BLEACHへの転生者   作:黒崎月牙

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どうもこんちは!

遅い投稿で申し訳ない!

この場を使って、先に謝罪させてください。
実はもう1つの作品、ISとブリーチ、略してアイブリの最新話なんですが、あまりにも文が酷かったので大幅に修正しました。
読んでいただけると、幸いです。

さて、今回は戦闘パートと甘いパートがあります。
やちるの話を作ってくれと言われたので、今回はそれです。

それではどうぞ。


漢として意味がある

俺は今、おつかいを頼まれて、街を歩いている。

俺の頭の中には某おつかい番組のBGMが流れている。

お~つか~い♪で~きる~か~な~♪

 

「えっと・・・ジャガイモに人参、玉ねぎ、でいいんだよな」

 

さあ、みんな、この材料から読み取れるものは―――――そう、あの茶色いアレだ!

この世界に来て、久しぶりにアレを食べるな~。

俺の心はルンルン気分だ!

オラ、ワクワクすっぞ!

 

そんないい気分の俺の耳に、突如、地鳴り音が聞こえてきた。

 

・・・ドドドドドドド!

 

「ん?」

 

なんだか、こっちに近づいているような・・・

案の定、俺の予感は当たっていたらしい。

俺はその音がする方へ振り向こうとした時・・・・・

 

「きょーーーうううぅぅぅーーーん!!!」

 

「ぐぼらっ!?」

 

ドゴッという鈍い音とズシャァァァという地面に滑る音。

 

いって~~~、鳩尾にダイレクトアタックされた・・・

 

俺は当たってきた当人を見る。

ピンクの髪、クリクリした瞳。

死覇装と腰にぶら下がっている刀を見て、一目で死神とわかる。

だが、年齢層が高い死神の中では、背が小さすぎる。

 

俺はこの子に会っている。

 

「・・・な、何するんだい・・・。やちるちゃん・・・」

 

そう、十一番隊副隊長、草鹿やちる、だった。

 

「きょううん見つけたから、嬉しくて飛んできた!」

 

「・・・うん。今度から飛んでこないでね。危ないから」

 

主に俺の身体が。

 

「って、きょううん・・・?」

 

「あたしがつけたあだ名だよ!」

 

「・・・三国志に出てきそうな名前だね・・・」

 

「さんごくし?」

 

「ああ、知らないならいいよ」

 

しかし、きょううん、か・・・

随分と言いにくいあだ名をつけたものだ。

・・・ちょっと、待て。

きょううん・・・強運・・・京夜、強運、なんつって。

 

と、まあ、つまんないダジャレを考えていないで、俺はやちるちゃんに聞く。

 

「やちるちゃん、今ヒマなの?」

 

副隊長がこんな所にいるんだから、暇つぶしなんだろうと思った。

もし、暇なら、一緒に隊舎に帰って、浮竹さんに相手してもらおうかな。

あの人、子供好きだし。

 

だが、俺の予想とは全く違うの答えが返ってきた。

 

「ううん!ヒマじゃない!

 

「えぇ・・・!?こんな所にいていいの!?」

 

「実はね~・・・」

 

言葉を区切ると、やちるちゃんはニヤニヤと笑みを浮かべる。

 

なんだろう・・・ものすごく、嫌な予感が・・・

 

「―――――きょううんに頼みがあるの!」

 

「俺に?何かな?」

 

「大会に優勝してほしいの!」

 

「んん・・・?」

 

どういうこと?

優勝って、今日、何かの大会があったっけ・・・?

 

すると、やちるちゃんは俺の手を取り、強引に引っ張った。

 

「見た方が早いよ!こっち~!!!」

 

「どわっ!?ちょ、ちょ!引っ張んないで!」

 

いたたた!やちるちゃん!腕が!腕がモゲル!

・・・そうだった、やちるちゃんは中々の腕力だったな・・・

ロリゴリr・・・すいません、何でもありません。

 

そのまま、為されるがままに引っ張られ、連れて来られたのは―――――十一番隊舎に程近い広間だった。

そこで、なぜか、人だかりができている。

 

「これは・・・なんで、こんなに集まっているんだ?」

 

「ん!」

 

やちるちゃんは指を指す。

その先にはこう書かれていた。

 

『ドキッ☆男だらけの最強王座決定戦!男たちよ!熱い漢を見せよ!』

 

「・・・・・・・・・」

 

なんだ、この暑苦しい行事はーーー!?

まるで、某テニスプレーヤーがいそうだっ!

 

「あ、しゅうちゃんのこと?」

 

「しゅうちゃん!?」

 

てか、やちるちゃん、俺の心読み取りおった!?

やちるちゃん、あの人知っているの!?

やちるちゃんとあの人とどういう関係!?

