八幡と、恋する乙女の恋物語集   作:ぶーちゃん☆

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本日はついに愛するあの子の生誕祭です!

愛を詰め込みすぎて、当たり前のように1話としては今までで最長になってしまいましたので、お時間ございます時にでものんびりお読みくださいませm(__)m





運命の国のいろは 続

 

「いろはちゃんおめでとー!」

 

「一色さん、おめでとう」

 

「……おめでとさん」

 

「ありがとうございますー」

 

本日四月十五日は、我が奉仕部とは特に関係の無いはずの後輩 一色いろはの十七歳誕生日の前日だ。

関係は無いはずなのだが、なぜか奉仕部の部室にてささやかな誕生日パーティを開いている。まぁなんで関係無いのに?なんて理由は今さら説明するまでも無いよね。単なる成り行きです。

 

そしてなぜ前日に誕生パーティなのかと言えば、それは明日が土曜日だからに他ならない。

まぁ土日祝日だろうと平日だろうと、一色クラスのリア充ともなれば、誕生日当日などは引く手あまた(男限定)で、結局こうして奉仕部でのお祝いなんてしてやれないんだろうが。

 

「えへへ、こうして皆さんにお祝いして頂けるなんてホント光栄です! んー!このケーキ超おいしいですぅ。やっぱ今日はお腹空けといて良かったー」

 

「だよねー! ホントはあたしも手伝いたかったんだけど、残念ながら今回はゆきのんが一人で用意してくれたんだー」

 

「………………ホント良かったです」

 

「なにがっ!?」

 

いや俺もホント良かったです。

手伝いたいと甘えられまくって、危うく気持ちが折れかけながらも断固として手伝わせなかったゆきのんグッジョブと言わざるを得ない。

冷や汗を掻きながらも、幸せそうにもきゅもきゅケーキを頬張る一色を見る雪ノ下もホント優しい眼差しを向けてますね。

こいつマジで、いつの間にこんなに陥落させられてたんだよ……

 

「じゃじゃーん! これあたしとゆきのんで選んだプレゼントっ! 喜んでもらえたら嬉しいんだけど」

 

そんな幸せ空間がさらなる加速を見せる。パーティはケーキを食べながらいつの間にかプレゼント譲渡会へと移り変わっているようだ。

 

「わぁ!ありがとうです! 絶対大切にしますー」

 

プレゼントを受け取る一色は、本当に嬉しそうで無邪気な笑顔。

そんな一色の笑顔を遠巻きから見ている俺の表情もついつい自然と緩んでしまっている。

 

 

──ホント、初見の時の印象からは考えらんねーよな。

……一色の第一印象、それは本当に酷いものだった。

 

『ざわざわと心にさざ波が立つ。これは単純な警戒警報』

 

『穏やかな気性とやや控えめな女性らしさを全面に出し、その裏を覗かせまいとする作為的なものを感じる。こういうのは高確率で地雷』

 

『どこか空々しい薄ら寒いもの』

 

『ふわふわ系非天然隠れビッチ』

 

 

とまぁホント酷いものだった。

それなのに、今ではすっかり可愛い後輩になっちまってるんだもんな。

……いや、単なる可愛い後輩ってだけじゃないことくらい、いくら捻くれてる俺だって解っている。こいつはもう、俺にとってはこの場所と同じくらいに大切な存在になっている。

 

一色を見ていると、こいつ自身が予期せぬ経験を経て、出会った当時には想像出来ないほどの成長をしたという事実を差し引いたのだとしても、自分の人を見る目の無さに呆れてしまうことがままある。

なにせ俺の持論は『人間なんてそんな簡単には変わらない』だからな。

出会ってからたかだか数ヶ月。そのたった数ヶ月で、こいつの本質が変わるわけがない。つまり、実は一生懸命だったり、実は一途だったりというこいつの本質が見抜けなかったってだけの話。

いかに自分が達観したつもりになって勝手な印象を相手に押し付けてしまってたのかって事だ。

 

 

……ったく、なにがキングオブぼっちの人間観察力舐めんなだよ、ダサすぎだろ。

 

“よく知りもしないくせに、勝手に理解したつもりになって理想や偏見を押し付けるな”

 

これは、他者が俺を見たとき、俺という人間を判断した時に常に吐き捨てるように思うこと。

なんのことはない。俺自身も他者に同じことをしていたのだ。それは、俺が最も嫌う欺瞞でしかないというのに。

はっ、全然ダメダメだな、俺も。こんなどうしようもない間違いを、こんなあざとい小悪魔後輩に教えられるだなんてな。

 

「ちょっと先輩? なに勝手にニヤニヤ見てんですか? 正直気持ち悪くて無理ですごめんなさい」

 

「……」

 

てへっ、やっぱり一色は一色でした!

 

 

× × ×

 

 

「つーかお前あれだよな」

 

「ふぇ?なんですかー?」

 

「ふぇ?じゃねぇよ。あざとい、やり直し」

 

「むー!だからあざとくないですぅ! 超素ですー」

 

ぷくーっとリスみたいな一色もホント見慣れたもんだ。最初見た時は、まさかこのあざとい膨れっ面がこんなにも可愛く見えちゃう日が来るだなんて想像できなかったよな。

などとまた謎の感慨に耽ってニヤついていると、笑われたと思われたのか当の本人はさらにご立腹なご様子。

 

「だから結局なんなんですかねー。いつまでもそのニヤニヤした顔を直視してるのもいい加減キツいんですから早く用件を言ってください」

 

ぐっ……人がちょっと見直してやってりゃこの辛辣な罵倒だよ……

こいつがこんなに変わったのは雪ノ下の影響かも知れませんねぇ。

 

「ったく……まぁいいけどね。……ん、まぁあれだ。お前ずいぶん前から誕生日を無駄アピールしてたわりには、ホントにプレゼントなんも用意しなくても良かったのか?」

 

そうなのだ。こいつ確か年明け一発目くらいから早々に「ちなみにわたしは四月十六日ですよ、先輩」とかってアピールしてたくせして、新年度が始まった直後くらいから「プレゼントとかガチで要らないんで用意しとかないでくださいね!」と、キツく宣告されていたのだ。

俺としてはかなり助かるから全然いいんだけど、一応興味本位でなんで?って聞いてみたら、この子あっけらかんとこんなこと言いました。

 

『だってぶっちゃけ先輩からモノ貰っても取り扱いに困るじゃないですかー? さすがに売り飛ばすのは良心が痛みますしー』

 

やだ、聞かなきゃよかった!いくら俺でも泣いちゃうよ?現実はフィクションと違って厳しいんですね。

扱いに困るから売り飛ばすなんて思考が頭を過った時点で良心痛んでね?

 

「だから前に言ったじゃないですかー? 扱いに困るから気にしないでくださいって。なんですか?そんなにわたしになにかプレゼントしたかったんですか?……はっ!もしかしてプレゼントで口説こうとしてました!?お前のことを想って選んだプレゼントを受け取って欲しいとか言ってエンゲージリングでもくれるつもりでしたか、ぶっちゃけ女の子の夢なんでかなり心惹かれますが、まずはプロポーズよりも先にすることがありますよね、ちゃんと順番を守ってくれたら喜んでお受け致しますごめんなさい」

 

こいつもう職人芸の域だろ……

長すぎ早すぎで、ちゃんと内容を聞き取ろうとする気も沸いてこねぇよ……

本日二回目の、そして通算何回目か分からないお断わりをされた俺は、恭しくペコリと頭を下げてはぁはぁ息を切らしている一色に呆れた眼差しを向けていたのだが、なぜか教室内の気温が数度くらい下がったような錯覚に陥ったことに気がついた。

 

「……一色さん?」

 

「……いろはちゃん?」

 

「っ!?……ひ、ひぃぃっ!」

 

な、なにこれ……?穏やかじゃないわね!

