八幡と、恋する乙女の恋物語集   作:ぶーちゃん☆

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女神さまより安定の中編を授かりました(-人-)






ああっ女神(めぐり)さまっ 【中編】

 

 

 

 可憐な顔を真っ赤に染め上げ、もじもじと不安そうにクリスマスのお誘いをしてくる女神さま。

 年上の女性に対してこういう言い方が合っているかと言えばたぶん合ってないとは思うけれど……うん、ぐうかわ。可愛すぎて生きるのが辛いレベル。

 

 

 にしても、いくら暇なクリスマスとはいえ、せっかくのクリスマスに俺なんかを誘うメリットなどあるのだろうか? むしろデメリットしかなくない?

 ……まぁ、自分だけ受験勉強が大変ではない中、戦場に身を置いている周りの友人達に気を遣って、一人で暇に過ごさなくてはならない高校生活最後のクリスマスなんて、めぐり先輩のような『み〜んなと一緒に楽しく過ごしたいな♪』って人には寂しくてたまらないのだろう。

 めぐり先輩はうぇいうぇい勢と違って、どちらかというと家族でほんわかとクリスマスを過ごしそうなイメージではあるけれど。

 

 

 

 ──だがしかし、俺はこの可愛すぎる先輩にこの事実を伝えなければならない。

 美少女にクリスマスを誘われるなんて奇跡、もう二度と訪れないであろう事を考えると、正直血の涙が流れちゃいそうなほど勿体ないんだけど……

 ああ、これが天罰ってやつか。

 

 

「す、すみません……今からマリンピアのケンタでパーティーバーレル買って、受験生の妹に届けなきゃならないんですよ……で、明日は明日で奉仕部関連でのクリスマスパーティーとやらをする事になってまして……」

 

「……え」

 

 …………ぐぉぉ! む、胸がっ……胸が痛いよぅ……!

 だってこの人、いま絶対脳内で「がーん……!!」て言ってるもん! そう断言できるくらい、すげぇ分かりやすい顔してんだもん!

 

「……あ、あはは、そ、そうだよねー……! いきなりお誘いしたって、予定くらい入ってるよねー……! わ、私なに言っちゃってんだろうねっ……」

 

 えへへ……と、恥ずかしそうな寂しそうな、見るからにシュンっとした笑顔で気まずそうに微笑むめぐり先輩をつい抱き締めてしまったとしても、誰も文句など言えやしないだろう。

 いやいやもちろん抱き締めませんけどね。ギリギリのところで。いやマジでヤバかったです。

 

「……えっと、あ、あぁじゃあ明日城廻先輩も来ればいいんじゃないすかね!? 先輩が来たらあいつらも喜ぶと思いますし……」

 

「そ、そんなの行けるわけないよぉ……! お呼ばれもしてないのに、三年の私なんかがいきなり行ったって、せっかくの場を変な空気にしちゃうというか……迷惑にしかならないもんっ……」

 

 ……いや、どうせ呼ばれてなくてもなぜか材木座とか普通に来て、場を変な空気どころかツラい空気にしてくれそうだし、いまさら上級生が一人くらい全然問題ないんだけどね。

 そりゃ俺がめぐり先輩を誘ったなんて言ったらみんな驚くとは思うけど。そもそも俺にゲストを呼ぶ権利なんてあるかどうか自体が疑問。

 

「そ、そんなこと無いっすよ」

 

 俺の権利うんぬんはこの際一旦置いておいて、実際そんな事はないだろう。

 なんだかんだでめぐり先輩もかなり奉仕部と関わってるし……というか、文化祭と体育祭と生徒会選挙って、実は依頼者としては一番長い時間関わってんじゃねーか? あ、文化祭の依頼者はめぐり先輩じゃないわ。

 まぁそれはともかく、雪ノ下と由比ヶ浜にとっても、この人は数少ない信頼できる先輩だろうし、めぐり先輩が来たからって変な空気とか迷惑とかは絶対に無いだろう。

 

 だから気を遣うとかそういう気持ちは一切抜きで誘ったのだが、この先輩は寂しそうな笑顔を浮かべてこう言うのだった。

 

「……んーん? ホントにいいの。……いきなり変なこと言っちゃってごめんね? ……えへへ、誘ってくれてありがとね」

 

 

 

 ……守りたい、この女神……

 

 

× × ×

 

 

「おう、小町か」

 

『お兄ちゃんお疲れー、どったの?』

 

「すまん、ケンタ買って帰るの、ちょっとだけ遅くなっても構わねぇか?」

 

『ん? もしかしてクリスマスイベントの後始末とかで、思いのほか時間掛かってたりすんの?』

 

「……あ、いや……まぁそんな感じだ」

 

『……ほっほう…………んー、小町は大丈夫だよ。てか今日のクリスマスイベントの手伝いで勉強遅れちゃったから今やってるんだけどさー、リフレッシュしたぶん調子いいのか、いま結構ノッてるんだよねー♪ こんなにいい感じなのは久し振りなのです! だからむしろ遅くなるの推奨? なんなら帰ってこなくても可?』

 

「おい、聖夜に締め出しとかお兄ちゃん泣いちゃうからやめてね? そういうのは親父だけにしといてくれ」

 

『むふふ〜。ま、とにかくチキンは夜食でも構わないからさ、せっかくのクリスマスなんだし、お義姉ちゃん候補とゆっくり楽しんできてね! 幸せなお兄ちゃんの笑顔こそが、小町にとっての最高のクリスマスプレゼントだよ☆ あ、今の小町的にポイントたっかい〜』

 

 なんでだよ……と言ってる最中にブツリと電話が切られました。小町ちゃん? お兄ちゃんの話は最後まで聞こうね?

