【完結】暗殺教室 ―Twinkling of a star― 作:春風駘蕩
ZECTの本部は混乱の渦に落ちた。
長い時間をかけて入念に練られ、何度も計算とシミュレーションを繰り返してきたはずの天空の梯子計画が、想像だにできない最悪の結果を導き出してしまったのだ。その混乱は、経験豊富なオペレーターたちを持ってしても持て余す衝撃を持っていた。
「巨大隕石、落下を確認‼︎」
「このままではあと数十分後に地表に接触します‼︎」
表面上は落ち着いているが、内心では尋常ではないほど焦っているオペレーター達が忙しなく報告する傍で、幹部の一人である田所は険しい顔で本部を一瞥する。眉間にしわを寄せると、部下たちに向ける指示を脳内でピックアップしていった。
「隕石落下の正確な接触までの時間を算出しろ! 接触後の被害も測れ、急げ‼︎」
「りょ、了解‼︎」
冷静に命令できる人間がいたおかげで、ZECTの本部はようやくまともに機能を再開した。田所の指示で各々がなすべきことを見出し、求める情報が整理されて冷静な雰囲気が形成されていく。
だがその時、流れを断ち切る耳障りな金属音が鳴り響いた。
『ーーー全国民の皆様に、お話しさせていただきます。私はZECT総帥、加賀美陸です』
自分たちの最高位の上官であり、実質上の人類の支配者である加賀美の声に、ZECTの面々は皆戸惑ったように顔を見合わせ、ざわざわとささやきあった。放送はZECTだけではなく、全国に向かって放たれたもののようだが、いったいこの非常時に何を伝えると言うのか。
『ZECTが進行していた天空の梯子計画は、残念ながら計算外の出来事により失敗しました。現在地球に、巨大な隕石が落下しようとしています』
田所は目を見開いた。そんな情報を拡散しては、パニックになった人々が暴動を起こす可能性もある。ただでさえ不安定な世界にそんな爆弾のような言葉を投下すれば、とんでもない災害が起こるに違いないと言うのに、何故こんなことをするのか。
しかし加賀美は一切声を乱すことなく、放送の向こうで穏やかなセリフを並べていた。
『ですがご安心ください。ZECT本部より発射するミサイルにより、巨大隕石を破壊します。破片が落下する可能性もありますので、皆様は落ち着いて、後ほど指示する場所へと避難してください』
「ミサイルだと………馬鹿な‼︎」
田所は吐き捨てるように言い、拳をデスクにガンッと叩きつけた。オペレーターの女性は声を荒げる田所に怯えながら、恐る恐る尋ねる。
「……あ、あの、本当のことなんでしょうか? あんな巨大なものを破壊するだなんて……」
「…無理だ。今の人間の科学力で、あれを破壊するだけの兵器は生み出せるはずがない。……ハッタリじゃ済まされんぞ……‼︎」
拳を握りしめて、総帥に怒りをたぎらせる田所。
その側で、オペレーターの女性がハッとなったように口元を手で覆った。
「…まさか、全て計算のうちだった……のでしょうか?」
「…………」
田所はその疑問に、答えることはできなかった。
† † †
ZECTの本部から遠く離れた廃工場、そこに二つの人影があった。人影の片割れである渚は膝を抱え込み、工場の隅の影の中でただ一人うずくまり、ピクリとも動かない。
愛機でなんとか大気圏を越え、地上へと帰還したヒバリは根城にしていたそこへ渚を引っ張っていき、なんの反応も返さない彼を放置して距離を置いた。
そしてイヤホンを手に取り、NEO-ZECTのメンバーに片っ端から通信を繋げようとする。しかしノイズが走るばかりで誰一人応答せず、苛立ったヒバリは「クソッ‼︎」と悪態をついてイヤホンを地面に叩きつけた。