今の恒例のお断わり芸のどこに雪ノ下たちの逆鱗に触れるポイントがあったのかは皆目見当もつかないが、とりあえずせっかくの誕生日パーティなんだし、みんな仲良くしようぜ……?

 

「お、おい、どうした。なんか知らんが一色怯えてんじゃねぇかよ」

 

「黙りなさい」

 

「ヒッキーうるさい」

 

「先輩はすっこんでてください」

 

ふぇぇ……せっかく仲裁してあげようかと思ったのに、なぜか怯えてた一色にまで罵倒されちゃいました。女子恐い。

 

 

そんなこんなで、一色の誕生パーティは平和ににこやかに過ぎていくのだった。

 

 

× × ×

 

 

最終下校時刻を告げるチャイムが校内に鳴り響くなか、俺は駐輪場までの道のりを一人歩いている。

山あり谷あり嵐ありの誕生日会ではあったが、最終的には本当に楽しいひとときだったようでなによりだ。

まぁもちろん俺は蚊帳の外だったけどね。コミュ症ぼっちがガールズトークに交ざれるわけねえっつうの。

 

何はともあれ、心地よい疲労感に包まれながら駐輪場へ向けて歩いていると、先ほどまで部室でさんざん聞いていたはずの甘ったるい声が、なぜか後ろからかけられたのだ。

 

「せんぱ〜い……!やばいですやばいですぅ……!」

 

……は?なんで?お前とは今さっき別れたばっかじゃなかったっけ?

訳は分からないが、とりあえずうんざり気味に振り向いてみると、わたしよくトロそうって言われるんですよねー、という空気を全身で放っているかのようなヨロヨロ走りで走ってくる一色の姿。

とてとてとようやく俺に追い付くと、ブレザーをちょこんと摘んで前屈みではぁはぁと息を整える。

わざわざ摘んでくるあたりがやはりあざとい。

 

「……んだよ。さっき別れたばっかだろうが」

 

「……はぁ……はぁ……な、なんですか、それじゃまるで振った女がしつこくすがってきてるみたいじゃないですか……はぁっ……そ、そんなセリフ……先輩には世界一似合いません……よ?……はぁっ、はぁ……」

 

……こいつめんどくせえな……息を整えるか罵るかどっちかにしろよ……

一色はしばらくはぁはぁと息を整えると、ようやく落ち着いたのかふぅ〜と深く息を吐き、上目遣いで俺を見上げる。

 

「せんぱい……やばいんですよぉ」

 

「……だからなにがだよ」

 

ぶっちゃけ最近このウルウル上目遣いが、ムカつくことに可愛くて困る。

さんざん罵ったあとの上目遣いだから、そのギャップにやられちゃっているのだろう。

奴はとんでもないものを盗んで行きましたと銭形警部に心配されちゃうような状態に陥っているわけでは決してない。よね?

 

「……えと……これなんですけどー……」

 

すると一色は鞄から財布を取り出すと諭吉さん……ではない、なんか紙を取り出してぴしぃっと俺の目の前にかざしてきた。

 

…………ん?は?これって……

 

「なんだよ、ディスティニーのパスポートじゃねぇかよ。これのなにがヤバいんだよ」

 

いやホントなにがヤバいのん?と思っていると、一色は心底バカにしたような顔で「やれやれ……」と首を横に振る。なにそれ腹立つわ。

 

「よく見てくださいよー。ここですよ、こーこー」

 

そう言って一色はそのパスポートの一部分をペシペシ叩く。

仕方ないからその部分をよく見てやると、ようやくこいつの言いたい事が理解できた。

 

「……なんだこれ。有効期限……四月十六日……? え?ディスティニーのパスポートって有効期限なんてあったっけ?……てかこのパスポート、なんか変じゃね?そんなデザインだったっけ」

 

なんなの?有効期限過ぎちゃうと美味しくお召し上がれなくなっちゃったりするのん?

 

「やだなー、先輩。そんなことも知んないんですかー?」

 

なにそのムカつく顔。すげー負けた気分になるんだけど。

一色はふふんっ、と偉そうに胸を張ると、その説明を始める。

 

「そりゃ有効期限くらいありますよ。んでパスポートにはですねー、株主優待券ってのがあるんですよ。要はディスティニーの株主に配当とは別にプレゼントとして配布される株主用パスポートですねー」

 

……こ、こいつ……金が大好きそうだとは思っていたが、まさか株なんてやってんの?

 

「でですねー。株主さんの中には使わないパスポートをネットオークションで売りさばく人も多く居るんです。で、たまに期限の近いパスポートが安く出品されてたりするんで、都合さえ合えばオトクに行けちゃったりするんですよ」

 

ほーん、成る程な。要は一色がその安いパスポートをネットオークションで落札したってことか。こいつ金にうるさいだけあって、こういうところはなかなかきっちりしてんな。

良かった。これで一色がディスティニーの株主とかだったら割と本気で引くとこだったわ。まぁ親の可能性もあるけども。

 

「で?なにがヤバいんだ? それを落札したっつーんなら、明日までに使う予定があるから落札したんだろ?」

 

「だ、だからですね……?」

 

なにゆえヤバいのか。その答えを求める俺に、一色はもじもじと気まずそうに重い口を開くのだった。

 

 

× × ×

 

 

一色の話によると、どうやらたまたま自分の誕生日までのパスポートをオークションで発見した時にピコンと閃いたらしい。

これは運命的な出会いなのだと。運命的ななにかを感じたのだと。

これを持って葉山を誘えば、今度こそ二人でディスティニーに行けるんじゃないのか?と。

だがまぁやはりそこは鉄壁の葉山。上手いこと言われて体よく断られたんだとか。

 

それを聞いて感じた。まぁ葉山は正直どうでもいいとして、俺が一番感じた事は、やっぱり一色はすげーな……ってことだ。

 

ほんの数ヶ月前に葉山に振られたばかりの一色。しかもディスティニーといえば正にその振られた場所。

あいつはそんなこと一切お構い無しに、こんなにも一生懸命に、こんなにも健気にその想いを果たそうと真っ直ぐ突き進んでいる。

 

『すごいな、お前』

 

いつかのモノレールでの帰り道、俺が傷心の一色に掛けた言葉。

こいつはあの日から一切ブレずに、自分の思いのままに行動している。

 

あの日は、この一色いろはという少女に対して、初めて心から感心した日だ。

だが今は、感心というよりは寧ろ尊敬してしまってるまである。

葉山よ、こいつを甘く見ているとマジで逃げらんねぇぞ。せいぜい覚悟しとくこったな。

 

「で、まぁそれはそれとしてだな」

 

確かに感心を通り越して尊敬の域にまで達している一色の真っ直ぐな想いには感動するのだが、それとこれとは別問題。

 