 

「そ、それで、この大会で俺に優勝してほしいと・・・」

 

「うん!そうだよ!」

 

「・・・ちなみに、賞品は・・・?」

 

「えっと・・・なんだっけ?」

 

「(ガクッ)」

 

忘れんなよ!

まぁ、やちるちゃんらしいけど・・・

 

俺は辺りを見渡し、優勝賞品の内容を見つける。

 

「あ、あった。・・・え~、『お食事券73500円分』・・・。ちゅ、ちゅ~とはんぱ~・・・」

 

なに、その微妙さ!

だったら、普通、切り捨てて70000円分でいいじゃん!

100円単位とかめんどくさっ!

 

っと、そこで、急に歓声が響いた。

 

『おおおおおおおおっ!!!』

 

「な、なんだ?」

 

俺はその原因を見つける。

それはすぐに見つかり、舞台の上へ目を向ける。

 

「どうだー!俺は3人勝ちぬいたぞー!」

 

と、モブキャラ的なやつが雄叫びをあげる。

 

そんな中、俺は取りあえず、ルールに目を通していた。

 

ふむふむ・・・。どうやら、これは、舞台に立った自信過剰の者が、次々と来る敵を倒していくものらしい。

で、敵というのは、この舞台の周りに群がっている男共だ。

しかも、倒されてもリトライできるらしい。

つまり、挑戦者が倒されない限り、ずっと戦うものだ。

条件としては木刀を用いる、ということかな。

最終的に、何人倒したかで結果発表し、順位を決める、だとよ。

 

・・・うん、絶対にやりたくない!

 

ルールが分かった所で舞台からでかい音が聞こえた。

見ると、モブがもう1人倒していた。

・・・あのモブ、モブのくせに意外と強い?

 

「うおー!これで4人目だ!もっと強い奴はいねえのかー!」

 

再び雄たけびをあげるモブ。

 

あのモブ、いい演出するね。

プロレスだったら、大活躍だな。

 

その様子を見ていたやちるちゃんが、不機嫌になっていた。

 

「む~~~・・・。きょううんの方が強いもん・・・」

 

「ハハハ、俺はそんなに強くは・・・」

 

「強いもん!」

 

「え、えっと・・・」

 

俺、やちるちゃんに強い所見せたか・・・?

もしかして、自分の傷を癒した=強いお方、というイメージなのか・・・?

 

「だから、きょううん、あの人、倒して!」

 

「な、何を言って―――――うわっ!?」

 

言うが早く、やちるちゃんに背中を押される。

しかも、運悪く、その道にだけ、人がいないので、自ずと群衆の前に出て、モブの真ん前に来てしまう。

 

「っと!・・・とと・・・と・・・」

 

『・・・・・・・・・・』

 

・・・みなさんの冷たい目線、ありがとうございます・・・

なに、ガキがしゃしゃりでてんだ、って感じがわかる・・・

 

「おっ!今度はてめえが相手か!小僧!」

 

「い、いや、俺は・・・」

 

俺にはそんな戦闘狂な考えはない!

 

俺は拒否しようとしたが、周りの男共に押される。

 

「ほら、小僧!出てきたなら、やる気あんだろ!」

 

「あいつをぶち倒せ!」

 

「ま、ガキが倒せるかどうかわかんねえけどな!」

 

などと、でるわでるわ、ムサイ歓声。

そのまま、周りの空気的に出るしかなくなってしまった俺・・・

 

「はぁ、仕方ない・・・」

 

俺は渋々、舞台に立つ。

ちなみに、買った材料は舞台の脇に置いて、安全面を確保している。

 

「ま、出るからには優勝だけど」

 

「ほう、小僧、随分な自信があるじゃねえか」

 

「いや、ないですよ。ただ、頼まれましてね・・・」

 

チラッと俺は群衆の片隅にいるやちるちゃんを見る。

なんだか、この状況を楽しんでいる小娘がいるんだが・・・

 

「ふん、そんな半端な気持ちで俺に勝てると言うのか」

 

「勝つ以前にやる気はありません。だって、面倒くさいですもん」

 

その言葉に腹がたったのか、モブは怒りだした。

 

・・・余計なこと言ったかな・・・?

でも、正直な気持ちなんだからしょうがねえだろ!

 

「てめえ・・・調子にのんじゃねえぞ!!!」

 

そう言いながら、木刀を構え、大きく振り上げる。

それと同時に誰かが木刀を投げ、俺の足元に転がる。

 

ちっ!ノーコンが!

