
『是非、我が事務所に来てくれませんか!?』
おっと、このままいたら、大騒ぎだな。
そろそろいなくなりますか。
「それでは、さよなら、みなさん!姫!共に行きましょう!」
「は、はあ!?」
そう言い残し、俺と茜雫はその場から離れていく。
王子は姫を攫ったのだ!
「―――よし、ここまで来ればいいだろう」
「さっきの何よ、姫って」
「その場のノリだ。気にするな」
だって、あの雰囲気じゃね~。
ただ立ち去って行くのも面白くないし。
何かの演劇だと思ってくれた方がいいな。
「ま、また姫って呼んでもいいのよ?」
「云わん。金輪際2度と」
「なによ!ケチ!」
ケチ・・・俺が・・・?
あれだけ金を出しておきながら、ケチと言うか・・・
隊長、抜刀の命令を!―――あ、ダメ?
「それじゃ、もう遅いし、ご飯も食べたし、私帰るね」
「え・・・?」
帰る・・・?
茜雫が・・・?
どこへ・・・?
「お前・・・帰るのか?」
「なに?帰っちゃ変?」
「いや、変じゃねえけど・・・」
確か、原作だと家がなかったような・・・
というか、無一文だし・・・
どういうことだ?これは歪みか?
「あ、もしかして寂しいんだ~」
「はあ?寂しいはずがねえよ。せいせいしたわ」
「とか言ってるけど、顔背けちゃって~。素直じゃないんだから~」
「・・・・・・・・」
くっ!こいつ・・・!
隊長!やはり、抜刀の許可を-----え?お前が切られろって?
「じゃあさ、明日、一日中遊ぼう!」
「じゃあ、ってなんだ。じゃあ、って。てか、一日中?」
「うん!川以外にも行こう!」
俺の仕事は虚退治くらいだからな。
基本、オールフリーだ。
差支えないし、茜雫の近くにいた方がいいか。
「わかった。別にいいぞ」
「やったー!じゃあ、明日の朝、さっき食べた所に集合ー!」
腕を上げて、テンションを上げる茜雫。
いつもテンション高いな。
このテンションが無駄に栄養をなくさせているのか。
そのテンションさえなければ、発育に-----いや、なんでもない。
「じゃ、また明日!バイバーイ!」
「あ、ああ・・・。じゃあ、な・・・」
茜雫はどこかへ行ってしまった。
俺はその背中をただただ見つめていた。
自分の家に帰らずに・・・
私の名は茜雫。
苗字は忘れちゃった!
いつ生まれたのかも、自分がいつからここにいたのかもわからない。
けど、私は今ここにいる。
私という存在がいる限り、私が生きている証拠になる。
だからだろうか、ここに来ると、ある記憶を思い出させる。
その記憶は私を混乱させる。
「・・・私の墓・・・」
私は墓地に来ていた。
ここに来ると、頭痛がする。
けど、懐かしいからか、何度も足を運んでしまう。
「っ!」
脳裏に浮かぶのはあの光景。
お母さんが泣いている。
私の遺影がある。
なんで泣いてるの?
なんで私の遺影があるの?
私は生きてる!
今、この場に、この時間に生きてる!
「・・・一体、なんなの・・・」
私は顔に手を置き、悩まされる。
この記憶はなんなの?
わからない、わからない。
どんなに考えても、どんなに思い出そうとしても、肝心な所でボヤける。
「っ!」
さっきの記憶が引き金なのか、再び別の記憶が浮かび上がる。
お父さんが私を殴る。
先ほどとは別人のお母さんが悲鳴をあげる。
なんで殴るの?
お母さん、なの?
なんで、2人もお母さんがいるの?