「俺に助けを求めてどうするつもりだ? 今から葉山んとこに赴いて一緒にアイツを説得してくれってことか? 先に言っとくが、悪いけど俺にアイツを説得する自信なんかねぇぞ? アイツはああみえて頑なだからな。一度断ったことを受け入れるとは到底思えない」

 

そりゃ可愛い後輩の頼みだし、なんとかしてやれるもんならなんとかしてやりたいと思わなくもない。

しかしこればっかりは俺にはどうすることも出来そうにはない。

頑固なアイツを動かせるとしたら、それは他でもない、お前の……一色の真っ直ぐな想いだけだと思う。

 

「……むー、そんなの分かってますー……もう時間も無いんで、いくらなんでもさすがに今回は諦めてますよ」

 

「あ、そうなの?」

 

あら意外。さっきまでさんざん感心してたのに、今回はやけに諦めが早いんだな。

 

「てかそもそもそんなのさっき部室で相談すりゃ良かったじゃねぇかよ」

 

「だ、だって!そんなことしたら邪魔も……わ、わざわざ雪ノ下先輩たちのお耳に入れるほどのことでは無いかなー、と……」

 

君いま邪魔者って言い掛けたよね。

まぁあいつらの前で話して由比ヶ浜あたりが張り切り始めると、まーた三浦たちも連れて来ちゃってクリスマスんときの二の舞になりかねないからな。

 

「で? じゃあ結局俺になにしろっつーんだ?」

 

あれだけ息切らしながら追い掛けてきたくらいだ。俺になにかを手伝わせる気は満々だったはず。

しかし一色は俺からのその問い掛けに、すっとそっぽを向くともじもじと体をくねらせ、とても言いづらそうにあうあうと口をもごつかせる。

 

 

……こ、こいつまさか!明日までの期限のパスポートを俺に買い取らせるつもりじゃねぇだろうな……しかも定価とかで。恐いよ、恐すぎるよいろはす!

 

「……えと、ですね……」

 

そして一色はついにその重い口を開く。

片手で胸元のリボンを弱々しくキュッと握りこみ、もう片方の手はスカートをいじいじといじくり、とても不安げな上目遣いで俺を覗き込んみながら。

やめて!そんな可愛い顔で買い取り要求してこないで!

やばい思わず買っちゃうかもしれない。

 

「……あ、明日……先輩が付き合ってくれません……? ディスティニー……」

 

「……………………は?」

 

 

× × ×

 

 

こうして四月十六日の今日。俺はなぜか一色と二人でディスティニーランドに来ている。

どうしてこうなった。

 

『ちょっと待て、落ち着け一色。なに言ってんの?』

 

『だっ……だからー……せっかく買ったパスポートが無駄になっちゃうんで、先輩が一緒に来てくださいよって言ってるんですけど……だってほら、先輩って明日ヒマじゃないですかー?』

 

『いや、明日はちょっとアレがアレ…』

 

『そういうのいいんで』

 

『…………。いや、しかしな?お前アレだぞ? せっかくの誕生日のディスティニーに俺と行ってどうすんだよ。お前なら他にいくらでも誕生日の外出に付き合いたいってヤツ居んじゃねーの?』

 

『……はぁ〜……先輩ってバカなんですか? 普段のお出掛け程度ならまだしも、せっかくの誕生日に好きでもない下心まみれの男の子とデートなんて願い下げに決まってるじゃないですかー?』

 

『は?なんなの? お前って俺のこと好きなの?』

 

『は、はぁ!? う、うっわ、自意識過剰すぎてガチで引くんでしゅけどっ……! せ、先輩は下心もつような度胸とか無いじゃないですか……! だ、だからほら……単純にディスティニーを楽しめると思ったってだけですごめんなさい』

 

『……振られんの本日三回目なんだけど。もういいけどね。……ぐ、しかしだな……』

 

『せ、せんぱいっ……』

 

『……あんだよ』

 

『わたし、こう見えてディスティニーって超好きなんですよー……』

 

『お、おう』

 

『……で、でもですね……? 実はあの日以来、ディスティニーに行けてなくって……ちょっとディスティニーがトラウマになりかけてるってゆーかぁ……』

 

『……そ、そうか』

 

『……だからわたし……誕生日はどうしてもディスティニーに行きたいんですっ……好きなのに、トラウマとか嫌な思い出のまま行けなくなっちゃうのが嫌だから……。だから誕生日に思いっきり楽しんで、あの日の辛い思い出を克服したいんです……! だからお願いします……』

 

『…………はぁ〜……ったく、しゃあねぇなぁ……』

 

『……♪』

 

『え?なに? お前いまニヤリとしなかったか……?』

 

『えー? 全然そんなことないですよー。ではでは今まさに言質とったんで明日はよろしくでーす』

 

『……』

 

 

とまぁこんな流れで難攻不落な俺が落とされたわけだが……あ、難攻不落どころか即落ちでしたね。

つーかこれ完全に嵌められただろ。葉山と行きたいがゆえに手に入れたパスポートなのに、こんなにがんじがらめにして嵌めてまで俺と二人で行くことに、一色になんのメリットがあんのか知んないけど。

 

「ちょっとせんぱーい! なにぬぼーっと考えに耽ってんですか、時間もったいないから早く行きますよー。ほらほらー、はーやーくー」

 

が、ぐいぐいと俺のパーカーの袖を引っ張って満面の笑顔を浮かべている一色を見ていたら、そんなことはどうでもよくなってしまう。

 

「やっば! ちょお楽しみじゃないですかー?」

 

やれやれ、仕方ないから今日は思う存分付き合ってやりますかね。

なにせ今日は一色の誕生日なのだから。

 

 

× × ×

 

 

エントランスを抜けてワールドバザールに入り、まずはどこに行くのかと思いきや、一色はさっそくグランドエンポーリアムというパーク最大の土産物屋へと吸い込まれていった。正確にはパーカーを引っ張られた俺も、同じく吸い込まれていくわけなのだが。

 

「なぁ、一色。今パークに入ったばっかでいきなり土産物屋に寄んのか? 荷物がかさばると思うんだが」

 

「別にお土産買うわけじゃないんで大丈夫ですよ。てか買ってもかさばらない物なんで問題ないです」

 

男女二人でパークに入った途端に土産物屋。そしてかさばらない物。

おかしいな、なんか嫌な予感しかしない。俺にはそんな経験無いはずなのに。

 

「あ!あったー! あそこですあそこです」

 

一色が指差したコーナーを見て、俺は軽く引きつってしまう。どうやら嫌な予感は当たったようだ。

おかしいな、俺にはそんな経験無いはずだよね。

 

「……んー、コレかなぁ。あ、でも今はやっぱコッチかなぁ……。んー、よし、コレに決めた!」

 

ポケモンみたいに相棒を決めた一色は、その相棒を頭に装着する。

まぁもちろんカチューシャなわけですよ、これがまた。

 

「でー、先輩はー……よし、コレがいいかなぁ! へへ〜」

 

「……え?やだよ、俺も着けんの……?」

 

「あたりまえじゃないですかー? 言っときますけど拒否権とか無いですよ? なにせ今日はわたしのバースデーなんですから」

 

そう言いながら、俺の言い分など一切聞く耳を持たずに、勝手に俺の頭にカチューシャを装着するいろはす。近い近いいい匂い可愛い。

ですよねー。俺に断る権利なんてあるわけないですよねー。

 

「…………ぶっ!」

 

「おい、笑うくらいなら着けんじゃねーよ……」

 

「くくっ……くくくっ……ぜ、全然っ……わら、笑ってなんて……な、ないでぶっ!」

 

なにその意味の無い嘘。思いっきり噴き出してんじゃねぇかよ……

 

その後もプルプルと笑いを堪える努力を見せながらも、永遠と笑い続ける一色をうんざりと見つめ続けることしか出来ないでいる俺。

というか、それ笑いを堪える努力ってする意味ないよね?

