八幡と、恋する乙女の恋物語集   作:ぶーちゃん☆

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ハッピーバースデー八幡☆


今年は生誕祭を書くつもりは全く無かったんですけど、つい昨夜に思わず思いついて書いてしまいました(白目)
しかも急きょ思い立っただけなので、誕生日SSなのに今日終わらないわオチも考えてないわの酷い状態です(白目)



さて、この作品は八幡以外はオリヒロしか出てこない作品です。
しかも家堀香織と違って知名度の低いマイナーオリヒロ達なので、私の他の作品を読んでいない読者さまはバック推奨です><


それでもよろしい方のみ先へとお進みくださいませっ



恋するオリ乙女たちの狂宴 〜あの八幡を鳴らすのはあなた〜 【前編】

 

 

 

「あっづ〜い……」

 

 ジリジリと照りつける太陽、ゆらゆらと揺らぐアスファルト。

 なにこの暑さ。なんなの? 夏なの? あ、真夏でした。なにせ今日は八月八日、まさに夏真っ盛り。

 

 そんな夏真っ盛りな夏休みの一日に、なぜ引きこもりぼっち女子たる私が柄にもなく外出なんかしてるのかといえば……おっと危ない、つい昔のクセでぼっちとか言っちゃったけど、今の私はぼっちとは無縁のリア充美少女JKだった。ふぅ、あっぶね。

 そんなリア充美少女JKたるこの私がなぜ外出しているのか、まぁ……なんていうか……暇だったから。全然リア充じゃなかった。

 

 だぁってさぁ、私の唯一の心の友(友達以上恋人未満☆)の比企谷君が遊んでくんないんだもん!

 ま、まぁ? 比企谷君と友達になってから早四ヶ月くらい経ちますけども? それなりに遊んだりしてますけども?

 でも夏休みは遊んでる場合じゃねぇだろとか言いやがってあの野郎。ぜんっぜん遊んでくんないでやんの。最後に会ったの二週間くらい前だっけ。それホントに友達以上なのかよ。

 ふぇぇ……比企谷君とイチャコラして遊びたいよぅ……! プールとかでセクスィーなビキニとか着て、自慢のダイナマイトバディを惜しみなく晒して誘惑したいよぅ……!

 あ、ダイナマイトって言っても爆発しちゃいそうなほどのワガママボディって意味じゃなくて、よく漫画なんかで出てくるろうそくみたいな形のダイナマイトの寸胴フォルムをイメージしてください。全米が泣いた。

 

 

 そんな貧相バディの自虐ネタを惜しみなく挟みつつ千葉の街を闊歩する私 二宮美耶は、海浜総合高校に通う三年生である。……暇だからとか遊びたいじゃねぇよ、勉強しろよ。そりゃ比企谷君も遊んでくんねーよ。

 

 いやいや、勉強漬けな毎日のほんの息抜きだよ? ホントウダヨ?

 そして本日のそんな息抜きに選びましたのはココ駅前の本屋さんである。

 サブカルチャー大好き女子としましては新しい漫画やラノベとかも欲しくなりましたし、何よりもこの本屋さんという空間はワクテカなのである。だって本の虫の比企谷君と偶然の出逢いの可能性が微レ存ですもん。

 

 愛しの比企谷君どっかに居ないかなー? なんてキョロキョロと辺りを窺いながらラノベコーナーへてくてく歩いて行くと……なんと! なんとそこにはアイラブ比企谷君がラノベを品定めしてたんですっ!

 

 

 ……………女連れで。

 

 

 

 おいおい比企谷君よう。キミ、勉強しろよとか言って遊びに応じてくれませんでしたよね。

 なんという裏切り行為! あまりのショックにドキがムネムネしちゃうぅ……!

 

 ……そしてあの女だれよ。雪女でもやっはろーでもあざと会長でもないあの女っ……!

 

 茶髪ショートボブの、輝くような笑顔の女の子。そしてあの通常体勢からの流れるようなかしこまポーズ…………ん? かしこまポーズ……?

 

 ってオイオイ、あの子いつぞやのかしこまっ娘じゃねぇかよ。やっぱ比企谷ハーレムの一員だったのかよチクショウ!

