八幡と、恋する乙女の恋物語集   作:ぶーちゃん☆

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ハッピーバースデー八幡!


ホントすみませんorzすでにこれは生誕祭SSでは無いですね(白目)
結構気合い入れて書いてた長編を終わらせたら燃え尽き症候群になってて、しばらく放置してしまいました(吐血)


それではどうぞ!




恋するオリ乙女たちの狂宴 〜あの八幡を鳴らすのはあなた〜 【後編】

 

 

「初めまして、愛川愛と申しますっ。そうなんですね〜、二宮先輩は比企谷先輩の中学の同級生なんですか〜。……わ〜、ちょっと羨ましいかもっ……」

 

 ちょっと愛川さんとやら? 最後にぽしょりと付け加えた一文が丸聞こえなんですが。

 ホラ……比企谷君も真っ赤になっちゃってるじゃない……! え、なにこれ天然なの?

 

 

 

 私は今、初顔合わせとなった総武高校二年生の女の子に自己紹介されている。

 

 てかなんで普通に同席してんでしょ。あなた自分の席があったんじゃないの?

 しかもあとから来たクセに普通に比企谷君の隣に陣取ってるし。

 

 なんで私は香織ちゃんと肩寄せ合ってるのん?

 

 

 

 ──どうやら比企谷君がトイレから出た時にこの愛ちゃんて子が洗面台でメイクを直してて、せっかくだから付いてきたらしい。

 ナチュラルメイク過ぎて、どっか直す必要性あるの? ってくらいだけど。

 こんなにナチュラルメイクなのにわざわざ直すとか、まるでデートの待ち合わせ時間直前の女の子みたいなんだけど、もしかしてこれからデートだったりするのかな?

 ってそんなわきゃーない。どう見てもこの子の想い人って我が愛しの王子様だもん。だってそれは、へんじがない、ただのかしこまのようだ、な隣の女の子がソース。

 ……マジですか比企谷君。あなたまたハーレムを広げたの? なんでこんなに可愛い子ばっかり……

 でもこのリア王はあれだけ美少女に囲まれてるってのに、なんで香織ちゃんは今さらこんなにビクンビクンしてんだろ。

 いやまぁそんな美少女達を出し抜いてようやく誕生日デートをもぎ取った矢先に、次から次へとこうも刺客が送り込まれれば白目も剥きたくなるだろうけどさ。

 

 しかし、そんなかしこまがようやく再起動。

 愛ちゃんとやらに向けて疑問を投げ掛ける。

 

「……ねぇ、えと、なんで愛ちゃんこの駅前のカフェに居たの? 確か愛ちゃんちって、いろはんちの方だよね……?」

 

「ひぇ……? 」

 

 その疑問に明らかに動揺を隠しきれない愛ちゃん。

 あ、そう言えば前にどっかで聞いたな。確かいろはすちゃんちって、モノレール乗った先にあるとかなんとか。

 確かに家がそっちってことは、なにかしらの理由でもなければココには居ないはず。友達でも近くに住んでんのかな?

 

「……え、えへへ……ちょっとお散歩してたら、気付いたらここに居たの……!」

 

 はいダウト出ました。

 真夏の真っ昼間に何時間散歩すりゃ気付いたらこんなトコにいんのよ。夢遊病患者だって途中で脱水症状になって気が付くレベル。

 

「いやいや愛川、ちょっと散歩ってレベルじゃねぇだろ……なに? 趣味は競歩?」

 

 と、さすがの比企谷君も全力でツッコむ。ただこんな可愛い女の子に向かって「趣味は競歩か?」と聞く比企谷君マジ男前。

 ちなみに香織ちゃんは愛ちゃんのお間抜けな言い訳に開いた口が塞がらない模様です。

 

「ち、違うんでしゅよ……! あ、あの、ちょっと午前中に学校に用事がありまちてっ……が、学校からお散歩って意味なんでちゅ……す」

 