 

ひとしきり笑って笑い疲れると、ようやく顔を上げて、潤んだ瞳に指を当てつつ笑顔を向けてきた。

 

「はぁ〜……面白かった。先輩先輩、超可愛いです。超似合ってます」

 

「……嘘つけ」

 

君いま面白かったって言ったよね。

……マジかよ。今日一日これで過ごさなきゃなんねぇの……?

つーか、

 

「……なんでウサギなんだ?」

 

そう。ディスティニー恒例のミキオさんでもミニコさんでも、ましてやパンさんでも無い、なぜかウサギの耳が付いたカチューシャなのだ。

 

なにがヤバいって、ウサ耳いろはすが可愛すぎるところ辺りがマジヤバい。

なんだこいつ、可愛いすぎんだろ。

これはアレか。自分を一番可愛く魅せるにはウサ耳が一番だと知っての犯行か。完全犯罪成立です。

ちなみにウサ耳八幡の気持ち悪さは犯罪成立でした。

 

「もー、先輩はそんなことも知らないんですかぁ?」

 

だからなんでそんなに偉そうに胸を張るんだよ。

いくら薄いと言っても、それなりにちゃんとあるんだから少しは自重して頂きたい。つい見ちゃうだろうが。

 

「今ディスティニーはイースターで盛り上がってるんですよ? せっかく今の時期に来たんだから、イースターバニーにならなきゃもったいなくないですかー?」

 

……ほーん、成る程そういう事か。イースターバニーな、うんうん。

 

「なぁ一色、なんで俺らがそんなんで盛り上がらなきゃなんねぇんだよ。大体ディスティニーでイースターなんて取り上げたのは、ハロウィンやらクリスマスみたいなでかいイベントが存在しない、言わばイベント閑散期のこの時期に、いかに客を呼ぼうか、いかに金を落とさせようかという大人の事情で無理やりひねり出したイベントってだけの話だろ。そもそも日本人はイースターの意味なんて知ってんのかよ。イースターってのはな、キリストの復活祭…」

 

「先輩いつまで一人でぶつぶつとうんちくたれてんですか? もうお会計済ませてきたんで早く行きますよー」

 

「……」

 

やだ恥ずかしい!今いろはす居なかったのん?ただの独り言だったのん?

ウサ耳付けた俺が一人でディスティニー商売ヘイトをしてる構図ってマジでヤバくないですかー?

てか一色さん、人が熱く語ってんのに無視して一人でどっか行っちゃうのはいかがなものかと思います。

 

 

って言ってるそばからずんずんと行ってしまう一色の背中を、やれやれと苦笑いで追い掛けるウサ耳八幡なのでしたー。

待ってよいろえもーん!

 

 

× × ×

 

 

土産物屋で買い物を済ませた俺たちが最初に訪れた場所。それは…………え?マジ?

 

「な、なぁ一色、しょっぱなからコレ乗んの……?」

 

「ですです。えへへ〜、超楽しみですよねー」

 

いやいや楽しみってお前……

今俺たちが並んでいる列の先にあるアトラクションは、言わずと知れたランド三大マウンテンのひとつ、スペースユニバースマウンテンである。

そう、記憶にも新しいが、一色は以前これに乗って、おかんこと獄炎の女王に介抱されるくらいに、ふらふらになって吐きそうになっていたのだ。

 

「いやお前スペマンて……前にさんざんな目に遭っただろうが……」

 

今回は介抱してくれるおかんも介抱して欲しい葉山も居ないんだからね?

一発目でコレって、これだけで今日一日が終わっちゃいませんかね。

 

「はぁ〜……先輩は一体いつの話をしてるんですかねー。時は常に動いてるんですよ? そんな昔の失態を未だに引きずってるとか、先輩って結構しつこいですよねー。ウチの換気扇回りの汚れくらいしつこいです」

 

すいませんね、しつこい油汚れ並みのしつこさで。

……昔もなにもほんの四ヶ月弱前の出来事でしょうよ。

 

「あの時はたまたま体調が優れなかったってだけの話です。普段のわたしならあんなの超余裕に決まってるじゃないですかー?」

 

……大丈夫?それ壮大なフラグ臭しかしないんだけど。

 

「……あっそ。ま、別にいいんならいいんだけどよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふえぇ……」

 

通常のジェットコースターと違って、スペマンは暗闇の中をひたすら駆け回るコースターだ。

ゆえに乗ってる最中は次にどっちに曲がるかとか、上がんのか下がんのかとかがイマイチ判別しづらい。まぁちゃんと見てれば分かるんだけどね。

 

そんな暗闇のコースターに、ぶんぶん振り回され三半規管をぐわんぐわん刺激され、ようやくゴール地点へと辿り着いた一色は、壮大なフラグ立てをしっかりと回収し、情けない声をあげながらふらふらしていた。アホか。

 

「……だから言ったろうが……大丈夫か?」

 

「は、はいぃぃ……だ、大丈夫っ……ぅぷっ……」

 

なんとかアトラクション施設を抜けて出口までヘロヘロと歩き、一色を近くにあったベンチに腰掛けさせた。

弱ったウサはすは、桃味天然水のペットボトル(例のアレ)をくぴくぴ飲みながらぐでぇっとうなだれている。

おい、いくら俺の前だからって油断しすぎじゃないですかね。あざとさのカケラもねぇよ。

これはアレだな。残念ながら致し方ない。

 

「どうする?帰る?」

 

「なんで帰るんですか!」

 

ゼロタイムで叱られちゃったよ。元気じゃん。

 

「ちょっと休憩すれば大丈夫なんで、ちょっと待っててくださいー……」

 

そう言ってまたぐでぇっとなる一色。

 

「まぁ別に急いでるわけでもねぇからゆっくり休め」

 

「ふぁい……」

 

 

それからしばらく休憩したのだが、一色は一向に動こうとはしない。

これはいよいよ帰るか……と思ったのも束の間、弱ったウサはすが弱々しく声を掛けてきた。

 

「せんぱぁい……」

 

「おう、どうした」

 

「お願いがあるんですけどー……」

 

「なんだ? なんか新しい飲みもんでも買ってくるか? それとも帰る?」

 

ヤバい、また怒られちゃうゥゥ!とビクビク興奮していたのだが、一色は怒る様子もなく、俯きっぱなしでもじもじしている。

ああ、トイレ行きたいのか。

 

「……そ、そのぉ……て、手を、繋いでもらっても……いいですか……?」

 

「おう。そんなの好きにしろよ………………は?」

 

え?今こいつなんつったの?トイレ行きたいんじゃないのん?

恐る恐る一色を見ると、それはもう物凄くびっくりしていた。

 

「……え?ま、まじですか……? ダメ元で言ってみたのに……」

 

「いやいや待て待て待て! 勘違いだ勘違い! え?なにお前、手を繋ぐっつったの?」

 

は?は?なに言ってんのこの子?

