やはり俺の魔王攻略は間違っている。   作:harusame

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その19 俺と魔王の続く旅路

 

 

再び夢を見る

 

幼い彼女たちはベットの上で跳ねて遊んでいる。

跳ねすぎて、小さい方の彼女が落ちてしまい、

泣き出してしまう。

 

大きい方の彼女がその頭を撫でて慰める。

小さい方の彼女はやがて泣き止み

その後、部屋から出ていく彼女達。

 

その顔は二人とも

俺のよく知る笑顔だった。

 

 

××××

 

 

窓からは朝焼けの草原が見渡せる。

 

部屋のソファーを簡易ベッドにして

何とか寝ることができた。

多少行儀は悪いが仕方無い。

 

毛布を体に巻き付けて寝ていたが

朝起きるともう一枚毛布が掛けられていた。

 

陽乃さんは大きいベッドの片方に

だいぶ寄って寝ているようだ。

意外に寝相が悪いのですか?

 

何となく居づらくて、バスルームで着替えて

部屋を出ようとすると

 

「朝食はレストランで8時だよ。外に軽い散歩コースあるからね」

 

とドアにメモが貼ってある。

頭をかきながら、何となく気恥ずかしくなる。

 

外に出ると朝の冷たい冷気が

昨日の温泉の火照りを覚ます。

 

草原の中で風を浴びながら

体が夏になる~!と叫びたくなることも無く

ただ歩く。

 

部屋に戻ると、

陽乃さんはソファーで新聞を読んでいた。

なんだかとても様になっている。

ジーンズに白のタートルネックのセーターと

今日はさっぱりした服装。

 

「お帰り~。朝食行こうか!」

 

陽乃さんはいつもの笑顔で言う。

 

 

××××

 

 

朝食は和洋ビュッフェだった。

俺はトーストにハムやスクランブルエッグ、サラダと

皿がてんこ盛りになっている。

こういうのって、つい取りすぎてしまう。

なぜだろう?

 

席に戻ると陽乃さんは御飯、味噌汁、温泉卵、湯豆腐と

和食で統一されていた。

 

「和食派なのですね。洋食派なイメージでした」

 

「付き合いでの外食は洋食が多いからね~日本人ならやっぱりお米だよ」

 

そう言って手を合わせる陽乃さん。

 

「お姉さんも人付き合いとかいろいろたいへんなんだよ~」

 

「それはお疲れ様です」

 

「そう!だからふらっと旅に出たくなるの。今回は比企谷くんも一緒だから楽しいよ!」

 

「お役に立てて何よりです...」

 

食後にコーヒーメーカーの前に並んでいると

テーブルにいる陽乃さんが何やらレストランの

従業員に話し掛けていた。

 

「お待たせしました」

 

陽乃さんの分のコーヒーも置くと

先ほどの従業員が見慣れた物を俺達に

差し出す。

 

えっ?あるの?まじで?

 

陽乃さんは練乳を手に取り、自身のコーヒーに

捻り出す。

 

「はい!どうぞ~」

 

練乳を渡され、いつものようにコーヒーに入れる。

 

当たり前のように練乳入りコーヒーを

飲んでいる陽乃さん。あなた甘党でしたっけ?

 

二人で静かに飲むコーヒーはいつものコーヒーより

甘い気がした。

 

 

××××

 

 

ホテルをチェックアウトして送迎車に

乗り込む。

 

「行きたいところがあるんだよ~!」

そう言って俺の肩を掴んで距離を詰める陽乃さん。

 

「なら行きましょう…」

いつもよりテンションが高い彼女に戸惑ってしまう。

朝のマッカンブレンドが甘過ぎたのだろうか?

