カカシ「一度死んで目が覚めると教え子達の性格やら何やらが変わっていた。」   作:柚子ゴル

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第5話 タズナと再不斬の関係性。

「チッ。影分身だったのかよ…。」

 

再不斬は1人になった川の上で舌打ちをし、呟いた。

一体いつから影分身になっていたのか。自分の部下に見切りをつけられ、落ち込んでいたはたけカカシを水の中に閉じ込め殺そうと刀を首元に持っていけば、はたけカカシであったものはボフンと音をたてて消えた。自分は写輪眼のような影分身を見極める力もないし、はたけカカシとは初めて会った。影分身かどうかは殺し合いの中で分かるだろうが…。影分身は一回でも攻撃されれば音をたてて消える。つまり再不斬はこの戦いの中捕まえるまで一回も攻撃を当てる事は出来ていなかった。まるでこちらの手の中がまるわかりのような反応に思わず気持ち悪さが出てくる。写輪眼は相手の動きが一歩手前でわかる。しかしこれは異常だ。今まで写輪眼を相手に戦った事などなかったから。

だがそれにしたって…。

 

「俺相手に影分身一体とは随分舐めた真似してくれるじゃねーか。」

 

イラついた口調で呟いたあと再不斬は、下忍、つまりナルト達が向かった道へと走り出した。ナルト達はタズナの家に向かっている。カカシもその後を追うだろう。家の道のりの途中で白に足止めされているはずだから走れば間に合うだろう。白に殺されてなきゃいいが…。あいつは少し乱暴なところがあるから…。まぁあんなガキども死のうがそんなもんどうでもいい。この屈辱を果たすためにもカカシをぶっ倒してやる。

 

✳︎

 

「その程度なわけ?雪一族ってのはさ!」

 

「っぐ…?!」

 

そういいながらサクラは白の頭を狙い思いっきり蹴る。白は腕で防御するもその威力に負け型が崩れる。

その隙を逃す筈がないサクラは崩れた腕の隙間から思いっきり顔を殴った。白は足が浮き、綺麗な顔はもう何発目かわからないほど歪んでいた。

 

「容赦無いってばよ。サクラちゃん。」

 

「やらなきゃやられる。当たり前だろ。」

 

その様子を見てナルトとサスケは呟いた。

 

「んー、でも女の子が女の子を殴っているのは見るに堪えないってばよ。」

 

「お前なぁ、忍びに女も男も関係ねーよ。見ろよサクラを。傷一つないぞ。」

 

サスケは冷静にサクラの方に指を指す。サクラの服装は汚れひとつなく綺麗な格好のままだ。ナルトは苦笑いをしながらサスケに答えた。

 

「さっすがサクラちゃん。ちょっと怖い。」

 

「だいたい最初にサクラがあいつの血継限界破った時点で結果はわかってるよな。」

 

サスケの問にナルトはうんうんと首を縦に振って答える。

 

「そうだってばよ。奥の手最初に使う時点でまずどうなの?ってサクラちゃんが言ってから素早く氷の鏡の中を移動する途中のほんの一瞬、鏡と鏡を移動するため鏡から身体を出した瞬間にサクラちゃんが思いっきり殴って破られちゃったってばよ。速さでサクラちゃんに勝とうだなんてそれこそ一万年早いってばよ。」

 

ナルトの事細やかな説明にサスケは鼻で笑ったあと答えた。

 

「それから一方的に殴られまくって…。今現在か。」

 

サクラと白の戦いを傍観しているナルトとサスケはぼんやりしながらその試合の経過と感想を言い合っていた。タズナを真ん中に挟みいつ加勢が来ても平気な様に佇むその様子は一応きちんと忍びらしいことはしているようだ。それにしても、その戦いは明らかにサクラの優勢でもはやなんだか軽いいじめ現場にも思える。タズナは驚いていた。こんな事があり得るのか。この少女は本当に下忍なのか。明らかにその実力はその辺の上忍を遥かに凌駕しているように見える。この二人に至ってもこの落ち着きよう。今日が初めての実戦と聞いていたのにこの冷静さ。話を聞いていれば、最近の忍びには珍しい残虐さ。人を殺す事を任務と割り切る理解力の良さ。明らかにこの班はタズナが知る中でも飛び抜けて可笑しかった。その奇妙さに思わずタズナはゴクリと喉が動く。

そんなタズナを他所に、話は進んでいく。一方的にやられていた白が、ぼそぼそと何かを言った。

 

「…は…じゃ…ない。」

 

「え?何?」

 

ごほごほと咳き込みながら白は立ち上がる。ナルト達が会話している中、サクラは容赦無く腕に蹴りをいれ腹を殴り足を蹴った。腹を蹴られ足を蹴られた白はその衝撃を耐えることができず思わず倒れこむが、震えながら立ち上がる。何かを呟きながら。そして白はナルト達の方を向きながら叫んだ。