 

 どうやら小町は盛大な勘違いをしているようだが、勘違いとはいえ受験生に変な気を遣わせちまったな。

 すまん小町。俺の天使No.1は間違いなく小町なんだが、今この瞬間だけは目の前の女神にやられちまったよ。

 これは愛妹へのクリスマスプレゼントに、さらに愛を増量して贈らなければ!

 

 そう固く決意をしながらスマホをコートのポケットにしまうと、突然いずこかへと電話を掛け始めた俺を唖然と見つめていためぐり先輩へと向き直る。

 

「……ど、どうしたの比企谷くん? いきなり電話掛け出すからビックリしちゃったよー……!」

 

「あ、す、すいません……ちょっと家に電話してまして。…………で、あー……っと……、妹に確認取ったらちょっとくらい遅くなっても構わないっていうんで、もし城廻先輩さえ良ければ、マリンピアに付き合ってもらえませんか……?」

 

 ぐぬぬ……これは恥ずかしい……

 なんで俺、クリスマスイブにめぐり先輩をデートに誘うみたいなセリフを吐いてるのん? どうしてこうなった……

 ほんの一、二時間くらい、買い物ついでに一緒にどうですか? って程度の事だってのに、俺には難易度高過ぎっすよ。

 

「…………へ?」

 

 そんな、デートの誘いとも言えないようなおかしな誘い文句に、めぐり先輩は事態が飲み込めないようで、きょとんと小首を傾げる。

 が、首をこてんと倒しながらも次第に俺のセリフの意味を理解していったらしく、その表情は徐々にぱぁっと花が咲き始めた。

 

「ほ、ほんと……!? ほんとにいいの!?」

 

 え、ちょ……たかだか俺なんかとちょっとマリンピアに行くくらいで、そんなに顔が綻んじゃうの?

 なんだかむず痒くって、つい俺の口元も弛んじゃうじゃないですかやだー。

 

 しかし一転めぐり先輩は、その喜びの表情をぐぐっと無理やり押さえ付けて、申し訳なさそうに訊ねてくる。

 

「……っで、でも……! 受験生の妹さんがお家で待ってるんだよね……? じゃあやっぱり駄目だよ。私のワガママに比企谷くんと妹さんを付き合わせるわけにはいかないよ……っ」

 

「……それなんすけど、今ちょうど勉強がいい調子らしくて、妹自身がなるべく遅く帰ってきてくれって言うんで……大丈夫です」

 

「そ、そうなの?」

 

「はい……」

 

「…………やったぁ!」

 

 そしてめぐり先輩は、今度こそ満開の笑顔の花を咲かせた。

 ……くっ……なんだよこのコロコロ変わる素の表情。やっぱ天然物のふわぽわさんの破壊力はヤベェよ……

 ねぇねぇどこかのいろはすさん? これが本物ってやつだよ?

 

 

「じゃあじゃあ時間勿体ないし早く行こ!? なるべく早く妹さんに比企谷くんをお帰ししなくっちゃだしね! よーし、せっかくのクリスマスだし、思いっきり楽しんじゃうぞー、おー!」

 

 ちょっとめぐり先輩? さすがに駅前でそれは恥ずかしすぎるんですけど……

 今まで何度か掛け声に付き合ってきましたが、さすがに今回ばっかりは勘弁してください! と顔を熱くしていると……

 

「楽しんじゃうぞー、おー!」

 

 ……あ、これやっぱループ物や……やらないとイベントが先に進まないやつですね分かります。

 

「……お、おー」

 

「えへへぇ」

 

 そしてめぐり先輩はどんだけ時間が惜しいのか、突然俺の手をがっしりと握り、おもちゃ売り場へ親を引っ張っていく子供のように、元気にマリンピアへと向かうのでした。

 

 

 

 

 

 余談だが、めぐり先輩のすべすべ柔らかお手々の温もりに赤くなっていたら、勢いで手を繋いでしまったことに気付いためぐり先輩が「はわわわっ……」と茹でめぐ☆りんになってしまったのは、めぐり先輩の名誉の為にも墓まで持っていこうと思っている。

 

 

 

 

 

続く

 







かなり短くなってしまいましたが、ラストまで一気に行くよりもここら辺で一旦切っとく方がいいかなー?と判断した為、今回はここまでということで……(^人^)



ではでは今度こそ後編でお会いいたしましょう(^^)ノシ


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