 

「うおおおおおっ!」

 

「おっと」

 

俺は軽やかに避け、足元の木刀を蹴り上げる。

木刀は回転しながら、俺の目前に上がる。

そしたら、モブは切り替えしが早いのか、また俺に斬りにかかった。

 

「逃げんじゃねえ!!!」

 

「逃げてなんかいない。ただ、武器がなかったから、躱したんだ」

 

そう言いながら、俺は木刀を手に取る。

モブが大きく振りかぶる。

 

―――――ここだっ!

 

「隙あり!!!」

 

ドゴッ!

 

「おごっ!?・・・あ・・・が・・・」

 

俺の木刀が腹に入り、ドサッっという音と共にモブは地に伏した。

 

『・・・・・・・・・・』

 

周りにいる群衆はシーンと静かになった。

 

・・・ちょっと、やりすぎたかな・・・?

 

「・・・それで、今度はどうするんです?」

 

ハッと我に返った男共はブーイングと共に、舞台に身を乗り出した。

 

「ガキが・・・あんなガキが・・・あいつを倒したぁ!?」

 

「馬鹿野郎!あんなのまぐれだ!」

 

「そうだとも!その証拠を俺が見せてやる!」

 

「あんなひよっ子より、俺が強いんだ!」

 

「目に物を見せてやる!」

 

「覚悟しろよ!このムシ野郎!」

 

最後のは置いといて、わらわらと男共は舞台に出てきて、木刀を構える。

 

さっきのモブの時はこんなことなかったのに、なんで俺になった途端・・・?

もしかして、俺って、男に嫌われる体質・・・?

 

おっと、そんな下らないことを考えていないで、集中しよう。

 

「はあ・・・。そんなに来られたら、さすがの俺でも負けますって・・・」

 

と、言いながらも余裕綽々の俺。

 

『ぶち殺す!!!』

 

男たちの熱い闘いのゴングが鳴った。

 

 

 

 

 

 

 

 

『ぉぉぉぉぉぉっ・・・!!!』

 

「・・・外が騒がしいな。もしかして、またやってんのか?」

 

俺は十一番隊隊舎からその歓声を聞き、外に出た。

 

俺は元々、五番隊から十一番隊に移籍したばかりだ。

ついでに言うと、席官にも任命された。

そんな日が浅い俺でも知っているこの歓声―――――これは十一番隊の隊長格以外のみんなが主催の行事だ。

週に2~3回ほど行われている非公式の大会だ。

なんでも、自分の実力を見極める、ということで開催した。

だが、どこで間違ったのか、今では男たちの娯楽となりつつある。

 

当初、真面目にやっていたみんなだったが、風の噂とかで他の隊からも人が集まり、今では非公式なのかと思うほどの群衆だ。

俺も参加していたが、そんなことになっちまって、もう積極的には参加はしていない。

 

悶話休題。

 

今日の歓声は何時にもまして凄まじい。

ふと、俺は気になり、その場所へ向かう。

 

(いつもより騒がしいな・・・。どんな奴が闘ってんだ?)

 

一応、強い奴の顔は覚えたいからな。

俺は群衆の後方から、遠目で舞台で戦っている奴の姿を見た。

 

「なっ!?だ、誰かと思ったら・・・」

 

そいつには見覚えがあった。

 

長くきめ細かい銀髪。

その髪を靡かせながら、舞うように次々と襲いかかる相手を倒していく。

そして、あいつの顔は余裕そうに、少しつまらなそうにしていた。

 

(まさか、こんな形であいつを見るとはな・・・)

 

本当はもっと昇格して、あいつよりも上の席官になったら、会おうと思ってたのによ・・・

そうすれば、あいつの悔しがる顔を拝めたんだけどな。

 

だが、これも何かの縁。

ここで、あいつに俺の今の実力を見せつけるってのも悪くねえな。

 

「(今日は参加する理由ができたな)・・・よし、やってやるぜ!おい、お前、木刀くれ」

 

俺は近くにいた部下に話しかけた。

 

「あ、木刀ですね!こちらです!―――――しかし、珍しいですな。あなたが参加するなんて・・・」

 

「知り合いにずっといい恰好させたくねえんだよ」

 

「あ、お知り合いだったんですね・・・。なるほど」

 

納得したみたいで何よりだ。

 

「んじゃ、あいつをぶったおしてくっから!」

 

「はい!やっちゃってください!阿散井六席!」

 

俺は舞台に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっりゃあああ!!!」

 

ドガッ!

 

「おぅふ・・・」

 

「馬鹿め!隙だr―――――」

 

バギッ!

 

「あふぅん・・・」

 

「・・・はぁ・・・」

 

俺は次々とやってくる男共を蹴散らしていた。

しかも、来る相手来る相手、弱すぎる。

 

てか、どうしてこうなったし・・・

 

(弱すぎんだろ・・・。仮にも十一番隊だろ?もっと骨のある奴らかと思ってたのに・・・)

 

俺の傍らには男たちが気絶しながら、積み重なっていた。

 

もう何人くらい倒したんだろ・・・?

