八幡と、恋する乙女の恋物語集   作:ぶーちゃん☆

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ついについに、全国の俺ガイルファンが待ち望んだあのヒロインの登場です!
(え?誰も待ってないって?デスヨネー白目)


……ん!んん!
ま、まぁ年末から年始に掛けて(ぶーちゃん的に)メインヒロイン続きでお腹いっぱいだったこの短編集なので、ほんの箸休めというかお茶請け的な感じと思って、生暖かい目で見ていただけたら幸いです(苦笑)





冴えない沙和子の育てかた【前編】

 

 

 

「せんぱぁいっ、ここってどうすればいいカンジになりますかね〜?」

 

「アホか……そこはお前が自分で判断しなきゃなんねーところだろうが」

 

「え〜?教えてくださいよぉ、せんぱーい」

 

 

新年度へと駒を進めると、中間管理職たる私たち生徒会は、やれ卒業生の穴を埋めなきゃとか、やれ新入生歓迎のイベントで楽しんで貰わなきゃとかで、この上なく目まぐるしい日々を過ごしていた。

そんな中、相も変わらず我らが生徒会長一色さんは、自分らしさをこの上なく発揮して羨ましいくらいにキラキラと輝いている。

 

この生徒会が発足して早5ヶ月。

正直最初はどうなることかと思われたこの生徒会も、今では昨年までの生徒会運営と見劣りが無いくらいに上手く活動できていると、先生方からもっぱらの評判だ。

こうやってたまに?かな?外部の助っ人さんに来て貰ったりもするけれど。

でもこんなにも良い生徒会になれたのは、ひとえに一色さんの頑張りによるところだと思う。

 

 

一色さんは、こうやって一緒にお仕事をするようになる前から、私でも知ってるくらいに学年の有名人だった。

ただ、その有名さは決して良いだけのものでは無く、容姿に恵まれている上に男の子に甘えるのが上手で、女の子達からはあまり好かれてはいない……そんな、ちょっと派手な印象の噂だった。

 

まさかそんな一色さんが生徒会長になるだなんてちっとも思ってなくて、、元々興味があって書記に立候補していた私は、一体どうなっちゃうんだろう!?って不安な気持ちで一杯だった。

 

その不安通り、発足当初こそ色々と問題を抱えて大変だった一色さん率いる生徒会運営も、誰とは言わないけど、認めて欲しい人が居るのであろう一色さんの予想外の頑張りと、そんな一色さんのひた向きな姿に引っ張られた私たち役員によって、発足から5ヶ月間の昨年度はとても良い実績を残せたんじゃないかなって思うのです。

 

 

× × ×

 

 

私 藤沢沙和子は、総武高校に通う進級し立てなピカピカの二年生。

県内有数の進学校へと通うそんな私を形容する言葉の中で、最もピタリと合うであろう言葉は……そう、普通。

 

確かに進学校には通えているものの、ここに入れたのも偶然というか奇跡というか、たまたま記念受験したら運良く受かってしまったっていうくらいに、そんなに学力が飛び抜けているわけでもない。

そして見た目は、これはもうホント自分で言うのもはばかられるくらいに、どこにでも居るような普通の見た目。むしろ普通よりもずっと地味、かも……

 

そんな地味で普通な私は、かねてより興味のあった生徒会へと入ってみたんだけど、そこで出会ったのが私とは真逆の存在ともいえる一色さんなのだ。

 

見た目や性格が華やかで、男子からの人気はかなり凄い。

今までこういった派手な部類の人たちと関わる機会が無かった普通の私は、未だに私とは全っ然違う一色さんの華やかさに毎日のように押されっぱなしだし、やっぱり羨望の眼差しで見ちゃうこともしばしば。

 

でも!確かに羨ましいな……って思っちゃったりもするけれど!

……私は別に今の自分が嫌いなわけでも、ましてや一色さんみたいになりたいわけでも無いんです。

むしろこんな普通の自分が好きだし、派手な人たちは派手な人たちで、周りの目を気にしたりお洒落に気を遣ったりと大変なんだろうなぁ……なんて思ったりもする。

つまり、普通で地味な今の毎日こそが、私的には一番身の丈に合ってるし幸せだなぁって本当に思ってる。

だって普通って……実はとっても掛け替えのない事なんだよね。

 

 

 

──なんだけど、確かにそうなんだけど……

そんな風にずっと思っていた私にも、最近はその“普通でいること”に対しての悩みなんかもあるのです……

 

 

× × ×

 

 

実は……こんな私でも、一年生の時に一度だけ男の人とデートしたことがあるのです……!