 

 

 ああ……どうしよう……胸が苦しいよぅ……

 なんで? なんで比企谷君は私の誘いを断ってかしこまってるの……?

 

 ……だから私は……っ

 

 

 

「やっほー比企谷くぅん! ひっさしぶりぃ」

 

 

 昔取った杵柄のあざとさ全開で邪魔してやることにしたの♪

 ええ、通常の三倍の速度で迫ってやりましたよ。

 

 

× × ×

 

 

 私のお邪魔特攻でヤツは超苦い顔をした。かしこまっ娘が。

 

「ん? おう二宮か。なんだ? お前も参考書探しにきたのか」

 

「へ? ……あ、うんうんそうそう!」

 

 言えない……受験生なのに暇潰しにラノベを探しにきたなんて言えない……! って……んん?

 

「いやいや二宮“も”って!? 比企谷君ラノベ見てんじゃん!」

 

「ん、ああ。それはコイツがな」

 

 そう言って親指でちょちょいとかしこまを指差すと、

 

「ど、どーもー……家堀香織と申しますー……」

 

 引きつった笑顔を前面に出しつつ、かしこまっ娘はペコリと頭を下げた。

 どーもーとか言いながらコイツ私のこと絶対覚えてるでしょ、この警戒っぷり。

 

「こ、こんにちはー……えと、二宮美耶でーす……」

 

 なにこの笑顔でテーブルの下で蹴りあってるみたいな緊張感。

 これが若さゆえのなんとやらか……

 

「コイツこんなリア充丸出しな見た目のくせにオタクなんだわ。勉強で忙しいっつってんのに、今日はどうしてもラノベを見繕って欲しいってしつこく泣き付かれてな。まぁ俺も参考書見たかったし、そのついでだ」

 

「わ、私オタとかじゃないですから!」

 

 いえいえもう知ってますんで。お気になさらずにー。

 

「あ、今のコイツのネタだから気にしなくていいから」

 

「だからネタじゃないってばぁぁ!」

 

 なにこれ。なんで大好きな男の子の夫婦漫才見て微笑まなくちゃなんないのん? これなんて拷問?

 

 とは言うものの、私はこのやり取りで胸を撫で下ろす。この撫で下ろしやすそうな慎ましやかな胸を。全米が以下略。

 

 

 ──あー、びっくらこいたぁ。どうやらデートとかじゃなくて、単にこのかしこまっ娘……香織ちゃん? のワガママで外出しただけっぽい。比企谷君ってばシスコン拗らせてるから、年下に泣き付かれたら断れなかったんだろうね。

 なんで今日この日にわざわざ泣き付いたのかは知んないけども、今日ばかりは香織ちゃんにお礼を言わねばなるまいね。なにせラブ谷君に会えたんだもーん。

 

「家堀、こう見えても二宮もオタクだから気にしなくて大丈夫だぞ。なんなら意外と話が合うんじゃね?」

 

 飛び火が来た!? いやまぁオタクだけどさ。

 ていうか、私がオタクと聞かされて『ああ、やっぱり』みたいな顔すんなよ? この小娘が。

 まぁ胸部は私の方が小娘なんだけど。……もう自分を貶めんのやめようよぅ(涙目)

 

「よ、よろしくねー、家堀さん。あ、なんなら比企谷君じゃなくて私がラノベ見繕ってあげよっかー?」

 

「い、いーえー、お構い無くー……」

 

 邪魔してやりたい私と邪魔されたくない香織ちゃんの、未だ続く机の下の蹴り合い。女ってコワイ。

 おっと、他人事みたいに言ってるけども、私が先制攻撃を仕掛けたんだった。

 

「よ、よし! じゃあ行きましょうか? 比企谷先輩っ」

 

 !? こ、こいつ、場の流れとか関係なくいきなりぶった切ってきやがった!

 フッ、逃がさんよ。

 

「えー、せっかくだし私も入れてよー家堀さーん」

 

「いやいや大丈夫ですー」

 

「えー? 大丈夫ってことは私も交ざっちゃってもいいってことだよねー?」

 

「いーえー、そっちじゃない方の大丈夫って意味ですよー? 二宮先輩ー」

 

 ぐぬぬ……こ、こいつなかなか強情だな。

 にしてもちょっと強情過ぎない? この子。いや、そりゃまぁせっかく連れ出せた比企谷君との一夏のアバンチュールを邪魔されたくない気持ちは分かるけどさ。……もしかして今日って、なんかあんの……?