 しゅとかちゅとかわざとやってんのこの子? 反則すぎな噛みっぷりだろ。真っ赤な顔して慌てちゃって、もう可愛いすぎて殴りたい。

 いや、まぁ私も未だにリア充に話し掛けられると緊張して噛んじゃうけどさ、これはさすがに反則だって。

 この子は比企谷君に不意に話し掛けられると、緊張して噛んじゃうのかな? なんで私の無惨な噛みっぷりと違ってこんなに可愛いんだよちくしょう。

 

 

 ……なんだろうかこの子。なんか、私の周りの……てか比企谷君の周りに居る子たちとはなにかが違う。

 

 なんていうか……正統派?

 だってさ、私の周りにいるヤツって言ったら、デリカシーゼロなフリーダム星人の折本さんと仲町さんじゃない?

 んで、比企谷君の周りに居るハーレム要員って言ったら、とにかく一癖も二癖もある変な子たちばかり。

 ツンデレDV雪女は居るわアホおっぱいは居るわ小悪魔の皮を被った鬼は居るわ。あと爽やかホモイケメンも居たわね。

 おまけに残念隠れオタクに脳内暴走ぼっちと来たもんだ。なにこの色モノ集団。

 やだ! 色モノ集団の中にナチュラルに自分も入団させちゃってた!

 

「いや、まぁ確かに学校からなら歩けない距離じゃねーけど……熱中症とか気を付けろよ?」

 

「〜〜っ! ……えへへ〜、はい! ありがとうございますっ」

 

 あらあらまぁまぁ、比企谷君に心配してもらって嬉しそうなこと嬉しそうなこと。

 つか比企谷君さぁ、あんたなに自然の流れでスケコマシてんの? なんか愛川さんに甘くない? てかさっき本屋で出会った時、私にそんな優しい声かけてくれてなくね?

 

「でも去年まで女マネで真夏だって校庭で走り回ってたんですよ? ふふっ、だからこんなのぜ〜んぜん平気ですっ」

 

 ぴこっと人差し指を立てて可愛くウインクする愛川さんに、「お、おう、そういやそうだな……」と照れたご様子で愛川さんから目を逸らす比企谷君。

 

「比企谷先輩こそとっても珍しいですよね、こんなお昼からお外に出てるだなんて。普段お外に出てないんですから、先輩の方こそ熱中症とか気を付けた方がいいですよ〜?」

 

「……おう、ま、問題ない」

 

「ふふふ」

 

 うん。いたずらっぽく微笑む天使の笑顔にはにかむ王子様の構図ですね。

 

 ……あっれー? なにこのデレデレっぷり。こんな比企谷君見たことないんだけど。

 

 

 そしてなによりも問題なのは、えっとぉ……私と香織ちゃんの霊圧が完全に消えちゃってるのよね、さっきから。なんなの? 邪な私達は浄化されちゃったの?

 ハッ!? だから香織ちゃんさっきビクンビクンしてたのか! この子が居ると自分が空気になっちゃうって分かってたのね!?

 

「……えと、夏休み中もお勉強の方、順調に進んでますか……? 正直、こればっかりは私にはなんにもお手伝い出来ないんで心苦しいです……」

 

「おう、まぁ順調だから気にすんな。てか愛川に心配されるような学力じゃねぇっつってんだろ? 余裕だ余裕」

 

「ふふっ、それはどうですかねぇ。まったくー、先輩が数学捨ててなきゃ、もっと大学の選択肢だってたくさんあって、こんなに心配しなくても良かったんですよ? 今からでも数学やる気があるんなら、私が教えてあげますからねっ」

 

「……なんで後輩に教えてもらわにゃならんのだ……まぁ、なんだ……ありがとな」

 

「……えへへ」

 

 未だ続く桃色天上空間。

 私は今、天界にて天使との邂逅をはたしてるのかな? 違いました、天使との邂逅にデレデレと鼻の下を伸ばしてる王子様にまとわりつく小バエでした。

 ……どうしよう。私ってば完全に卑屈になりだしちゃったわ? これはイカン。

 

