カカシ「一度死んで目が覚めると教え子達の性格やら何やらが変わっていた。」 作:柚子ゴル
下忍選抜試験の内容を言ってその場を去り、とりあえずは火影邸を目指す。
幻術ではないかと疑い、全身のチャクラを可能なまでに乱してみたが意味なし。そもそも幻術ならばサクラ等、木の葉の里の忍びが動いてくれるだろう。マダラの限定月読か?とも思ったがそれはない。マダラは死んでるし、うちは一族でそれができる可能性が万が一にもあるとすればサスケだが、老い先短かった自分にそんな事をするとも思えない。
そこで、仮説を立ててみる。
ナルトとサクラが昔、マダラの限定月読にはまった時、別の世界へ行ったと話していた。まるでそこは全く自分の知っている人達ではなかったとも言っていた。それはこの状況に至極当然のように当てはまる。
だからといって、別に限定月読をかけられたと言っているのではなく、ただ単純に似た様な世界が世の中にはあるというわけだ。つまり此処はパラレルワールド。自分はなんらかの影響でパラレルワールドに来てしまったらしい。というのが一番有力である。
考え事をしていると、案外はやく火影邸に着いた。こんな風に走るのは久しぶりである。…なんだか嬉しいような、頬が緩んでしまう。筋肉を使い走る。死ぬ一歩手前だったからなかなか出来なかったが今は出来る。
(この頃の俺、若いなぁ…。)
腕をグッと握るのを見て感慨深くつぶやく。
そのあと、火影室へと向かいノックをし、失礼しますと言って返事を聞く。
「入りなさい。」
懐かしい三代目火影の声がする。街並みを見てみると、自分がいた所とあまり変わらなかったから教え子以外は普通なのだという安心感にホッとした。
ガチャリと音を立ててドアを開ける。其処には窓から逆光が入り、まるで光り輝いているように見え、蛇を溺愛している三代目火影がいた。
「え?」
机の両側に蛇を置き、頭を撫でながらこちらを見つめる三代目火影。なんだか少し目のクマが濃いようだが、少し化粧をしている様に見えるし、髪が白くはあるが伸びている三代目火影。猿のようなお顔ではなくなり、何処かあの人物に似ている三代目火影。そう、あの伝説の三忍と呼ばれたあの…。
(いやまさかね?)
頭を降り視線を落としてから、改めて三代目火影を見る。そしてまた顔を背けた。そして思った言葉が…。
(ええええええ?!え、何これ大蛇丸?
いや、大蛇丸以外の何物でもないでしょ!え、何で?まさかこの火影様大蛇丸に似てるの?てかまさか本人なの?いやこの匂いや雰囲気は三代目だけども…?!いや、三代目火影だ。これは三代目だ。元の世界と違うけどこれは三代目火影です。)
フーッと息を吐くと、三代目火影は自分に話しかけてきた。
「どうしたの?カカシ。元気ないじゃない。」
ふふっと笑い手を口元へと持っていく。腰をくねらせるその行動はそうまるで…
(大蛇丸ー!
やっぱり完璧大蛇丸じゃんこの三代目ぇ!嘘でしょなんで大蛇丸?!
いや、落ち着け。そんな事言ってる場合じゃないし。よし、大丈夫。俺ならこのくらい切り抜けられる。…よし。)
「実は三代目……。」
まずは訳を話さなければ、やっていけない。というかもうやっていけない。
✳︎
「なるほどね、あり得なくもないわ。実は貴方は昨日、とある任務で頭を打ったの。その時の衝撃で記憶喪失になったか、頭が混乱しちゃってるのね。腕のいい医療忍者を紹介するわ。」
「はぁ…。」
(頭打ってたんだ俺。)
パラレルワールドの事などは一切触れず、記憶がおかしいとだけ言った。すると此処の俺は、昨日頭を打っていたらしい。都合のいいように進み良かった…。
「どのくらい分からないの?木の葉の里の事はわかる?」
「あ、はい。わかります。」
「うーん…と、じゃあ貴方の班員の事はわかる?」
「あぁ、うずまきナルトにうちはサスケ、それに春野サクラですよね。」
「ええ、詳しい事はわかるかしら?」
「詳しい?…嗚呼、此処で言っても大丈夫ですか?」
「大丈夫よ、此処にいるのは貴方と私と暗部ぐらいしかいないから。」
「そうですか。
えー、うずまきナルトの中には九尾が入っており、里ではあまりよく思われてません…。またナルトの親は英雄四代目とクシナさんです。」
「うん、その通りだわ。」
「うちはサスケは、兄うちはイタチが犯したうちは一族抹殺事件の生き残りであり………、春野サクラに好意を寄せている。」
「ええ、そうね。」
「春野サクラは……、特に何もないですよね?」
そうサクラは平凡な家庭に生まれながらも、とても優秀な忍びである。
しかしやはり、これといった先程述べた2人に比べあまり特徴がないように感じる。それを述べれば三代目火影は怪訝な表情をした。
「貴方それ本気?」
「え?」
「春野といえば、名門暗殺一家ハルノでしょう?昔は髪が白かったのに今、ピンクなのは人の血を吸いすぎた…という伝説があるくらい血塗られた一族よ。
昔、ハルノは何処の里にも属してはいなかったけれど、二代目火影に恩ができ、木の葉の里で戦力として働いてくれているとても素晴らしい一家。仁義を重んじ何代もそれを受け継いでいく。
春野サクラはそこの一家の長女であり、跡継ぎ。しかもハルノ始まって以来の才能の持ち主よ。この子も凄く重要な子だわ。」
当たり前のように言い放つ三代目を他所にカカシは混乱する。新しい情報が多い上に、それはとてつもなく重い内容だ。
(サクラが名門暗殺一家…?
