お気に入り50件超え……だと。えっ嘘でしょ。何はともあれありがとうございます。期待にそえるようがんばります(やべぇフーケ編とかなんも考えてねー)
ギーシュは医務室のベッドの上で目を覚ました。目を開けると決闘騒ぎの前に散々怒らせてしまったモンモランシーの泣き顔が彼の視界一面に広がっていた。
「……花のような君にそんな顔は似合わないよ」
笑顔を作り少し冗談ったらしくそう言う。いまだに混乱気味の頭であっても歯の浮くような台詞を述べるあたり彼の天性の何かを感じられる。
「っもう、ギーシュの馬鹿馬鹿。死んじゃったかと思ったわ」
「はは、そう簡単にこのギーシュ・ド・グラモンが死ぬはずがないだろう」
そう言って泣き笑いながら抱きついてくるモンモランシーに笑いかけながら、ギーシュはだんだんと寝るまでの事を思い出しそして実感した。自分が生きているということを。
ギーシュが生きているのは本当に紙一重の運であった。それはあの殺意の刃を受けたギーシュが一番わかっていた。あの刃はギーシュが動かなければ恐らく彼の頭を幹竹割りにしていただろう。していたはずである。それを免れたのはギーシュがたまたま上を見た事とあの風を斬る音を聞いたからにほかならない。もしギーシュが決闘に集中していれば致命傷を負っていただろう。腕一本で済んだのは始祖に感謝といったところだ。
……腕一本?疑問に思いギーシュは自身の左側をさする。肩はある。肘はこれかな。……あれ?
「それにしてもなんなのよヴァリエールは。ギーシュを殺すつもりだったの?」
――ああ、そうだ。腕、無くなっちゃったんだ。
ギーシュの左腕の肘から下の部分は消え去っていた。しかしギーシュ自身はルイズに対して暗い感情を抱いてはいなかった。
そもそもギーシュはあの刃がルイズの力であるとは思っていなかった。決闘時の記憶は少々曖昧だがルイズはワルキューレに対して防御体制を取ったものの腕を押さえてた彼女が魔法を使えるわけがないのである。となるとあれはなんだったのだろうか?今度図書室で調べてみようか。そう考えながらモンモランシーの顔を今一度見てギーシュは生きている事を感謝した。
◇◇◇
「ん、ここは?」
「学院長室じゃよ、ミス・ヴァリエール。おはよう」
「お、おはようございます、オールド・オスマン」
目を覚ましたルイズがあたりを見渡そうと体を起こすと部屋の主であるオールド・オスマンから声がかけられる。その声にルイズの頭は夢見心地の状態から一気に覚醒状態へと移行する。
「も、申し訳ありません。こんな体勢で」
「よいよい。そのままで。さて、ちと老いぼれとのお喋りに付き合ってくれぬか?ミス・ヴァリエール」
ソファに寝かされている状態から急いでルイズは立ち上がろうとするもそれはオスマンに制される。仕方なしにルイズは体を起こしただけの姿勢でオスマンに向き直る。
「さて、ミス・ヴァリエール。身体は大丈夫かな?」
「はい。とくに異常はないと思います。それで」
「そう焦るでない。して、その腕はどうかの?」
まずオスマンはルイズを気づかうように話かけた。それにルイズは簡単に答えるとオスマンははやるルイズを制す。そしてあくまで体調を聞くように左腕に話をやった。対してルイズはほぼ無意識に左腕を背中の後ろに隠しながら聞き返す。
「腕?私の腕がどうかしましたか?」
「ミス・ヴァリエール。しらばっくれるのは関心しないぞ。お主の左腕に宿った使い魔についてじゃ」
「……使い魔じゃないです」
好好爺とした笑いを浮かべながらも確かな威圧感を滲ませオスマンはルイズに告げる。一方ルイズはオスマンの言葉にボソリと呟くようにそう言うもすぐにすいませんと謝罪を告げて左腕を出す。
