八幡と、恋する乙女の恋物語集   作:ぶーちゃん☆

31 / 117



八幡、タイーホされたってよ





ぼっち王子はぼっち姫の居城へと【後編】

 

 

 

くっ……あんなものはただの布だと分かってはいるんだが……

 

「……う"〜〜〜っ」

 

女の子座りで一生懸命スカートを押さえ付けながら、涙目な上目遣いで睨んでくるこの留美の恥ずかしがりっぷりを目の当たりにするとこっちまで恥ずかしくなってしまう……

と、とりあえず声掛けてみっかな。

 

「あ〜っと……その、スマン」

 

いや別に俺に落ち度とか無いんですけどね?

すると真っ赤な顔で頬を膨らませながらも留美が答えてくれた。

 

「……べ、別にいい。パ、パン……ッ……くらい平気」

 

「お、おう、そうか。そりゃ助か…」

 

「……どうせ責任取って貰うんだし、これくらいなんてことない……」

 

え?なんだって?

なんか今恐ろしいこと言いました?穏やかじゃないっ!

 

「そんなことよりいつまでそんなとこにつっ立ってんの?……座ればいいでしょ」

 

とてもそんなことで片付けられないような台詞をスパッと横に置いて、視線を逸らしながら自分のすぐ隣をぽんぽんと叩く。つまり隣に座れ、と?

いやいや女の子の部屋で二人きりでベッドで隣同士に座るってのはさすがに恥ずかしくありませんかね。

 

「い、いや、俺は床でいいぞ?」

 

「…………パンツ見た癖に」

 

そんなにぽしょっと恐ろしいこと言わないで!

もう俺には選択の余地が無いということですね分かります。

 

「了解しました……」

 

「……ん」

 

仕方なく留美の隣にちょっと間を置いて腰掛けると、むっ!っと不満げなルミルミがピットリと隣に寄せていらっしゃいました(白目)

 

 

× × ×

 

 

やはりここは聞いといた方がいいんだろうか……?

敢えて避けては来たが、なんかこのままじゃまずい気がびんびんなんですもの。

取り返しがつかなくなる前に、ここはきちんと確認しとくべきだな。

 

ルミママは理解しているとは言ってくれたが、それでもどうしても腑に落ちない事を言われたんだよな。

 

「あのな?留美」

 

「なに」

 

「その、なんだ。……俺達の関係についてなんだが……」

 

「八幡と私の関係……?」

 

首をこてんっと傾げて、つぶらな瞳で俺を覗きこんでくる。

くっそ……やべぇよ……マジで俺ノーマルで助かったわ。これ、そっちの趣味があるやつだったら完全にヤバイやつだろ。

年下の女の子は妹に見えちゃうように調教してくれた小町マジ天使。

 

「おう……えっとだな…………俺と留美は、別に付き合ってるってワケではないよな?」

 

そうなのだ。ルミママにも言われたが、なんか彼氏みたいな事になっちゃってたんだけど、前に話した時はそんなんじゃ無かったはずなのだ。

 

「……えっ……」

 

やめてっ!そんな不安そうで悲しそうな顔しないでっ!なんだよこのすげぇ罪悪感。

やばいルミルミ泣いちゃいそう!

 

「あ!や!そ、そうじゃなくてだなっ!?ホ、ホラ!前に話した時に、その、なんだ、留美が大学生とかになった時に、俺にまだ彼女が居なかったら可哀想だから、その時は彼女になってくれるって話だったろ?」

 

「……あ。……うん」

 

あ。って、忘れてたのん?

 

「だよな?いや、昨今はな?色々と厳しいんだよ社会的なアレが」

 

「ロリコンってやつ?」

 

「ぶっ!お、おう、そうだな」

 

ちょっと留美さん?はっきり言わないでね?留美の口からロリコンとか言われると、なんか色んな意味でヤバイです。

 

「……だから少なくとも現段階で俺と留美が付き合うとかってのはマズいんだ」

 

八幡捕まっちゃうからねっ☆

すると留美はと〜っても不服そうに口を尖らせ拗ね始めちゃいました。

 

「別に……愛し合う男女の関係なんだから……他人にどうこう言われることじゃないのに……私もう大人だし……」

 

いやだからボソボソと恐いこと言わないで?

愛し合う男女の関係とか非常に危険な台詞だからね?

