仮想世界の先駆者   作:kotono

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第十五話

 アルゴに指定された、《トールバーナ》の噴水広場にはなぜか人が集まっていた。

 そいつらは皆一様に中央を向いて段差に腰かけていた。

 どうやら何かイベントでもあるようだ。

 

「(......なにかはじまるのか?アルゴは何も言わなかったけどなぁ?あの鼠が人の目のある場所を指定した?)」

「(嫌な予感がする。とりあえず逃げるか。)」

 

 そこまで考え、踵を返そうとした時、ひときわ大きい声が聞こえた。

 

「はーい!それじゃ、五分遅れだけどそろそろ始めさせてもらいます!みんな、もうちょっと前に・・・・・そこ、あと三歩こっち来ようか!」

 声は聞こえたが、自分には関係ないと割りきって下がろうと思っていたユウだが、一番後ろにいたせいで中央にいるプレイヤーに指示され、逆に三歩前に出なければいけなくなった。

「(ちょっと!?アイツなにやってくれてんの!?この流れで「あ、オレ違います」とか言えってのか?無理でしょ...... つーか、人を『そこ』とか言ってんじゃねぇよ。)」

 

 心のなかで悪態を吐きまくり、声の主を恨みをこめて睨み付ける。......すげぇレベルの高いイケメンだった。

 しかし、声の主には伝わるわけなく、それどころかニコッっと擬音がしそうな爽やかスマイルを浮かべて頷き再び声を張った。

 くそぅ、イケメンめ......なんだよこの敗北感は。

「今日は、オレの呼びかけに応じてくれてありがとう!知ってる人もいると思うけど、改めて自己紹介しとくな!オレは《ディアベル》、職業は気持ち的に《ナイト》やってます!」

 そうディアベルが言うと、口笛や囃し立てる声がこの空間に溢れる。

 ちなみに、ユウは......

「(ぐはっ!目がぁっっ!!心が浄化されるぅぅ!!!)」

 溢れんばかりのリア充感に当てられ(精神的に)ダメージを喰らっていた。

 

 爽やかスマイルを崩す気配もなくディアベルは演説を続けた。

「さて、こうしてトッププレイヤーのみんなに集まってもらった理由は、もう言わずもがなだと思うけど......」

............ん?トッププレイヤー?

「......今日、オレたちのパーティーがあの塔の最上階へ続く階段を発見した。つまり、明日か明後日には、ついに辿り着くってことだ。第一層の...........ボス部屋に!」

............ん?ボス部屋?発見?

「一ヶ月。ここまで一ヶ月もかかったけど......それでも、オレたちは、示さなきゃならない。ボスを倒し、第二層に到達して、このデスゲームそのものもいつかきっとクリアできるんだってことを、はじまりの街で待ってるみんなに伝えなきゃならない。それが、今この場所にいるオレたちトッププレイヤーの義務なんだ!そうだろ、みんな!」

 そう言ったディアベルに喝采が鳴り響いた。

「...........」プルプル......

 そんな中、ユウは体を震わせていた。

 そう、ようやくこれが『攻略会議』であることに気づいたのだ。

 ピコン♪

 メッセージの通知を知らせる音が聞こえた。

 誰から送られてきたのか確信しながらもメッセージを読む。

『どうやら、有意義な会議になっているようだナw 今のオマエ、スッゴくいい顔してるヨ?ww』

 ご丁寧に草までついてやがった。

「..................」

「(あのくそ鼠ぃぃ!!嵌めやがったなぁ!!!)」

 声に出せない絶叫がユウの身体中をめぐっていった。

 


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