影牢 ~ヴァニティプリンセス~   作:罠ビー

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 お初にお目にかかります。罠ビーです。二次創作初心者ですがお手柔らかによろしくお願いいたします。更新は多分すごく遅いです。影牢~もう一人のプリンセス~発売中(ステマ)


第一夜

 その日、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは自室で茫然自失といった姿で塞ぎ混んでいた。その原因は言うまでもなく本日行われた使い魔召喚の儀での失敗である。

 ――春の使い魔召喚の儀。それはここトリステン魔法学院においては進級課題のようなものでありこれが成功しなければ第二学年への進級は承認されないのである。もちろん進級課題、それも貴族の子女が魔法を学ぶことに並ぶくらいに社交的な意味が強い学院でのという事であり難易度はさほど高いとは言えないものである。しかしその進級課題にトリステンきっての名門貴族であるヴァリエール家の三女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは失敗したのである。

 失敗した。その事実は普段散々魔法の発動が失敗して爆発魔法になろうと、貴族であるのにもかかわらず魔法が使えないということを級友から『ゼロ』という蔑称で嘯かれようともめげずにいつか魔法を使えるようになるかもしれないとひたすらに魔法の勉強を続けてきた小さい彼女の一筋の希望を奪い去るには充分であった。

 

「……なんで、どうして誰も私の問いかけに応えてくれないのよ!!」

 

 悲痛な叫びはルイズしかいない部屋の中で無情にも木霊した。もちろん応えてくれるものなどいない。いないはずである。

 

 ――力が欲しいか?

 

「……えっ?」

 

 何かが聞こえた。そんな気がしてルイズははっと顔を上げた。しかし彼女の瞳には先程までと全く変わらない部屋の景色しか映らない。その現状に彼女は落胆、または諦めともとれる表情を浮かべたあと蓋を切ったように叫びを上げる。

 

「欲しいわよっ!!散々『ゼロ』と蔑んできた奴らを見返せる力がっ!!散々私の事を嘲笑ってきた奴らを黙らせる力がっ!!貴族であると胸を張って言える力が欲しいわよっ!!」

「なんで誰も応えてくれないのよっ!!魔法も使えないお前なんか一人がお似合いだ。そうとでも言いたいの?私は使い魔にまで馬鹿にされているの?」

 

 ――馬鹿みたい。とひとしきり叫んだルイズは正気に戻り滑稽な自分のその姿に笑いだす。たかだか幻聴にむきになって子供のように喚き散らす。これが仮にも貴族である者の姿であろうか?

 

 ――壊れてしまえばいいのに。そんな考えが頭をよぎった。急いで首を振って否定しようとした。こんな事を考えるなんて駄目ねと。しかしそれは突如として響いた爆音に遮られる事になる。

 

「ヒッ、なっなに?」

 

 ――ビシャーンともう一度その音は鳴り響く。どうやら雷のようだ。爆音の正体がわかった事に胸を撫で下ろすルイズだが次に彼女は左腕を抑えて踞る。

 

「熱い、あっつ、なんなのよ」

 

 そうして彼女は左腕をみる。そこには使い魔召喚の儀で刻まれた奇妙な痣とも刺青ともとれる何かが自分の腕に張り付いているだけであった。

 何とも言えない表情をルイズは浮かべると怒りにまかせて彼女は自身のベットに潜りこんだ。

 

 ――魂を捧げよ

 

  ◇◇◇

 

 魔法学院の教師であるジャン・コルベールはある生徒、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールについての特異な現象に頭を抱えていた。自身が監督を務めた春の使い魔召喚の儀にて失敗者が出てしまった事である。いや、厳密には失敗ではないのかもしれないとコルベールは考えているのだがまわりも、彼女自身も失敗したと信じて疑わない。

 

「ミス・ヴァリエールの左腕に現れた痣……しかし寄生生物の召喚など聞いたことがありませぬぞ」

 

 コルベールの見解では使い魔召喚の時に何らかの寄生生物を召喚してしまい現状がよくわからないままに寄生生物が彼女の左腕に寄生してしまったと考えていた。試しにルイズにコントラクト・サーヴァントを行うように促したがルイズはこれを拒否し結果として後日また使い魔召喚を行うとあいなった。

 コルベールとしても真面目で勤勉なルイズに対して好印象を持っていたためルイズの置かれている現状にはたいへん憂いている。しかし使い魔が見かけ上居ないのも事実でありこのまま進級させる、はたまた学院に残す事が彼女のためになるのか?よしんば学院を中退したとしても家族はそんな彼女を認めるだろうか?また貴族として気高くあろうとしているルイズ自身がどう思うだろうか?コルベールはまた一人頭を抱えだした。自身の見解が正しく、なんとか事が丸くおさまる事を願いながら。

 

  ◇◇◇

 

 夢を見た。それは自分の知らない場所で自分の知らない誰かが殺される。そんな夢だった。洋館のような所に男が一人。彼が何かを追いかけると彼の足は突如として現れた獣を捕らえるために使うであろうトラバサミにガシリと捕らえられた。男は何かを喚いているがその声は全く聞こえて来なかった。トラバサミの歯が噛みついている彼の足からはだらだらと赤い血が流れていた。ふと風を斬るブオンとした音が聞こえた。次の瞬間トラバサミの歯が男の足を引き裂きながら男の姿は見えなくなった。

 もう一度ブオンという音がなる。捕食対象がいなくなったトラバサミが赤いよだれを垂らしている上に振り子刃がまるでトラバサミに餌付けをするようにトラバサミに赤い液を垂らしていた。

 

 風を斬る音がもう一度聞こえたような気がした。

 

「魂を捧げよ」




・ベアトラップ
華麗系の床トラップ。影牢の中でも基本的なトラップ。トラバサミですごく痛そうだがダメージはデルタホースの半分。鎧に盗賊と効かない相手が増え中盤あたりからレギュラー落ちする。ダウン中拘束からのペンデュラム外しはみんなやると思う。
・ペンデュラム
残虐系の天井トラップ。影牢の中でもパッケージにかかれるくらい象徴的なトラップ。振り子刃で痛そうというより当たったら普通死ぬ。移動範囲の計算をミスり花瓶の割れる音をよく聞く事になる。

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