「・・・一体、なんなのよっ!!!」
誰もいない、夜の墓地に私の声が響いた。
その時、草むらから人影が現れた。
「やっと、見~つけた!」
「だ、誰!?」
男が出てきた。
黒い服に黒いマント、黒ずくめだ。
両手にはチャクラムのような刃物を持っていた。
間違いなく、普通の人ではないのがわかった。
「誰でもいいだろ。そんなことより、お前。俺らの元へ来るんだ」
「・・・何がいいたいのか、わからないわね」
私は男に警戒する。
全く、次から次へとなんなのだろう。
「そう言うってことは、実力行使でもいいんだな?」
「やれるものなら、やってみれば?ちょうど、鬱憤が溜まってた所だったし」
男が両手のチャクラムを構える。
「なら・・・遠慮なく行かせてもらうぜ!」
「っ!」
男は飛び上がり、私を潰そうとしてきた。
私は後ろへ回転しながら、避ける。
あ~あ、折角の服が汚れちゃった。
「乙女の服を汚した罪は重いわよ!」
私は瞬時に死神化する。
そして、すぐさま、男の懐に潜り、斬魄刀を振るった。
キン
「へっ!よわっちいな!」
「なっ!?」
今、完璧に捉えたはず!
なのに、防がれた!?
いや、男の速さが速かったんだろう。
この男・・・できる!
「いつまでもいるんじゃねえ!」
「ぐっ!」
男が力任せに振ったことで私は吹き飛ばされる。
けど、なんとか、体勢を立て直した。
「お前がここにいたって、何の意味もねえんだよ。全く、俺たちの元へ来れば、有用に扱えるのによ」
「そ、それってどういうことよ!」
私がここにいる意味がない・・・?
それはどういうこと?
私には存在価値がない・・・?
「どうもこうも、お前が気にすることじゃねえよ!」
「くっ!」
男が私に迫る。
速いっ!?
「ぐわっ!」
かろうじて、防いだが、勢いは殺せなかったみたいだ。
近くの墓石に背中から当たってしまう。
男はすかさず、私の首を掴み、持ち上げた。
「あぐっ・・・は、離せ・・・」
「殺さずに、ってのは難しいな。まあ、半殺しくらいなら、大丈夫か」
男の手に力が加わる。
く、苦しい・・・
「あ・・・が・・・」
ああ、ここで私は消えてしまうのか・・・
助けて、誰か-----と言ってもここには誰もいない。
そもそも私は独りだ。
そんな孤独の私なんか死んでもいいのではないのか・・・?
もし、もしも・・・
こんな私でも生きたいと願えるならば・・・
危機的状況で助けを求めていいのなら・・・
私を救ってください・・・
(京夜・・・)
孤独な私と一緒にいてくれた、たった1人。
今日会ったばかりのあいつに助けを求めてしまう。
私には・・・京夜にしか頼る人がいない。
(お願い・・・助けて)
その時だった。
突然、私は浮遊感を感じる。
男の手が緩んだ・・・?
「ゲホッ、ゲホッ!」
「グアアアアアッ!?」
男の腕から鮮血が舞っていた。
腕から先がなくなっていた。
斬られている・・・?
一体、誰が・・・?
その疑問はすぐに解かれる。
「よう、茜雫」
「あ・・・京夜・・・」
私が頼れるたった1人の男が私の横に立っていた。
「な、なんで、ここに・・・?」
「いやな、歯磨き粉忘れてたから、買ってたんだよ。それで、家に帰ってる最中に、お前が襲われてるのを見えてな」
と、言っているが、京夜は嘘をついている。
「嘘ね。買った袋がないもの」
「・・・捨て-----」
「商品は?」
「・・・・・・・・」
京夜は何も言えなくなってしまった。
素直に助けに来たって言えばいいのに。
でも、助かった。
私の願いが叶うなんて思わなかった。
「お、お前ぇ!お、俺の腕を!?」
「夜道で女に手を出すからイケねえんだ。そのくらいの代償は払ってもらうぜ」
男が苦しみながら、京夜を睨んでいる。
代償が重すぎない・・・?
「くっ・・・ここは退かせてもらう!この借りはいつか返させてもらうぞ!」
「あっ、待て!」
そんな雑魚キャラ的な置きセリフを残して、男は空へ逃げてしまった。
「ったく、逃げ足の速い奴だ」
「・・・・・・・・」
私はソーッと忍び足で逃げようとしていた。
なぜかって?