 でも、確かに正統派な天使ちゃんにしか見えないんだけど、なんかちょっと引っ掛かるというか……やっぱりどこか一癖か二癖はありそうなのよね〜、この子も。

 

「す、すいませーん……わ、私もちょっとトイレ行ってきますー……」

 

 と、ここで香織ちゃんが一旦撤退する模様です。

 そりゃね? これはちょっと居たたまれないわ。

 私、ここにひとりで残されてどう抵抗すればいいんだろうか……これはキツい……! だが負けるわけにはゆかぬ……!

 

 と、不意に制服の袖が引っ張られた。

 はて? とそちらを見ると、香織ちゃんが袖をつまんでくいくいと引っ張っていた。

 

 「なによ……?」と目線だけで伝えると、香織ちゃんは顎をクイと上げて、「お前も来いや」と無言で私を促す。その間、実に0,1秒のアイコンタクト。

 達人かよ、通じ合いすぎだろ。

 

「わ、私も行ってこよっかな〜……」

 

「はい」

 

「おう」

 

 そして私達は桃色空間からのデレデレな念を背中に感じつつ、仲良く連れショ……連れお花摘みに興じるのであった。

 

 

× × ×

 

 

「……どうかしたの? 家堀さん」

 

 仲良く無言のままトイレに入った途端に、私は早速香織ちゃんに訊ねた。なぜ私を連れ出したのかを。

 

「……二宮先輩をお呼びしたのは他でもありません……。お気づきかとは思いますが、アレはヤバいんです……」

 

 アレ。まぁアレとはアレの事だろう。

 

「いや、ヤバいのは薄々感じてはいたけどさ、そんなにヤバいの……?」

 

「それはもいマジヤバいです。どれくらいヤバいかって言うと、ハーレムの中でいろはが一番警戒してるってくらいヤバいです」

 

 なにそれヤバすぎィ!!

 だってあの子、私に対してもかなり警戒しまくってたよ? それはもう血ヘド吐いちゃうくらいに。私が。

 しかも一番警戒してんのが雪ノ下さんとか由比ヶ浜さんでさえ無いんだ!?

 

「……えと、二宮先輩は……戸塚先輩って、知ってますか……?」

 

「戸塚君……!?」

 

「あ、知ってるんだ」

 

「……いや、ちょっとね」

 

 戸塚彩加。忘れるかよ、忘れるわけがないだろう、あの屈辱の日を……

 

 

 

 ──あれはそう。比企谷君と劇場版プリキュアを見に行った(泣き落とし&強制)帰り道の事だった。

 

『いやー、楽しかったね、比企谷君っ』

 

『おう、映画館で見たのは初めてだったが、やっぱいいな』

 

『えへへ〜、あんなの私が居なかったら、絶対比企谷君ひとりじゃ見にいけないんだからねー』

 

『……うっせ、お前が観たいっつうから来たんだろうが。……ま、まぁ、二宮が居て良か…………チッ』

 

『ふふっ』

 

『あれ!? 八幡!? わぁ! お休みの日に偶然会えるだなんて、ぼく今日はすっごく運がいいよ〜』

 

『と、戸塚!?』

 

『……誰!? ……まさかのボクっ娘……だと……?』

 

『お、俺もツイてるわ……で、今日は買い物かなんかか?』

 

『うん! ちょっと新しいラケット見に来てたんだぁ! 八幡は…………あ、も、もしかしてデートとかだった!? な、なんかお邪魔しちゃってゴメンね』

 

『ま、待ってくれ戸塚! それは誤解だ! すげぇ誤解! こ、こいつは中学んときのただの友達だ!』

 

『…………。ど、どーもー、比企谷君の中学のときの“ただ”の友達の二宮と申しま〜す……(白目)』

 

 