 

「僕は男だ!ふざけるなこの野郎!いつもいつもいつもナンパしてくる癖に男だと知ると舌打ちをしてくる!ざけんじゃねーよ!いちいちそういう反応とられたらイラついてしょうがねーだろうが!そんなやつはぶっ殺してやる!僕と再不斬さんの邪魔する奴は殺す!まずはそこの女からだ!僕の得意技はもう一つある!この愛刀摩殺翔だ!」

 

最初に登場したあの言葉遣いが綺麗で何処と無く上品が漂っていた白はもはやそこに居なくて、いたのはブチ切れて語尾が荒くなっている顔がデコボコの白だ。

あまりの変わりようにナルトとサスケは吹き出しサクラは哀れんだ目を向ける。しかしそんな余裕もすぐ無くなる。白は素早く動きサクラに近づく。そして剣をサクラに向け言った。

 

「秘術千殺水翔‼︎」

 

「なっ?!」

 

サクラを中心に四方八方から千本の針が飛んでくる。上右左抜け出れる所はない。サクラは致し方なしといった様子で苦無でその千本を弾く。弾き終わるとすぐ目の前には刀を構えた白がいた。

 

「これでさよならだ。」

 

白は素早く刀を振りかざす。しかしそれは空ぶった。いや少しだけなら手応えがあった。

サクラはすぐさま後ろに下がった。しかし少し出遅れてしまったおかげで首から一本の赤い線が出来ている。つまり少し切られてしまったのだ。サクラは手を首元に持って行き血に濡れた手を見る。そんな様子を見て白は残念そうに首を振った。

 

「残念。首は落とせなかったですね。でも、貴方の未来は死です。何故ならこの刀には…毒が刷り込まれていますから。一滴でもふれれば成人男性でも40秒で死んでしまう曲者。どうですか苦しいでしょう?君はもってあと20秒。何か言い残した事はあります?」

 

「あ、あ…。血。私の血…?」

 

白はにっこりした笑顔でサクラに話しかける。その笑顔は慈悲深く先ほどの人物とはまるで違う雰囲気だった。サクラは自分の首から流れる血に狼狽えている。

 

「まずいってばよ。」

「まずいな。」

 

ナルトとサスケがそんな二人の戦いを見て言った。タズナは思わず話しかける。

 

「おい…!駈け寄らんでいいのか?!死んでしまうぞ!」

 

「ああ、サクラは大丈夫だ。それよりも…。」

 

ちらりと白の方を見るサスケ。ナルトはそんなサスケに同調するかのように言った。

 

「うん。あいつタダでは死ねないってばよ。」

 

そんな二人の言葉の意味がわからないタズナは困惑の表情を浮かべる。そんな時白の叫び声が聞こえた。

 

「うぐぁ!」

 

タズナはハッとしたようにサクラ達の方を見る。

サクラは毒をくらったのにも関わらずまだ生きている。サクラは、今まで以上の速さで白を攻撃し続けた。そのサクラはゾッとするような無表情だった。機械的に動き機械的に殺す。まさに感情を制御した殺すだけに作られた暗殺に特化したロボット。いつのまにか白は倒されてその上にさくらが乗る。サクラはチャキリと白に馬乗りになり喉仏に苦無を押し当てる。その苦無は良く研いであり少し力を入れるだけで首が落ちそうだ。白はじっとサクラの顔を見つめる。忌々しげに言った。

 

「どうしてそんなに動けるのですか?毒は確かに入ったはずなのに。」

 

サクラは何てことでもないような表情で淡々と答えた。

 

「……。教えてあげる。ハルノはね、小さい頃から食べ物に毒を入れられるの。免疫をつけるためにね。時にはお腹を下したし血を吐いたりしたけど、今役に立ったから良しとしようかな。もう一つ教えてあげる。ハルノの掟の中に、ハルノのものが一滴でも血を流したならばその人物を可能な限り速く殺すべし。よ。ハルノは血塗られた家。自分が流した以上の血を相手に流させないと気分が悪くなっちゃうの。可笑しな話。でもね現に私は貴方の血が見たくてしょうがない。だから貴方を殺すわ。血が見たくて……ゾワゾワしてるの。」

 

正気の沙汰ではない。けどなんだか少し艶めかしい…。

白は思った。先ほどとは違い、頬を赤らめ甘い吐息をしながら言ってくいるサクラに何故か白はドキリとした。胸が熱くなりなんだか火照りそうだ。胸が波打ち耳元で心臓の音煩わしく聞こえる。それはサクラの頭の可笑しさのせいか、はたまた別の事か。

それからサクラは白の首ではなく、心臓目掛け苦無を振りかざした。

 

「超すまんなお嬢さん。それは待ってな。」

 

「え?」

 