てかルミルミ俺大好き過ぎだろ……大丈夫なんでしょうか?僕……

 

しばらくブツブツと言っていた留美だったが、ようやく自分の中で妥協案を見つけてくれたみたいだ。

 

「分かった。私も八幡がロリコンとか言われて白い目で見られるのは嫌だから、今は恋人じゃなくてもいい」

 

ふぅ……どうやら納得してくれたみたいだ。

さすがに大学に上がる頃までにはちゃんと本当に好きな奴も見つかるだろ。

 

「……今は婚約者で我慢する」

 

 

おっと……まさかのカップルランクが大幅に上がっちゃった模様です。

 

 

× × ×

 

 

「そんなことより八幡」

 

恋人から婚約者にランクアップしちゃった事が『そんなこと』扱いになっちゃうのん?

 

「携帯出して」

 

「携帯?」

 

なんだいきなり携帯って。

あ……そういえば俺、ルミルミと連絡先交換してねぇな。

てかこの状況で連絡先知られちまったらマジでヤバいんじゃないんでしょうか……?

いや、でも用がある度に校門で待たれて目立っちゃうよりはよっぽどいいかも……などと考えつつカバンからスマホを取り出そうとしていると、「えへへ〜」と先に携帯を取り出した留美が嬉しそうに携帯を……というか付いているストラップをブラブラとさせていた。

 

あ、そういうことか。そういう事なら俺も早く出してやんなきゃな。

 

「ほれっ」

 

取り出したスマホには、留美のと同じ……正確には留美のに付いてるストラップの熊の、友達の熊がブラブラしている。

 

「……ん」

 

俺からスマホを受け取ると、嬉しそうに二つのストラップをピトッとくっつけるルミルミ。

 

「えへへ、良かったね。やっと会えたね……」

 

ピトリと寄り添わせた熊達を、とても優しそうな眼差しで見つめている。

 

 

 

『この子達は八幡と私が別々に持ってたらぼっちになっちゃうけど、だから私達が一緒に居ればぼっちじゃなくなるでしょ?……だから……この子達が可哀想になったら、また私と八幡が会えばいいの……だから、お揃い……』

 

 

 

あの夜の電車内で留美が語った言葉が頭を過った。

そういやそうだったな。俺と留美が会うのには、こういった意味もあったんだっけな。

 

「八幡。今日は来てくれてありがとね。私も……すご、まぁまぁ楽しみにはしてたけど、この子達の事もずっと会わせてあげたかったの。今受験生で大変だろうからってお母さんが言ってたからずっと我慢してた。………………わ、私じゃないよ?わ、私は別に八幡にどうしてもずっと会いたかったとか……そういうんじゃないし……こ、この子達をこうして会わせてあげる事をだからね……?だから、今日は来てくれて嬉しい。私があげたこのストラップも付けててくれて嬉しい。ありがと」

 

こっちに一切目を向けず、俯きっぱなしで手元の熊達を優しく見つめる留美の頬はほんのりと朱に染まっている。

普段は人の言動の裏ばかりを探って、すぐに自己防衛に走ってしまう捻くれ者の俺だが、こうして裏もなんにもない留美の素直とは言えないお礼を聞いてると、なんだかむず痒くなってしまう。

だが、決して不快ではない。

 

「おう。俺も留美んちに来れて良かったわ」

 

「……ん」

 

嬉しそうに小さく頷く留美を見て、俺はこう思うのだった。

 

 

 

ふぅ…………あっぶね!

家出てくる前に思い出して付けてきて良かったわ!

さすがに普段俺があんなストラップ付けてたら、世間様(主に雪ノ下と一色)にどんな冷たい視線を向けられるか分かったもんじゃないから、いつもは勿論付けてないんですよ、ええ……

 

「えへへへ〜、八幡がちゃんと付けててくれて嬉しいね、ダッフル君っ。……私もちょっとだけ嬉しいよ」

 

やめてっ!尋常ではない罪悪感に襲われちゃうっ!

優しく熊に語り掛ける留美を見て、この優しい女の子をいとおしく感じる一方、今後はどんなに雪ノ下たちに蔑まれようとも罵られようとも、このストラップは二度とはずすまいと心に誓う八幡なのであった。

 

 

× × ×

 

 

その後もしばらく熊同士をなんか恥ずかしそうにハグさせたりちゅっちゅさせたりと、とってもご機嫌なお姫様が急にとてつもない爆弾を落としあそばされました。

 

「ねぇ、八幡」

 

「なんだ?」

 

「八幡はキスしたことある?」

 

「ブフォっ!」

 

いやまぁちょっとだけ、そんなこと言うんじゃ?って予感はしてましたけどね?

 

「八幡きたない」

 

「ごはっ!ごほっ!……お前……急になに言ってん…」

 

「お前じゃない。留美」

 

マジでそこは決して譲らないよねルミルミ!