なんで俺と一色が手を繋がなきゃなんないの?

 

「ちょ!? なんですか勘違いって! 先輩は一度言ったこと曲げるんですか? それは本物と言えるんですかね」

 

ちょっとここで何の前触れもなく、いきなり最大級の黒歴史を抉ってくるのやめてもらえませんかね。

ぐぅ……勘違いとはいえ、とんでもない失言をしちまたよぅ……

だがまだ反撃の余地は残されている。てか実際意味わからんし。

 

「なぁ一色よ。なぜそこまでして俺と手なんか繋ぎたいんだよ。なんなの?俺のこと好きなの?」

 

まさか昨日に引き続き、このキモいセリフを吐くことになろうとはな。

だがなりふり構ってなどいられない。ディスティニーで可愛い女の子と手を繋ぐとか、想像しただけで八幡死んじゃう。

この一撃必殺の攻撃を加えればこうかはばつぐんのはずだ。

自意識過剰でキモいと生ゴミでも見るかのように蔑まれて、この問題を有耶無耶に出来るであろう。

やだ犠牲が大きすぎ!

 

「ななななんですかまた口説いてますかごめんなさい」

 

よしHIT!

大物が掛かったぜ!

 

「ガチでキモいんで勘違いしないでくださいお願いします。……た、ただー……わたしまだふらふらですしぃ……でも時間もったいないから早く次に行きたいじゃないですかぁ……? だったら、先輩に引っ張ってってもらうのが一番効率いいってだけの話です……」

 

……ま、そんなとこだろうな。

また気まずそうに俯く一色を見るに、実際はこいつも俺と手を繋ぐなんて嫌だし恥ずかしいのだろう。

しかし意外としっかり者でリアリストの一色は、それを堪え忍んででもディスティニーを満喫したいんだろうな。ただ休んでるだけじゃ、パスポート代金を時間配分で換算すると、一時間あたりの割合が高くなってく一方だし。

 

とはいえ、さすがにそれを容認できるほど俺に度胸があるわけがない。

言質は取られているが、ここはなんとか上手く誘導してなんとしてでも回避しな…

 

「……えいっ」

 

え、えい……だと?

一色の謎の掛け声とともに、俺の左手が柔らかくて温かいなにかに優しく包まれた。

……マジかよ……

 

「まったく、いつまで固まってるんですかねこの先輩はー。てかたかだか手を繋いだくらいで顔ちょー真っ赤とかどんだけウブなんですか、ガチでウケるんですけど。ほらほら、早く行きますよー」

 

 

……一色の小さくて温かい右手に包まれた俺の左手が、異常なくらいの熱を帯びる。

そりゃ顔もガチでウケるくらいに赤くなってるだろうよ。

 

だがな一色、なにが初心だよこのやろう。

後ろ姿しか見えないから顔は見えんが、グイグイと引っ張って行こうとしてるお前の耳だって尋常じゃなく真っ赤じゃねぇかよ。お前の手だって、俺の手くらい熱くなっちゃってるじゃねぇかよ。

 

「……言っとくがアレだぞ?……緊張しちゃって手汗とかすげぇかいちゃうからな……?あとで気持ち悪いとか言ったって遅いからな……」

 

俺のせめてもの照れ隠しの憎まれ口に、そっぽを向いたまま絶賛俺を引っ張り中だった一色がようやく振り向く。

その顔は予想通り……というか予想を遥かに上回るほど、林檎みたいに赤く染まっているくせに、お得意の小悪魔微笑を浮かべ、

 

「……ま、普段なら気持ち悪くて絶対に触りたくないですけどぉ、ふふっ、今日一日だけは、しょーがないから特別に我慢してあげます♪ 感謝してくださいねっ」

 

ばちこーんとあざとくウインク。

 

「……さいですか」

 

 

なんだよお前。ふらふらしてんじゃねぇのかよ?超元気じゃねぇかよ。

それに今日一日ってなんだよ。ふらふらが治るまでの間だけじゃないのかよ?

 

 

 

──結局その言葉通り、このあと各スポット、各アトラクションを巡った俺の右手と一色の左手は片時も離れることはなく、まるで初めから一つのモノであったかのように、しっかりと繋がれたままだった。

 

 

× × ×

 

 

四月も半ばとはいえ、海辺の夜はまだまだ寒い。

キラキラと輝く夜のパレードを眺めている俺たちはその寒さに耐えるように、無言のまま、繋がった手から感じる温度だけを感じている。

 

 

……辺りが暗くなり始めた頃から、一色の様子がだんだんとおかしくなっていった。

つい数刻程度前まで子供のようにはしゃいでいたのに、夕方くらいから少しずつ少しずつ口数が減り初め、パレードを見る為に腰掛けてからは、もう一言も言葉を発していない。

ちらりと横を見やれば、一色はパレードを見るわけでも音楽に耳を傾けるでもなく、ただ切なそうに俯くばかり。

光り輝くイルミネーションに照らされるその横顔は、今にも消えてしまいそうにただただ儚く煌めく。

 

 

俺はこう見えて鈍感系ではない。ただ、深読みして気付かないフリして、そして自分を誤魔化すだけだ。

……なんだよ、鈍感系よりよっぽどタチ悪いじゃねぇか。

 

だからさすがに気付いている。たぶん、これから起きるであろう事態を。

いや、ホントのことを言えば、もっとずっと前から気付いてたんだろう。気付いて、深読みして、気付かないフリして、そして自分を誤魔化してきた。

 

そして今日、ずっと誤魔化してきたこいつからの想いに、ついに決着を付けなけりゃならないんだな。

 

 

──俺は……こいつの想いには──

 

 

 

 

 

「……ねぇ、先輩」

 

「ん、どうした」

 

「パレード超綺麗ですよね〜」

 

「ああ、だな」

 

「パレードが終わったら、次は花火やりますね」

 

「まぁいつものことだしな」

 

「わたし、花火は白亜城の前で見たいんですよねー」

 

「おう。まぁいいんじゃねぇの?」

 

「よっしゃ! じゃあじゃあ〜、パレード終わったら速攻で一番いい場所狙っちゃいますよー」

 

「へいへい。ったく、しゃあねぇな」

 

「えへへ〜」

 

「……」

 

「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あ、ほら……パレード、もう終わっちゃいましたね、先輩……」

 

「……そうだな」

 

「…………ではでは、とっとと行きますよー」

 

「ちょ、おい……引っ張んな」

 

「ほらほら、早く早く〜」

 

「だから引っ張んなくても行くっての」

 

 

 

 

──そして俺たちは、一色曰く花火を見る為のベストスポットに立っている。

この場所は、そう…………あの日、夜空から降り注ぐ光の花の中、一色が葉山に想いを告げたあの場所。

 

 

 

 

 

 

 

※※※※※

 

 

 

 

 

 

「……ずっと前から先輩のことが好きでした……わたしと、付き合ってもらえませんか……?」

 

 

 

緊張と羞恥で足が震えて立っているのもやっとだったけど、夜空に咲いた花の光が優しく包んでくれていたからなんとかがんばれた。

 

私は今日、人生で二度目の告白というものをしてみた。

 

 

 

 