サクラの背後に回り手を掴んだのは、依頼主であるシワシワのタズナだった。第七班は驚いた。このタズナが移動したのに素早く気付かなかったからだ。おそらくこのタズナは瞬身の術をした。一般人であるはずのタズナがだ。いや、第七班は優秀故本当はどこかわかっていた。このおじさんの奇妙さに。戦い慣れしていて、自分たちが瞬身の術をした時のあの全く混乱していなかった忍術慣れ。明らかに一般人ではない。しかし忍びは信頼関係が第一。依頼主を信頼しなければ全てが始まらないと言っても過言ではない。その不信感はあくまで憶測。容易に疑うことなど出来ない。しかし、この敵である人物を庇った事でその予感はなんらかの形で確実なものになってしまった。下忍からの不信感は高まるばかり。だが、それを中々言えるものはいない。サクラに至ってはお預けを食らったようなものだ。落胆が目に見える。暗くなった雰囲気の中、突如として今までいなかった銀髪の声が挙がる。

 

「これはちょっといただけないなぁ。タズナさん。どういうことなの?」

 

「カカシ先生?!」

「いつのまに?!」

「存在感薄すぎるだろ。」

 

第七班であるサクラ、ナルト、サスケは各自感想を言うが、最後のサスケの言葉はいただけない。

 

「そこは忍びらしいと言って欲しいね。」

 

空気を破ったのは、彼らの担当上忍。はたけカカシである。いつのまにか来ていたのやら。第七班は驚きを隠せない。タズナはバツが悪そうに、また作り笑いを浮かべる。

 

「それはちょっと複雑での。

何、ワシの家に来た後茶でも出して話す。とりあえず申し訳ないが、ワシの家に来てはくれないか。」

 

手を後ろに回しながら首を掻く。申し訳なさそうには全く見えない。カカシは厳しい視線でそんなタズナを非難し言った。

 

「悪いが、信用なりませんね。一度嘘をつかれると忍びは信用出来なくなる。忍びは嘘が嫌いでね、その情報一つで自分等の命が無くなる可能性があるんだ。当たり前じゃないですか?」

 

「うむ、その通りじゃ。」

 

ふむ…と顎に手を置き考えているのタズナにサクラが苦情を言う。

 

「あの、とりあえず手離してもらっていいですか?退くに退けなません。」

 

「嗚呼、これはすまない。」

 

パッとタズナはサクラの手を離す。サクラは名残惜しそうに退こうとした。しかしそんな表情を見た白はなんとなくぼそりと呟いた。

 

「ぼ、僕はあの…別にこのまま馬乗りでもあの…構わないっていうかあの…。」

 

しかしその言葉はサクラの耳には届かない。もう一度なんて言ったのかを聞いた。

 

「は?ごめんぼそぼそしすぎてなんて言ってるかわからないわ。」

 

相変わらず顔が赤い白は、ハッとした表情になり先程とは違う言葉を話した。

 

「い、いえ。は、速く退けてください!重くて胃が潰れそうです!」

 

「なっ!そんな重くないわよ!失礼ね?!」

 

耳まで赤くしている白にサクラはイラつきながら白の上を退ける。サクラとて暗殺一家ではあるが女の子。そんな事を言われてはイラつきもする。深呼吸している白は辺りを見回しあることに気付いた。

 

「あれ?再不斬さんは?まさか再不斬さんに限ってやられるような真似は…。」

 

チラリとカカシを見ながら言う。自分は逃げてきたと言うために口を開こうとする。しかし何かの気配を感じてカカシは立っていた位置から素早く離れた。

 

「よう、カカシィ。俺から逃げるだなんて調子ぶっこいてんじゃねーよ。」

 

カカシがいた場所はドゴォオンという音をたて地面がめり込み、再不斬があらわれた。その顔には明らかに不満ですという表情が丸わかりである。カカシは今から本題だったのに…と苦い顔をした後再不斬に顔を向けた。勘弁してよと言うために。しかしタズナが再不斬に注意を呼びかけた。

 

「再不斬。もう終わりじゃ。その殺気を止めなさい。」

 

「あ?なんだよまさかもう終わりなのかよこれからって時によう。」

 

明らかに不機嫌になっている再不斬にタズナは気にせず自分の意見を言った。

 

「後でやれ。いまはそれより説明が先だ。」

 

「チッ。しゃーねーな。」

 

再不斬は重たそうな首斬り包丁を肩にかけ、殺気をしまった。カカシはその光景に違和感があって仕方がない。あの再不斬が、あの再不斬が大人しくしている。敵対関係で殺す側と殺される側だったのに…。立場が違すぎる。カカシは我慢できず気になっていることを聞いてしまった。

 

「タズナさん。貴方達一体どういう関係ですか…?」

 

一瞬辺りがシンとなった。第七班は何も話さないし白や再不斬だって話さない。もちろんカカシも。タズナはああとそういえばというような感じで答えた。

 

「再不斬達はワシの弟子じゃ。」

 


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