二桁は行ってる気がする。

 

(優勝できるから不満じゃないけど、どうせならもうちょい強い奴はいないのか?)

 

俺は落胆していた。

その時、後ろから誰かが舞台に立った音が聞こえた。

 

「はいはい、次はど・・・な・・・た・・・」

 

「よう、京夜。久しぶりだな」

 

「れ、恋次ぃ!?」

 

不敵に笑いながら、旧友の恋次は俺を見据えていた。

 

うわっ!久しぶりすぎる!

今までは仕事詰めで会う機会なかったからな~!

 

「久しぶりだな!聞いたぜ!六席になったんだってな!」

 

「まぁな。ま、お前には負けるけどよ・・・」

 

「そんなの関係ねえって!すげーことだぜ!」

 

「・・・けっ・・・」

 

恋次は照れ隠しのつもりなのか、俺から目を逸らす。

ふと、恋次は俺に聞いてきた。

 

「気になったんだが、何でてめえがこんな所にいやがる?」

 

「いや~、ちょっと頼まれ事を・・・」

 

そう言いながら、チラッとやちるちゃんを見る。

やちるちゃんは手持ちにあったんだろう、○まい棒をフサフサと食べていた。

 

てか、なんで見てないんだし!

そんなカマキリと遊んでないで俺の勇姿を見ろ!

あと、それ売ってんのか!?

俺にもくれ!

 

「・・・相変わらず、頼み事は断れねえ奴だな」

 

「え、そうだっけ?」

 

「ああ、そうだよ。お前は昔っからそうだ」

 

うーん、そうかな・・・?

自覚はないけど・・・

 

そう思った時、恋次は木刀を正眼に構えた。

 

「―――それじゃあ、俺の頼み事も断れねえよな・・・」

 

「え?何言って-----」

 

ヒュッ

 

「っ!?」

 

恋次が呟いた瞬間、俺の言葉を遮り、木刀を振るった。

俺は身体を逸らし、躱す。

 

あ、あぶねー!

 

「い、いきなり何しやがる!」

 

「何って・・・そりゃあ、この舞台に立っているんだ。自ずとわかるだろ?」

 

また不敵に笑う恋次。

 

この子、いつの間に戦闘狂になってたんだ!?

お母さん、あんたをそんな風に育てた覚えはないわよ!?

 

「まだまだいくぜっ!―――――オラオラオラオラオラ!」

 

ガンガンガンガンガン!

 

「くっ!」

 

恋次の繰り出す連撃を俺は全て受け止める。

 

「やめろっ!俺は仲間を傷つけたくない!」

 

「・・・俺は悔しいんだよ・・・」

 

「・・・?」

 

木刀を振りながら、恋次は語りかけた。

 

「かつては、一緒に肩を並んでたてめえが、いつの間にか先に死神になっててよ・・・。俺も死神になったと思ったら、今度はてめえは席官に。俺も漸く席官になったが、てめえより低い・・・。わかるか、俺の気持ちが・・・」

 

「恋次・・・」

 

何て話しかければわからなかった。

何を言っても、今の俺の言葉は意味をなさない。

 

俺と恋次は距離を開け、再び、恋次が口を開いた。

 

「だから、俺は、今日、てめえと闘う!俺がどれだけ成長したか、しっかり見やがれ!」

 

恋次は笑いながら、叫んだ。

 

そうか、言葉だけじゃ、わかんねえこともあるよな。

昔っからそうだったな。

恋次は口よりも行動。

 

俺は恋次の意志に肯定を表すように、木刀を構える。

 

「上等だ。どんくらい成長したか、おれを驚かせてくれ」

 

「ハッ!舐めんじゃねえぞ。昔の俺とは違うからな!」

 

ドンと地を蹴り、俺に向かう恋次。

そのまま木刀を一心不乱に振る。

 

「おっらああああああ!!!」

 

「・・・確かに剣技は鋭くなったな。速さも上々」

 

俺は分析しながら、冷静に躱す。

 

恋次は強くなった。

実力的には六席というのが惜しいと思うくらい。

 

「だが―――」

 

俺は木刀を恋次の木刀に向かい、上下に細かく往復する。

その瞬間、恋次の木刀はあらぬ方向へ飛んで行った。

 

カン!

