仮想世界の先駆者   作:kotono

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第十八話

 パーティーがある程度決まったところで、ディアベルの指示に従ってメンバーの入れ替えやパーティーごとの役割を決められた。当然ながらオレたちアブレ組が主力になることはなくボスの取り巻き掃除のサポートを任された。......楽な仕事だ。ラッキー

 

 その後は、パーティーリーダーの短い挨拶、アイテムとコルの分配について確認し、ディアベルが明日の集合時刻を告げて解散となった。

 

 パーティーメンバーになった童顔イケメン《キリト》とフードで顔を隠している《アスナ》がなにやら二人で話し出したので、オレは《隠蔽》スキルを発動させながら風車前にいくことにした。

 ローテがどうとか、風呂がどうとか言ってるけどオレには関係ない。多分。

 

 

 

 

 移動中にあった露店で売られていた貫通武器《アイアンスピア》に装備を入れ替え、周囲を警戒しながら自分で指定した風車塔を登る。

 暫しの時間、風車塔の頂上に隠れ潜む。

 そして、ユウはやってきた情報屋に槍先を向けて勢いよく飛び降りた。......

 

 

 

 

「下せェー!下ろせよバカユウ!!」

 風車に体をくくりつけられ、回転を続けるアルゴを肴にユウはクリーム付きの黒パンを頬張っていた。

「はっはっはっ、良い眺めだ」

「いやっ!コワいコワい!ホント下ろして。お願いしますぅ!!!」

「おーい?キャラ崩壊してますよー?いつものカタカナ語尾はどうしたぁ?」

「ヤメテ、イヤ、ホント、オネガイ.....」

「............」

 キャラどころか自我まで崩壊しそうだったので、流石に下ろしてやることにした。

 ちなみに、下ろしかたとしては、まず肩に刺さっている槍を抜いて、次に手足をくくりつけたロープは取得したばかりの《投剣》スキルで切ります☆

 圏内だから当たっても問題ありません☆

 怖いだろうけど。

「ヒィィッ............!!!?」

 落下してきたアルゴは当然受け止めませんでした。スッキリしました♪

 

 

 

「...........ユウ。やり過ぎだと思わないのカ?」

 顔色が悪いアルゴが聞いてきた。

「思わないね。オレがアンタに指示されたクエストのせいで何度死にかけたと思ってやがる。しかも、攻略会議に出させられるし。」

「それで、肩をぶっ刺されて、風車に吊るされ、投剣の的にするのはやりすぎだろうガ!おかげで風車がトラウマになりそうだヨ!!この鬼畜メ!!!」

「へぇ、トラウマねぇ.....」

「チョット待て、落ち着け、これ以上変なコト考えるんじゃナイ」

「............」

「............」

「......まぁ、いいか。許してやろう」

「フゥ...........」

 これ以上やったら本当におかしくなりそうだしな。

 

 

 

 

 風車が怖いらしいアルゴの提案によって近くの酒場に場所を移した。

「ところで、あの《ボスの攻略本》はマズイんじゃないか?あれで、《鼠のアルゴ》が元βテスターだって勘づくヤツもでてくるぞ」

「元々オイラが元βテスターであることは隠しているわけじゃないからナ。それよりも、ボス攻略がこれ以上遅れないことのほうが今は重要なんダヨ。」

「なるほど......」

 

「それに、ユウがオイラを利用している限り、オイラの立場が堕ちるコトは無さそうだからナ」

「...........それはまた、イヤな信頼だな。それはそうと、ホレ、クエストの情報とマップデータだ。」

 オレはウィンドウを操作してアルゴに受けたクエストの報酬の情報とマップデータを送った。

「まいどあり、じゃあ、こっちはどんな情報が欲し......ェ?」

「?おい、どーした?」

「......これ、自分で集めたのカ?」

 そういって表示したのはオレが送ったであろうマップデータだった。

「え?あたりまえだろ?オレにマップデータくれる奴とか誰がいんだよ......」

「いや、オマエ、これ第一層全て埋まってるじゃないカ......迷宮区もボス部屋まで埋まってるシ......」

「あぁ、苦労したんだぞ。冗談じゃなく何度も死にかけたし。」

 

 アルゴは戦慄した。

 フィールドのほぼ全域を埋め尽くされたマップ。

 半分くらい達成できればいいかと思って送ったクエスト欄のほぼ全てに詳細な情報が記載されているデータ。

 普通のゲームならいざ知らず、デスゲームであるSAOで、これはあきらかにたった一ヶ月で個人が出来る範囲を超えている。

 この瞬間、アルゴは自分の選択の正しさを改めて認識した。

 

 ピコン♪

 メッセージの通知音が鳴る。

 アルゴはウィンドウを開いた。

 送り主は『キバオウ』。内容は......

 

 ウィンドウを閉じて、アルゴは立ち上がった。

「おいユウ、ちょっとオネーサンに付き合いナ♪」

「............アンタいったいいくつだよ?」


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