運命
そんなものを信じれるような人間には到底なれやしないが......それでも、もし誰かに、あれが、よくよくどこかしらで、”神のイタズラ”とでも表現されるような出逢いだったのだと断言されたとする。
”運命”だったのだと断言されたとする。
そうしたら即座にオレは肯定するはずだ。
”なるほど確かに、あの時のオレたちの出逢いは、運命だったのかもしれない。”と。
それほどまでに、ずっと尾を引っぱってくる出逢いだったのだ。具体的には4年くらい。
もっとも、その後にこうも続けるのだが......
”なんとしても回避すべきだったフラグが立った瞬間だからな。凶運だったってことで、神様のせいにでもしとかないとやってらんねぇよ。...........まぁオレ、無神論者なんだけどね。”
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白熱するボス戦から離脱して、ここに到着する前に潜ませておいたディアベルと合流。
そのまま、ディアベルに先行してもらい、来た時とは別の道を駆ける。
しばらくすると、三つの影がユウたちを出迎えた。追っているのに気付かれていたらしい。
そこは迷宮区のだだっ広い拓けた空間だった。いわゆる安全地帯という場所で、何もしなければmobが入ってこない区域に設定されてある。
ここ数日の目標の大本命であるソイツは、ポンチョのような衣装についたフードを目深にかぶり、顔がはっきりと見えない。
背後には二人のプレイヤー。そいつらも片方は仮面、もう片方はマスクを着けて、顔を隠している。
ユウは努めて平静に振る舞いながら、真ん中にいるヤツに呼び掛ける。
「よう。いて欲しくなかったけど、探したぜ。犯罪者」
「Ann? .........何だオマエ?」
”犯罪者”。その単語に反応したソイツは、まっすぐに疑問の言葉をぶつける。
低くも良く通り、妙に耳に残る声だった。
「......大惨事が観れなくて残念だったなぁ? それを期待してレジェンドブレイブスに詐欺を教えたんだろ?」
相手の質問を無視して、煽るように語りかけた。
この言葉が、始まりだった。
底無し沼のような因縁の始まり。
知略と陰謀、予測と経験の使い手である、先駆者と殺人鬼の二人による、騙し、化かして、殺しあう、最低最悪の泥沼戦の始まりの場所。
二層の迷宮区の安全地帯、なんて後々になると誰もが忘れてしまうだろう。
けれど彼らは、対峙するたびに、この光景を鮮明に思い出す。
そして、思い出す度に二人して後悔する。
”あの時、殺していれば.....。”と。
「Hum? つまらねぇゴミどもの中にも頭の回るのがいたらしいな」
「へぇ、ゴミねぇ......仮にも最前線プレイヤーによく言うじゃねぇか」
「HAHAHAHAHA!最前線プレイヤー? そんなモンに拘っている時点でただの雑魚なんだよ。テメェらはこの世界の本質にまったく気づいてねぇ」
「言うじゃねぇか。じゃあ、その本質ってヤツを教えてくれよ。オマエは誰で、何を目的にしているのか、その辺も明確にな」
「......クッククッ...ハッハッハ。おもしれぇヤツだなテメェ」
「それはどうも。で?」
「オレ様はPoh。この世界をこよなく愛するプレイヤーさ。察しの良いらしいテメェならこれでわかるだろ?」
「......あぁ、そうだな。わかる。わかるよ」
オマエはオレが一番恐れていた人種だ。
「弱肉強食。それがこの世界のルールだ!弱者は強者のオモチャなんだよ!」
この無法の世界では、確かにそれは信実だ。強者が弱者を虐げたって裁く者はどこにもいない。
「こんなすげぇ世界から消えるためにわざわざ攻略なんざやってるヤツの気がしれねぇぜ。せっかく茅場のヤロウが創ってくれやがった世界だ。楽しまないと損だろう?」
茅場晶彦。犯罪者にして、この世界の神。そして、オレたちプレイヤーにとっての恨みの対象であり、最高の『免罪符』。
たしかに強者にとってみたら、楽しくて仕方ないだろうな。だから.....
「殺しは最高の娯楽だぜぇ?」
そう言いだすヤツが出てくるかもしれないことはわかっていた。
でも、だからって......まだ2層だぞ?
いくらなんでも早すぎる。
Poh....。コイツは、危険だ。
気づけば、剣を抜いていた。
直感的に悟ってしまった。
コイツは、ここで止めないと、いや......
............ここで殺さないと取り返しがつかなくなる。
遅くなりました。ごめんなさい。
とりあえず、次話で2層は終わりですね。
いやー クマさんのキャラがいまいちわかんないです。
原作とか読み直さないとですねー