ほら、こんなことがあったら、聞かれそうだからさ。
聞かれても、知らないんだけど。
「どこへいく・・・」
「ひゃい!?」
いつもより低く、重い声で京夜は私を睨んでいた。
思わず、変な声だしちゃった・・・
てか、怖い!
なんか、目が光ってる!?
「そんなに怯えなくたっていいじゃねえか・・・。で、なんで、逃げ出そうとしてたんだ?」
「だ、だって・・・色々聞かれそうだったから・・・」
「はあ・・・」
呆れながら、京夜は溜息を吐く。
そ、そこでどうして溜息を吐くの!?
「なら、聞くが、お前はあの男のことを知ってるのか?」
「知らない」
「だろうな・・・」
だろうな、とはなによ。
ほ、本当に知らないんだから、仕方ないじゃない!
これっぽっちも身に覚えがないわよ!
「茜雫、俺の家に来るんだ」
「は、はあ!?」
いきなり京夜からとんでもない言葉が来た。
こいつ、何考えてんのよ!
「襲われかけてただろ?今後もそういうことが有り得る。だから、俺の元にいれば、1人よりかは安全だ」
「い、嫌よ!なんで、あんたとなんか!」
私は自由でいたいの!
なのに、それを奪おうとするなんて・・・
とにかく、嫌!
「帰るとか言ってたよな?それが、どうして、こんな所に来てるんだ?」
「う・・・」
返す言葉がでない。
い、一応、帰ったわよ!?
家族に・・・記憶の中でだけど・・・
「それに、買った服を汚しちまうし」
「あ・・・」
そうだった。
折角、買ってもらった服を汚してしまった。
不可抗力とはいえ、申し訳ないな・・・
「あと、風呂とかどうしてるんだ?」
「そ、それは・・・」
そこから先が言えなかった。
風呂は-----ゴメン、ここから先は言いたくない・・・
「それから-----」
「ああ、もう!わかったわよ!行けばいいんでしょ!行けば!」
「そんなにムキにならんでも・・・。まあ、いいや。行くぞ」
我ながら、とんでもないことを口にしているな。
やけくそ混じりに男の家に行くなんて・・・
私は京夜の後をついて行き、泊まらせてもらうことになった。
あれから、茜雫が俺の部屋に泊まることになった。
あの男を取り逃がしたのは、失敗だった。
捕まえりゃ、敵の戦力は減るし、確かな情報が手に入れられた。
もし、俺があの男を追いかけて、その間に茜雫が別の敵に襲われたら、大変だ。
だから、動けなかった。
多分、次も襲ってくるはずだ。
その時に捕まえるとするか。
「たっだいま~!」
「そのセリフは俺が先に言うべきなんだが・・・」
茜雫が俺に断わりもなしに、玄関を開ける。
おい、ここの宿主は俺だぞ。
宿主より先に入るな。
「お~!中々、広いじゃない!殺風景だけど」
「やかましい。殺風景は余計だ」
部屋に入った直後、茜雫は感想を述べた。
俺の部屋は至ってシンプルな木製中心の部屋だ。
玄関入ってすぐ右にトイレ、反対面に浴室。
右前方に寝室、左前方にリビング。
リビングの奥にダイニングとキッチン、といった間取りだ。
まだ現世に来たばかりだから、必要最低限の家具しか置いていない。
一応、雑誌やTVも置いてある。
「先に風呂に入っちまえよ。汚れた服は洗濯機に入れとけよ」
「え?お風呂いいの?」
「構わねえ。それに、俺の後よりはいいだろ」
「そういうことなら、お言葉に甘えるね」
いそいそと茜雫は風呂場に入っていく。
さて、少し部屋を整理するか。
あまり汚れてはいないけど、茜雫が来るとは思ってなかったからな。
布団を追加で用意しなくちゃいけないし、多少、細部を整理しなくちゃな。
俺は部屋の整理に取り掛かった。
そして、数十分後-----
「けっこー、かかってんな」
未だに茜雫が風呂場から出て来ない。
やはり、女の風呂は長いものなんだな。
俺なんかとっくに出ていてもいいな。
「あ、そうだった。バスタオル用意しとくの忘れていた」
まだ所々、見落としてたり、用意してなかったりがあるな。
俺はバスタオルを持ち、風呂場へ向かった。
「どうやら、まだ入ってるようだな」
片目だぇ覗いて、茜雫が出ているか確認。
幸運なことに、脱衣所には茜雫が見えなかった。
ほ、安心した。
入って行って、ばったり鉢合わせしたら大変だ。
俺はさっさと済ませようと、バスタオルを置いた。
「ここにバスタオル、置いとく-----」
ガチャ
俺が言うのと音が聞こえたのは同時だった。
あれ?扉の開く音?