 ……やー、あの時はついに比企谷君の本命が現れちゃったのかと思っちゃいましたね。

 でも戸塚君と別れた後に、戸塚君が男だと信じられない事を聞かされて、私はさらなる絶望を知ったのだ。

 どうも、男の子相手に必死で「待ってくれ! 誤解だ!」と弁明されちゃう女でお馴染みの二宮美耶です。

 もう女のプライドズタズタだよ。許すまじ戸塚彩加! 許しちゃいけないのは比企谷君の方だろ。

 

「……ど、どうかしました? 二宮先輩」

 

「……あ、いいの。ちょっと女としての人生を振り返ってただけだから……」

 

「……ああ」

 

 納得されちゃったよ。どうやら戸塚君の被害者は私だけじゃなかったみたいで美耶安心。

 

「で、どーしていきなり戸塚君が出てくるの?」

 

「えっとですね……まぁ女としてのプライドをズタズタにされた二宮先輩なら分かってるとは思うんですが」

 

 うるさいよ確かにそうだけど余計なお世話だよ。

 

「比企谷先輩って、戸塚先輩が大好きじゃないですか」

 

「それはもうホントにね」

 

 もしも私が腐海の住人だったのなら、泣いて鼻血噴き出して喜んじゃうレベル。

 あいにく私はBLにはそんなに興味が無いからそこまで喜ばしいモノではないけれど。

 

「……でですね、……愛ちゃんってあの醸し出す雰囲気とかから、一時期私達の間では女版戸塚って呼ばれてた程の逸材なんですよ」

 

「……ハッ!?」

 

 そうだよ、なんで気付かなかったかな、あの桃色天上空間! そしてあの置いてきぼりの空気感!

 さっきの娘って、確かに戸塚君的オーラまとってたじゃない。

 

「……てことは……」

 

「そうなんです……あれだけ戸塚先輩が大好きな比企谷先輩が、愛ちゃんにデレデレにならないわけが無いじゃないですか……だから最重要警戒人物なわけなんです……」

 

 

 なんということでしょう……! まさかさらにこんな隠し玉があっただなんて……!

 隠し玉どころか本命の玉きちゃったよ。

 

 

「……しかも愛ちゃんって、バレンタインで比企谷先輩に告ってるし」

 

「ぶふぅっ!?」

 

 な、なんですと……!? 私と再会する前に告白され済みなのん?

 え? もしかして比企谷君ってすでに彼女持ち……?

 

「まぁなんと先輩は愛ちゃんを振ったらしいんですけどね」

 

「マジで!? あ、いや、そりゃそっか……」

 

 だ、だよね、私が告白した時、彼女が居るとか言ってなかったもんね……あー、ビビったわ。

 にしても女版戸塚君を振るのかよ比企谷君……どんだけ難攻不落な真ヒロインっぷりだよ。

 あ、なんかちょっと優越感。私って、そんな比企谷君に中学時代に告られてんだよね。まぁ振り返されちゃったけどっ!

 

「……あ、あれ? 振られたんなら、そこまで警戒する事もなくない……? 普通振られたらゲームオーバーでしょ」

 

 やだそれじゃ私もゲームオーバーじゃない。己の首を力一杯締めちゃった。

 

「いやいやいや、それあなたが言いますかね」

 

「……」

 

 かしこまからのさらなる追撃。やっぱ全部知ってるのね。

 

「……まぁ振られたくせに未練がましく先輩に友達申請して『あわよくば』を狙ってる二宮先輩にも感心しちゃいますけどー、」

 

 このかしこま、ちょいちょいトゲを入れてくるわね。もうテーブルの下の脛は痣だらけよ?

 

「……愛ちゃんはもっとパワフルなんですよ。あの子、もっと自分を知ってもらいたいからって比企谷先輩に宣言して、即日サッカー部退部して奉仕部に入部しちゃったくらいですから」

 

 そのセリフに私は驚愕の表情を浮かべる。

 あの子、ああ見えてすごい行動的なのね……

 

「でも、いろはのヤツがなにを一番警戒してるかって言ったら、戸塚先輩みたいな天使感でもなければ、そういった行動的なトコでもないんです」

 

 そう神妙な顔をする香織ちゃんに、私はゴクリと喉を鳴らす。

 まだなんかあるの……?