────私は今まで告白なんてしようと思ったことが無かった。

気になる人、いいなって思う人に色んなモーション掛けて、相手を惚れさせて告白させるまでのプロセスが楽しいというのに、自分から告白するなんてナンセンスだ。

もっとも告白されるまでが目的みたいになっちゃってるから、いざ告白された時にはもうその人には冷めちゃってるんだけど。

 

 

そんな私が、白亜城の前で光の花とディスティニーの音楽に包まれながら、まさかこの人に自分から告白することになるなんてね。

 

 

× × ×

 

 

当時の私は、本当に中身の無い女の子だった。

薄っぺらな笑顔の仮面を着けて、薄っぺらな仮面の笑顔を振りまいて、可愛いわたしを演じて男の子たちにちやほやされてれば満足の……違うか、どこか満たされない空っぽの気持ちを誤魔化す為に、満足したつもりになっていたのかもしれない。

 

そんな自分に気付かせてくれた先輩との出会いは、なかなかに酷いものだった。

“可愛いわたし”を妬んだクラスの女の子たちによる、イタズラと言うにはあまりにもやりすぎな、虐めにも近いような行為。

でも当時の私は、そんなのあたかも有名税でもあるかのように、なんでもないよ?って平気な顔で振る舞って……でもその実、腹の中ではどす黒い感情でずっとモヤモヤしてた。

モヤモヤしてたけど……でもそんなかっこわるい感情は、ずっと仮面の下に隠してたのに……

 

『ちょっと悪目立ちしたら、そいつには何言ってもいいと思ってる。遊びだから、ネタだから、いじってるだけだから。……やっぱ、やられたらやりかえさないとな……』

 

……なんか、この人には私がわたしである事を全部見透かされてるんだなって思った。

最初は視界にも入ってなかったような、そこらのモブ以下だと思ってたどうでもいい先輩に。

 

まったく……そんな綺麗事並べまくって、そのあともあれやこれや上手いこと言っちゃっても、ホントは単に自分の大切なものを、大切な場所を守りたかっただけのくせにさ。その為に私を利用しようと思っただけのくせにさー。

 

『先輩に乗せられてあげます』

 

……でも、私はそれに、先輩に乗ることにした。

わたしを見透かしたことも、私を利用しようとしたことも、全部ひっくるめて“この人面白いかも”って思っちゃたから。

乗せられてあげれば、この人にはもっと面白い目にあわせてもらえるかもって思っちゃったから。

 

だからあの時、初めて私はわたしをやめて、素顔の笑顔を先輩に向けたんだ。

たぶんあなたはこの私も受け入れてくれるんでしょ?って。

 

 

──そしてそのなかなかに面白い先輩を本当の意味で意識したのはあの時。

わざわざ思いなんて巡らせなくても、いつでもあの冷たく静まり返った薄暗い廊下での光景が頭を過る。

 

『俺は……本物が欲しい』

 

どうでもいい人から面白い先輩にランクアップはしたけど、でも……あんなに冷めてるだけだと思ってたあの先輩の熱い思い。

恥ずかしくたってカッコ悪くたって、大切な居場所を守る為に、一歩を踏み出す為に吐き出した本当の自分。

 

ずっと空っぽで生きてきた私の心臓は、いとも容易く一発で鷲掴みにされた。

そして悔しいけど羨ましいなって思った。だから私も欲しいなって思った。その本物ってのを。

 

 

そしてクリスマス前のディスティニーでの、人生で初めての告白。

でも、所詮本物でもなんでもない偽物の告白は、当然の如く夜空に咲く光の花とおんなじように、綺麗さっぱり見事に散ってしまった。

そりゃそうだよね。ただ本物に憧れて本物が欲しくて、近くにあったものに無理やり手を伸ばしただけの偽物の告白だったんだもん。

 

……でも、先輩は憶えてますか?その日の帰り道、先輩はこんな私に言ってくれたんですよ?

 

『その、なに。あれだな、気にすんなよ。お前が悪いわけじゃないし』

 

って。

 

『すごいな、お前』

 

って。

 

誰よりも照れ屋で不器用なくせして、照れくさそうに顔赤く染めちゃって。

 

 

ほんっとにずるいですよ、先輩は!ほんっとにずるずるです!

 

だから私言いましたよね?

 

『先輩のせいですからね、わたしがこうなったの…………責任、とってくださいね』

 

って。

 

ふふふ、だから今がその時なんですよ?せーんぱいっ?

 

………絶対に逃がしません。あの時の約束、きっちりとここで守ってもらいますからね?

 

 

× × ×

 

 

私の突然の告白に、先輩は戸惑いの色を隠せない。

でも、やっぱりちょっとは予感してたのかも。今日はちょっと攻めすぎちゃいましたもんね。

 

「……なぁ一色。マジで言ってんのか……?」

 

「バカなんですか?いくらわたしだって、このシチュエーションでこんなセリフ、冗談で言うわけないじゃないですかー?」

 

破裂しそうな心臓をなんとか落ち着かせようと、わざとらしくおどけて言う私。

でも身体も声も震えまくってるから、先輩には演技だってバレバレですよね。

 

「……ったく……なんで告白されてる最中に、相手に罵られなきゃなんねぇんだよ……」

 

でも先輩はそんな私の安い演技に乗ってくれる。

そういうトコ、ホントあざとくてムカつくんですよ、もう。

 

「ふふっ、でもこういう方がわたし達らしくていいじゃないですか」

 

「……だな」

 

苦笑いで私の意見を肯定してくれた先輩は、次の瞬間照れくさそうにぷいっとそっぽを向く。

 

「……なんつうか、よく分かんねぇんだけど……なんで俺なんだよ。お前って、葉山じゃねぇのかよ」

 

……へぇ〜……

 

「なんかちょっと意外です」

 

「あ?なにがだよ」

 

「わたし、先輩の事だから、これなんの罰ゲーム?とか、そんなの一時の勘違いだろ……とかくだらないこと言って、誤魔化して逃げようとするもんだとばっかり思ってました」

 

そこは本当に意外。

もしそんなこと言うようなら、私が如何に先輩のことが好きなのか、先輩が恥ずかしくて立ってられなくなるくらいまで、じっくりじっくり語ってやろうと思ってたのに。

 

「……お前は俺の事なんだと思ってんだよ……。いや、まぁそう言って逃げたい気持ちは山のようにあるんだが」

 

「やっぱりあるんだ……」

 

「……だがまぁ、なんつうか、今日の……ってか今のお前を見てたら、そんなしょーもないこと言うのが、なんかとんでもなく失礼な気がしてな」

 

「……っ」

 

そ、そっかぁ……。私の真っ直ぐな気持ちは、ちゃんと受け取ってもらえてるんだ……

 

そんな先輩の言葉に、ようやく落ち着いてきてた心臓が、また激しく高鳴り始める。

……やっぱり、ホントずるい。

 

「ん!……そ、そういえばなんで葉山先輩じゃないんだ?……でしたよね。まぁぶっちゃけてしまいますと、葉山先輩は先輩を落とす為の便利アイテムです」

 

「……お前ぶっちゃけすぎだろ」

 

愕然と私を半目で見つめる先輩。

まぁ自覚はしてますけれども……

 

「……んで、なんで俺なんだよ。別に俺は一色に好……その、そういう風に思ってもらえるようなことをした覚えもねぇし、思ってもらえるような人間でもない。葉山なんかとは偉い違いだ」

