仮想世界の先駆者   作:kotono

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第八話

 

「本当に大丈夫なのか?.....」

 街の外側、次の村へと向かう道が続く。

 そこで立ち止まりオレとアルゴを見送りにきたシルバは心配そうに聞いてきた。

 

「そう不安な顔すんなって、別に死ににいく訳じゃない。アルゴだって一人くらいなら連れていけるって言ってるんだし。なぁ?」

「そうだナ、オイラも一応、βテスターだからナ。持ってる情報も使っていけば一人くらいどーとでもなるダロウ。」

 

「だったらよ、俺が行ったっていいだろ?

「いや、それはダメだ。

 さっきも言ったけど、この街でやることにはどうしてもチームワークが必要になる。だったら元々リアルの仲間であるシルバたちのほうが効率がいい。............オレ、集団行動苦手だし。」

「..................」

 どうやらまだ納得いってないようだ。というより、オレが危険に飛び込むように見えて心配しているのか.....ホント、お人好しだな。

「それに、オマエが居なかったらだれがクラインを落ち着かせるんだよ。見た感じ、感情が先走りするタイプっぽいし。」

「...........そうだな、俺には大事な役割があるもんな。さっさとやること終わらせてオマエさんたちに追い付いてやるよ!」

 ようやく納得したのか、あの男前の笑みを浮かべてそう言ってきた。

「あぁ、先に行って待ってる。死ぬなよ」

「それはこっちのセリフだってぇの!絶対に帰ってやろうぜ現実によぉ!」

 そういって、拳を目の前に掲げた。ふと見るとシルバの目には水滴が溜まってた。

............感情表現の過剰なこのゲームのシステムがオーバーに感知したのだろう。そうに違いない。そういうことにしておこう。

 そんなことを考え、受け取って、拳をぶつけた。

「あぁ」

 言葉少なに背を向けてアルゴを先行させて駆け出した。

 かなり話し込んだために、あたりは暗く。振り返ってもすでに表情を見ることは出来ない。

 それでもおそらく、あのお人好しはいつまでも見送ってくれているのだろうと思えた。

「またな!オジキぃ!!!」

 後ろから軽快な突っ込みが聞こえた気がした。

 

 ユウがシルバたちに頼んだこと

1.支援系スキルを上げてくれる人を集める。

2.あきらかに戦闘に参加させられない子どもたちの保護とその保護を継続的にしてくれる人を探す。

3.アルゴに教えてもらった情報を使って《はじまりの街》で受けられるクエストをこなして、βテストとの違いがないか確認する。

4.アルゴが作っていた『アルゴの攻略本』の増版をつくり配布する。

5.このゲームをクリアするために動き出した人がいることを伝え、希望を持たせる。

6.支援系スキル所有者の熟練度があるていど上昇したら、相互的に連携させて、いわゆる社会活動を行わせる。また、それを先導し指揮する者を見つける。

 

 ユウとアルゴが街を出てやること

1.『アルゴの攻略本』の初版を前線にいるヤツらに売り付ける。

2.素材や鉱石を集めて、クラインたちに届け、支援系スキル所有者の上昇に役立たせる。

3.アルゴの情報の収集とβテストとの変更点がないかの確認。

 

 

 

 これらをやることで、攻略組の支援の充実、情報の散布、精神的に異常なプレイヤーの減少が望める。

 そして、一番期待できるのは『アルゴが情報屋のトップにたてる』ということだ。

 それによって、扱える情報も集まってくる情報も格段に上がる。それはこの情報屋に一種の権力が発生することに繋がる。この権力はうまく利用すれば、攻略を制御できる。

 

当然、当事者でありβ時代も優秀な情報屋だったアルゴがこれに気付かない筈もなく。

「しっかし、オマエはやけに頭がキレるようだナ?普通はこの異常事態にこんなコト考えつけないとおもうガ...... 」

 暗闇を駆け抜けながら、アルゴが聞いてきた。

 

「普通、か......まぁ、それならオレは普通じゃないってことだろ?」

「はぐらかすのカ?」

「もちろん」

「...........ホンット、嫌なヤツだナ」

「お褒めに預り恐悦至極ってねぇ。そろそろスピード上げようぜ、暗闇の中だし戦える気がしない」

 オレがそう言うと、アルゴはスピードが上げた。無言で。............ひとことくらい言ってくれよ、はぐれたら終わりなんだけど。


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