八幡と、恋する乙女の恋物語集   作:ぶーちゃん☆

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お待たせしましたっ!みんな大好きルミルミとのデート回です!





ぼっち姫の初デートは、運命の潮風と共に【前編】

 

 

 

季節は7月へと移り変わり、まだまだ梅雨は明けないものの、切れ間に降り注ぐ陽射しは次第に本格的な夏へと空気を変えていく。

 

 

本日も滞りなく部活と言う名の受験勉強を終え、俺は帰宅の途に就くべく駐輪場から自転車を取ってくると校門へと向かった。

 

 

校門まで愛車を押して行くと、校門の外にはいつもと違う光景が待ち受けていた。

てかデジャヴ?

 

 

そこには、いつぞやと同じように黒髪ロングのとても可愛らしい女子中学生が、帰宅中の総武高生徒たちにキョロキョロと視線を向けていた。

 

 

あのセーラー服美少女戦士もといセーラー服美少女中学生は、確実に俺を待っているのだろう。

 

……やばい。またしても奇異と好奇の視線に晒されるのか……。

また一色にバレたら尋問待ったなしだな……。

 

「おう、留美」

 

まぁそうは言っても仕方が無い。

わざわざ留美が会いに訪ねてきてくれた事は素直に嬉しいし、今度はこっちから声を掛けてやった。

 

「!……八幡っ!」

 

ぱぁぁっと笑顔になって嬉しそうに駆けてくる留美。

 

あれ?前に訪ねてきた時よりすげえ嬉しそうに寄ってきてくれてるんだけど。

なんか心なしか顔が超赤いが、まぁ暑っついからな。

 

「よう、半月ぶりくらいか。元気にしてたか?」

 

「うんっ!……久しぶり……っ」

 

あんなに嬉しそうに駆け寄ってきたのに、今は俯いてもじもじしちまってる。

なんかその反応ちょっと恥ずかしいんですけど……。

 

 

「今日は……どうしたんだ?……とっ、とりあえずまた場所変えるか!」

 

 

くっ!やっぱり視線が痛いよぉ!

留美が無駄に可愛い分、このシチュエーションが超目立つ!

 

「ううん?今日は誘いにきただけだからいい。話、すぐ終わるから」

 

「誘い?」

 

つい今しがたまでもじもじと俯いてたのに、急に留美はムッとする。

大人びた女の子が子供っぽくムッとするのってなんか可愛いですよね。

キモいと言われた時のような謎の高揚感が蘇る!

 

「前に奢ってくれるって約束したでしょ。忘れちゃったの!?ホント八幡てばか」

 

くっ!謎の高揚感の連続攻撃かっ!

やばいなんか俺変態まっしぐら。猫まっしぐらの雪ノ下さんといい勝負しちゃう!

 

「いやちゃんと覚えてるぞ?……そっか。それでわざわざ会いに来てくれたのか。んで今からどっか行くのか?」

 

「誘いにきただけって言ったでしょ。ちゃんと人の話聞いててよ、ばか八幡」

 

おいおいルミルミ。この短時間でどんだけ俺をいけない道に引きずり込もうとしてくれんだよ。

 

なんか俺、将来いいお父さんになれそう!

小町に超ウザがられる我がクソ親父をつい思い出しちまった。やはり血は争えないのか……。

 

「次の日曜日、10時に駅で待ち合わせだから」

 

あっれぇ?俺の予定とかの確認はないのん?

 

「いや待てルミルミ。俺の予定の確認……」

 

「だからルミルミってゆーなっ!学習しないわけ?」

 

この罵倒のコンボは、もうまじミニ雪ノ下さん。ミニノ下さんと呼んでもいいくらい!

いやルミノ下さんか?

 

「大体日曜日に八幡に予定なんて入ってるわけないじゃん。だからもう決定してんの!」

 

「そうすか……」

 

中学生に完全にやり込められてる俺まじクール。

いやホント自分に感動して泣いちゃう!

 

 

「……じゃあ、そういうわけだから……。まぁまぁ楽しみにしてんだから、遅れないでよねっ……!」

 

 

また頬を赤らめてプイッとそっぽを向くと、そのままタタッと走っていってしまった……。

 

嵐のように現れて嵐のように去っていってしまった留美に呆然としていると、近くでドサッ……という音が……。

 

 

「いや比企谷……さすがにこれはないでしょ……」

 

 

お前かよ……。

 

恐る恐る視線を向けると、今のやりとりに好奇の視線を向けていた烏合の衆の中に、カバンを落として戦慄の眼差しを向けている相模がいた……。

 

 

俺はこのあと、雪ノ下たちに話を広められないように相模に事情をすべて説明し必死に説得するのだった……。

 

 

× × ×

 

 

そして日曜日。

相模に弱みを握られたものの、なんとか無事この日までは通報されずに済んでいた。

てか別にやましいこととか一切してないのに弱みとかなんなのん?

