仮想世界の先駆者   作:kotono

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第二話

 シルバに手伝ってもらって最低限必要な装備を揃えて、オレとシルバはフィールドに出ていた。

 早くバトルを試してみたかったオレはともかく、仲間を探しているシルバはそれで良いのか?と思ったのだがそれを聞くと、シルバ曰く、

 もともと夕方ごろに集まる約束をしていたらしく、何人か合流できれば集まりやすくなるだろーといった軽い気持ちで探していたのだという。

 なんでも、シルバたちのリーダーはいいヤツではあるのだが能天気な人柄で、こういう段取りが下手なためにいつも時間が掛かるのだという。

 それで、今までフィールドに出ずに街の中歩きまわるとか......良いヤツ過ぎるだろ。オジキと呼びたい。

 むしろ、コイツがいいヤツとか言っちゃうそのリーダーってどんだけだよ。

 

 まずは少し素振りをし、例のソードスキルとかいうのを確かめて、ついに実戦である。

 ちなみにオレの武器は片手剣、シルバは両手剣だ。

 本当はもっと色んな武器を使ってみたいのだが、まぁ序盤だしこればっかりは仕方ない。スキルスロットが増えるまではこれでいこう。

 お互いに1匹ずつ、初心者用モンスターともいえる青色のイノシシ《フレンジーボア》を倒したあとは興奮覚めぬまま、その辺のモンスターを狩り尽くしにフィールドを走りだす。

 どうやら、オレもシルバも飲み込みは早いようであり、気づけばこの辺りにモンスターは見当らなくなっており、景色も夕焼けで赤く染まっていた。

 

「ふぅ、つい夢中になっちまったわー!」

「あぁ、だいぶ倒したな」

「んじゃあ、オレはそろそろ街にもどるわ。ユウはどうすんだ?」

 オレも街まで戻っても良かったのだが、空に浮かぶ夕焼けを見ているとふと、このゲームでまず始めにやってみたかったコトを思いだした。

「あぁ、オレはやってみたいコトがあったから、ここに残る」

「そうか......んじゃあ、フレンド登録しようぜ」

「ん。あいよ」

シルバがフレンド申請してきたのでYesを押す。

「......よっしゃ、また今度一狩りいこうぜユウ!」

 シルバはオレの背中を叩きながら男前な笑みでそう言う。

 だから、ボディタッチが激しいんだっての......。

 

「そーいや、やってみたいコトってなんなんだ?」とシルバが聞いてきた。

 別に隠すコトでも無いので素直に教える。

「あぁ、ちょっとヒモ無しバンジーをやってみようかなって」

 

「..................ん?」

 シルバはフリーズしました。

 

「いやいやいや!ちょっと待て!正気か!?」

 そして、オーバーヒートしました。オッサンの慌て顔とか求めてない。誰得だよ。

「当たり前だろ?なんのためにSAO始めたと思ってんだ?」

「いや、ゲームするためだよな!?飛び降り自殺するためにこれ始めたわけないよな!?」

「だから、ゲームやってんだろ?それに自殺じゃねぇし、死なないから」

「そうかもしれんけどよぉ...... あっあれだ!デスペナとかあるだろ?止めといたほうがいい!」

「オレ、さっきレベル上がったばっかだから経験値は溜まってないし。ストレージに入れてれば武器もそうそう無くならないだろう。金は元々あんまり持ってない。ほら何も問題ない」

 オレは装備をストレージにしまいながら不安材料が何も無いことを説明した。

「準備万端かよ...........」

「オレは普段はヒキコモリ並みの行動力しかないが、面白そうなことには労力を惜しまない。そんな人間なのさー」

「いや..まぁいいけどよ......その、なんだ?怖くねぇの?」

「めっちゃこわい」

即答である。当然だ、いくらか死なないとはいえ怖いものは怖い。

「ならやんなきゃいいだろ......」

死なないってのに、この心配のしよう、本当にコイツはいいヤツだなぁ......

 それでもやめるわけはないけどな。

「ちょっとな......どんな感じだったのかなぁと思ってな」

「............まぁ、いいか。もう止めねぇよ。しっかしオマエさんは物好きだなぁ、今度会うときは恐怖体験でも教えてくれや」

 やっぱり男前な笑みで、シルバはそう言ってくれた。

「オジキ......」

「だれがオジキだよ!?」

そう言ってオレたちは笑いあった。

 

 

 

「んじゃ、ちょっくら逝ってくるわ」

「おう、逝ってこい!またな」

 

手を挙げて返しながら外壁のない場所に向かって駆け出す。

そのままの勢いでオレは夕日に飛びかかった。

「I can fly!!!」

「いや、それは無理だから」

律儀につっこむシルバの声に苦笑しながら、オレは仮想の重力に体を託した。

 

 

 

遠くからは鐘の音が聞こえていた。

 


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