え、嘘でしょ?でも、確かに自己紹介でハルノの者として仁義を尽くすことって言ってたような…。)
三代目はジッと俺を見つめ心の中を探るように言い放つ。
「それにあの子貴方の…」
「え?」
「「只今戻りました。」」
火影室の中にいきなり現れたのは、ピンクの髪に少し特徴的な桜の模様が入った仮面を付けた子と、ターバンのようなものを巻き暗部の仮面をつけていて、身長が180はあるだろう男。
「嗚呼、二人ともお帰りなさい。」
「これ、例の奴。」
ポイと火影の机の上に投げた巻物を見つめていると、ターバンの男は此方を見てカカシじゃねーかと呟いた。
一方俺はというと誰か全く分からずあ、どうもと呟く。ピンクの髪の子がカカシ先輩!と嬉しそうに話しかけてくる。というかこの子…。
「カカシ先輩!じゃなかった。明日から先生、ですもんね!よろしくお願いしますね!先生!」
「え?てかもしかしなくてもサクラ?」
「何言ってるんですか!カカシ先輩がまだ暗部だった頃の後輩じゃないですか私!」
「え?!サクラ暗部なの?!」
「はぁ?大丈夫ですか?先輩。」
「カカシはちょっと昨日頭を打っちまっててね。一部分記憶喪失なんだよ。」
少し怪しそうにしているサクラにフォローを入れてくれたのは三代目火影だ。やはりこういうところを見ると三代目火影の面影を感じる。
「そうなんですか。大丈夫ですか?任務で分からないことがあったら聞いてくださいね?」
へー、と納得しながら優しくしてくれるサクラについ涙腺が緩むが、なんとか持ちこたえる。今まで話を聞いていたターバンの男が此方に向かい話しかける。
「カカシお前まさか俺を忘れたなんてことはねーよな?」
「え、あ、えと、すみません。どちら様ですっ…?!」
言い終わらない内に綺麗な右ストレートが入った。全くもって油断していたためか、崩れ落ちる。というか凄く痛い。まさか此処で暴力を昧うとは…。思わず呆然とターバンの男を眺める。
「カカシ、暗部時代何度も命救ってやった俺に対してそれはねーんじゃないの?それに俺お前に金貸してんだぜ?返せよ今すぐ。」
「す、すいません…。」
思わずカカシは謝る。何故か凄まじいオーラがある。異論は認めないというオーラが…。そもそもこの人は誰なのか、全く見当がつかない。そこにサクラが仲裁に入る。
「ちょっと隊長!
あんまりですよ!いきなり殴るなんて!それにお金借りてるなんて嘘ばっか言って!」
「叩けば直ると思って。」
「古い家電じゃないんですよ!」
「え、というか隊長?まさか暗部部隊長ですか?」
それに答えたのは今まで巻物を見ていた三代目火影だ。
「そうよ。その子の名前はイワナガ。気性が荒いから気をつけてちょうだい。
ちなみにサクラは副隊長よ。」
「いや何勝手にバラしてやがるじじぃ。」
「あ!またじじぃとか言って三代目火影になんて口の利き方するんですか!」
「嗚呼、もうなんか驚くのに疲れました。あ、疑問が一つ。何故暗部のサクラが第七班に?」
諦めた目をしたカカシを他所に、巻物に目を通しながら答える。
「簡単よ。第七班の中にはうちは一族の生き残りと九尾がいるから、たとえ上忍の中で優秀な忍びをつけようともやはりお荷物三人では些か不安でもあるでしょう。」
「まぁ、そうですね…。」
「あ、そうだ!カカシせんぱ、いやカカシ先生!明日の下忍選抜試験楽しみにしてますね!」
「ああ、下忍選抜試験ね…。」
今まで暗部部隊長であるイワナガと話していたサクラは、陽気に此方に話しかけてきた。
というか、すっかり忘れていました。下忍選抜試験。
ニコニコとした雰囲気で此方を見るサクラ。仮面越しでもわかる不機嫌なイワナガ。相変わらず蛇の頭を撫でる三代目火影。
(嗚呼もうこれ本当…。)
「幻術であって欲しかった…。」
「何言ってんだこいつ。」
「大丈夫ですか?カカシ先生。」
「あんた達用事が済んだらはやく出てきなさいよ。後がつっかえてんのよ。」