《はじまりの街》は中央広場を中心に放射状に広がる街である。
中世の街並みをモチーフにしているその街は中央を基準に行動すればめったに迷うことはないといえるほどには比較的わかりやすい構造をした街であるといえる。
つまり、何が言いたいかというと、
「わかりやすい構造であるならば街の出口にも向かいやすい。視点を変えれば『街を出ようとしているプレイヤーを見つけやすい』ということになるんだよなー」
シルバと別れたオレは《はじまりの街》最大の高さをもつ建物の屋根に上っていた。ここは位置的にも好条件で、この街をある程度まで見渡すことができる。
オレはここから、街を出ていくプレイヤー達をみていた。
おそらく、飛び出していったプレイヤーのほぼ全てがベータテスターだ。
彼らはここら一帯のリソースが無くなる前に次の村に向かうことにしたのだろう。
自分の能力と死ぬ危険を天秤にかけた結果、自分なら、と考えたヤツらだ。
その考えはテスター時の情報を頼りに導きだしたのだろうが、はたしてそれは本当に正しいのやらといったところだな。
おそらく、現在こいつらが一番死ぬ危険が高い。
しかし、逆にいえば、これで生き残ったプレイヤーは正真正銘の実力者であるといえるだろう。
そして、そいつらはこれからのゲーム攻略の要になる。
だが、いくら重要な存在であっても、そいつらだけじゃ100層までは到底たどり着けない。
だから、オレはそれを補うために動く。そう決意してオレは届いたメッセージに返信を返した。
..................そういえば、1番最初に街をでたのは中学生くらいの少年だったなぁ。けっこう意外だ、死ななきゃいいけど......
届いたメッセージに場所を指定して、シルバと合流した。指定した場所はさっきまでいた中央広場だ。
街の中心であるにも関わらずここは今までの騒動が嘘のように静まり返っていた。
いや違うな。今までの騒動があったからこそ、ここは今、プレイヤーの中では悪夢の場所になっているのだろう。
人がほとんどいなかったのですぐにシルバを見つけることができた。周りには数人のプレイヤーも見える。
「待たせたな。」
「おう、気にすんな。それよりこいつらが俺の仲間だ」
「わかった。......オレはユウ。初対面で図々しいだろうけど、頼みがあるんだ手伝ってくれないか?」
そう言うと、赤いバンダナのオッサンが即座に返答してくれた。
「おう。任せな、俺たちはもう一蓮托生だろ?このクライン様を頼りな!」
陽気に即答したクラインに続いて全員がうなずいた。
どうやら、シルバが言っていたリーダーってのはこのクラインのようだ。確かに人の良さそうな笑みをしている。
「助かる」
「そんで俺たちはいったい何をすればいいんだ?」
「いや、その前に先にオレの推測を聞いてくれ。」
「推測?」
「あぁ。まず、この世界はもって四年が限界であるということ。これはここからの全ての行動の大前提だ。」
「限界?そりゃあ四年もあればさすがにクリアできるだろうけど......」
「いや違う。確かに上手くいけば四年もあれば十分にクリアは可能だ。だがオレが言いたいのはそういうコトじゃない。なんだと思う?」
どうやら、わからないようだ。全員の頭にクエスチョンが浮いてる。
「システムの寿命のことだナ」
どこからか声が聞こえた。
しかし、驚かない。これは予測ずみのことだ。この為にわざわざ街の中心で話していたんだからな。
「............『情報屋』、だな?」
「..................どうやらオイラは誘い出されたようだネ。その通り、情報屋だヨ。オイラのことが知りたいのなら100コル払いナ」
そういってフード付きのローブで素顔を見えにくくしたプレイヤーが現れた。