影牢 ~ヴァニティプリンセス~   作:罠ビー

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 ちょっと難産でした。いやぁ五夜までしか考えてなかったものだからどうすればいいか悩みました。着々とルイズちゃんがガタガタになってきますね。

 あとせっかくなんで活動報告に小ネタとか投稿しようかと思ってます?よかったらたまに見てくんなまし。(クオリティは保証しない)


第六夜

 決闘騒ぎから少し日が経ったがルイズの周りに変化があったかというと、大きく変わったという点はなかった。『ゼロ』といって蔑まれる事は、全体的には減ったもののまだまだそう呼ばれる事がなくなることはなかった。またルイズが魔法を使えないのは事実なため魔法の実技の授業とかでは嘲笑われてるのは明らかであった。ルイズは『ゼロ』だが殺されかねないから何も言わないだけという状況になっていた。結局ルイズは認められてはおらずむしろ忌避されているだけだった。

 ルイズにしてはその状態は面白くはなかったが、彼女も今までと特に態度を変える事なく決闘騒ぎ前と変わらない生活をしていた。しいて変わったとするならば青髪の留学生に見られてる気がすることとツェルプストーが絡んでくるのが少し増えた気がする。……そして

 

「まだ学院にいたの?早く出ていきなさいよ『ゼロ』。魔法が使えなくても人を殺しかけても学院にいられるなんた恥らいがゼロなのかしら?」

 

 モンモランシーをはじめとした女子グループに絡まれるようになった。前の決闘騒ぎでルイズがギーシュに一生モノの傷を負わせた事が気に入らないのであろう事はルイズにもわかった。しかしルイズはモンモランシーなど相手にしておらず超然とした態度を貫いていた。

 

「女々しいわよ、モンモランシー。あれは決闘だしその旨はギーシュも認めていた筈よ」

 

 一方でそんなモンモランシー一派を気に入らないと感じている人間もいる。そう、キュルケである。彼女は未だにルイズに突っかかってくるモンモランシーに対して憤りに近い感情を抱いていた。もともとキュルケの家も軍事一家であるため決闘における負傷は致し方なしであると認識していた。しかもそれを当事者であるギーシュも了解しているのにも関わらずこのモンモランシーの態度、そして何よりやり口は女としてキュルケは気に入らなかった。そんな二人を尻目にルイズはめんどうと言わんばかりにその場を後にする。ここ数日の見慣れた光景だった。そしてルイズの去った先にタバサはついていく。

 

 

 ――アホらしい。これがルイズの抱いていた感情であった。新たな力を手にいれたルイズを待っていたのは畏怖を抱いた同期達の眼差しだった。突っかかってくるモンモランシーもその目にあるのは畏れの感情。自分を見ているあの青髪の留学生も同じだ。唯一違うと言って良いのはツェルプストーだけだ。散々小蹴落としてきた奴等は自分の力を見て畏れている。何より『ルイズ』ではなく『ルイズの力』をまず見ているのが嫌だった。こんな奴等に自分は虐げられていたのか?自分はこんな奴等に追い付きたかったのか?そう思うと少しガッカリしてくる。

 ここ数日の動向を振り返るとルイズは夜も更け周囲が寝静まった頃に部屋を出る。適当な広場に向かうと自身の得た力の確認を行う。根が真面目なルイズは持っている力を使いこなすために深夜になると夜な夜なトラップを使う練習をしていた。当直の教師がいるらしいが今まで誰にも会わないところを見ると誰も真面目にはやっていないのだろう。そう思いながら振り子刃を震う。それは闇に紛れて視認しづらいがあの音とともにルイズの前で三回振る動きをした。

 それを見てルイズは考える。前のギーシュ相手もそうだがこれだけでは避けられるのだ。最近は夢もだんだん鮮明になってきておりその内容を思い出す。ルイズの見立てではだいたい三段階のトラップを使っていた。奇襲性の高い床が動くトラップから動きトラバサミなどで動けなくして本命のトラップを当てているみたいだ。試しにやって見ると一応連続で動かす事はできる。しかしやはりというかただ何もないところで動かしても実際の挙動と違ったら意味がない。……実際に飛ばせば

 そこまで考えて止める。何を考えているの!!そんな恐ろしい……恐ろしい?

