フーケに案内されルイズはシエスタが連れていかれたという貴族の屋敷の前まで来ていた。屋敷の大きさとしてはやや大きいが門や塀などを見ると自身の生家より質が劣るため恐らくは中規模貴族くらいだろう。
「なんだい、今さら怖じ気づいたとかは無しだよ」
「……そんな気はないわよ」
フーケの口許がニタニタと笑っている。不愉快なルイズはその言葉にぶっきらぼうにそう答えた。後先を考えず学園を飛び出して来てしまったことにあまり後悔は無い。ルイズにとって学院で学べることなど何一つないからである。それこそ魔法という力しか知らなかった頃はたとえ自身が魔法を使えなかろうとしがみついてでも学んで万に一つの可能性に賭けただろうが今はそうではない。考えることは別れてきたキュルケのこと、そしてシエスタのことである。キュルケは気にくわない奴であったことは確かだがそれでも自分を見てくれていた人間だった。少なくとも最近は。最後に見た信じられないといったキュルケの顔が頭につく。……ごめん、私はアンタの期待を裏切ったかもしれないわ。
そしてシエスタである。フーケ次第であるが大盗賊のコイツならシエスタを連れ出すくらい容易いだろう。ただ問題はいくつかある。彼女を連れ出してからどうするかである。シエスタを学院に戻したところで自分は学院に戻れるかわからない。彼女を学院に一人で置いておいて大丈夫だろうか?それに貴族のところから戻ってきた彼女を周りはなんて感じるだろうか?自分達のする事の火の粉が彼女まで飛ばないだろうか?
「うだうだ考えている暇なんか無いよ。ほら行くよ」
「……なんだかんだでアンタ案外面倒見がいいわよね」
フーケが喝を入れるように声をかけてきたので意趣返しを兼ねてそう返す。フーケの言葉に助けられているのは事実だ。本当にあの場面を乗り切りたかっただけなら案内などせず学院を出た時点で私を無力化すれば済む話なのにわざわざ此処まで着いてきてくれている。そう告げるとフーケは若干照れていた様子から一変殺気を滲ませる。
「自惚れるなよ小娘」
「アンタを殺すのはアタシにしたら容易いんだよ」
◇◇◇
「シエスタ」
その声にシエスタは変な緊張が走る。声の主は今日シエスタと学院で知り合った貴族の方だ。今日は学院に王宮の勅使として来ていたようで生徒達に乱暴されそうだったシエスタを助けたのだ。そこでシエスタを気に入り学院から買い取られたシエスタは今ここにいると相成った。
「モット様」
なおシエスタの姿はメイド服ではなく下着姿である。この状態がどういう事を意味するかシエスタも知識が無いわけではなかった。だからこそシエスタは複雑な感情を抱いていた。まだ数時間しか関わりは無いが彼女はモット伯にそこまでの悪感情は抱いていない。いきなり行為に至ろうとしている現状は学院で助けられた事と天秤にかけると若干マイナスだが彼の人柄はなかなか好感が持てた。……好感が持てる分だけ現状をどうするべきかわからず流されていた。
「何事だっ!!」
「賊です。賊が侵入しましたっ」
不意に屋敷の中が騒がしくなる。モット伯の怒号が聞こえたところどうやら賊が侵入したらしい。シエスタは先程とは別の意味で肩を震わす。もし賊が自分のところまできたら間違いなく自分の命は無いだろうとシエスタは考える。恐怖心でギュッと強くシーツを握りしめる。歯がカタカタと音を立てる。
「……シエスタ、君は此処で待っていたまえ。君、屋敷内の女中を全てこの部屋に。絶対に賊の侵入を許すな」
モット伯の言葉に兵士は了解の意を表し女中達の部屋に走る。モット伯は身支度を整えると部屋に残されるシエスタに振り返りその様子を見て安心させるように口を開く。
「では、すぐ戻る。待っていてくれたまえ。君を不安にさせる不届き者は直ぐに後悔する事になる」
部屋を後にしようとするモット伯にシエスタは声をかける。それが保身からきたのかモット伯の身を案じたのかはシエスタにもわからない。
「……頑張ってください」
「ああ」
短くそう告げるとモット伯は部屋を後にする。
◇◇◇
「なんでこんな豪快な方々なのよ」
フーケのゴーレムで強引に押し入ったルイズはそう愚痴をこぼす。もちろんこんな侵入方々を選択したため屋敷の兵士達が直ぐに集まり出す。すぐさまフーケは錬金で壁を作り廊下の幅を狭くする。意図に気づいたルイズはすぐさま細くなった通路にスイングハンマーを準備する。そうとも知らず飛び込んでくる兵士達に向かって無慈悲なハンマーの暴力が襲いかかる。衝撃が凄かったのか凄まじい音が鳴った。骨が折れたような音にルイズの顔は強ばる。
「ぼっとしてんじゃないよ。次来るよ」
動きの止まるルイズをフーケが叱咤する。すぐさま細くなった通路に再び罠を張る。飛び込んで来た兵士を床に仕掛けられた爆弾で吹き飛ばされる。次いで飛び込んでくる兵士をスプリングフロアで飛ばしベアトラップで足を止める。
「チンタラやってんじゃないよ。振り子刃でも鎌でもなんでも使いなっ」
フーケはそう言いながら間を縫うように土の塊を兵士達にぶつける。それを何回か繰り返すと兵士は飛び込んで来なくなる。いなくなったのだろうか?そう思いルイズは錬金の壁の前に出ようとする。
「バカがっ」
突如ルイズの身体に水流が襲いかかる。フーケのとっさに放たれた錬金により直撃は免れるもルイズは恐怖に一歩後ずさる。
「賊とは君たちのようだね。片方はともかく君は魔法学院の学生だろう」
鋭い目を携えながら現れた男、モット伯はルイズを見てそう告げる。
「どちらにせよこちらも君たちには厳しく対応しなければならない。……自分の使用人をやられて黙っていては雇い主としての沽券に関わるのでな」
モット伯は杖を構える。ルイズも構えるが完全に及び腰だ。それと同時に散発的に罠を張る。その様子を見てめんどくさそうにフーケも杖を構える。
「……その意気やよし。ジュール・ド・モットが相手になろう」
・ブラストボム
地雷のような爆弾。威力がペンデュラムより高くなっててもうプリ買った時ビビったのは良い思いで。チャージ短く強いが吹き飛びが計算しづらくあまりコンボ向きではない。一応扉に仕掛けて入って来たところをボムり燃焼で逃げて戻ってきたらまたボムというイモ戦法が2ではできた……というかしてた。