 

道中、俺の肩を掴みながら鼻歌を歌って楽しそうに

している。

 

到着したのは牧場だった。

見渡す草原に牛や馬が見てとれる。

 

「早く行くよ~!」

そう言って俺の手が引かれる。

 

 

「××乗馬クラブ 体験乗馬もできます」

 

そう書かれた看板の小屋に入って陽乃さんは

どうやら手続きをしているようだ。

 

乗馬が楽しみだったのですね。

 

しかし、乗馬って貴族なイメージが

さすが雪ノ下家。

しかし妹さんはパンダの方が…。

 

「お待たせ~!はいこれ比企谷くんの分」

と何やら黒くて硬い帽子らしきものを渡される。

 

「私はひとっ走りしてくるから比企谷くんも楽しんで~」

まあ、そうなるのは看板見た瞬間分かりましたが。

これけっこういいお値段ですが、今さら仕方無いですね。

 

インストラクターのお姉さんに連れられて

馬の間近まで来る。

 

でかい。そして若干怖い。

 

「こちらが怖がらなければ大丈夫ですよ。」

 

「は、はあ。頑張ります…」

 

「伝わりますからね、この子達って分かるんですよ」

 

「何がですか?」

 

「自分がどう思われてるかを」

 

 

補助をされて何とか馬上に股がる。

 

高いーー!すごい高いーー!

すげぇーー!!

なんか出陣!って叫びたい!

 

「動物の上に乗るとより高く見えるでしょう?

では歩きますから、リズム合わせて下さいね」

 

「あ、はい」

と景色が動き出すと

 

うわぁぁあーー!!

揺れる、揺れる、鐙と尻がバンバン当たって痛い!

 

「ちゃんと歩くリズムに合わせて踏ん張らないと痛いですよ」

 

なんとかそうするが、すぐに足がつりそうになる。

何この重労働?こんな過酷なものなの?

まだ歩いてるだけなのに。

 

そうしていると向こう側のコースを見ると、

俺とは比べものにならない速さで走っている馬がいる。

 

「彼女さん上手いですね~。かなりされてますよあの感じは」

 

いえ、別に彼女では…という言葉は口を出ず、

ただ見とれていた。

銀幕の主人公たちのように

草原を駆け抜けるその姿に。

 

 

なんとか駆け足までしたところで、

尻と太ももが限界でギブアップ。

地面に降りると足が震える。

 

「上手くなって彼女さんにいいところ見せないと」

お姉さんにそう言われたところで、

 

「他でいいところいっぱい見てるから大丈夫ですよ」

と満面の笑みでやって来る陽乃さん。

 

その笑顔はいつもの強化装甲でも、

俺がよく知る彼女に似たものでも無く、

 

俺が始めて見る

 

雪ノ下陽乃の笑顔だった。

 

 

××××

 

 

帰りの電車まで時間があるので、

駅前からの観光街を2人で歩く。

 

小町へのお土産を選ぶ。

「ゆず胡椒」

うん、これにしよう。柚子風味で本場の人は

たっぷり付けて食べるということにしよう。

小町......たまには人生の辛さって大事だぜ。

 

「比企谷くん!雪乃ちゃんにこれどうかな?」

と陽乃さんは犬の硝子工芸品を手にしている。

 

「いや、そこは猫でしょ。もしくはパンさん」

 

「そうだね。これでいいか~」

とパンさんの硝子工芸を手にする。

というかあるんですね。

 

観光街と言っても洒落た店が多く、行き交う人々も

大学生か社会人らしき人が多い。

 

しかしカップルだらけだな......。

九州ってリア充多いの?

 

「また違う女の子見てるな~。隣に私がいるのに~」

 

「いえいえ、ただカップルが多いなと......」

「私たちはどう見えるだろうね?」

 

そう言って俺の腕に抱き付く陽乃さん。

「離れてくれませんか?歩きにくいので」

全力で平然を装いながら、何とか言いきる。

 

「い・や・だ☆」

流石に周りも似たような男女が多く、注目される

ことはないが、内心気が気でない。

 

適当に買い物をして、行きと同じグリーンの電車に

乗る。帰りは景色の見えるラウンジで車内弁当を

食べる。野菜中心でヘルシーなものだった。

 

食事を終えると、

 

「はい、これ」

と俺のソウルドリンクを渡される。

なんだかこのマッカンいろんな人の手を渡ってきたような...。

 

 

他愛ない会話をしてる間に電車は博多駅に到着。

今から、東京目指して…千葉には深夜になるか…。

 

「こっちだよ~」

と陽乃さんは何故か新幹線口と反対方向に向かっている。

 

「あの~新幹線はあっちみたいですが?」

もしかして帰りは飛行機ですか?

 

 

「ん?次のホテルに荷物置きに行くよ~」

 

 

れ・ん・ぱ・く・ですかーー!?

 


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