――使い魔?その言い種はルイズにとって考えたくない現実であった。この左腕に恐ろしい力が宿っているのは夢と先程の決闘騒ぎから半ば確信していた。今まで何も出来なかった自分がようやく手に入れた自分だけの力。そう思いたかった。これじゃあいまだに私は何の力も持たない蔑まれる弱い存在じゃないか。渦巻く感情を圧し殺しオスマンとの話を続ける。
「そうじゃ。その腕に宿った使い魔は大変強力なものみたいじゃのう」
「きょ、恐縮です」
「しかし学友に対してあの仕打ちはいただけないのう」
オスマンの目が鋭いものへと変わる。ルイズはヒッと声を上げるがまっすぐオスマンを見据える。さっきのギーシュへの攻撃は意図したものではない。しかしだからといってあの刃がギーシュに当たっていようとルイズは特に何も感じなかっただろう。いや、それは無いが恐らく今の自分と同じように手に入れた力にその身を震わせていただろう。
「……」
「……だんまりかのう」
自身の中に渦巻く黒い内心を悟られないようにルイズはオスマンの問いに沈黙で返した。下手に取り繕って実の無い言葉を口にするよりいいだろう。それに対してオスマンは溜め息を吐くとルイズに今一度聞く。
「君はミスタ・グラモンを殺すつもりだったのかのう」
「……そんなつもりは」
殺すつもり……と明確に言葉にされてルイズは反論する。殺すという事に実感のない少女の溢すように言ったその言葉にオスマンは笑みを浮かべて口を開く。
「結構。では質問を変えようかのう。ミス・ヴァリエール。お主はその力をどうするつもりじゃ」
ルイズは速答できはしなかった。当然である。力の無かったルイズが力を持った後のビジョンなど描ける筈もない。ルイズにとっての力とはなんだろうか。自身だけが持ってなくて渇望したそれを求めたのは何故だろうか?
答えは簡単だった。自身だけが持っていなかったからだ。劣等が、欠落が、無力が悪だと同期達に教わったからだ。他にもあるだろうがそれが一番強い動機になってしまった。
「……わかりません」
だからルイズはそう答えた。オスマンはその答えにただただ笑った。
もう少し休んで行くかというオスマンの提案を丁重に断りルイズは学院長室を出る。残されたオスマンはたどたどしいルイズの様子に危うさを感じながらもまだ救いようのある様子に安堵していた。殺すという言葉にまだ抵抗感がある様子であったことにオスマンは安心した。しかし彼女の抱える問題は根深いものであるとオスマンは認識した。
「しかし歪じゃのう。……その一端はわしらにもあるんじゃが」
力について問うた時、ルイズはなんでそんなことを聞くのか疑問を持った表情を浮かべた。普通は目的を持って力を手に入れるはずである。これはルイズに力が降ってわいたからという問題ではない。彼女が座学において優秀である意味力を手に入れる準備はしていた筈である。しかし彼女は力を持つというところで止まっていた。このままでは彼女は力に振り回されてしまう。
「頭が痛いのう。しかし彼女を導くのが……わしらの仕事じゃ」
「ハハハ。笑うしかないじゃない」
学院長室を出てしばらくするとルイズは笑い出す。その笑いは何に向けてなのか当のルイズにもわかっていなかった。ルイズはオスマンとの面談の途中に自身に対する違和感のようなものに気づいていた。決闘の時は自身の左腕を押さえてまで夢の再現を恐れていたのにいざあの力がギーシュを蹴散らしてからあの残酷な力への抵抗感は薄れてきている。この感じはなんなのだろうか。考えるが答えはでない。いや、そんなことは些末な問題ではなかろうか。これで私は……『ゼロ』じゃない。『ゼロ』じゃないんだ。
ゲームだとここでチュートリアルステージが終了ですね。一回しかバトルしてないですけど。あれ?影牢要素薄れてきてる気が……ちょっと補充したいけど補充したら死人ががが