 

 

さすがの俺でも中学生の女の子を炎天下の中待たせとくようなマネは出来ないので、かなり時間に余裕を持って家を出た。

スマホで時間を確認する。

 

「うわっ……まだ30分近くあるわ。早く着き過ぎちまったな。プリキュア見てから出発の準備すれば良かった……あれ?」

そこには待ち合わせまでまだ30分もあるというのに、すでに留美らしき女の子が待っていた。

 

マジかよ……早く来て良かったわ……てか待ち合わせ時間間違えてないよね!?

 

 

留美は、首周りやスカートの裾に上品なレースがあしらわれている白のノースリーブワンピースに七分丈のデニムレギンスを合わせ、足元はコサージュ付きの編み上げサンダル。

髪は肩くらいの位置でワンポイントのお洒落なのであろうサンダルに付いているのと同じコサージュの付いたヘアゴムでサイドにひとつにまとめ、前方片側に垂らしている。

 

落ち着いた色合いのリボンが付いたカゴバックを両手でブラブラさせているその姿は、全体的に見てなんというか大人っぽい。

 

 

 

……これはマズい……。

 

留美は確かに大人びている。だがそれは態度や仕草、持ち合わせている雰囲気すべて加味した上での総合的印象での話だ。

 

なにが言いたいかというと、今の留美は対外的に見たら背伸びして大人っぽい格好をした可愛い女子中学生にしか見えない。

いやそれで間違いはないのだが……

 

もっと子供っぽい服装で来てくれれば、いくら可愛くても小町と同じように兄妹として見られる可能性が高かったのだが、これでは『ヤバい目をした大人の男が、背伸びして大人っぽい格好をしている女子中学生を連れまわしている』という図にしか見えない……。

 

これは職質待ったなし☆

……ぼくは今日捕まらずに無事に過ごせるのでしょうか……?

 

 

× × ×

 

 

「八幡っ!」

 

俺の姿を確認すると、またまた嬉しそうに駆け寄ってきた。

俺の人生で、こんなにも女の子に嬉しそうに駆け寄ってもらえる日が来ようとは……。

 

今まで俺に満面の笑顔で駆け寄ってきてくれたのは戸塚くらいなもんだ。

なにそれ最高に幸せじゃん!

 

「八幡早いね!どうせ八幡のことだから、時間ぴったりくらいにダラダラ歩いてくると思ってたのに」

 

「いや、さすがに女の子を待たせちまうのもアレかと思ってな。しかし留美はさらに早く着いたんだな。結局待たせちまったか」

 

「うん。ちょっと楽しみだったから早く着いちゃった。でも私が勝手に早く着いちゃっただけだから八幡は気にしないで」

 

嬉しそうに頬を赤らめるルミルミ。今日の留美はすげえ機嫌がいいな。

そんなにパフェが楽しみだったのか。

 

「そっか。じゃあ行くか」

 

「うんっ」

 

さて、しかしパフェってどこ行きゃいいんだ?サイゼでいいの?

それともこんなに楽しみにしてたんだから、どっか行きたい店でもあるんだろうか。

 

いや待てよ?よくよく考えたら、たかがパフェ食う為だけに、なんで待ち合わせがこんなに早いんだ?

 

「ほら八幡。早く行くよ。時間がもったいないでしょ!」

 

どうやら留美には明確な目的地があるようだな。

まぁ今日はお礼も兼ねて留美に喜んでもらう為に来たわけだから、大人しく行きたいとこに着いてくか。

 

と、なぜか留美は改札へと向かう。

 

「あれ?電車乗んの?ここら辺の店じゃないのか」

 

「いいから早く」

 

簡潔な一言で指示を出し、プイッとそっぽを向いてしまう。

やっべぇ……俺マジでいろはすに対する戸部状態!

ま、まぁ男は年下の女の子には弱いっつう事でオナシャス!

 

 

どこに行くかも分からないまま電車に揺られ、留美の方を見てもずっとそっぽを向いている。

でもたまにチラチラと上目遣いで覗き込んでくるんですよね……。

なんか言いたい事があるなら言いなさい?と思っていると、

 

「八幡……さぁ、なんか悩み事抱えてたでしょ?……あれ、なんとかなったの……?」

 

「悩み事……?」

 

正直驚いた……相模の件か……。

ダメだな、俺は。こんな小さな少女にもバレバレな態度だったのか……。

 

「ああ、なんとかなった。しかも留美のおかげでな。サンキューな」

 

すると真っ赤に染まって驚いたように目を見開いたが、でもその次の瞬間にはとても柔らかい笑顔になった。

 

「そっか……よく分からないけど、私が八幡の役に立てたんなら良かった……!我慢して待ってた甲斐があった………八幡、お疲れさまっ……」

 

 

「お、おう。ありがとな」

 

なんだよ照れくせえな。

てか我慢して待っててくれたのか?たかがパフェ奢るって口約束しただけの事なのに……。

 

 

たくしゃあねえな……じゃあ今日は思いっきりルミルミに楽しんでもらえるよう、いくらでも奢ってやりますかね。

 

 

× × ×

 

 

……あれ?なんで?