 

「……あの子、比企谷先輩に振られて、小悪魔属性まで身につけちゃったらしいんですよ……それもいろはみたいなのじゃない、天然の小悪魔力を」

 

 ……な、なんだよ天然の小悪魔力って。それもう小悪魔じゃなくて悪魔じゃん。

 

「天使と悪魔、まさに一人アロマゲドン!」

 

「……あ、うん、そうね」

 

 いや、ね? あなたがそれ大好きなのは分かったけどさ、そんなドヤ顔で力強く言われても、私プリパラそんなに詳しくないのよ。私アイカツ派だから。

 

 

「……と、まぁそんなわけで、愛ちゃんはマジでヤバいんですよ……さすがの比企谷先輩も小悪魔に目覚めてからの愛ちゃんの押しにはあの通りタジタジでデレデレでして……」

 

 ……た、確かにそれはかなりヤバいよね。

 なにせあの戸塚君を女の子にしたような子に積極的に小悪魔的に攻められまくるだなんて、比企谷君からしたらとんだご褒美じゃない! むしろ未だ落ちてない奇跡。

 

「……ぐぎぎ……ちっくしょー……! せっかく魔王達出し抜いて二人っきりで誕生日祝っちゃおう☆ とか思ってたのに、なんでよりによって愛ちゃんが遠征してきちゃうのよー……! 二宮先輩だけならいくらでもどうとでもなったのにぃぃぃ……!」

 

 おい小娘、心の声が全部お口から出ちゃってんぞ。せめて二宮先輩のくだりは難聴系じゃなくても聞こえないくらい、もっと小声で呟きやがれよ。

 

「……と、言うわけで、どうですか二宮先輩。ここは一時休戦して、協力関係を築こうじゃありませんか」

 

「……えぇぇ」

 

 と、言うわけで、じゃないよ。いやいやあなたね、あんなこと考えてた抜け駆け上等女と協力関係なんて築けると思ってんの?

 

「むぅ……二宮先輩も見たでしょ……? 愛ちゃんの特殊能力、空気化施錠(エアーズロック)をッ!」

 

 なんだよ特殊能力エアーズロックって。ルビのふりかた酷いな。

 どうせ脳内では漢字で空気化施錠とか書いてあるんでしょ……? 敵を空気にして、その場から閉め出して鍵を掛けてしまう能力ッ! とでも言いたいんでしょ? ふざけたルビに使用しちゃってスミマセンでしたとオーストラリアさんに謝れ。

 まぁ確かにあの時の私達の空気っぷりは凄かったけど。

 

「前にあの能力でいろはも空気にされて、その場から閉め出されたらしいですよ……?」

 

「マジかっ!」

 

 うっそ……あの小悪魔の皮を被った鬼でさえロックされちゃうの? お、恐ろしい能力やで……エアーズロック……!

 

「それに確実に八幡生誕祭を祝う為に先輩達の地元まで遠征してきましたよ、あの子……!」

 

「う、うん、だろうね……。なんだよ散歩してて気付いたらここに来てたって。どんなドジッ娘だよ」

 

「でっすよねー……! しかも駅前のカフェでメイク直してたとか、あれ絶対先輩んちに乗り込む気でしたよ! 愛ちゃん恐るべし!」

 

 ねぇねぇ、あんたも十分恐るべしだからね? あんたも親友達を抜け駆けしまくった挙げ句、ラノベと泣き落としで釣ったんでしょ?