デ、デートと言っても、ただ単に優しい先輩がご厚意で誘ってくれただけの単なるお出掛けではあるのだけど……

 

あれは、生徒会室でみんなで雑談していた時のこと。

「普段休みの日ってどんなところに遊びに行ったりしますかー?」との一色さんの質問により始まった会話の中で、その一色さんの口から出てきたある1つのカフェの名前。

普段よく友達と行くらしいそのカフェは、実は私も一度入ってみたいなぁ……と思っていた、とても素敵で可愛いカフェだった。

 

でも、残念ながら私は未だ入店したことが無いのです。私にとってはとてもとても敷居が高いお店だから。

スタバでさえも場違いに感じてしまうような、せいぜい学校帰りに私と同じく地味で普通の友達同士で、マックやドトールでカフェオレを飲むくらいが関の山の私にとって、そういった所謂お洒落カフェは、とてもじゃないけど入れそうもない高嶺の花だったんです。

 

だから一色さんがよく行くと話してたのを聞いていた私は、よっぽど羨ましそうな物欲しそうな顔が出ちゃってたのかな?

そんな私に気を遣ってくれたのか、その日の生徒会が終わったあとに、副会長の本牧先輩がこっそりと「よ、よかったら……さっき一色さんが言ってたカフェに今度行ってみない……?」と誘ってくれたんです!

もう本っ当にビックリしちゃってわたわたしてる私の答えを、顔を真っ赤に染めて待っててくれたっけなぁ……。ホントにいい人!

 

結局その人生初デートは、本牧先輩のご厚意に甘えるカタチで実現してしまったわけなのだけど、私はそれ以来、地味で普通な自分に“私ってこのままでいいのかな”って、疑問を抱くようになってしまうのでした。

 

なぜそんな疑問を持ってしまったのか。それは、私みたいに地味で冴えない普通の女の子と一緒に街を歩くのって、男の子からしたらどうなんだろう?って考えてしまったから。

 

本牧先輩も、失礼ながらどちらかといえば普通の部類に入る男の人だと思う。

それは、普段の言動や立ち居振る舞いが物凄く真面目で大人しい感じだから、そこから受ける印象なのかもしれない。

でも、本牧先輩は見た目は結構格好いいと思うし、お出掛けの時の私服姿だってなかなかキマってた。

だから、なんだか申し訳なくなっちゃったんだよね。隣に居る私があまりにも冴えなくて。

 

 

あのデート……じゃなくってお出掛けはあくまでも本牧先輩のご厚意なんだけど、でも……あのお出掛け以来、実はちょくちょく目が合ったりもするし、「また今度どっか行こうよ」なんて緊張した様子で誘ってくれたりもするから、もしかすると……もしかすると!これは厚意なんじゃなくって好意なんじゃないかって、恥ずかしながら自惚れちゃったりもする瞬間があったりなかったり……

 

同じ空間に一色さんみたいな素敵な子が居る中で、こんな地味で普通な私なんかに対してそんな感情を抱いてくれるわけは絶対無いけど、でももしも私のこの恥ずかしい自惚れが間違ってなかったとしたら、むしろそれこそ申し訳なさが倍増しちゃうんです。

もし今度またお出掛けするような事があった時、隣で歩いてる女の子がまたこんなに地味な子でいいのかな?って。

 

 

正直私は今までこれといった恋なんてしたことが無い。

まぁ人並みに『この人格好いいなぁ』とか『この人ちょっといいかもっ』くらいには思ったこともあるけど、だからと言ってなにか行動を起こそうとかまでに考えが至ったことはない。

仮に考えが至りかけても「私なんかじゃ……」って、どうせ行動に移す前に諦めちゃうだろうし。

 

そんな本物の恋も知らない私は、やっぱり今のところ本牧先輩に恋をしているって事は無い。すごくいい人だなぁとはいつも思ってるけど。

……って、別に本牧先輩が私に好意を向けてくれてるなんてことあるわけ無いんだし、勝手な妄想でこんな風に考えちゃうのは失礼過ぎだよねっ……

でも……少なくともまたどっか行こうよってお誘いを受けていることは事実なわけで。

 

 

だから…………だから私は、今とても悩んでいます。

藤沢沙和子は、このまま冴えない女の子のままでもいいの?って。

こんな私でも、いずれは恋の1つくらいはしてみたいって思ってるし、もしかしたらそのお相手が本牧先輩ってことだって決して0では無いのです。

今までなんの疑問も持たずに過ごしてきた地味人生だけど、こういった考えが思い浮かんでしまった今だからこそ、こんな私なんかでもこの辺でそろそろ、この『冴えない私』から脱却したって良いのではないでしょうかっ……?