 

「……はぁ〜」

 

……それを自覚してないから天然のたらしなんですよ先輩は……

呆れ果てた顔で深く深く溜め息を吐いた私に、先輩はちょっとビビってるご様子。

 

「ホント偉い違いですよね……ふふっ、まぁわたしの告白にYESでもNOでもちゃんと答えをくれたら教えてあげます。わたしが如何に先輩に心を盗まれちゃってるのかを、切々と、懇切丁寧に」

 

「……なにそれ、答えたくないんだけど」

 

「でもダメですよ?ちゃんと答えてくれなかったら、それを含めて全校集会で発表しちゃいますから」

 

「……いやそれはマジで勘弁してくれ……」

 

「ふふふ、それはわたしを生徒会長にした先輩が悪いんですからねー」

 

甘いですよ先輩。結局は全部そこに行き着くんですから。

 

「これが責任ってやつの重さですよ?……ではでは先輩、答えをどうぞ」

 

「クイズ番組かよ……」

 

んー、おかしいな。ディスティニーランドの白亜城前、ディスティニーの音楽と光の花に包まれながらの、ムード満点最高の告白シチュエーションのはずなのに、いつの間にかいつものペースになっちゃってる。

でも、これこそが何一つ飾ることのない素の私と、そんな素の私を全部包み込んでくれる先輩とのカタチなんだよね。

 

 

──数十秒の間黙り込んでしまった先輩の顔。

その表情はとても苦しそうに歪んでる。

 

「……一色……俺は……」

 

ようやく口を開いた先輩の重い声に、私の心臓は一気に押し潰されそうになる。

これはあれだ……またダメなんだね……

また私の想いは届かない……

 

 

 

 

 

 

 

…………でも、でもまだこれで終わりじゃないんですよ?先輩。

まだ私は、この告白劇に最後のスパイスを振りかけてないんです。女の子特有の、とてもずるくてとても甘い、とっても刺激的なとびきりのスパイスを。

 

「先輩」

 

覚悟を決めて、私を切り捨てる為の答えを口にしようとしていた先輩は、早く答えを出せと迫っていた他でもないこの私に言葉を遮られて、ひどく驚いている。

そんな先輩を無視して私は言葉を紡ぐ。このまま答えたんじゃ、未完成なままの中途半端なお菓子が出来上がってしまうから。

 

 

「……先輩は、憶えてますか……? あの日の帰り道に二人でお話したこと」

 

せっかく答えを出そうとしてたのに、それを遮られてしまった不完全燃焼の先輩は、困惑気味にこう答える。

 

「……責任、取ってくれってやつか……。だがな、」

 

……取る責任はあくまでも生徒会長の責任。その恋愛感情の責任は取れない?

そう言いたいんでしょうね、先輩は……

でも先輩はやっぱり甘いですね。なぜなら私が今尋ねてるのはそれじゃないの。

 

「違いますよ、先輩。それよりもちょっとだけ前に言ったことです」

 

「……へ?」

 

てっきり責任取って発言かとばかり思っていたであろう先輩はハシゴを外された格好になり、なんとも間の抜けた声を漏らす。

 

「思い出してみてくださいねー。記憶力のいい先輩なら、絶対に憶えてるはずです。……んー、そーですねー、ヒントは……可哀想とかそういうの……?」

 

「か、可哀想……?」

 

すると先輩はんー、と一瞬だけ過去の記憶に意識を巡らせ、次の瞬間には「ああ……」と記憶を手繰り寄せたみたい。

さすが先輩。頭だけは無駄にいいんですよね。

 

 

『振った相手のことって気にしますよね?可哀想だって思うじゃないですか。申し訳なく思うのが普通です』

 

 

……これが私があの時先輩に放った言葉。

そう、すでにあの時から私の作戦は始まっていたのだ。先輩を簡単に逃がさない為の、ずるいずるい作戦が。

 

 

そして私はわたしらしく瞳を目一杯に潤ませて、先輩に甘えた上目遣いでこう迫るのだ。

 

「ねぇ、せんぱい。昨日も言いましたけど、こう見えてわたしって、実はディスティニー超好きなんですよねー」

 

「は?」

 

こいつこのタイミングでいきなりなに言いだしてんの?って顔で私をまじまじと見つめる先輩。

でもそんなのお構い無しに私は言葉を続ける。

 

「でも、これも昨日言いましたよね?わたしあの日以来、今日この日まで軽くトラウマになっちゃってて、その大好きなディスティニーに来られずにいたんですよねー……」

 

これも、すべてはこの作戦の為に。

今日この瞬間にこの作戦が芽吹く為に、昨日のうちから蒔いておいたスパイスの種。

そして私は言う。今にも芽吹きそうな新芽を無慈悲に摘むように、この決定的なずるい言葉を。

 

 

 

 

「……わたし、もしこれで先輩にまで振られちゃったら、トラウマ拗らせて二度と大好きなディスティニーに来れなくなっちゃうかもですー……」

 

精一杯可愛く、精一杯あざとく、精一杯庇護欲をそそるように、私はそれを告げる。

それを聞いた先輩はもちろん当たり前のように固まっっちゃったけど、そんなの知ったことじゃない。

……今が勝負の時だから。

 

「……女の子にとって、とっても大切なクリスマスに好きな人に振られて、そして誕生日にまで大好きな人に振られたような場所なんて、もう一生来れなくなっちゃいそうじゃないですかー……? 超可哀想じゃないですかー……? 先輩は、可愛い可愛い後輩のそんなトラウマを、一生抱えて平気な顔で生きていけるような鬼畜なんですかー……?」

 

 

……我ながらあまりにも酷い落とし文句。落とし文句というよりは脅し文句という方がしっくりくる。

ていうか脅し文句としか言えない。

 

「お、お前……ずりーぞ……」

 

先輩は物凄く引きつった表情で最後の抵抗を試みるけれど、その弱々しい抵抗の声を聞いた私は、ニヤリと悪い笑顔を先輩へと向けてあげるのだ。

 

「だから前に言ったじゃないですかー? ちょっとずるいくらいのほうが女の子らしいじゃないですか〜って」

 

 

──ホントに酷い言い分だと思う。普通に引くよね、こんな女の子。私だってドン引きだよ、こんなの。

 

……でもね?これは対先輩にだけ許されるずるさなんですよ?

だって……このずるさは、ずるい行為をしている私の為じゃなくて、先輩の為のずるさだから。

 

 

 

先輩は、他人から好意を向けられるのことにとても弱い。

だからこんな風に直接好意を向けられても、いろいろと考えて深読みして誤魔化して、最終的には自分が本当は望んでいない答えだろうとも、一番効率がいいと思える答えに落ち着いてしまう。逃げてしまう。

 

単純に自分が傷付きたくないから。裏切られて傷付くのが嫌だから。

確かにそれが大部分を占めてるとは思うんだけど、それだけならまだいいんだよね。

でもそれだけじゃない。先輩にとっても、好意を向けている相手にとっても一番辛いのは、もっと深くにある悲しい思考回路。

それは、例えば……そう。──自分と付き合うことによって、相手が被る風評被害──とかね……

 

だから、もしも先輩が、本心では私からの好意を受け取りたいと思ってくれたのだとしても、たぶん先輩は受け取ろうとはしない。

なんだかんだと一方的に勝手な理由をつけて、好意を振り払ってしまうのだ。

 

 

でもね?先輩は全然解ってないです。好意を向ける相手にとっては、それがなによりも辛いことなんだって。

私の為を思って断るとか、マジで何様だと思ってるんですかねー。聖人君子にでもなったつもりですか?ガチで腹立ちます。

 

 

だからこそ先輩に対してだけは、この作戦を使ってもいいんです。

他人からの真っ直ぐな好意には、余計なことなんて考えないで、嬉しいか嬉しくないか……好きか嫌いかだけでいいんですからね?