 

「っ!?」

 

木刀を突然弾かれ、恋次は目を見開く。

それと同時に俺は切っ先を首元につける。

 

「―――――荒削りで木刀を振りすぎている。隙だらけだ」

 

「・・・・・・・・・」

 

「どうする?まだやるか?」

 

「・・・はあ、武器もなしに闘えるかよ・・・。降参だ」

 

そう言いながら、両手を挙げ、降参の意思を俺に伝える。

周りが、阿散井を倒した!?などと驚いているが、この際気にしない。

 

「・・・相当強くなったな、京夜」

 

「いやいや、俺なんかまだまだだよ。それよりも恋次も強くなってて内心驚いた」

 

「勝った奴に言われてもな・・・」

 

そう言いながら、恋次は頭をボリボリかく。

 

いや、実際、強くなっているよ。

今は未熟だけど、今後はすごく強くなれる要素は十分にある。

なんてったって、副隊長にまで上る人だしね!

 

恋次は木刀を拾いながら、俺に話しかけた。

 

「次は負けねえ。絶対にてめえより上になるからな!」

 

恋次は力強い、綺麗な眼差しで俺に宣言した。

 

「おう!俺も負けるつもりはねえ!その時も全力で勝負だ!」

 

ガシッと握手を交わす俺と恋次。

 

なんか、こういうのいいね。

青春って感じ?

あ、もうそんな言葉使う歳でもなかったな・・・

 

その時、会場に響き渡る声が聞こえた。

 

「次は俺が相手だ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

時は遡り、京夜と恋次が戦闘中のこと。

 

「ふーくたーいちょー!どこにいんすかー!!!」

 

「目ぼしい所は一通り探したのにいないとはね・・・」

 

俺と弓親は行方不明の副隊長を探していた。

 

あの人がいねえと書類がまとまんねえんだよ・・・

くそっ!今日はあの日なのに出れねえなんて!

さっさと探して、アレに出てえのによ!

 

「こんなに目立つ印がいるのに気づいてないのかな・・・?」

 

「おい、その目立つ印ってのは俺じゃねえよな・・・」

 

「まさか、君の頭が目立つなんて言ってないよ」

 

「おもっくそ言ってんじゃねえか!!!」

 

ったく、松本や他の奴らは俺の頭をネタにしやがって・・・

この頭は俺のシンボルでもあんだぞ!

 

そんなやり取りをしていると、たまたまアレが開催している会場に来ていた。

くぅ~!俺も参加してえぜ!

だが、ちょっと違和感がある。

人がいつもより多い、というか、歓声が凄まじいというか・・・

 

「何があったんだ?」

 

「さあ?」

 

「あ!お疲れ様です!」

 

弓親が首を傾げると、近くにいた部下が俺に頭を下げた。

 

ちょうどいい。

こいつに聞くか。

 

「聞きてえことがある。いつもより騒がしいが、何かあったのか?」

 

「あ、実はですね、見知らぬ挑戦者が恋次さんに勝ったんですよ」

 

「な、何ぃ!?」

 

あの恋次に勝っただと!?

あいつは俺が一目置いてる奴だぞ!

そいつが負ける相手-----いい獲物がいるな。

 

俺はニヤァと笑う。

 

「おい、弓親」

 

「わかってるよ。君がその顔をしていると時は、何言っても聞かないからね。行ってきな」

 

「ありがとよ!!!」

 

俺は部下から木刀を手にすると、すぐさま舞台にまで跳躍した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「だ、誰っ!?」

 

「この声は・・・」

 

声が会場に響いたと思った矢先、人影が群衆の後方から跳んできた。

 

「まぶしっ!」

 

人影を目で追うと、逆光で顔はわからないが、太陽が何かに反射して俺は目を閉じる。

そして、目を開けるとそこには-----男が立っていた。

 

「よう、今日の俺はツイてるぜ」

 

髪が一切ない頭。

鋭い眼光の目尻には赤い模様。

無駄がない体つき。

 

見間違いがない、この人は-----

 

「「い、一角さん!?」」

 

「阿散井はともかく、馴れなれしい言い方だな、てめえ」

 

し、しまった!?つい一角さんだったから!

うおお・・・本物の一角さんだ!

あの声が直に聞けるなんて!

やっべ!テンションあがってきた!

 

俺は高ぶる気持ちのまま一角さんに近づく。

 

「あの、すみません・・・」

 

「あ?なんだよ?」

 

「・・・サインください!」

 

「いきなり何してんの、京夜!?」

 

「木刀でいいのか?」

 

「あんたも乗るなよ、一角さん!!!」

 

恋次よ、あの一角さんなんだよ!

キャラ的に上位、中の人はあの有名な人だよ!

サインをもらわないわけにはいかない!

 

さて、サインをしめやかにもらった所で、一角さんが口を開いた。

 

「京夜、って言ったか?てめえ、強えらしいな」

 

「いや、そんなには・・・」

 

「嘘つくんじゃねえよ。阿散井に勝ってやがるし、なにより、雰囲気でわかる」

 

やっぱ、一角さんは闘い好きだねー

あれ?これは俺と一角さんが闘うフラグ・・・?