 

 てかまさかこの元ぼっちな私がリア充JK(かしこま)と男の取り合いをする事になるとは……人生って分からないもんだ。

 

 そんな美少女二人が笑顔で蹴り合ってると、なぜだか比企谷君が一歩だけ後退った。

 どしたの? とチラリ視線を送ると、なんか私達を見て引きつってました。

 やだ! 蹴り合いがテーブルからはみ出しちゃってたみたい!

 

「……わ、悪い。ちょっとトイレ行ってくるわ」

 

 私達のにこやかな社交辞令に青ざめた比企谷君は逃げ出した! ヤバいこの人このまま自宅のトイレまで逃げ出しちゃうんじゃない?

 しかし比企谷君は逃げられない! なぜなら敵に周りを囲まれてしまったからだ。

 

「比企谷せんぱいっ、じゃあカフェ行きましょうよカフェ! そこでトイレ借りればいいですってば」

 

「比企谷君! じゃあどっかお店寄ろうよ! そこでお手洗い借りたらいいよー」

 

 アイコンタクトを交わし、途端に協力的になるオタガールズ。

 やるな家堀香織。比企谷君の行動パターンを理解していやがる。

 

 そう感じたのはヤツも一緒らしく、比企谷君の逃げ道を塞ぎながらも原監督ばりのグータッチでお互いを称え合う。

 

 

 

 そうして謎の協力体制を取った私達は嫌がる比企谷君の体を強引に辱め、駅前のカフェへと向かうのであった。

 あーれー、ごむたいなー。

 

 

× × ×

 

 

 逃げられないようカフェに入店してからトイレに赴くのを許可し、二人きりになってから「先日はどうもー」「いえいえー」なんてよそよそしい挨拶だけ交わし、現在私と香織ちゃんは「んん! ん!」とわざとらしい咳払いをしながら無言で牽制しあっている。

 

「……えっと、二宮先輩は受験生ですし、勉強忙しいんじゃないんですか? 早く帰って受験に控えた方がいいですってー」

 

 と、無言の牽制では埒が開かないと感じ取ったのか、直接的に帰れと言ってきましたよこの子。

 ……ほっほう、後輩だと思って優しくしてやってればこの小娘め。

 

「まぁ確かに勉強大変なんだー。なにせ比企谷君ってああ見えて頭いいじゃない? 来年は同じ大学に通っているだろう身としては、これがまたなかなかに厄介なんだよね♪」

 

 

 そんな挑発的な後輩へ、同級生である事のアドバンテージを十分に生かした宮田君ばりのライジングカウンターをねじ込んでやる。

 

「ぐぬぬ……!」

 

 どうよ。後輩では決して立ち入れないこの領域。

 いろはすちゃんであれ香織ちゃんであれ、年下を武器にしてるあなた達には絶対に真似出来ない、キャンパスライフ一年分のアドバンテージという強固な攻撃の味は。

 フッ、ちょっと大人気なかったかしらね。

 

「……ま、まぁ受かればの話ですよねー。なにせ私達総武なんで、目標大学は海浜さんより結構高いと思いますけど〜」

 

「ぐはっ」

 

「それでも比企谷先輩との大学生活を本気で狙ってるんなら、やっぱ早く帰った方がいいですって」

 

 ちっくしょー! 高校の偏差値がなんぼのもんじゃ! 私だってあと一歩で総武通えたはずなんだからー!

 

「ま、まぁ? 総武って言っても由比ヶ浜さんだって居るくらいだし……?」

 

「……ああ、うん、ですね……」

 

 納得しちゃったよ。

 まぁ受験の時は由比ヶ浜さんが受かって私が落ちたんですけどね(白目)

 

 

 なんという不毛な争い。こんなの誰も幸せにならないよ。

 とりあえず受験の話はよそうかな……

 

 あ、そういえば。

 

「そういえばさぁ、今日ってなにかあるの? 家堀さん、無理やり比企谷君を引っ張り出したみたいだし私をとっとと帰そうとするし」

 

「……え、知らないんですか?」

 

 え? やっぱり本当になにかあるの?

