キリトからパーティープレイについての一通りの説明を聞き、今はキリトとアスナが実践に入っている。
迷宮区付近のフィールドに沸いた《コボルド》を相手にしているので、攻撃パターンの確認もしているようだ。
オレは圏外に入って今まで一度も戦闘をしていない。
なぜかって? アスナを昨日のことで脅したらキリト引っ張って率先して狩り始めてくれたからさ。
そろそろアスナの目に殺意が宿り始めたようだが、今日は武器があるので問題ない。
「キバオウの意図が何かはわかったカ?」
キリト達の後ろで傍観していたオレにアルゴが聞いてきた。
「......やっぱり、それが目的か。」
「ニャハハ。こういう時の為の協力関係ダロ。で、どーなんだヨ?」
「......この場合のキバオウの意図ははっきりしている。アンタもわかってんだろ?」
「キー坊の弱体化、だナ。じゃあ、どーしてキー坊を狙った、いや、『狙えた』ンだと思う?」
「まぁ、単純に考えればキリトがβ上がりでキバオウもβ上がりだってのが普通なんだが、キバオウはβ上がりじゃないんだろ?」
「少なくとも、オイラの情報の中にはないナー。それに、あのアンチが演技とも思えナイ」
「だったら、キバオウにキリトの情報を与えたヤツがいるってことになる。そして、このタイミングでってことは、そいつも今回の攻略に参加している可能性が高い」
「そこまで分かっているなら、大丈夫だナ。」
「なるほど、ここまで考えさせて、オレに警戒させるのがアンタの目的か...... ホント喰えないヤツだな」
「ニャハハハ。それはオマエが言えるセリフじゃないけどナー」
「おいー、ユウ。アンタも交ざってくれよ。」
いい加減、何もやってないオレを不安に思ったのか、キリトが呼び掛けてきた。
「え?やだよ」
オレは当然のように拒否。
「いや、なんでだよ。かなり大事なコトなんだけど?」
「もう覚えたから実践は必要ない。切り替わるタイミングもオマエらを見てて理解したしな」
「覚えたって......大丈夫なのか?」
そう言って、キリトはアルゴに目を向ける。そんなに信用できないのかよ......
「まぁ、大丈夫だと思うヨ。それに、取り巻き担当なんダロ?だったら、なにかあってもユウ1人で対応できるしナ」
「いや、いくら取り巻きでもボス戦だぞ?それをビギナー1人でなんて......」
「ただのビギナーならそれでいいんだけどナー......」
会話が変な流れになりそうなのでここで割り込んでおこう。
「おい、オレはただのビギナーだろうが。1人なんて無理だからな?」
「むしろ、ソロのほうが楽とか思ってそうなヤツのくせに何を言ってるんだカ」
「............」
図星を付かれてしまって言い返せない。
だって、仲間の行動まで想定して動くのってしんどいんだもん。
「いや、それでも危険なのは変わりないだろ?それにそこまで実力があるようには......」
キリトはまだ反論してくれる。
いいぞ、そのまま押しきれ。なんか失礼な事言ってるけど流してやるから。
「じゃあ、確かめてみればいいじゃないカ」
「「え?」」
アルゴは笑いながら続けた。
「キー坊とユウで
どうやら、この鼠は本当に喰えないヤツのようだ。
なにせこれはオレだけじゃなくキリトも実力を見せることになる。
アルゴはオレにキリトは『弱体化させたくなるほど』の実力者であることを確かめろと言ってるんだろう。
オレはまた、鼠の罠に嵌まったらしい。
頭の中に、仲良く喧嘩する猫と鼠が浮かんだ。
いや、オレはあんなバカ猫じゃないな。うん。