予想はしていた。本部から逃げる際も追撃に会うことはなかったし、味方にも遭遇しなかった。よくて相討ち、もしくは現状に反逆者どもに関わる余裕がないのだろう。好都合だが、どこかヒバリの心のすみには遺恨が残っていた。
「…ボクらはどうやら、あいつらにいいように使われたらしいね。大和のあの感じ、NEO-ZECTの連中もさしたる障害じゃなかったってわけか」
ヒバリは恐らく真実に近い推測を述べるが、渚から反応はない。イライラし始めたヒバリは、じっと渚の方にきつい視線を向けた。
「…………いつまでそうやっているつもりかな」
険しい表情のまま、ヒバリはうずくまったままの渚に問いかけた。苛立ちのせいで声には棘が目立ち、怯えたように渚はより小さく体を丸め、外からの干渉を拒絶した。
ヒバリはキッと目を鋭く尖らせ、渚の襟元を掴んで引っ張り上げる。脱力したままの少年の顔を自分の目線の高さまで引き上げ、燃え上がった激情のままに虚ろな顔に怒鳴りつける。
「そうやって奴らに利用されたまま、泣き寝入りでもするつもりか⁉︎ 自分のやったことを後悔するだけで、このまま黙って死ぬのを待つつもりか⁉︎」
ガクガクと揺らし、人形のようにいいようにされている渚にヒバリは怒りをぶちまける。自分で立つこともできずにいる少年の体を支えるのは確かな苦痛だったが、荒く息を吐いて興奮しているヒバリは気にも留めなかった。
そんなヒバリは、聞こえてきたかすかな声に我に帰る。力なく揺らされる渚の頬を雫が伝い、力なく開いた口がわずかに動き、かすれた言葉が何度も何度も繰り返されていた。
「…………なさい……………ごめん……なさい…………」
何もない空を見上げ、虚ろに開かれた目からはとめどなく涙をこぼし、痛々しく壊れた音楽再生機のように繰り返される自責と慚愧の言葉に、ヒバリは熱くなっていた自分の体が急激に冷えて行くのを感じた。思わず手から力が抜け、宙吊りにされていた渚がどさっと落ちる前で、ヒバリは自分の体を抱きしめるようにして後ずさっていく。
「違う……違うんだよ、渚……ボクは、ボクはそんな意味で言ったんじゃない……」
じりじりと距離をとって行くヒバリ。だがどんなに間を開けても、渚が漏らす謝罪の言葉は途切れることなく、ヒバリの心に深々と突き刺さった。
頭を横に振ったヒバリはふらふらとよろめきながらその場を離れ、廃工場の朽ちた扉から出て行く。芯を失ったように力なく歩み続けるヒバリは渚の前から自身を隠し、壁に背を預けてズルズルとうずくまる。
顔を手の甲で覆ったヒバリはしゃくりあげるように引きつった呼吸を繰り返し、ワナワナと肩を震わせながら唇を噛む。血が滲むほどに握りしめた拳をガンッ‼︎ と壁に叩きつける。
「ぅあああ……‼︎ あああああああああああああああああ‼︎」
己の不甲斐なさを呪うように、かつて兄を目の前で喪った時と何も変わらない弱い自分を嘆くように、少女はまるで獣の咆哮のような慟哭を響かせた。
† † †
「…ヤコブは、天から地へと至る梯子を夢見た。……彼には悪いことをしたが、我々に残された道はこれしかないのだ」
深く椅子に背中を預け、天井を仰いだ加賀美は誰に向かってかそう呟き、ハァと息を吐いた。騙すような形をとったが、彼は失敗することなく任された任務をやり遂げたのだ。本来の計画通り、これで全人類は
「誰かが蹴落とされることもなく、犠牲になることもなく、平等に終わりが訪れる。……よき、終末が訪れんことを」