 

「阿散井は退がれ。俺が敵をとってやる」

 

「す、すみません・・・」

 

恋次は舞台から降りる。

 

それから、一角さんは木刀を振り上げ、構えようと-----

 

「つい、ついっ♪」

 

-----しなかった。

両手で木刀を持ち、足を細かく動かす。

 

「つつつい♪つつつい♪」

 

トトトトッと両足指で器用に足を広げる。

 

「ついっ♪」

 

ダンッと漸く足を地面につける。

 

「てるーーーーーーーん!!!」

 

「・・・・・・・・・」

 

「一角さん・・・」

 

一角さんの頭がキラン!と一瞬光った。

俺は呆気にとられ、呆然としてしまう。

恋次は呆れてこめかみを抑えていた。

 

ああ・・・そういえばそんな踊りあったね・・・。

原作では一回しかなかったから、忘れていた。

 

すると、一角さんは俺に木刀を向けながら、怒り出した。

 

「何してんだ、テメエ!?せっかく、俺が『ツキツキの舞』を踊りながら、テメエが構えるのを待っているのに!余裕こいてんじゃねえ!!!」

 

「え、あ、す、すみません・・・?」

 

頼んでねえし!?

いきなりそんなことやられたら、誰でも同じ反応になるわ!

 

「よぉし、それじゃあ、もう1度踊ってy―――――」

 

「け、結構です!ちゃんと構えますから!」

 

またあの踊りを見るのは御免だ!

ああ・・・いい雰囲気でやりたかったのに・・・

何この出だし・・・

 

だが、お互いに身構えれば、さっきまでの雰囲気が嘘のような張りつめた緊張感が漂う。

 

「「・・・・・・・・・」」

 

『ゴクリ・・・』

 

恋次を含めた群衆が息を飲む。

 

先に動いたのは-----

 

「はあっ!!!」

 

-----一角さんだった。

一角さんは木刀を横から振るう。

 

ブン!

 

「っ!」

 

「いい反応だ」

 

俺はそれを躱すと、一角さんは不敵に笑う。

そのまま、間髪いれずに斬撃を繰り出す。

 

「ふっ!とっ!」

 

だが、俺は躱したり、木刀で捌きながら、攻撃をいなしていく。

 

「おいおい、攻撃してこねえのか?とんだ弱腰だな」

 

「(カチン)」

 

・・・別に攻撃できないわけじゃない。

ただ、傷つけたくないから、攻撃しなかっただけだ。

そんなことを言われたらねえ・・・さすがにこちらも動こうかな!

 

「・・・なら、お望み通り、こちらから!」

 

ヒュン!

 

「おっと!へっ、やればできるじゃねえか!」

 

そのまま俺と一角さんは攻防を繰り返す。

 

その最中、一角さんが右手を振るおうとしていた。

 

(ここだ!)

 

俺は木刀を弾こうと振るう。

だが、右手には何も持っていなかった。

 

「なっ!?いつの間に左手に!?」

 

「俺は両利きでよ。左からも攻撃できんだ!」

 

振るった後の体勢なので、回避も防御も不可。

そこを一角さんは狙い、俺の木刀を弾き、空を舞う。

 

カシン

 

「しまっ!?」

 

「テメエは俺を狙わず、ずっと木刀だけ狙ってたな-----それがテメエの敗因だ」

 

そう言うのと同時に木刀を右手に持つ。

俺は反射的に後退しようとしたが、一角さんは逃さなかった。

 

「おらぁ!」

 

ドゴッ!

 

「がっ!」

 

俺の鳩尾に突き刺し、俺も空を舞う。

 

あいつも終わりか・・・。という声が聞こえた気がした。

 

(まだだ・・・。まだ終わりじゃない!)

 

俺は痛みに耐え、空中で木刀を掴み、そのまま回転しながら、一角さんに突貫する。

 

「な、なにぃ!?」

 

予想外だったのか、一角さんは慌てて防御姿勢に入る。

 

「うおおおおおおっ!」

 

スパン!

 

「斬りやがった・・・だと・・・」

 

俺の遠心力+斬撃は普通の木刀では耐え切れず、切断された。

俺は一角さんの真横に着地し、すぐさま行動に移った。

唖然としている一角さんに俺は木刀を首元に押し付ける。

 

「・・・勝負あり、ですね」

 

「くっ・・・!」

 

一角さんは悔しげな表情をした。

 

いてて、鳩尾いってえ・・・

今日で俺の鳩尾のライフは0に近い。

 

「・・・テメエ、強えな・・・」

 

「俺なんか強くないですよ・・・」

 

俺と一角さんは少し離れ、そう話す。

 

うん、俺は強くなんかない。

海燕さんとか、今後でてくるであろう一護とかの方が強いと思う。

 

ふと、一角さんは手を差し伸べてきた。

 

「いい闘いだった。テメエのことは覚えておく。京夜」

 

「こちらこそ、一角さん」

 

俺と一角さんは握手を交わす。

 

こういうのってせいしゅ-----(同じことなので割愛)

 

あ、そうだ、結果ってどうなったんだろう?

