八幡と、恋する乙女の恋物語集   作:ぶーちゃん☆

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スミマセン><
なかなか筆が進まず、今回超短いです><
ヤバい久々のスランプかもん。そしてもしかしたら今まで書いてきた中で一番短いかも?(白目)





卒業 〜graduation2〜

 

 

 

 ──こっちだよな? あれ? もう一本隣の道か?

 

 

 キョロキョロと、鋭く腐った目付きで住宅街の中を舐め回すように探索している俺は、どこからどう見ても不審者そのもの。これはもう通報待ったなしの事案ですわ。

 

 そして110番されないよう辺りの目に警戒しつつ(腐った目で辺りを警戒している時点でアウト)もう一本隣の路地を覗き込んだ瞬間だった。

 

 

「あ、こっちこっちー!」

 

「……う、うっす」

 

 そろりと路地を覗いた瞬間に合った目と目。

 元気な笑顔で手をぶんぶん振って、こっちへ来いと促す人物の下へと遠慮がちに駆け寄る俺の顔は、少し赤くなってはいないだろうか?

 

 

 

 ルミルミとのあの衝撃の邂逅から数日。俺は今、本日付を持って留美が巣立つ小学校前へとやってきている。

 正確に言うと、小学校前というよりはほんの少しだけ離れた一本入った路地なのだが。

 

「うふふ、あなたが八幡くんねー? キミの事は留美からよぉっく聞いてるわよ?」

 

 くっ……! よ、よく聞いてるって、一体なにを聞いてるんですかね……?

 

「ほんっとに疲れ切ったサラリーマンみたいな目をしてるのね! 私すーぐ分かっちゃったわよぉ。でも思ってたよりずっとイケメンくんでびっくり! もう、勿体ないわね〜、背筋をしゃんとすればもっとカッコいいのに〜」

 

「……そ、そすか」

 

「うん! ほら、背筋伸ばして伸ばして〜。うふふ、今日は留美が無理言っちゃったみたいでごめんなさいね? でも来てくれて本当にありがと。あの子、喜ぶと思うわ」

 

「い、いえ、こちらこそお招きいただきまひて……」

 

 おうふ……初対面のすげぇ綺麗な女性と話すとか無理ゲー過ぎんだろ……。なんかイケメンとかって気を遣われちゃってるし。

 てかなんで俺の周りって美人率が異様に高いのん? ばっか、リアルにはこんなに美人ばっかいねーぞ!

 

「ふふっ、そんなに緊張しなくたって大丈夫よ! って言っても知り合い? お友達? 彼女? の母親に初対面じゃ、そりゃ緊張もしちゃうわよねー」

 

「……う、うす」

 

 初対面でも綺麗な女性でもなければここまでは緊張しませんけどね。

 多分これが材木座の母ちゃんだったら安心しちゃうんだろうなぁ……。材木座の母ちゃんに失礼すぎだろ。

 

 …………ん? なんかいま最後に恐ろしい単語を付け加えてませんでしたか……? き、気のせいだよね。

 

 

「それではあらためまして。んん! 初めまして八幡くん! 鶴見留美の母でございます♪」

 

「こ、こちらこそ初めまして。ひ、比企谷八幡と申しまひゅ」

 

 

 

 こうして、俺と鶴見留美の母親との初顔合わせは、このようにして無事に(?)完了したのである。

 

 ……ど、どうしてこうなった……?

 

 

 

『わ、私さ……来週が卒業式なんだけど、その……は、八幡、卒業式に……来てくれない……?』

 

 

 そう、それはあの日、留美から意味不明の依頼を受けてしまったから。

 

 

× × ×

 

 

「いやちょっと待てお前。意味が分からないんだが……」

 

 さすがの俺も意味がわからなすぎて頭カラッポになっちゃうレベル。でも夢はこれっぽっちも詰め込めそうもありません。

 

「……留美」

 

「お、おおう、すまん留美。……で、意味がちょっと……」

 

「……意味が分からないもなにも、卒業式に来て欲しいって言ってるんだけど。そんな簡単なことも分かんないの? 八幡ってホントばか」

 

 きっつ! 度重なる「お前」に対して怒っているのか、そんな不機嫌さも相まって目も口調もきっつ!

 

「い、いや、意味は分かるんだが──」

 

「分かるんじゃん」

 

「お、おう……」

 

 ねぇねぇちょっと? 俺ってばルミルミの尻に敷かれすぎじゃないかしら。

 女子小学生(美少女)の尻に敷かれるとか、ごく一部の紳士にとってはご褒美以外のなにものでもない。まったく、小学生は以下略。

 

「……意味ってのはそういう意味じゃなくてだな……、その……なんで俺がおま……留美の卒業式に行くって話になるんだ? ……という話なんだが」

 

 あっぶね! またお前って言っちゃうとこだった!