加賀美は目を閉じ、枯れきった老木のような顔の前で指を組み、祈るようにこうべを垂れた。
思い浮かべるのは、若き日の自分と息子の姿。まだ7年前の悲劇が起こる前の、幸せだった時の光景。
世界が炎に包まれ、徐々に滅びへと向かっていく最中、我が子と妻は急激な環境の変化に耐えられず、たった一人家族を残して程なくこの世を去った。悲しみにくれる父は、大切なものを全て喪ってなお、生き残ってしまった。
人々の暮らしを守ってきた父は後を追うことは選ばず、全ての人を救う道を探し、そして選んだのだ。
「……新。私も、もうすぐそっちに逝くぞ……」
全てを喪った男は、遠い地にいる家族の姿を夢見るのだった。
† † †
ごうごうと不気味な風音を響かせる黄土色の空の下、ヒバリは崩れかけたビルの上に立っていた。
いつもと変わらないこの汚い空の向こう側には、今まさに全ての命を奪いとる巨大な絶望が迫ってきている。人が到底抗うことのできないほど大きな災いが、ゆっくりと舞い降りようとしているのだ。
街を見れば、人々が不安と混乱に騒ぎ始め、ワームの影が見え隠れする道の真ん中で右往左往している。ZECTの放送を信じられず、理不尽な災害の訪れに他人に当たり散らす者もいれば、意味もないのに地に跪き天に祈っているものまでいる。醜い人の本性の現れたまさに地獄のような有様だ。
そんな者たちを冷ややかに見つめながら、ヒバリはため息をついて視線を再び上げる。
「……結局、こうなっちゃうのかな。うまくいかないよ、本当に」
痛む胸を押し殺し、ヒバリはゴクリと唾を飲み込む。そして一歩踏み出そうとした時、背後からぬるりとした気配が近づいた。
「…………僕も、行く」
「……‼︎」
形容しがたい、闇をまとったかのような不穏な気配を放った渚が、目を見開くヒバリの横に立った。俯いた顔は見えず、ただ前髪の隙間からギラギラとした目が覗いている。
ヒバリは一瞬で察する。
ーーーああ。
この子は死ぬ気だ。
命を投げ出してでも、最期まで刃を手放さない気だ。
「……そんなことをしても、誰も喜ばないよ。ただ死にに行って、苦しい思いをして、ただ死ぬだけだ」
「でも、君は行くんでしょ。あそこに」
ヒバリはその言葉を否定しなかった。どんな理由があろうと、結果的には渚と同じことをやろうとしていたのだ。それを言われては、ヒバリに渚の覚悟を否定する術はなかった。
「君は、何も悪くないんだよ? 罪があるのは、みすみすあいつらを止められなかったボクの方だ。ボクは君を責めない……誰にも責めさせたりしない」
「…………そんなことは関係ない。僕は人を殺す引き金を引いた。それは変わらない……だから」
どろりと濁った目を上げ渚は、自分の感情を捨てた修羅は、抑揚のない声で答えた。
「死ぬまで戦う。この身が滅ぶまで」
もう、渚の心にヒバリの言葉は届きそうになかった。自身への罪の意識、贖罪の覚悟、そして傷ついた心はもう、以前のような純粋さを失っていた。
ヒバリはそんな渚から、目を背ける他になかった。見続けていれば、自分の心までも傷ついてしまいそうで、そんな弱いままの自分から、目を背けるように。
「……なら、最後に一つだけ言わせて。死なないで、渚」
ビルの上に二人並んで立ち、行くべき道を見つめる。互いの顔を見ないようにしていて良かったと思いながら、ベルトに手をかける。
そして同時に思う。
ーーーああ、本当にうまくいかないことばかりだ。
そして二人は、考えることをやめた。
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ‼︎」
【