俺は一角さんに失礼します、と頭を下げ、担当の死神に聞いた。

 

「すいません、結果ってどうなります?」

 

「そりゃあ、決まってるだろ。あんたの優勝だ。持ってけ」

 

そう言われ、お食事券73500円分を貰った。

 

その時、やちるちゃんが俺の元に来た。

 

「やったね!きょううん、ありがとー!」

 

「やちるちゃん!俺の闘い見てくれてた?」

 

「・・・・・・・・・・うん!見てたよ!」

 

なんだ、今の間は!?

絶対に飽きてただろう!

途中、カマキリと遊んでいたの、俺は知ってるぞ!

 

やちるちゃんと話していると、一角さんが割り込んできた。

 

「あ、副隊長、こんな所にいたんすか!すぐに戻って、書類を-----」

 

「あ!きょううんに負けた、パチンカス玉だ!」

 

「んだと、こらぁ!」

 

・・・やちるちゃん、さり気無く下ネタ言ったよね?

女の子がそんなこと言っちゃいけません!

 

と、言おうとした時、俺はやちるちゃんに思いっきり引っ張られた。

 

「わー!パチンカス玉が火だるまだー!きょううん、逃げよ!」

 

「わっ!?ちょ、ちょ、引っ張んないでー!」

 

「あ、こら、待ちやがれー!クソガキャーーー!!!」

 

一角さんがものすごい形相で迫ってくるが、やちるちゃんの速さにはついてこれなくなる。

 

てか、俺の腕がががががががが!

 

 

 

 

 

 

 

ふ~、今は俺とやちるちゃんは菓子屋にいる。

やちるちゃんめ、お食事券でお菓子をいっぱい買おうとしていたのね。

あ、材料はきちんと手元にあるからな。

 

で、今、ものすごい現状をたたきつけられているのだ。

 

「すみません、この券は当店では扱っておりません。向こうの丼屋や定食屋などでお使いください」

 

「orz」

 

「やちるちゃん・・・」

 

やちるちゃんがドヨ~ンと重たく落ち込んでいた。

お食事券の裏面を見ると、たしかにそう注意事項で書かれていた。

 

見なかったのが悪いんだけどね・・・やちるちゃんをこのままにしておくのはマズイし・・・

 

「やちるちゃん、お腹減ってない?ここを出て、向こうの店で食べようよ」

 

「・・・いや・・・」

 

首を振りながら、拒否の姿勢を見せる。

でも、そしたら、この券は使えないし・・・

 

「お菓子が・・・食べたーいの!!!」

 

「はぁ・・・」

 

やちるちゃんは駄々をこね初めてしまった。

 

仕方ないな・・・

 

「・・・じゃあ、俺が買ってあげるからさ。そんなに落ちこま-----」

 

「本当っ!?」

 

復活し、俺に勢いよく迫るやちるちゃん。

 

「ああ、本当だよ。好きなの選びな」

 

「わーい!ありがとう!きょううん、大好き!」

 

すぐさまやちるちゃんは物色を始める。

 

ま、お菓子くらい奢っても、そんなでかい出費にはならないだろう。

 

ところが、やちるちゃんは、あれやこれやそれと両手に大量のお菓子を手にする。

 

「これとこれと、あ、これも!」

 

「・・・えっと、ほどほどにね・・・」

 

・・・本当に大丈夫だろうか・・・?

 

そして、数十分後、お会計を済ませ、俺とやちるちゃんは店を出る。

 

「ありがとうございました~」

 

「・・・やちるちゃん、買いすぎじゃない?」

 

「大丈夫!1日で食べきっちゃうから!」

 

「この量を1人で!?」

 

俺の右手には冒頭ででた材料。

左手にはおびただしいほどの菓子の山。

さらに、付け加えると、やちるちゃんの手にはソフトクリームがある。

 

てか、ソフトクリーム売ってるのね・・・

お金の方はなんとか大事だった。

ただ、ちょっと危なかったかな。

ま、家にまだまだ貯金があるから余裕だけど。

 

「あ、そうだ、きょううんに1口あげる」

 

「え?いいの?」

 

「うん、きょううんにお礼してあげる!」

 

ソフトクリームを俺に向けるやちるちゃん。

 

本当、子供って純粋でいいよね。

俺はどこぞの変態ではないので変に喜ばず、食べる。

 