 

「いや、そんなのしたことあるわけねぇだろ……なんだよ急に」

 

「だよねっ!八幡がしたことなんてあるわけないよねっ!」

 

ちょ?留美?なにそのテンションの高さ。

そんな留美見たことないよ?

俺が若干びっくりした目で見ていると、留美は「……はっ」っと我に返って、気まずそうにもじもじしながら咳払いで誤魔化した。

 

「ん!……そりゃ、八幡なんかが……キスなんてしたことあるわけ無いよね」

 

と、いつも通りの落ち着いた女の子の様子で先程の言葉を繰り返す留美。

そんな台詞を2パターンの留美で繰り返し言われたら泣いちゃう!

 

「……こ、こないだね?学校の子たちが教室で、彼氏とキスしちゃったとかってバカみたいに騒いでたんだけど……いまダッフル君達がしてるの見て……思い出しちゃったの」

 

×してる

○させてる

 

の間違いですね。

ほぉ……やはり最近の中学一年生の性は乱れてますな。

 

「おう。そうか……」

 

「うん。でも八幡、高校生にもなってキスしたこと無いなんて可哀想」

 

いやいやそんなのいくらでも居るからね?

むしろほとんどの奴がしたこと無いだろと信じたいまである。

 

「じゃあさ……八幡」

 

チラッ、チラッと恥ずかしそうに横目で見てくる留美。もう嫌な予感しかしない。

 

「……キス、してみる?」

 

「いやしないから」

 

俺のあまりにも早い即答にルミルミご不満モード。

いやそんな膨れられましても。

 

「……八幡のいくじなし」

 

いくじなしでスミマセン。でもホント捕まっちゃうからっ!

なんなのこの子!さっきのキョトンと「不純な行為ってなに?」とか言ってたルミルミを返して!

やっぱり興味津々なお年頃じゃないですか。

……つまりキスごときでは不純などでは無いと言うわけですね?

 

「……だ、だからさっき言ったろ……俺捕まっちゃうからね?……そういうのは、その、なんだ、こ、恋人になってからだな……」

 

「……まぁどうせ八幡だしそういうとは思ってたけど……今はまだ八幡も勇気ないよね。じゃあ……私がもう少し大人になるまで……我慢しててね……?約束だからね」

 

…………中学一年生にキスする勇気ないとか言われたり我慢しててね?とか言われる俺ってマジヤバくなーい?

 

「……約束破ったらお母さんと、あとお父さんにも言い付けるから覚悟しててよね。あ、そだ。んしょ」

 

とっても危険な言葉を言い残してベッドから立ち上がる留美。

約束した覚えはないんですけど、その約束は誰にも言っちゃダメだからね!?

 

すると留美はストラップの熊同士を寄り添わせてそっとテーブルに置くと、キャビネットへと歩いていく。

 

「まだ八幡に見せてなかったよね。八幡に買ってもらったメイちゃんのお友達の、前から私の部屋に住んでるダッフル君」

 

どうやら留美は、キャビネットの上に飾られた熊を持ってくる為に立ち上がったみたいだ。

だが……俺が気になったのはその熊自身では無く、その熊が抱えているかのように置かれていた一本の缶の方だった。

 

「ん?なんでマッ缶の空き缶が飾られてんだ?」

 

すると留美はちょっと気まずそうにチラッと一瞬だけこちらを見ると、熊ではなくマッ缶の方を手にして戻ってきて、俺の隣にちょこんと座った。

俯いてもじもじと空き缶を手で弄びながら、それはもう恥ずかしそうに口を開いた。

 

「……八幡が……始めて私にくれたモノだから…………大事に……取って置いて……ある……の」

 

 

……やばい。このままルミルミルートに突入しちゃって逮捕されても後悔しませんわ。

え?もうとっくに突入してるだろって?

やだなー、そんなわけ無いじゃないですかー?

 

と、突然いろはすが降臨しちゃうくらいのヤバさ。いやいや、この感情はあくまでもお兄ちゃんスキルの一環ですからね?

だからまぁ俺はそのお兄ちゃんスキルに従って、あまりにも可愛い留美の頭を自然と撫でていた。

 

「…………私、八幡に頭撫でられるのは、子供扱いされてるみたいでなんだか嫌………………なんだけど、なんか気持ち良いし、胸の辺りがあったかくなるから…………ちょっとだけ……好き」

 

うっとりと幸せそうな留美を、俺はしばらく撫で続けていた。

俺のお兄ちゃんスキル半端無いよね!