咆哮とともに、渚とヒバリはビルの上から飛び降り、壁を垂直に走りながら加速した。舞い降りたゼクターたちをベルトに装着し、機械の鎧を纏って着地し、大量の砂塵を巻き上げながら疾走する。
肉体への負担など考えないただ全力の爆走で、悲鳴がこだまする世界を駆け抜けた。途中、ワームに襲われる人々を視界に入れ、渚が前に出た。
鋼鉄の装甲でワームを殴りつけ、バルカン砲を発射して一掃し、襲いかかるワームを片っ端から潰して疾走する。容赦無く鉄腕を振るい、我が身に向かう反撃も物ともせず次々に敵を屠って行く。
【
ガタックゼクターの牙を左右に引き、重装甲を弾丸のように打ち出した後、肩に装備された双剣を掴んで風のように振るうと、ワームたちは急所を討たれて一撃で倒れて行く。
いっそ慈悲深く、痛みなく屠って行く渚のその様は、まるで命を刈り取る死神のように見えた。
ヒバリはその姿に危うさを感じながらも、自らも鎧をパージしてワームたちにぶつけ、苦無と銃を持ち替えて襲いかかる敵を返り討ちにしていった。
その場にいたワームが全滅し、静かになったのはそれから程なくしてだった。人々は自分が生きていることを信じられないような気持ちで顔を見合わせ、そしてその奇跡を生み出した二人の少年少女を畏怖と恐怖の混じった目で見つめた。
尻餅をついて倒れる、間一髪で命を救われた男は驚愕に目を見開き、髪を風になびかせるヒバリを見つめた。天使のように美しい顔立ちなのに、頬に付着したワームの体液が全てを台無しにしていた。
「お、お前ら……いったい……」
「…ただの、罪人だよ」
無愛想に答え、先を急ごうと踵を返すヒバリ。ここへよったのはただのついで。道の途中で邪魔なワームがいたから、叩き潰してそこにいたものも助かっただけ。ただそれだけだ。
これ以上関わる必要はないと、その場を後にしようとした時だった。周りから恐る恐る覗き込んでいた人々を押しのけ、一人のボロボロの格好の男が前に出て、渚に向かって震える指を突きつけた。
「こ…こいつだ! こいつが失敗したせいで、あの隕石が落ちてきたんだ‼︎」
その男が発した言葉に、渚とヒバリを遠巻きに見つめていた者たちは表情を変え、一様に厳しい眼差しを向け始めた。
「なっ……」
いきなりのことに、ヒバリは険しい表情で言葉を失い、渚はぎゅっと拳を握りしめて俯いた。
見ればそう言った男が纏っているのは黒いコンバットスーツのような武装一式。ボロボロではあったがたしかにZECTの武装兵が纏っていたものに違いなかった。乱闘の中、かろうじて生き残ったもののたった一人なのだろう。
「天空の梯子計画の最後の最後で、こいつがしくじったんだ! こいつが失敗したせいで、俺たちはみんな死ぬんだ……全部こいつのせいなんだ‼︎ クソッタレ‼︎」
「お前……!」
悪意のある醜い責任の押し付けをするZECTの生き残りに、ヒバリは黙らせようと苦無を手にずんずんと近寄って行く。元の原因は自分たちだというのに、巻き込まれた存在の渚を責めようという腐った心が許せなかった。
だがその途中、周囲から覗き込む人々からヒソヒソと疑う声が聞こえ始めた。皆一様に渚を見つめ、ある者は恐ろしいものを見るように、ある者は憎い仇を見つけたかのような恐ろしい目を向けて行く。
それは違うと弁明しようとしたヒバリだったが、口を開くよりも先に渚の頭にガツッと硬いものがぶつかった。
よろめいた渚が振り向くと、そこには憤怒の表情を浮かべた人々が、片手にたくさんの石や瓦礫の塊を抱えて立っていた。若い娘や老人までもが渚を鋭く睨みつけていて、その突き刺さらんばかりの視線に渚は声を失った。