 

「ああ、私は人を殺す練習をしてるんだ……」

 

 自分の力を昇華すること。それは人殺しの手法を鍛えることである。だが魔法だって人殺しの手法だ。戦争になればメイジは人を殺す。魔法学院はそういうところではないのか?ルイズの頭に自己弁護ともとれる屁理屈で自身を正当化する言葉が出てくる。当たり前だ。せっかく得た力は鍛えたいし使いたい。使えなくなれば自身は『ゼロ』だ。それは嫌だった。思考を振り払うようにトラップを動かし始める。

 

 

「……ほんと、難儀なもんだよ。歪だね。そして哀れですらある」

 

 そんなルイズの様子を遠くから眺める影がある。ミス・ロングビルこと世を騒がす大盗賊、土くれのフーケは忌々しいものを見るようにそう呟く。夜間とはいえこんなところにいるところを誰かに見つかったら面倒事は免れないのにフーケは立ち止まってルイズを見ていた。そして静かに自身の妹分である少女の顔を思い浮かべる。

 

「過ぎた力なんて持つべきじゃないんだよ。特に残酷な力はさ」

 

 そう言ってフーケはその場を立ち去る。下見は終わった。後は機会を待つだけだ。それにこの時間はやめた方が良いとわかったのも収穫だ。

 

「時の宝玉。そいつがあれば……」

 

 

 

「……やっぱり彼女は危険」

 

 また別の場所からルイズを見つめる影が一人、タバサである。自身の出自から気配に敏感である彼女はルイズの素人な隠形などは筒抜けであった。そのため夜な夜なルイズをつけて彼女の練習を監視してるタバサの率直な感想は危険であった。以前まではトラップの動作確認くらいだった。しかし今日のはどうだろうか?一見無差別に使っているように見えるが良く良く見たら簡単に分かる。跳ね床で弾き飛ばされトラバサミで拘束される。そこに大きいハンマーが振るわれ飛ばされた先に壁。そこから槍がつきだした。そう、明確な殺意があるトラップの配置なのだ。しかもあの跳ね床の機動が尋常じゃなく速い。跳ね床さえ当たれば槍まで一気に行ってしまう。タバサは戦慄する。

 

「……こんな事考えるなんてどうなってるの?まともじゃない」

 

 まるで作業のように人を殺すであろう無機質な拷問機具達と腕を振るワンアクションでそれをなすルイズにタバサは恐怖を覚えた。

 

「……化物」

 

 そんな言葉が零れた。




・今回のトラップコンボ
スプリングフロア(移動)→ベアトラップ(拘束)→スイングハンマー(攻撃+移動)→ギルティランス(とどめ)。このあとメガロックとかいえばダメ増やせる。
・スプリングフロア
華麗系の床トラップ。跳ね床。対称を撥ね飛ばす移動トラップの基本であり優秀なトラップ。発生が早く始動トラップとしてもなかなか。チャージも短いため花びんミスった時とかのルート修正に便利
・スイングハンマー
華麗系の天上トラップ。横からでかいハンマーでぶっ叩いて吹き飛ばす。たぶん骨くらい持っていきそうな勢いだがデルタホースより低威力。解せぬ。チャージが短く当てやすいのでペンデュラムより便利。
・ギルティランス
残虐系壁トラップ。罠ビーのイチオシで壁から槍が突き出る。壁に引き寄せる効果があり発生が早く始動に便利。威力もペンデュラムくらいあると至れり尽くせり。始動から量増しまでなんでもござれのトラップ。

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