 

 

留美に言われるがまま着いた先はなぜか舞浜だった……。どゆこと?

 

さらに連れてかれるままにディスティニーリゾートラインとかいうモノレールに乗せられることものの数分。

 

 

気がつくとなぜか俺は留美と一緒にディスティニーシーのチケット売場……いや、夢の国的に言えばパスポート売場に並んでいた……。

 

「いやいやなんで?パフェ食いにきたんじゃないの?」

 

すると留美は気まずそうに目を泳がせ口を尖らせる。

 

「は?パフェ『とか』って言った。中にパフェあるか分かんないけど、ソフトクリームとチュロス食べれば似たようなもんでしょ」

 

なにその理論!

あれー?どっかでパフェ奢るつもりで家出てきたのに、いつの間にかディスティニーシーで遊ぶことになってるみたいですよ?

 

俺が驚愕の表情を向けていると、

 

「私お父さんとお母さんにランドは何回か連れてってもらった事があるんだけど、シーはまだ行ったこと無かったから来てみたかったんだもん……ほら、練習にもなるし……」

 

耳まで真っ赤にして完全にそっぽを向いてしまった……。

 

そっか。それじゃしょうがないな………なんてなるかよ!無茶苦茶ですね、この子は……。

 

まさか……留美とディスティニーに遊びにくることになろうとは……。

でもまぁ、まだ一緒に来られる程の友達が居ないのだろう。一人出来たらしい友達もまだそこまで踏み込めてないとか言ってたしな。

 

留美のご希望だ。いざ一緒に来られるようになった時の予行練習って事で付き合ってやりますかね。

 

 

× × ×

 

 

パスポート購入の順番が回ってきた為、販売員さん……キャストさん?に声を掛けた。

「大人一枚と中人一枚で」

 

財布を取り出し二枚分の金を取り出そうと中身を確認する。

あれ?今日手持ち大丈夫だよね……?一応一万くらいは入れといたはず……。

あとは園内のATMでおろせばいいか。

ふぅ……スカラシップ錬金術で貯めといて良かったぜ。

 

 

しかし留美は金を払おうとした俺を制した。

 

「なんで八幡が私の分まで払おうとしてんの?自分の分は自分で払うからいい」

 

「いやでも中学生には高くねえか?それに今日は俺の奢りだって……」

 

「奢ってもらうのはパフェとか!ちゃんと話聞いてよね。それに貯めてたお小遣い持ってきたから平気」

 

 

 

そう言いながら留美は自分の分のパスポート代をキャストさんに手渡した。

 

大人が奢ってやるって言ってんのに、まだ12歳くらいの女の子がきちんと拒否するなんて、……こいつ将来イイ女になりそうだな……。

 

っと、ヤベっ!思わずニヤっとしちゃった所をキャストさんににこやかに見られちまった!

お願い通報しないでっ!

 

 

 

パスポートを購入しゲートから園内に入ると、そこには別世界が広がっていた。

さすがは夢の国だぜ!金の掛け方もドリームクラス!

 

 

 

しかしやはり混んでるな……。

留美の為じゃなかったら即引き返してるレベル。

 

 

これははぐれないように気をつけないとな。

迷子なんかにさせちまったら大変だ。

 

そんな事を思っていたら、なんか左手が柔らかいなにかに包まれた……。

 

 

は?

 

 

左手を見るとなんか手が繋がれている……。

 

「ちょっ!留美?」

 

「……だ、だってこんなに混んでるんだもん……八幡が迷子になっちゃったら……めんどくさいし……」

 

一切俺を見ずに手だけをギュッと握るルミルミ……。

もう顔は林檎みたいに赤い。

 

「……それに」

 

より一層ギュッと握り、より一層真っ赤に染まり、より一層俯きながらもとんでもない事を口走りやがった……!

 

 

「……ど、どうせあと何年かすれば恋人同士になるんだから……練習みたい……な……もんでしょ……っ!?」

 

 

 

 

練習ってそっち!?

 

 

 

 

 

続く

 






ありがとうございました!

たぶん誰しもの予想を裏切ったであろう、まさかのシーデート!しかも前・後編!
パフェ食いに行くんじゃねーのかよっ!?



それでは後編をお楽しみにー!

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