 きょとんと首をかしげるくらいだし、よっぽどの事があるんだろうか。

 

「……む、教えてあげるのもアレなんですけど……なんかこういうのってズルいですからね。私も比企谷先輩に直接教えて貰えたワケではないので。……えーとですね。今日八月八日は、比企谷先輩の誕生日なんですよ」

 

「うそっ……ホント……!?」

 

 ちょっと比企谷くーん? 私って比企谷君の唯一無二の友達だよね? なんで教えてくれないのーん?

 

 あ、私も教えてなかったや。だ、だってさ、自分からわざわざ誕生日教えるとか、「プークスクス、なに期待しちゃってんの?w」とか思われちゃいそうで恥ずかしいんですもの。

 だから比企谷君教えてくれなかったのかー教えてくれなかったんだよねーそのはずだよね? ね?

 

「ああ、だから家堀さんはさっきから邪魔者を撒こう撒こうとしてんだね。やっぱ奉仕部とかいろはすちゃんにも内緒で出し抜いてるってカンジ?」

 

「い、いやだなぁ人聞き悪いですよー。……そ、そういう二宮先輩だって、いろはから色々聞いてますよー……? 海浜の泥棒猫とかなんとかー」

 

 

「アハハ〜」

 

「ウフフフ」

 

 

 ……こいつ、今日キメる気だな……? まさかそのリア充らしいシャレオツな私服の下にリボンとか巻いてんじゃないでしょうね。私脱いだら凄いんですとか、あなたちょっとやり方が古典的よ?

 これだからオタク女の思考回路はショート寸前なのよ、まったく。

 

 

 ……これは二人きりにさせるワケにはいかないでしょう! 雪ノ下さんや由比ヶ浜さん、いろはすちゃんの名に掛けてっ(棒)

 そして隙あらば私が二人きりになって、私をプレゼントしちゃおっかなフフフ。まぁ私のバディはリボンでラッピングしてもたかが知れてるけども。

 もうやめてぇ……私〜……!

 

 

 

 ん? そういえば比企谷君帰ってこないな。おっきい方かな?

 なんてお下品なことを考えてたら、ようやく比企谷君が帰ってきたみたい。

 

 ……って、え……、ちょ、ちょっと……!?

 

 

「あ、あれ……? 香織ちゃん……? と、お友達、かな。もしかして比企谷先輩、香織ちゃん達と一緒だったんですか?」

 

「なっ!? え、なんで……!?」

 

 香織ちゃんが目を見開いて愕然としてるけど、それは私も一緒だよ?

 だって、トイレに行って帰ってきただけのはずの比企谷君の隣に、ぽわぽわな空気をまとったサイドポニーの美少女天使がちょこんとくっついていたのだから……

 

 

「な、なんで愛ちゃんが居るのん……?」

 

 

 そう言って香織ちゃんは静かに息絶えた。

 死んじゃうのかよ。

 

 

 

 

 

 

続く

 





折本SSをお読みでない読者さまは大変ご無沙汰しております!
しっかしひと月以上ぶりの更新がコレか……



というわけで今回の主役は【私の間違ってしまった青春ラブコメはもう取り戻せないのだろうか】という作品のオリジナルヒロイン、二宮美耶(にのみやみや)という女の子でした!
お気に入り数がこの短編集の半分以下の作品のヒロインなので、知らない読者さま本当にスミマセン><

ちなみにそちらの作品内でちょっとだけ香織も出したので、今作で一応顔見知り設定です(^皿^;)


そしてラストに出てきたのが、こちらもまた別作品のオリヒロ、愛川愛(あいかわまな)という女の子です。

実は以前からこの三人のカラミを書いてみたいなぁ……と思ってたんですが、気が付いたらこの短編集のUAが100万超えてまして、急きょ昨夜『あ、じゃあせっかくの記念だし八幡生誕祭で書いちゃうか!』と思い立った次第であります(苦笑)


前書きでも述べましたが、時間が無かった為に誕生日更新で終わらせることが出来なかったんで(オチも不明)、なんとか誕生月以内には後編を更新したいと思っておりますm(__;)m
(すでに生誕祭SSの体を成してない汗)


ではではハッピーバースデー八幡☆



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