やはり俺の魔王攻略は間違っている。   作:harusame

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その27 俺と魔王のレコンギスタ

 

友達とは

 

「互いに心を許し合って、対等に交わっている人。一緒に遊んだりしゃべったりする親しい人」

 

と辞書にはあった。

 

ただ一緒にいて、表面上でも何かを共有していればそうなのだろうか?

 

今、こうして教室の机に体を伏せて葉山達のグループを見ながら考えていた。

 

「隼人くんと友達」

 

以前、戸部は自分の自慢できることをそう答えた。

 

一緒に遊んだり、しゃべったりはしているが、互いに心を許しあっているだろうか?対等な関係と言えるだろうか?

 

 

かつて俺は彼女に友達になることを願った

 

それは、彼女と似ているものが、共有できるものが、あると思ったから。それを理解できると思ったから。

 

しかし、雪ノ下陽乃とはどうだろう?

 

少なくとも今回、旅行を共にしたので単なる同級生のお姉さんでは無い。一緒に遊んだり、話したりはしたことになる。しかしあの人との距離が分からず常に不安を抱えている。

 

俺はあの人に心を許しているのだろうか?

 

しかし彼女は、陽乃さんは俺と「友達」だと宣言した。その意図を探ろうにも、握られた手の艶かしい感触と肩に触れた暖かさ、それにあの笑顔。思い出された衝動のせいで思考が前に進まない。

 

いつだって、あの人は俺を不安にさせる。

 

 

 

××××

 

 

 

昨夜のことを思い出す。

 

 

「受験生の前でイチャコラはまじで勘弁して下さい」

 

と小町の懇願によりどうにか陽乃さんに帰ってもらう。

 

「泊まっていきたいのに~」

 

と不穏な発言を気にしていたらキリが無い。

 

しかしいつもの小町なら某倶楽部並に「どうぞ、どうぞ」と言いそうなのだが…

 

「なあ、小「正座」」

 

「は?」

 

「いいから正座」

 

と銃を突きつけるトゥーハンドのような目でリビングの床を指差す小町。

 

「はっ、はい」

 

こっ怖いです、小町さん。

 

「……」

 

無言の住人となる。

何この沈黙?

 

「お兄ちゃん?」

 

「あっ、はい」

 

「あっ、はい、じゃないでしょ?どこの難聴系主人公なの?」

 

「俺はハーレムなんかとは無縁だぞ?」

 

「あっ?」

 

「いや、すんません」

 

「は~。もういいから。陽乃さんと何してきたか全部話して?ありのままにだよ?」

 

腕を組み、ヤレヤレといった様子な小町。

 

 

俺は魔王との旅路を小町に語る。

 

 

××××

 

 

 

「これはこれでお兄ちゃんの理想かもだけど、雪乃さんや結衣さんとはどうすんだよ。しかもいろんな過程をすっ飛ばして……」

 

と何やらブツブツ呟いている。

 

「あの~小町さん?」

 

「お兄ちゃん?小町は受験生です」

 

「お、おう。そうだな。応援してるよ」

 

「だから今回は小町からはノーヒントです」

 

指を立てあざと可愛く言う。

 

「お互いに全力を尽くさないとダメだからね!」

 

 

××××

 

 

気が付いたら、部活に行く時間だった。

 

教室では何やら聖人の死んだ日のイベントの話しでチョコっと盛り上がっていたが俺には関係無い話だ。

 

「ヒッキー!部活行こうか」

 

優しい女の子である由比ヶ浜に誘われ部室に向かう。底冷えする廊下も心なしか歩調が軽い。

 

「ところでヒッキー?体調良くなった?昨日休んでいたから…」

 

「うっ…、まあな…」

 

陽乃さんとの旅が連泊となったため学校を休んだが風邪ということになっていたらしい。

 

「ふーん」

 

由比ヶ浜は何やらジト目で俺を見ている。

 

「なんかきょどっている。ヒッキーきもい」

 

「いや、きもいって…」

 

「風邪なんだよね…?」

 

「べ、別に俺が休む理由なんでどうでもー

 

言いかけて言葉が止まる。

 

まっすぐ俺を見据える由比ヶ浜のもの言わせぬ目に気押されてしまう。

 

「ヒッキー…何かあった?」

 

由比ヶ浜結衣は空気が読める女の子だ。それが例え、俺の空気であってもだ。

 

「……」

 

「何かあったら相談してね。私たちに」

 

そう言って見せた笑顔はいつもの由比ヶ浜結衣の笑顔だった。

 

 

何となく無言のまま廊下を進む。

 

 

扉の前まで来ると、何故かこの扉を開けてはいけない気がする。

 

俺は自分の勘や運はあまり信じる方では無いが

俺の中のぼっちが告げている。

 

き け ん な け は い が す る

 

 

「すまん、おれやっぱりあれが、これで」

 

「どうしたの?」

 

と俺が言い終える前に由比ヶ浜が部室の扉を開ける。

 

 

部室の中には女性が二人いた。

一人は我らが部長様である雪ノ下雪乃。

 

もう一人は、

 

「ひゃっはろ~」

 

 

総武高の制服を装備した、魔王こと雪ノ下陽乃であった。

 

 

な、なんじゃとてー!!

 

 

由比ヶ浜が持っていたバックを落とす。

お互い絶句である。

 

だって、魔王が制服を装備しているんだぜ?

 

しかも姉妹で並んでいると改めてその違いが見て取れる。いや、その、質量的な、物理的ものが…。制服という聖衣を纏うことで魔王のコスモの無限の可能性を感じてしまう。

 

「どう?似合うかな~八幡?」

 

そう言って俺の前で一回りする陽乃さん。

 

その選択マジでイエスです。

 

普段は大人っぽい女子大生らしい恰好が多いので一見コスプレっぽさも否めないですが、それはそれで良い訳で。実際数年前は装備していた訳ですし、ある意味それはノスタルジックなインスピレーションをオーバーワークで……そうまさに、ユニバース!

 

「あ、あっ、う…」

 

言葉が出ない!!

 

魔王の 制服姿を 垣間見て

ビックのBは ぼっちのB! (意味不明)

 

 

「二人とも座ったら?それとそこの変態ヶ谷君はそこの窓から飛び降りたらどうかしら?」

 

「いやいや、寒いから嫌だし」

 

「寒いからなの?理由が?」

 

と、部長様のおかげで我に帰る。

 

いつもの俺たちのやり取りを魔王はご満悦な表情で眺めている。

 

そして、

 

 

「なんかいいね~君たち」

 

「だからお姉さんも入るよ!奉仕部に!」

 

 

「「「はい?」」」

 

 

そして、魔王の次の進撃が始まるのですー

 

 


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