やはり俺の魔王攻略は間違っている。   作:harusame

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その25 俺と魔王と深夜の独白

 

 

とても穏やかで満たされている。

 

誰しもがこうありたいと思っているはずだ。

 

誰しもがずっと続けばいいと思っているはずだ。

 

しかし、俺は

 

そんなものが長くは続かないことを知っている。

 

幸せや安心ほど儚く一緒であることを知っている。

 

そしてそれらを失った時の身を切る痛みも知っている。

 

でも、愚かにも渇望している。

 

届かなくても同じように求める相手がいるならと

 

お互いがその儚い願いを許容できるならと

 

彼女もそれを望んでいるならと

 

だから問い続け、間違え続ける。

 

間違え続けた先に求めるものがあるから

 

そう信じているから。

 

 

しかし彼女は違った。

 

人と人の間は不確かなものしかないと言った。

 

 

彼女は不安しか与えてくれなかった。

 

彼女の底が見えない仄暗い瞳が怖かった。

 

彼女の距離の近さに戸惑っていた。

 

彼女の時折見せる寂しそうな瞳を見るとー

 

 

彼女の握られた手が暖かかった。

 

彼女の強引さに呆れながらも不快では無かった。

 

彼女の前を歩くその姿が眩しかった。

 

彼女のもう一人の彼女によく似た笑顔はー

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はずっと勘違いしていました

 

だってあなたがあいつを真似る必要は無いですから

 

あいつがあなたを真似たんでしょうね

 

俺はずっとあなたがあいつに似ていると思っていました

 

あなたの笑顔やいろんな仕草にあいつを見ていました

 

でもそれは

 

あいつがあなたに似ていたのですね

 

やっと分かりましたよ

 

でも残念ですね

 

あなたの笑顔を見ていないですから

 

 

ええ、自分でも何言ってるか分かりませんよ

 

でも言いたいのですよ。こんな自分にびっくりですよ

 

ぼっちの俺に他人をとやかく言う資格はありませんから

 

これは単なる戯言ですよ

 

信念も無く

 

概念も無く

 

願いのような儚さも無く

 

ただ、俺という人間から発されるだけの

 

何の意味のない言葉

 

 

最高の戯言だと思って下さい

 

 

 

……………

 

 

 

俺と友達になってくれませんか?

 

 

 

 

××××

 

 

 

 

鼻唄が聞こえる。

 

知らない唄だが、なぜか落ち着く。

 

 

 

 

「比企谷くんの髪はクセ毛だね~」

 

 

目を開けると目の前に陽乃さんの顔。

優しい笑顔。

頭に感じる暖くて柔らかい感触。

 

これ、もしかして膝枕されてます?

 

「これ…は…?」

 

頭が痺れていて現状を上手く認識できない。

暖かくて柔らかくていい匂いで

このまま眠っていたい。正直目をつぶりたい。

 

ずっと何かを考えては独白していたような気がするがさっぱり思い出せない。

 

「すいません、起きますー」

 

そのまま頭をホールドされる。

 

「だ~め、もうしばらくこのまま」

 

体に力も入らず為すがままとなる。

 

「え?あっはい…」

 

頭を撫でられている。

とても優しい手つきで。

 

 

「このままがいいの……」

 

 

 

×××××

 

 

 

窓から射す明かりで目が覚める。とても頭が重いが疲れだろうか?

 

なんとか上半身を起こしてベットから出ようと手を付くと暖かくて柔らかい感触が伝わる。

 

はい?

 

はいい?

 

 

「ん~?」

 

寝ぼけた声を発する陽乃さん。

 

あの~何故俺たちは同じベットで寝ているのですか?意味分かりませんよ?確かカラオケ行って、なんか疲れのせいか眠くなって、その後が…なんか陽乃さんと何か話したような…?

 

「んん~」

 

目を擦りながら体を起こす陽乃さん。

その笑顔はー

 

いつもの強化外骨格の笑顔でも無く

 

時折見せる寂しそうな笑顔でも無く

 

姉妹で見せるいつもの笑顔でも無く

 

 

「おはよう八幡~」

 

 

俺が初めて見る

 

素敵な女の子の笑顔だった。

 

 

 

 

 


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