嫌な予感が・・・
「ふ~、いい湯だっ-----」
風呂場から出てきたのは茜雫だった。
当然、その姿は生まれたての赤ん坊の姿と一緒だった。
「な・・・?」
「た・・・?」
一瞬、時が止まった気がした。
俺と茜雫は鉢合わせしてしまい、硬直したまま、目を合わせていた。
こ、こんなことが・・・あっていいのか・・・!?
確認した意味って・・・
「「・・・・・・・・」」
お互いに状況を飲み込めず、無言。
茜雫って、けっこうスタイルいいんだな。
肌は若干白いし、肉つきもほどよい。
童顔な顔だからか、濡れた髪がいい感じにマッチしている。
僅かな膨らみを持つ、矮小な胸もその身体となら悪くはない-----
(はっ!?)
茜雫が今の状況に気付いたようだ。
ああ・・・ここから先の展開が読めてしまう・・・
「き、キャアアアアアァァァァァ!?」
「うおあああああああっ!?」
茜雫は身体を腕で隠しながら、悲鳴をあげる。
や、やめてくれ!
近所に迷惑だから!
変な噂が流れてしまう!
「な、な、な、なんでここにいんのよ!?この変態!覗き魔!!!」
「ち、ちがっ、これには訳が・・・」
と、俺が弁明しようと1歩踏み出した瞬間だった。
「ち、近寄るな!死ね!」
「ちょ、まっ-----ゴハッ!?」
避ける間もなく、綺麗に右ストレートを繰り出された。
その衝撃で俺は脱衣所から吹き飛ばされる。
「フンッ!」
勢いよく脱衣所の扉を閉める。
わ、わざとじゃないのに・・・
茜雫って、意外と力あるのな・・・ガクッ。
あの騒動の後、俺はリビングで思案していた。
絶対に怒ってるよな~・・・
どうやって、機嫌を直してくれるかな・・・?
そう考えていたら、扉がまた勢いよく開く音が響いた。
「京夜ーーー!!!」
「な、なんだよ!?」
ドドド!と音をたて、風呂場から俺の元へ駆けてきた。
な、なんだ!?俺はまた何かやらかしたか!?
