仮想世界の先駆者   作:kotono

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第五十二話

「リーダー二人にえげつない啖呵切って脅した本人がボス戦不参加って......さすがにどうかと思うんだけど......」

 

 青ワカメ、サボテンの二人と関わりがあって、あの交渉の場にいるとめんどくさくなりそうという理由で不参加を余儀なくされていたディアベルは、あれから数日経過して、ようやく会談の内容を聞かされた。

 どうしてすぐに教えて貰えなかったのかと言うと、ただ単にユウ、アルゴの二人してディアベルのことを蔑ろにしていただけである。

 どんなに足掻こうと二人の中での彼の立ち位置とはこの程度なのだろう。哀れなことだ。

 

 そんな哀れな騎士サマの事後報告の第一声に、隣の非常識はさも当然のことのように返す。

 

「『条件を飲んだ時も参加する。』なんて一言も言ってないからべつにいいだろー。 だいたい、オレが誰かの下でチームプレーなんて出きるわけねぇじゃん。 能力値をパラメータ表示したら協調性の欄にやけに堂々とマイナス値を刻んでそうなゴミクズだぞ。オレは」

「ホントにな.....そこで胸を張れるとことかもう.........」

 

 何故か自分の欠点を誇張するユウとそれにホトホト呆れ果てているディアベルの会話によると、どうやら、一層のボス戦の指揮官と窮地を救ったMVPの二人がまさかの二層フロアボス攻略戦不参加のようだ。

 

 どうやら、今回ばかりは、アルゴによる陰謀で参加させられることもなく、本当に彼らは参加しないつもりらしい。

 その証拠に、たった今、ユウたちは最後の打ち合わせを終えた攻略メンバーが迷宮区タワーへ向かったのを隠れて見送っていた。

 

 

 今回、ユウたちの目的は、撒き餌に引っ掛かるかもしれない『あるプレイヤー』を待ち伏せすること。

 そのためにわざわざ、マップデータを速攻で完成させたりしてボス攻略戦がスムーズに始めれるようにお膳立てしたのだが.....そんな彼らの計画はここにきてある問題に直面していた。

 それは......

 

 

「アルゴが来ねぇ.......なにやってんだアイツ?」

「さぁ......どうしたんだろうね?」

 

 そう。この作戦を立て、今回『は』オレのボス戦不参加を強要した諸悪の権現、情報屋のアルゴが時間が過ぎてるのに待ち合わせ場所にまったく姿を見せないのだ。

 仕事に関して、無駄に責任感のあるアルゴが遅刻するのはかなり珍しい。というか、非常事態レベルと言える。

 

「............ユウ、昨日はアルゴさんにどんな酷いことをやったんだ?」

「待て。オレはやってない。疑惑の目をこっち向けんな」

「それ、犯人の台詞だぞ?」

 どうやら、ユウは現パーティメンバーからの信用度もマイナス値のようだ。完全に自業自得なのは言うまでもないだろう。

 

 

 誤解は解けないまま、そこからさらに20分ほど疑い過ぎて逆に確信じみてきた視線を無視し続けてようやくアルゴが来た。

 しかし、そのアルゴが遅刻の原因となった、新しく持ってきたクエストのせいで、計画は完全に破棄されることになったのだった。

 ついでだが、アルゴは道中で一人の『元』鍛冶屋を助っ人にひぱってきてる。

 

 

「まだ働かせるのか......あ、ディアベルは後で無罪のオレを疑った罪を償ってもらうからな」

「..................はい」

 

 

 

 

 

 

 

 ところ変わって、迷宮区内を行進中のボス攻略戦メンバー内

「なあ、アスナ。......今、俺たちってほぼはじめて心が通じあってる気がするんだ」

「奇遇ね。私も癪だけどそう思うわ」

「..................」

「..................」

「「なんで、ユウ(くん)はここに居ないんだよ(のよ)!!!?」」

 


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