 「ふぃ〜、先手を取って連れ出せといて良かったですなぁ、あっぶね!」と、額の汗を拭っている香織ちゃんの自分の棚上げっぷりに私が額に汗しつつも考える。

 

 

 ──確かにこの子と協力体制を取るのは危険極まりない。いつ出し抜かれるか分かったもんじゃない。

 でも先ほどのエアーズロックを見ちゃうと、確かにアレはかなりヤバい。エアーズロック私の中でも定着しちゃってるよ(白目)

 誕生日を二人っきり(私達が居てもただの空気だもの)で祝わせちゃったりしたら、とんでもないポイントを愛ちゃんにゲットされちゃう気がする。比企谷君のあのデレッぷりは、最早比企谷ポイントカンスト寸前なんじゃないかと思わせる程の危険を孕んでるしね。

 だったら協力してエアーズロックを打ち破って、せめて私達も愛ちゃんと同等のポイントを稼ぐべきなのかしら……?

 

 ……そ、そしてあわよくば香織ちゃんと愛ちゃんを出し抜いて、比企谷君と二人きりになってぐへへへへ。

 

「もう! まだ迷ってんですか!?」

 

 いかに出し抜……協力するかを考えていたら、どうやら香織ちゃんは沈黙を否定と受け取ってしまったみたい。

 そして香織ちゃんは人差し指をぴっと立てると、私達のハーレム内に置ける切ない立ち位置を、無情に説明するのだった。

 

 

「……いいですか? 悲しい事に私と二宮先輩のハーレム内順位は最下層です。下級構成員です。旅団で言えばコルトピです。出番が無い内に、気が付いたら公衆便所で陽乃さん(変態奇術師)に汚物のように始末されてるレベルです」

 

 ホントに悲しいわ! そしてルビに寒気がしたんですけど。一体なんて文字に変態奇術師ってルビをふったの?

 てかコルトピ舐めんな? レア能力だから旅団内では生存優先順位は高かったし、一部では可愛いと人気だったんだからね!?

 

 

「……このままでは私達がいがみ合ってる内に愛ちゃんにポイントを荒稼ぎされる未来しか見えないんですよ! ここは嫌々ながらも手を組んで、みんなでポイントを分け合おうじゃないですか!」

 

 お前が嫌々ながらって言うなよ。まぁアレよね、同族嫌悪ってヤツよね。

 たぶんだけど、香織ちゃんの脳内でも私と同じような長い長い物語が繰り広げられてるような気がするよ。

 

「……ったく、仕方ないわね。今回限りの特別だからね? こんなサービス、滅多にしないんだから!」

 

「ふっふっふ」

 

 

 

 こうして私と香織ちゃんは、この場限りの協力関係を結ぶこととなったのだ。

 

「敵は愛川愛ちゃん唯一人! 愛ちゃんだけにポイント稼がせてなるものかぁ! おー!」

 

「おー!」

 

 

 

 ──ここに、対天使の最強ユニット 絶対無敵☆残念オタガールズ! が結成されたのである!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、ところでさぁ家堀さん」

 

「なんですか?」

 

「具体的には何か策あるの?」

 

「そりゃもちろんですよー」

 

「なになに? どんなの?」

 

「愛ちゃんは初顔合わせの二宮先輩にかなり興味を持ってます。なので二宮先輩が愛ちゃんの注意を引いている内に、私が比企谷先輩をこっそり連れ出しちゃうぜ! って寸法ですっ」

 

「……なるほどー。…………で、連れ出した比企谷君と香織ちゃんが二人っきりになって、二人で生誕祭を楽しむって寸法かー」

 

「そう! まさにそれっ!!」

 

「……」

 

「……」

 

 

「……へぇ」

 

 

 

「………………てへっ☆」

 

 

 これはダメかも分からんね……(遠い目)

 

 

 

 

続く?

 







ありがとうございました!

なんでしょうかコレ。もう愛ちゃんの一人勝ちの未来しか見えないんですけどw
これトイレから帰ってきたら二人とも居ないかも(笑)


ぶっちゃけこの後の展開が一切思いつかないんで、これで終わりかも知れない……(苦笑)


またしばらく放置しちゃうかも知れませんがまた次回お会いいたしましょう(^^)/



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