 

 

× × ×

 

 

……と、そうは考えてみたところで、じゃあどうすればいいの?ってなると、また問題山積になってくるんだよね。

なぜなら、本当に本気でどうすればいいのかが全然分からないんだもん!だってこの十六年間という月日のなかで、今の私で居ることが当たり前だったんだから。

 

お洒落だって良く分からないから、無理に頑張ってお洒落して出掛けしてみてもハズしちゃうと思うし、どういう所に行ってどんな態度をしていれば男の人が“一緒に居て楽しい”って思ってくれるのかとか、私には全っ然分からない……

 

友達に聞こうにも、残念ながら私の周りの友達は今までの私と同様、そっち方面には疎い子たちばかり。

だから最近仲良くなった一色さんに相談してみようかな?とかも考えたんだけど、それもやっぱりなにか違う気がした。

 

一色さんは女子の間で囁かれている噂と違って、本当はとっても真面目でとっても一途でとってもいい子。

だからたぶん私がそんな相談をしても、笑ったり馬鹿にしたりせずに一生懸命考えてくれるんじゃないかなって思う。

でも……やっぱり今の私にとって、相談相手がいきなり一色さんレベルとなると荷が勝ちすぎちゃうし、何よりこういう相談は、女の子じゃなくて男の人の意見を聞いてみたいんだよね。

今の私が求めてるのは、男の人がこんな私と一緒に居てどう思うか?どんな風になれば一緒に居ても恥ずかしくないのか?なんだから。

 

 

と、そこまで考えが至ったところで、とびっきりの一番の問題になってしまうんです……

だって、私の知り合いにそういうのが分かる男の人なんて居るわけないじゃないっ……!

 

そもそもが本牧先輩関連の悩みだから本牧先輩に相談なんて出来るわけないし、本牧先輩ほどでは無いにせよ最近よく話し掛けてきてくれる経理の稲村先輩にもなんとなく相談しづらいし、じゃああとは………………お父さん……?

 

……………うー、ダメだなぁ私……

 

 

本日の生徒会を終えて、うんうん唸りながら廊下を歩いている私は、その時ふとある考えが頭を過った。

 

──そうだっ!居るじゃない!私の近くにも、そんな頼れる男の人がっ!

 

そう。“私の近く”なんて考えてしまうのがおこがましいからすっかりと頭から抜け落ちてしまっていたのです。この件を相談するのにとても相応しい人のことを。

本来であれば私なんかとはなんの接点もないような、とても素敵でとても凄い、私が一番尊敬している人。

 

我が総武高校が誇るとんでもない美女達に慕われて信頼されている、私はあんまり読んだことが無いけど、ライトノベルっていうジャンルの小説の主人公みたいな、まさにリア充?って言うのの代表みたいな人!

 

 

そうだ。あの人なら依頼という形でなら真剣に私の悩みを聞いてくれるだろう。

いつも美女に囲まれてるから女性の扱いだって上手いだろうし、デートだってたくさんしてるだろうから、こんな冴えない私でも少しはマシな女の子へと導いてくれるはず!

その上すごく優しいから、私の恥ずかしい相談内容を他人に漏らすようなことも絶対にない。

 

 

 

ようやく一筋の光を見つけた私はすぐさま行動に出る。

差し当たってまずすることは、急いで靴を履き代えて駐輪場へと小走りで急ぐこと。

さっき生徒会室で別れたばかりだけどまだ間に合うかなっ……?

 

 

そして駐輪場へと到着した私が辺りを見回してみると……

 

「居たっ」

 

その人の姿を視界にとらえた私は自分でも驚くくらいの勢いで彼へと駆け寄り、尊敬する先輩に対して大変失礼ながらも、なんの前触れも無しにこう声をかけるのでした。

 

 

「あ、あのっ……!比企谷先輩っ!……ご、ご相談があるのですが!」

 

 

 

続く





というわけで、まさかまさかの書記ちゃんSSでした!
まずは状況説明から入んなきゃならなかったからって、今回セリフ無さ過ぎでしたね(白目)
こんなもん書いてる暇があったら他の書けよって怒られそうではありますが、前書きでも述べた通り、ほんの箸休めと思って許してください☆
なるべく次で終わらせますね(苦笑)

ではまた後編でお会いしましょう(^^)/



追伸……(ツッコまれる前に先に言っておきます汗)

今回『敷居が高い』という言葉を使ったのですが、今回の使い方が日本語的に間違っているのは承知しております。
ただ、この誤用はほとんどの日本人が知らずに使ってしまっているものだと思いますので、一介の女子高生である書記ちゃんがああいう場合に使わないわけが無い、むしろ使わない方が不自然かと思い、あえて使わせて頂きました。
というか、ほとんどの日本人がこの認識で使ってしまっている以上、もうこの使い方でいいんじゃない?とかまで思う次第であります。

なので今後も色んなSSで、また別の言葉で誤用をするかも知れませんが、基本は一介の高校生視点(国語優秀者の八幡とゆきのんはダメ!)ですし、大多数の読者さまが分かりやすい現代的な言葉遣いを選んで書いていきたいと思う次第であります!
(べ、別に本気で誤用をしちゃった時の為の予防線なワケじゃないんだからねっ!?)

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