影牢 ~ヴァニティプリンセス~   作:罠ビー

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 一万UAにブクマ350とか嘘やろ?えっマジ。ありがとうございます。正直怖いです。にやけてますけど怖いです。
 今回は平和な日常回ですので物騒なトラップは出ませんし短いです。不完全燃焼な感じでご免なさい。

 私はミスミソウや復讐教室とか大好きです。他意はありません。


第七夜

 虚無の曜日、学院が休みのその日をルイズは学院内で過ごすつもりだった。おそらく自身の力で具現化できるのは罠や拷問機具の類いだけである。中には果実の皮や花瓶などといったファンシーなものもあるが……まあほぼほぼそうである。そのためルイズはその日図書室でその手の関係の本を探し知識を増やそうとしていたがそれは叶わなかった。

 

「……ねぇ、キュルケ。なんで私は風竜に乗せられてるの?」

「どうせ貴女暇でしょう。気分転換よ。学院にいるより貴女も楽でしょ」

「……なんで私まで」

 

 今日の行動を決め部屋を出たルイズは部屋の前に待ち構えていたキュルケにより連れられてそのままタバサの風竜に乗せられたのである。ルイズは騒がしいと思いながらも案外まんざらでもないといった様子で溜め息を吐きながらもキュルケの誘いに乗った。こんな事何時ぶりだろうか?そう思いながらルイズは風竜の上で心地よい風を感じていた。……ただ一人、本を読むふりをしながら自身を監視する眼差しを向けるタバサの視線を感じながら。

 そんなルイズを見ながらキュルケは久々にみるルイズの健康的な様子に内心安堵していた。ここ数日、使い魔召喚の前後からルイズには元気など感じられなかった。いや、もしかしたらもっとずっと前から元気とは程遠い状態だったのかもしれない。恥ずかしくもそれに気付いたのは使い魔召喚の翌日のルイズの様子を見てからだ。使い魔召喚の一件があるまでキュルケはルイズなら大丈夫だろうと思っていた。今までどんなに蔑まれようとも誇り高い貴族であろうとした彼女なら大丈夫だろうと。

 

『……何見てんのよ、ツェルプストーっ!!見せ物じゃないわよ』

 

 それは甘かった、間違っていたと自室で吐きながらも自分の助けの手を取ろうとしなかったルイズを見て思い知らされた。床に踞りながら顔色が悪いにもかかわらず敵意すら篭った目でキュルケを睨みつけた彼女を見てキュルケは後悔した。そしてギーシュとの決闘で彼女が出したであろう処刑道具に、倒れたギーシュを見つめ顔を綻ばせたルイズを見た時その闇の深さに驚いた。こんな状態まで好敵手いや、友人の変化に気づかなかった自分に腹が立った。

 

「何見てんのよツェルプストー」

「何でもないわよルイズ」

 

 キュルケがルイズを眺めているとルイズはうっとおしそうにそう言う。キュルケはふふっと笑ってそう答えるとルイズも特に聞かず顔を反らした。

 そんな二人の様子をタバサは本に目を向ける振りをしながら観察していた。キュルケはルイズに気をかけているがタバサはそんなキュルケが心配だった。相手はまだギリギリ一線を踏み越えてはいないがもう深淵に片足浸かった化物だ。何時気をかけているキュルケを食い殺すかわからない。そこまでいかなくてもキュルケが深淵に落っこちてしまいそうでタバサはキュルケがルイズと付き合う事をあまりよしとしてはいなかった。そのため今回の外出も反対だったがその旨をキュルケに告げても喧嘩になるのが関の山である。だから自分が見ているしかないのである。

 

「っで、どこ行くのよツェルプストー」

「買い物よ買い物。それでパイでも食べて帰りましょ」

「……ん」

 

 

◇◇◇

 

 その頃シエスタは学院でルイズに頼まれた作業をこなしていた。

 

「それにしても丸太なんて何に使うんですかね」

 

 作業の理由を考えるも自分では分からないため言われたとおりに丸太を寮の近くの広場に運ぶ。自身よりも体格の弱いルイズではどうしたいのか皆目見当がつかないが彼女ならなんか意味があるのだろう。

 シエスタとルイズの仲は良好である。慣れ染めはルイズが失敗魔法で教室を爆破しその片付けを手伝った時である。シエスタは教室を爆破するという失敗をなしたのにもかかわらず俯かず背を伸ばし片付けをしている姿に不思議に思った。他の使用人達はルイズの事を僻みのまじった視線を向けていたがシエスタは彼女に他の貴族とは違う何かを感じていた。それ以来度々名指しで自分が喚ばれる事が増えた。何故だとルイズに聞くとこう答えた。

 

『……貴女以外の使用人は皆私を馬鹿にしているわ』

 

 それを聞きこの人はよく見てるなと感じた。それ以来シエスタはルイズを注視してみた。その姿は誰よりも貴族であろうとし努力している姿だった。どんなに蔑まれようとも馬鹿にされようとも貴族であろうとしている姿だった。だからこそ倒れたと聞いた時は心配した。そしてそれ以来彼女の態度に変化があるのに気付いた。

 

「……なんだか今のミス・ヴァリエールは怖い。」

 

 そう思ったのをかき消すように首を振る。

 

「……そうなんじゃねーの。お前がそう思うのなら」

 

 まるで見透かされたようなタイミングで自分の危惧している事を肯定する声が聞こえてシエスタはバッと振り替える。

 

「ミス・ロングビル?」

「どうかしましたか?」

 

 そこに立っていたミス・ロングビルはクスッと笑って先程聞こえた声とは全く違う声音でそう言った。

 

「お手伝いしましょうか?」

「お願いします」

 

 正直一人だと大変だと思っていたのでミス・ロングビルの申し出はありがたかった。

 

「ところでこれは何に使う予定なのですか?一人で運ぶなんてなかなか無茶ですよ」

「私にも分からないんですがあそこまで持っていけと」

 

 そう言うとミス・ロングビルは少し考えると口角を上げなるほどねと呟く。何か心当たりがあるのでしょうか?

 

「では私が魔法で運んでおきますね。貴女はお仕事に戻って大丈夫ですよ」

「本当ですか!!でも悪いですし」

「大丈夫ですよ。やっておきますから」

 

 じゃあお言葉に甘えようかなとその旨をミス・ロングビルに伝えるとクスッと笑うとわかりましたと言い丸太を浮かせた

 

「ああ、そうそう。お気を付けて」

 

 気をつけた方がいい?いったいなんだろうか?そう思いながら曲がり角を曲がったところで声をかけられる。

 

「おい、そこのメイド」

 

 その声に振り替えろうとした時、私の体は宙に舞っていた。

 

 

 

「……なんでガキはわざわざ化物を起こそうとするのかね。まあ私には関係ないか」

 


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