 

 

……別にこの作戦で、先輩を脅してでも付き合ってもらおうなんて考えてはいない。

だって、先輩はバカで捻くれ者でたまにキモいけど、ちゃんと信念だけはばしっと通ってる人だから。

ホントに好きじゃなきゃ、ホントに付き合いたいと思わなきゃ、いくら可愛い可愛い後輩のお願いとはいえ、同情なんかで無責任に付き合ったりなんかしない。

 

だからこれは、単なるきっかけをあげているだけ。

本当は断りたいんだけど、こいつがここまで言ってるし、まぁ仕方ないか……って、先輩が自分に言い訳が出来る為のきっかけ。

 

 

もし先輩が、こんなに真っ直ぐに好意を向けてくる私の想いに応えたいと思いながらも、そんなバカでしょーもない言い訳で逃げちゃうようなら、たぶん先輩は今後も言い訳を続けて誰からの好意にも応えないだろう。

……それがあの二人だとしても。

 

だから私はここであなたを逃がすわけにはいかないんです。

たとえ私がここで散ったとしても、いつの日か本物を手に入れて欲しいから。変な言い訳なんかせずに、ちゃんと自分の気持ちを大事にしてもらいたい。

 

 

 

──そんな、先輩の為先輩の為だなんて綺麗事を思ってたって、そこは恋するずるい乙女な私です。

振られたっていいだなんて言いながらも、本心ではやっぱり振られたくない……先輩の本物は私であって欲しい、そして先輩という本物が欲しいなんて、そんな邪な事を考えちゃう私は、スパイスまみれのこのレシピに、最後にもうひとつまみの甘い甘いお砂糖を加えて最後の仕上げ。

 

「せーんぱいっ」

 

そろそろ魔法の時間も終わる頃。

 

──夜空を彩る光の花と音楽に包まれてるうちに、運命の魔法が解けないうちに、わたしはこの告白の仕上げを完成させましょう──

 

そして私は真っ直ぐに先輩を見つめる。そっぽなんて向かせないくらいに真剣に。

 

 

「……わたしまだ先輩からプレゼントもらってないですよね。だからわたしにプレゼントをください。……わたしの十七回目の誕生日プレゼントは、また先輩と一緒にディスティニーに来られる魔法のパスポートが欲しいです」

 

 

ホント自分でもビックリするくらいの寒いセリフ。精神状態が普通の時ならギャグでも言えないような恥ずかしいセリフ。

でもまぁ、ここまでの流れがあまりにもムード無さすぎてスパイス効きすぎてたし、これくらい甘い方が甘党の先輩にはちょうどいいですよね?

 

思った通り居心地悪そうに赤面する先輩は、ついに耐えきれなくなったのか、ぷいっとそっぽを向いてしまった。

そしていつも見慣れた照れ隠し。頭をがしがし掻いて、やれやれと溜め息まじりに、完成した甘くスパイシーな告白をゆっくり咀嚼する。

 

 

ふふふ、さぁ、感想をどうぞ。

お口に合いましたか……?美味しくなかったですか……?

 

 

「……ったく……しゃあねぇなぁ……」

 

「……しゃあない、ですか?」

 

「ああ……しゃあねぇな」

 

私は知っている。先輩のしょうがないは、照れ隠しのOKサイン。

このポーズでこのセリフを吐いたときは、私のわがままを聞いてくれるサイン。

 

「……まぁ、なんだ。誕生日だってのに、結局今日のパスポート代はお前持ちだしな。払わせてくんなかったし。……だったら、次のパスポート代は俺が払わなきゃ割に合わんだろ……。なのにもう来れないってんじゃ、俺が施しを受けた形になっちまう。…………俺は養われはしても施しは受けん」

 

「…………ぷっ、あはははは!」

 

「あ?なにが可笑しいんだよ」

 

「くくっ……だ、だって、ホント先輩ってどうしようもないんですもん!……せっかくわたしが超甘くしてあげたのに、返ってくる感想が…………ぶっ!超最低っ」

 

「アホか……甘過ぎだってんだよ……」

 

 

ホントにやれやれですねー、先輩は。

せっかく想いが届いたのに、ホントだったら涙とか流して「わたし超幸せです!超感激してます!」ってアピールしたいところなのに、わたしの瞳からとめどなく流れてくる涙は、笑いすぎて出てきちゃった涙だけじゃないですか、まったくー。

 

 

でもまぁ、今日はこれくらいで勘弁してあげますね?せーんぱい!

 

しこたま笑ってしこたま涙を流してようやく落ち着いてきたわたしは、逃げられちゃわないようにすっと先輩との距離を詰め、そしてそっと唇を寄せる。

 

 

 

先輩の頬に?先輩の唇に?

いやいや違います。そういうのはちゃんと段階を踏んでからでお願いしますごめんなさい。

 

私が唇を寄せたのは先輩の耳元。

……あの日と同じ、あのモノレールの帰り道と同じトコ。

 

 

そして私はそっとささやく。この捻くれものの素敵な先輩に愛のささやきを。

 

 

「……せんぱい?わたし、頑張って先輩の本物になりますね?……だから、先輩は頑張ってわたしの本物になってくださいね?…………なのでっ」

 

先輩がビクッと仰け反ったのを見計らった私は、ニヤリと小悪魔笑顔を浮かべて後ろへひとステップ。

 

そして神様のイタズラか、はたまた運命の魔法か。

この時を待っていたかのように、本日四月十六日最後の花火が運命の国の夜空に打ち上がる。

 

私は煌めく光の花に照らされて、絶妙な手の角度と腰の角度がポイントのお得意敬礼ポーズをびしっと決めて、お砂糖とスパイスたっぷり出来たてホカホカの愛する彼氏さんをメロメロに悩殺してやるのだ!

 

 

 

 

 

 

 

「これからずっとずっと……よろしくです♪」

 

 

 

 

終わり☆

 




というわけでいろはす生誕祭にお贈りしたのは、長い長いディスティニーデートでした。ホント長くなってしまってスミマセン><

それにしてもようやく書けました!いろはす生誕祭記念SSを書く為にこの短編集を頑張って続けていたまである。


実はかなり前からちょこちょこ書き始めてたんですが、予想通りかなり長くなりすぎて、危うく間に合わないんじゃないかと思っちゃいました(苦笑)


そしてこれでようやく主要メンバーの誕生日記念SSを書き終えて、クリスマスやらバレンタインやらの主要イベントもこなしたので、これにて記念日SSは終了となります!
基本ひとネタを全力で書いているもので、さすがに誕生日SS二週目は無理です(汗)
(というか記念日SSは1話で済ますには長くなりすぎちゃうんでかなりキツい……)


それでは、次回の短編集更新は、ネタもヒロインもまったくの未定ではありますが、また皆様とお会い出来ますように……



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