仮想世界の先駆者   作:kotono

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第三十五話

「やあ、ユウさん。よかった、どうやら無事にクエストクリアできたみたいだね」

 女を落とし、男を従える最強装備《リア充風イケメン爽やかスマイル》を常時装着しているゲーマー、というある意味ハイブリットなチート存在であらせられるディアベルと合流を果たした。何か歯が白く輝いてる......殴りたい。

「よぉ、没落騎士。今、アンタを道連れにすればよかったと思ったよ」

「没落騎士って......まぁ、自業自得だけど.....それより、アルゴさんとはまだ会ってないのかい?」

「あぁ、アルゴなら会ったよ。今ごろ、街の中を走り回ってるんじゃないか?」

「あれ?今回は何もやらなかったのか?」

「............」

「?......ユウさん?」

「.....大丈夫。死にはしないから」

「...........」

 

 あの後、アルゴを引き摺りながら、主街区《ウルバス》まで行ったのだが、解放されたばかりのためか、街は人混みで満ちたいた。

 いくら圏内とは言え、今の状況を端から見ればオレは数少ない女性プレイヤーを誘拐している変態のように見えるだろう。というか、端から見なくても誘拐している。

 さすがのオレもこの状況で、直接手を下すコトはできない。

 それに、そもそも人混みは苦手であり、昨日からの疲労もあわさって気分も優れない。

 さっさと逃げ出したい。でもこの寝袋(チャンス)を手放すのはもったいない。

 激しいジレンマがオレを襲う。

 そこで、妥協案として、ふと目に留まったNPCの馬車にくくりつけて街中を引き摺らせることを思い立った。

 直接やれないのはこの際我慢しよう。

 運がよければ、他のプレイヤーが助けてくれるだろうし、助けがなくてもその内、ロープの耐久が切れて脱出できる。たぶん。

 

 ただ、改めて思い返すと、死ねない引き摺りの刑ってけっこうエグそうだなぁと思えなくもないが............まぁいいさ。だってアルゴだし。

 

 こうして、ウルバスのどこかへ消えていくNPC馬車と寝袋に静かに黙祷を捧げ、オレはディアベルと合流するためにフィールドに出るのだった。

 

 ちなみに、このコトはディアベルに言わない。

 理由は、早めに助けられても困るからです。

 

 さて、そんな被刑者はほっといて仕事をしよう。

 

 ディアベルから進捗を聞き、オレはパーティー申請を送る。

 すぐさま承認され、視界の端にあるオレのHPゲージの下に二つのプレイヤーネームが出てくる。

 さらに、ウィンドウを開いて、クエストを確認。

 上限まで入っているクエスト数にゲンナリする。

 今は、牛型モンスターからドロップするアイテムを集めるクエストをしているらしい。

 

「あと何個?」

「残り14個必要だ」

「まだ全然かよ......」

「最初にやったクエストが少し長引いてしまってね」

「はぁ......まぁ、いい。さっさとやるか」

「そうだね」

 そう言って、二人はもっと奥のフィールドへ歩きだした。

 歩きながら、ユウが暗い表情で呟いた。

「急がないと今日も寝れなくなっちまうなぁ......二日連続徹夜はイヤだなぁ」

「............え?」

 隣で意気揚々と歩いていたディアベルが不穏を感じとったが今回は逃がさない。オマエも巻き添えだ。

 

 


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