「それじゃあ、いただきます-----ぱくっ」

 

「どう?」

 

「うん、美味しいね!」

 

「でしょ!ハハハッ!」

 

子供の笑顔ってどうしてこんなに癒されるんだろう・・・

 

俺が立ち上がろうとした時、やちるちゃんに止められた。

 

「あ、待って、きょううん」

 

「ん?」

 

俺はそのまま座り、待つ。

すると、やちるちゃんの顔がどんどん近づいてきた。

 

え、ちょ、ちかっ-----

 

ペロッ

 

・・・やちるちゃんが俺の口を舐めた・・・

 

「や、やちるちゃん・・・?」

 

「きょううんの口にクリームついてた!」

 

だったら、言ってくれればいいのに・・・

人の口についたものまで食べたいのかな?

 

俺はやちるちゃんの口元を見て、あることに気付く。

 

「あ、やちるちゃんも口についてるよ」

 

「本当?じゃあ、舐めて」

 

「え・・・」

 

「私が舐めたから、きょううんも舐めていいよ」

 

そう言って、目を閉じながら、俺の方へ顔を向ける。

 

これは、どんな恋愛ドラマだ・・・

いや、相手は子供だから、関係ないか。

しかし、ひどくベットリとついているな。

見ると、口の周りに大きくついている。

これじゃあ、1回じゃ、無理だし、何回もやるのもな・・・面倒くさいから、いいか。

 

俺はやちるちゃんの顔に近づいて、クリームをとってあげた。

 

チュゥ

 

「っ!?」

 

「ん・・・とれたよ」

 

「・・・・・・・・・」

 

俺はやちるちゃんに口づけした要領で、全部とった。

 

きれいになってよかったよかった。

でも、なんだろう、頬が元々ピンク色が濃くなり、赤くなっているな。

それに、変に上の空だし。

 

「やちるちゃん・・・?」

 

「・・・・・・・・・・(きょううんとチュウしちゃった・・・)」

 

「やちるちゃん!」

 

「ふぁ!?な、なに!?」

 

「どうしたの?ボーッとして」

 

「な、なんでもない!なんでもないよ!」

 

変に慌ててるな?

こんなやちるちゃん初めて見るな。

何か気にかかることでも起きたのか?

 

そう考えていたら、やちるちゃんが俺に頼んできた。

 

「きょううん、肩車して!」

 

「あ、うん、別にいいよ」

 

断る理由もなく、俺は肩車をした。

 

「わーい!たっかーい!」

 

「そんなにしてほしかったの?」

 

「うん!剣ちゃんときょううんだと、きょううんの方がいいかも!」

 

「よ、喜んでいいのかな・・・?」

 

そういう比較をされてもな・・・

でも、こうやって、喜んでくれてよかった。

 

ただ、道中、ちょっとおかしかったけど。

 

「クンクン・・・。ふああぁぁぁ~・・・(きょううんの匂い、いい香り・・・)」

 

「???」

 

俺はやちるちゃんの帰りを送り、自分の隊舎に帰った。

給仕の人にめっちゃ怒られたけどな!

 

 

 

 

 

 

 

 

時刻は夜。

 

俺は隊長室の前にいる。

理由は隊長に伝えたいことがあるからだ。

 

「隊長、失礼します」

 

「なんだ、一角か。俺はこれから寝ようとしてた所だぞ」

 

「すみません、小耳に入れておきたいことがありまして」

 

鈍い声が暗い隊長室に響く。

 

「実は・・・強え奴を見つけました」

 

「(ピクッ)」

 

チリンと鈴の音が聞こえたから、多分、少なからず反応はしてくれたんだろう。

 

「へぇ~、テメエが言うんだ、相当だろうな」

 

「はい。今日、模擬戦でしたが、そいつと闘い、俺は敗れました」

 

「テメエが負けるとはな。なかなか、期待できそうだな」

 

「隊長を満足させてくれるかと、思いますね」

 

ククク、と獰猛な笑みが微かに聞こえた。

 

「そいつの名は?」

 

「鬼柳院京夜、と言うらしいです」

 

「鬼柳院、京夜、ねぇ・・・いい名じゃねえか」

 

「明日、そいつの所へ案内しますね」

 

「おう、任せたぜ」

 

獲物を狩りそうな眼光と牙のような不気味な歯が、うっすらと見えた気がした。

 

「話は以上です。失礼します」

 

俺はそこで話を打ち切り、立ち去った。

 

隊長が最後に何か言ってたが、よく聞こえなかった。

 

「早くそいつと闘いてえなぁ・・・。明日の朝にでも殺りてえ・・・」




いかがでしたでしょうか?

次回はあのお方がでてきます。
そして、京夜の始解の能力が明らかに!?

次回もお楽しみに!

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