 

 

× × ×

 

 

頭を撫でたり留美の中学での近況を聞いたり頭を撫でたり俺の学校生活を聞かれたり頭を撫でたりしている内に、気付いたら夕方になっていた。

なんか頭撫でてばっかりと思ったけど気のせいですよね。

 

「よし。んじゃそろそろ帰るわ」

 

「……もう帰っちゃうの?夕ご飯くらい食べてけばいいのに……」

 

「いや、さすがにそれは……な?帰って来ちゃうとマズいだろ」

 

「……ん」

 

なんか字面だけ見ると不倫相手との会話みたいですねやだー。

 

しゅんっ……とする留美の頭をもう一度ポンポンっと撫でてから帰る支度をした。

 

「えっと……今日はご馳走さまでした。お邪魔しました」

 

階段を下りて、キッチンで夕飯の準備をしているルミママに一応一声掛けてから玄関へと向かう。

するとルミママがパタパタとわざわざ見送りに来てくれた。

 

「あら〜……八幡君もう帰っちゃうの……?留美も寂しそうにしてるし、お夕飯くらい食べて行けば〜?」

 

「……別に寂しそうになんかしてない」

 

むすっとはしてるけどね?

 

「いや、さすがに今日はこの辺で……」

 

「あ〜、旦那が帰って来ちゃったら大変だものねっ」

 

パチリとウインクするルミママ。

いやホント平塚先生の二個上の先輩とは思えないくらい可愛らしいっすね!

……おっと……ブリットの古傷が疼いちまったぜ。

 

「まぁまだ大丈夫だとは思うんだけどね〜。でも無理に引き止めるのもなんだしね。八幡君、またいつでも遊びに来てねっ」

 

「は、はぁ」

 

これは…………ホントにまた来る事になるんだろうか。まぁ確かに悪くは無かったが。

留美も寂しそうだし、また来てもいいかなと思う反面、あんまり来ない方がいいとも思う。

 

留美がずっと俺に対しての気持ちを勘違いしたまま、こうやって会い続けたりしてると、留美の本物の恋心ってやつを邪魔してしまうかも知れない。

ちょっと辛いかも知れないが、本当なら早めに気付かせてやりたいんだよな。

 

そんな俺の微妙な表情の変化と留美のつまらなそうな顔を見てとったのか、ルミママはポンと手を叩いた。

 

「あっ!そうだ!ねぇねぇ八幡君っ。初めて家に来てくれた記念に、留美と一緒に記念写真撮らない?」

 

「はい?写真ですか?……いやいや遠慮します恥ずかしいんで……」

 

「私もいい……恥ずかしい」

 

留美もやはり恥ずかしげに俯く。

すると、ルミママは留美をチョイチョイと呼んでコソコソと耳打ちをし始めた。

 

「え!?……で、でもっ…………うん。じ、じゃあ……」

 

留美の真っ赤に慌てた様子に、なんだか嫌な予感しかしない。

すると留美がてけてけと俺の元へと走ってきた。

そして上目遣いでお願いしてきちゃったよ……

 

「……八幡。私もせっかくだから、八幡と記念写真……撮りたい」

 

もう断りようが無いじゃないですかー。

仕方なく、そのまま玄関での撮影会と相成りました。なぜかお姫様抱っこで…………

どうしてこうなった。

 

 

だってあの人、「八幡君?さっきルミママのお願い聞いてくれるって約束したわよねっ?」って、すっごい恐い笑顔で言ってくるんだもん。

ちょっとあなた、俺の状況理解してくれてるんだよね?

 

 

「よ、よし。じゃあ持つぞ……?」

 

「……うん」

 

今までに無いってくらい恥ずかしそうなルミルミをヒョイッと抱き上げる。

やっぱすげー軽いなコイツ。軽いから抱っこするのは楽勝なんだけど、スカートなもんだから直で太ももに触れることになっちゃって色々とツライ。

やべぇ、すっげぇスベスベで柔らかいんですけどこの子!

 

イカンイカンっ……俺はノーマル俺はノーマル……

そう自分を叱咤激励していると(激励ってなんだよ)、留美が両手を俺の首に回してきたもんだから顔が超近いィィィ!

てか人んちの玄関で中学一年生の女の子をお姫様抱っこして、その子の母親が撮影しようと構えてるって、どんだけシュールな絵面なんだよコレ……

 

「おおうっ!いいねいいね〜!留美〜、すっごいラブラブ感が出てるよぉ?あとでママと交代してねー♪」

 

なに言ってるんですかねこの人……

 

「やだ」

 

「もー!留美のケチ〜。あんまり独占欲強いと男が逃げちゃうわよ〜?……静みたいに」

 

やめたげてよぅ……!