「こ、これは何よーーー!?」
「これって・・・」
そこにはウサギがいた。
いや、ウサギの着ぐるみの形をした寝間着を茜雫が着ていた。
茜雫は風呂に入ったから、体温が上がってるからか、頬が赤い。
だが、恥ずかしさと怒りが混じった顔をしている。
「ああ、それか。もう1着買っといたんだよ」
「だ、だからって、なんで、これを・・・!」
「いや~、ウサギの寝間着って可愛かったからさ、つい」
本当は茜雫に似合うかなって思った。
制服と合わせて、2着しかないのは女として可哀想だったからな。
「くっ!さっきのことといい、この寝間着といい、京夜は碌なことしないわね!」
「さっきのは事故だ・・・。まあ、それで機嫌を直してくれ。3割増しに可愛くなってるから」
「なっ!?」
瞬間、茜雫の顔の赤みがさらに色濃くなる。
元々、茜雫自体可愛いからな。
それがウサギのコスチュームしているんだ。
可愛くならないはずがない。
「か、可愛くなってるんだったら、許してやってもいいかな・・・」
「そりゃ、どうも」
そっぽを向きながら、そう呟く茜雫。
その間も顔を赤らめている。
あ、おもしろいこと思いついたぞ。
「そうだ、茜雫、ピョン!って言ってみてくれ」
「は、はあ!?な、なんでよ!?」
「いや、なんとなくだ。いいから、やれ」
本当になんとなく、思いついただけだ。
この格好の茜雫がピョン、なんて言ったら-----想像できないな。
とにかく、おもしろそうだ。
「絶対にやらないわよ!ただでさえ、恥ずかしい恰好なのに!」
「ほう・・・茜雫よ、今日は俺があれだけ奢ってやったのに、何の礼もなしか・・・」
「う・・・」
「さらに、衣食住、洗濯、風呂、飯つきで泊まらせてあげてるのにも関わらず、俺に何も返さないのか・・・」
「うぅ・・・」
「・・・で?やるのか?やらないのか?」
「・・・わ、わかったわよ・・・」
我ながら、少々悪いな。
けど、今日は散々、こいつに振り回されてきた。
だから、今は・・・そう、ちょっとした仕返しなのだ。
「い、1度しか言わないわよ・・・」
「おう」
「・・・・・・・・」
頬を染めながら、沈黙する茜雫。
そして、沈黙を破った。
「・・・ぴょ、ぴょん・・・」
顔をイチゴ並みに真っ赤にして、モジモジとしながらも、そう囁いた。
うわお・・・ちょっと、ときめいちまった・・・
こんなに破壊力があるとは・・・
恥じらう茜雫、恐ろしや・・・
「ああ~!恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい・・・!」
「ハハッ!いいもの見れてよかったぜ!」
茜雫は壁に向かい、ガンガン!と壁を叩く。
もちろん、顔を真っ赤にしてだ。
「は~・・・疲れたわ。もう寝ましょう・・・」
「そうだな、もう遅いしな」
このままでは茜雫が可哀想だったから、追撃をやめる。
俺たちは寝室に向かった。
寝室にはベッドが1つ。
その横に寝布団が1つ。
「・・・私の寝る所はどこ?」
「何言ってんだ。ここに決まってんだろ」
「・・・あんたが寝る所は?」
「もちろん寝室-----」
「い、嫌よ!なんで、あんたと一緒の部屋で寝なくちゃいけないのよ!」
「だって、寝室は1つしか-----」
「だったら、向こうの部屋で寝ればいいじゃない!」
「え~・・・」
こいつは自分の立場がわかってんのか?
俺は宿主で、君は泊まらせてもらってる身だぞ?
なのに、宿主をリビングで寝かせるというのか・・・
俺と茜雫が不毛な言い合いをしている時、呼び鈴が鳴った。
ピンポーン
「珍しいな。こんな夜遅くに。俺が出るから、茜雫は先に自分の好きな場所で寝てくれ」
「私はここで寝るから。あんたは絶対に、リビングで寝てよね!」
「あ~・・・はいはい」
全く、この我儘娘は・・・
しかし、誰だ?
俺はここに来たばかりだから、客人なんてそうそういないんだが・・・
「はいはい、どちら様ですか?」
俺は玄関の扉を開けた。
そこには原作で知っているが、まだ会ったことのない男が立っていた。
「よう、京夜くん!久しぶりやな!元気にしておったか!」
「ゑ・・・?」
おかっぱ頭の男が笑顔で話しかけてきた。
いかがでしたでしょうか?
京夜はラッキースケベですね~。
しかも、あの状況で、身体を調べてしまってるんですもの・・・
茜雫のウサギコスチュームか・・・おっと、鼻血が・・・
さて、次は平子メイン。
平子の誘いに対して、京夜はどうするのか!
全力疾走で執筆します!