やはり俺の魔王攻略は間違っている。   作:harusame

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その⑫

 

 

雪ノ下がパソコンが操作する音が部室に響く。

カタカタターンとドヤ顔をすることも無く、眼鏡をかけて淡々と作業を行っている。

 

「更新完了ね……。サイトへのアクセスもしやすくしたし、学校のHPにもリンクさせたわ」

 

「すまねぇな。任せきりで」

 

「いいのよ、良い練習にもなったし」

 

なんだこいつ、ブログでも立ち上げんのか?ゆきのんのネコネコ大好き~とか?

雪ノ下がじっと俺の顔を見ている。心なしか体温が下がるような。氷の魔法はまだ健在らしい。

 

「さて、ついでに依頼メールでも確認しましょうか?」

 

「そうだね。なんか久しぶりだし!」

 

「へ~、ついでに生徒会への相談も受け付けてくれませんか~」

 

って、若干1名おかしくないか?なんで普通にいるのお前?

 

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相談者名 剣豪将軍

 

相談内容 

 

八幡よ!学校に出て来てるはずなので、

部室に我の新作を持ち込みたいのだが生徒会長の他、

時折大魔王も出没するらしいでは無いか!

 

そんな空間には怖くて近寄れぬ。どうにかするのだ!

 

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「だ、そうよ」「ヒッキーお願い~」「誰ですか?これ?」

 

はいはい、俺の担当ですね。担当職務って重い言葉は俺の自由の翼を重くする気がする。

そもそも飛び立てる翼は無いが。

 

 

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奉仕部よりの回答

 

添付しろ、メールに。

気が向いたら読む。

 

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「他にも来ているわね」

 

「何かな」

 

「恋愛相談とか無いのですか~?」

 

女三人で何とやらだが、こいつらいつの間にこんなに仲良いの?

はちまん若干はぶられているような……。

 

 

 

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相談者  S.K

 

相談内容 

 

なんかこの間、しらない男子とたまたま一緒にいるところを

見かけられたけど別にその後も何も無いからね。

 

なんであんたが通りかかるのよ!

 

 

 

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「……」

「……」

「……」

 

 

何でみなさん黙るのですか…?

 

「後でゆっくり聞きましょうか?」

「そうだね」

「そうですね」

 

 

 

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相談者  fuzyosi

 

相談内容 最近、はやはち成分がー

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「次いこう」

「次ね」

「次だ」

「はやはちってなんですか?」

 

「一色、知らなくて良いことって世の中にはあるんだよ…」

 

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相談者  sizuka

 

相談内容 結婚したい……。

 

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「はあ…」

「うわ~…」

「へ~」

 

先生…、すさまじい直球ですね。きっとまっすぐが得意な彼もこんな剛速球を欲しがっていますよ。

 

 

 

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奉仕部からの回答

 

何事も縁だとは思いますが、気負いすぎてはその縁も

少し気後れしてしまうのではないでしょうか?

あなたを見てくれている人がきっといますよ。多分。

 

 

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その後、学校のHPにリンクを張ったおかげで、生徒会への質問と勘違いした質問が数件あったが、

それを一色が以外にも適切に返答をしていた。

 

「トップページに生徒会では無いことをきちんと明記してきましょう」

雪ノ下がすぐに作業に取り掛かる。相変わらず仕事早いなこいつ。

 

「そのままこちらで答えていただいて大丈夫ですよ~」

 

「仕事をこっちに押し付けんな。そっちの仕事はそっちでやれ」

仕事を増やさない努力。これが大事。

 

「え~手伝ってくれないのですか~?」

最近本当に遠慮無いですね、いろはすさん……。

 

「うっさい、自分のことは自分でやれ」

やらなくていいことはやらない。

どうしてもやらなければならないことは……えるたそ~。

 

「なら雪ノ下さんに手伝ってもらいます!」

と雪ノ下に抱き着く一色。

 

「暑苦しい…」

とまんざらでもない雪ノ下。顔赤いのはどうしてなのでしょうか?

 

「え~、私は~?」

不満そうに自分を指差す由比ヶ浜。

 

「由比ヶ浜先輩もよろしくです~」

と今度は由比ヶ浜にダイブする一色。

 

 

キマシタワー!

ってどんな熊嵐なの?これ、本当に俺いらなくない?

 

「先輩何じーと見てるんですか?もしかして先輩も同じことして欲しいのですか?」

 

「ちげーよ、バカ」

 

全く、本当に騒がしい。

だがその騒がしさは、ボッチの俺にも不快では無かった。

 

「先輩、何ニヤついてるんですか、キモいですー」

いつものように屈託なく笑いながら一色いろははそう言う。

 

 

××××

 

 

俺は席を外して、マッカンを求めて校舎をぶらつく。

自動販売機を後にしてべストプレイスへ向かう。

 

さすがに今回は一人だな…。

 

マッカンの甘味と外の冷気が俺の思考をクリアにする。

 

 

車窓越しの笑顔

 

俺は以前、部室のあいつらが見せた、歪な笑顔に納得できず、自問自答した末に求めるものを見つけ、それを取り戻そうとした。

間違いだらけの俺の選択の中でそれは間違っていないと思いたい。

 

しかし、あの笑顔は、

俺とあの人との距離をますます分からなくするあの笑顔に、

どういう解を出せば良いのだろうか?

 

以前、先生は考え抜いた末に答えを見つけろと言った。

 

しかし、考えることすら、それ自体が、前提が間違いだとしたらー

 

 

マッカンを飲み干して、部室に戻る。

 

扉を開けた瞬間に3人がぎょっとした顔で俺の顔を見る。

なにやらパソコンの前に集まっていたようだが…。

 

今更不審者扱いかよ、さすがにはプロぼっちの俺でも傷つくな。

帰って布団の中で泣こう。そして許さないノートに書こう。

 

「そろそろ、今日は終わりにしましょうか」

とノートパソコンを急いで閉じる雪ノ下。

 

「そ、そうだねゆきのん!今日途中まで一緒に帰ろう!」

 

「私、サッカー部に顔出しますね~」

 

3人がいそいそと帰り支度を始める。まだいつもの時間より

少し早いような気もするが……。

 

まあいい、仕事が早く終わるにこしたことはない。

 

 

××××

 

 

 

駐輪場でマイ自転車に乗りながら帰路に着く。

この解放感。人は生まれながらに自由だ……。

 

早く愛するマイシスターの待つ家に帰ろう。

小町が先日より俺をゴミのような目で見るのは気のせいだ。

きっと気のせいだと思いたい。

 

 

「やあ、比企谷。ちょっといいかな」

 

 

葉山隼人は相変わらず澄ました顔で俺に話しかけてきた。

 

 

 


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