ボソリと恐ろしい一言を付け加えたルミママは、ようやく撮影の為に構えた。

 

「………ふふふっ、それじゃあ行くわよ〜?はいチーズっ!」

 

 

『ちゅっ』『パシャリっ』

 

 

……………………は?

え?なに今のパシャリの前のちゅって?

なんか頬っぺたにすっげぇ柔らかくてすっげぇあったかいモノが当たってるんですけど。

 

はっとした時には、留美はすでに俺から一目散に飛び降りて、一切こっちに顔を向けることなく自室へと伸びる階段へタタッと掛けていった。

 

階段の途中でピタリと止まると、振り向きもせずに一言声を発した。

 

「……八幡。今日は楽しかった。私、こんなに幸せだったの初めて……また会いに行くからね」

 

その一言だけを残して階段を駆け上がっていってしまった。

 

「わーお!すっごい良い写真撮れたよー?八幡くーん!」

 

ルミママが嬉っしそうに俺に見せ付けてきたデジカメの液晶画面には、お姫様抱っこされたルミルミが俺の頬にキスしている姿がバッチリと写っていました……

 

「なななな!?ア、アンタなんてことすんすかっ?」

 

「ん?なにって、ラブラブツーショット写真よ?」

 

いや、よ?じゃねぇよ。

え?ちょっと待って?この人味方じゃ無かったのん?

 

「ちょ!だ、だって、さっき俺の状況理解してくれてるって言ってましたよね?留美の勘違いだって分かってるって言ってましたよね?……こんなことしちゃったら…」

 

「もちろんっ。留美の勘違いだって分かってるわよ?八幡君が彼氏になるってことを了承してると思い込んでるんだってことっ」

 

いやそれ勘違い違いですから……

 

「いやそうじゃなくて、留美が俺の事を好きだと勘違いしてるって話であって……」

 

「なんでそれが勘違いなの?留美は八幡君のこと大好きじゃない。八幡君は女心がまるで分かってないわね〜」

 

するとルミママが、すっと表情を変えた。

 

「留美はね、あなたの事が大好きなのよ?まだ子供かも知れないけど、女の子の気持ちを勝手に勘違い扱いしちゃダメよ?乙女心は比企谷君が思ってるなんかより、ず〜っと複雑なんだからね」

 

「いや、しかし……」

 

「比企谷君はさっき、もう留美の家にはあんまり来ない方がいいのかもって思ってたでしょ?留美の為にも」

 

この人……本当に全部理解してやがる……

理解した上でこんな事すんの……?

 

「でもね?そんなのは留美の為でもなんでもないのよ?今日の留美の顔見てたらぜーんぶ分かっちゃった。あの子のあんな顔初めて見たもの」

 

するとルミママはにっこりと微笑んだ。

 

笑顔なのに、それはもうすんごく背筋がゾクリとするような微笑みで。

 

「だからね?比企谷。留美にあんな顔させたんだから、もう逃がさないわよ?ちゃーんと責任取ってもらうんだから〜」

 

とっても素敵スマイルの横に液晶画面をかざして、ヒラヒラとデジカメを振る。

 

「うふふっ!さっきちゃんと言ったでしょお?私は留美の母親なの。これからは留美が幸せになれる為にだったらどんな事だってするのよ?って。……………………だーかーらっ!留美を泣かせたら絶対に許さないからねっ、八幡くんっ♪」

 

 

 

 

 

比企谷八幡18歳。

どうやらここ鶴見城に住まうルミルミ姫への次回以降のご謁見が永遠に確定したようです。

 

 

 

終わり

 






外堀がコンクリでガッチリ埋められて完全に舗装されたという事で、今回もありがとうございました!


いやぁ……危うく四話になっちゃうところでした><
ルミルミ書いてると次から次へと文章が増えていく不思議。
作者、どんだけルミルミ大好きなんだよ。



こちらの短編集で以前ルミルミを書いてから随分と間が空いてしまいましたが、こうして無事に後日談を書く事が出来ました!
ルミルミ大好き紳士の皆様、長いことお待たせしちゃいました。
待っててくれた変た……紳士の皆様、本当にありがとうございました☆


嗚呼、ホントにルミルミ可愛いよルミルミ……
さて、今度はどんなルミルミ書こうかなっ?(ルミルミ集じゃないから!)


いつかまたルミルミを書ける日を楽しみにしてます♪ではでは!


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。