 この子お前とルミルミにホント敏感に反応するからね。それはもう知覚過敏かよってくらいすげぇ過敏。ビクンッとするのは俺の方だけど。

 

 それはそうと、俺が留美の卒業式に参列するってどういう事?

 あれかな、実は留美って俺の隠し子だったり未来から来た俺の娘だったりするのかな?

 こんなアホなこと口に出したらまた冷たい目で睨まれてゾクゾクしちゃうから、間違っても口には出さないけど。

 

「……えっと、それは、ね──」

 

 

 

 ──留美の話によると、どうやら親父さんが今週末から急に海外に出張になってしまい、愛娘の晴れの日を一緒に過ごせなくなってしまったそうだ。

 これが中学生になって思春期なんかに突入しちゃうと「え……? お父さん卒業式、来られないんだ……ッ……♪」なんて、落ち込むフリを隠す努力を怠って、父親を涙の海のドン底に突き落とすところなのだろうが(小町ちゃん? もうちょっとだけでもいいから親父を労るフリをしてあげて!)、小学生の留美からしたら、父親が卒業式に来られないのは堪らなく寂しい事だろう。

 

 ちなみに余談だが、留美の父ちゃん、それはもう行きたくない行きたくないと涙ながらに駄々を捏ねたそうだ。

 おいおい鶴見父大丈夫かよ、とは思ったが……、そりゃね? 俺だって急な仕事で小町の晴れの日に参列出来なくなったら泣いて駄々捏ねちゃうだろうしね。……ああ、やっぱ仕事したくねぇなー。

 

 まぁそんなわけで元々両親二人で参列する予定だった卒業式に母親一人での参列となったらしいのだが、元々予定していたぶん席が一つ空くし、「だったら八幡がいい」との留美の謎発言によって、なぜか俺が一緒に同行する事となったらしい。

 

 ……うん。やっぱり意味が分からないよ。

 同行する事となったらしいもなにも、俺了承してないし。

 

「……だめ?」

 

「うぐ……っ」

 

 あらかた説明が済んで俺が難色を示した表情をしていると、つい先程までつんつんしていたルミルミが、今度は弱々しい上目遣いで俺のライフをごりごり削りにくる。なにこの子ズルすぎないかしら?

 手伝おうとしたのに「八幡いい、いらない」とかって無理に強がってた子の、こんな素直なお願いを断れるわけがないではないか。

 

 

 ──いや、でもなぁ……

 

「……し、しかしだな、俺みたいな他人……しかもこんな怪しいヤツが、縁もゆかりもない小学校に乗り込むのもなぁ……」

 

 母校ならまだそこまで抵抗もないのだが、さすがに見ず知らずの小学校に入っていくのはかなりキツい。てか普通に捕まるでしょ。

 今までさんざん冗談半分で事案だの通報だのと言ってはきたが、これはマジモンですよ、ええ。

 

「ん、それは大丈夫。学校前でお母さんとこっそり合流すればいいでしょ? 親戚ですとかなんとか言ってお母さんと一緒に学校入れば問題ない」

 

「」

 

 ……た、確かに。なにせ母親が一緒に居るのだ。

 学校運営にとってペアレントは神様です。でもモンペになっちゃうと、神は神でも貧乏神になっちゃうから気を付けて欲しいのねん。

 

 だからいくら俺が怪しかろうと、黙ってたって母親が会場の席まで連れていってくれるだろう。

 でもそれ以前に知り合いの母親……しかも初対面と二人って時点で難易度インフェルノなんですがそれは。

 

「そ、そもそもな……?」

 

 だから俺は抵抗する。それが無駄な抵抗だと分かっていても。

 そう。負けると分かっていても、挑まなければならない戦いが漢にはあるんですよ!

 

「……な、なんで俺なの?」

 

 と、あまりにも弱々しい声で、覚悟の上で戦いに挑む漢とは思えない情けないお伺いを立てると──

 

「……そ、それは……ね」

 

 小学生女子とは思えない程に飄々としていたこれまでとは一転、途端にポッと頬に朱色を加えるルミルミ。

 ……そして、そのあまりにも可憐で艶やかな桜色の唇をゆっくりと開く。

 

 

 

「……卒業する私を、八幡に見てもらいたかったから……」

 

 

 はいはい惨敗惨ぱーい。こんなの初めっから勝てるわけないじゃないですかーやだなぁ。

 

 

 

 ──正直その答えは俺の質問の意図とは違っていた。違っていたのだが(てかむしろその答えの理由を知りたいから聞いたんだけどね)、なんかもうそんなのどうでもよくなっちゃいましたね。ちっきしょう、可愛いなぁ、こいつ。

 

 

 

 ……これはあれだから! ロリコンじゃなくて、シスコンの血が騒いだだけなんだからぁッ!

 

 

 

続く

 

 






そして終わらないというね。

元々最後まで書き切るつもりが筆が進まず2話に分けちゃったので、次回のラストも短いような気がします('・ω・`;)



ではまた次回ですノシ


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