「この疫病神が‼︎」
「死んで詫びやがれクソガキ‼︎」
「みんなお前のせいだ‼︎」
「…………‼︎」
人々は口々に怨嗟の声をあげ、渚に向かって抱えた石飛礫を投げてくる。震えるだけで反論もできない少年に、好き勝手に罵りながら醜い狼藉を働き続けた。
「やめろ、お前ら……‼︎」
面と向かって放たれた憎悪に満ちた言葉に、渚は顔を一瞬で青ざめさせ、ガタガタと震えながら頭を抱えて後ずさった。抑え込んでいた罪の意識が渚の心を再び突き刺し始め、立ち上がった身体から前へ進む力を奪っていく。
ヒバリは渚の体を抱え込み、その身で礫から守る。やめさせようと声を張り上げるも人々は止まらず、やられるままの渚たちに根拠なき憎しみをぶつけていく。事情も真実も知らない民衆の悪意は、ただでさえギリギリ保たれている渚の精神を容赦なく傷つけ、自身をも傷つけるより深い心の闇へと追いやっていった。
だがそれは、不意に途切れることとなった。
「ぎゃあああああああああああああああああああ‼︎」
背後から聞こえた断末魔の悲鳴に、石を投げていた人々が手を止めて振り向く。そして一斉に顔を青ざめさせ、礫を放り出してその場から蜘蛛の子を散らすように逃走し始めた。
「ワームだァァ‼︎」
「逃げろ‼︎ 食われちまう‼︎」
口々に叫んで逃げ出していく人々だが、群れた騒がしい人間達はワームにとって格好の獲物にしか映らない。渚をかばうヒバリの目の前で次々に捕食され、鮮血を辺りに散らして恥肉を撒き散らしていった。
ヒバリは息を呑み、燦々たる光景に唇を噛む。人が死んだことよりも、人間の醜く抗いのたうちまわる最後の姿に言葉を失っていた。
「……これが、ボクらの望んだ結末なのか? わかんないよ、お兄ちゃん……」
渚をぎゅっと抱きしめ、ヒバリはここにいない兄に答えを求める。どんなに戦っても、決して認めようとしないものたちに、救う価値など本当にあるのだろうか。
迷うヒバリ。そんな彼女たちに、人々を食い尽くして戻ってきたワームたちが近寄って行く。口元を赤黒く汚した異形たちは、ギチギチと歯を鳴らして徐々に距離を詰めていく。
ヒバリは渚を背に庇い、苦無を手にワームたちを鋭く見据え、駆け出そうと身構えた。たとえ何をしても渚だけは守り抜く、そんな覚悟を決めたヒバリに、腹をすかせたワームたちが一斉に突進を開始した。
その瞬間。
ドゴォォォン‼︎
と、ヒバリの目の前で爆音と閃光が炸裂し、群がっていたワームたちをまとめて吹き飛ばしてしまった。
「⁉︎」
目を見開き、肉片に変わり果てたワームを凝視するヒバリ。俯いていた渚も突然の事態に我に帰り、黒煙の立ち上る目前を凝視した。
立て続けに爆音が響き、渚たちの周りに集まっていたワームたちがまとめて吹き飛ばされ、二人の周囲にはみるみるうちに大きな空間が空いて行く。
「……これは、どういう……⁉︎」
困惑し、目を瞬かせるヒバリ。
その横で渚は、自分たちを取り囲む複数の気配に気づいた。
爆炎によって立ち昇った土煙の中、黒い影が揺らめく。徐々にはっきりとしたシルエットを見せて行く影は二人、三人とその数を増やして行き、やがて二十九体にも至った。
渚はその光景に目を疑った。視界に入るシルエットのどれもが、彼のよく知る者たちにそっくりの姿をしていたからだ。その中の一人、ひときわ大きな影が土煙の中からぬるっと足を踏み出し、渚とヒバリの前にその姿をあらわにした。
「ーーー大丈夫ですか、渚君」
殺せんせーは、そう言っていつもと変わらない悪戯っ子のような笑みを見せた。