現在俺は葉加瀬のラボにお邪魔して、ゴーレムをロボットにしようとプログラムを組んだり資材を錬金したりしている。
「なるほど、そのオーバードウェポンと言うのは元々規格外兵器だから通常装備もあるんですね」
今作っているのは重二脚ブーストチャージ機体に逆関節撹乱用機体、それと四脚スナイパー機体、そして最後にタンクオートキャノン機体だ。
「プログラムはこちらで用意したチップの組み合わせで使うから、後は好きにコピーして追記してみるといい」
UNACの行動足らしめるのはアルゴリズムを司るチップの存在だ。認識力が低ければ敵に一方的にアウトレンジから蜂の巣にされるし、逆に高すぎても壁越しで動けなくなったりもする。
「私としてはこの「ヒュージミサイル」が核なんで使えないのがシャクですが・・・・・・」
「何、「ヒュージキャノン」と違って加工済み核弾頭じゃないからまだ言い訳が通る。ばれなきゃ問題は無い」
「そういうもんでしょうか?」
「そういうもんだよ」
現在VACとカテゴライズされるアーマードコアは、5~7メートルある。なのでパーツをばらして組み立ては研究所の外でやる予定だ。
だが、そこまで公にすると葉加瀬と俺がつるんでいるのがばれてしまう。あらかじめ暗示をかけまくって事なきを得た。
「兵装は四脚にはUAVを積むからいいとして、逆関節にはマーカーとアンプを積んでおきましょう。タンクのミサイルと相互支援が成り立っていれば結構強いと思うんですよ」
「まあ、こういうのは最初は好きにすればいいんじゃないかな? 重二脚にはマスブレードを積むし」
マスブレードはただの鉄骨にブースターを付けたものの為、俺じゃなくても比較的簡単に用意出来るのだ。
「そうですね。それでいきましょう。ああ、この鉄臭いロボット軍団が動くんですね・・・・・・複合燃料電池が平賀さんにしか作り出せないのが問題ですが・・・・・・私はいずれその問題も解決してみせます!」
うん、若者はそうじゃないとね。可能性はまずぶち当たってから考えるべきだよ。
「では、ロボ研に手伝って運んでもらいましょう。あの人達なら喜んで運んでくれるはずです」
ま、洗脳済みなんだけどね。
で、その後エヴァ邸に帰ってきたんだが・・・・・・。
「お兄さま~寂しかったえ~!」
まるでPTSDが無かったことになっている月詠の姿が!
「エヴァ、何をしたんだ?」
「なぁに、少し生きていることに感謝できるようにしただけだよ」
「月詠、何があった?」
「何モアリマセンデシタヨ? エヴァ様ニチョットオ稽古ヲ着ケテ貰ッタダケデス」
あ、目が死んでる。大丈夫か? これ。
「まあなんにせよ、これで大丈夫だろう。何度か「矯正」が必要かも知れんが、何、肉体に支障が出ない範囲にしておいてやろう」
瞳孔が開いてて小刻みに震えている幼女が居るんですがいいんですかねぇ・・・・・・? まあ、俺も似たようなことをしたんだが。
「お兄さま、美味しいものが食べたい」
まあ、このまま辛い記憶は忘れて、修羅への道も忘れて、ちょっと剣術が強い女の子として生きていけばいいんじゃないかな? と思った。
「よーし、ピザとパスタの美味しい店に案内しちゃうぞ。デザートはアイスクリームだ」
後はミカンと千雨ちゃんを呼んで、食事会と言う事になった。
「それで、こちらがこないだ俺の妹になった月詠だ。ほら挨拶」
「月詠と申します。お初に~」
「長谷川千雨だ。よろしく(相手は年下! 気にするな!)」
「そんなことよりイタ飯なんてデートっぽくておしゃれですねマスター!」
「あーそうだな」
「今の状態だと外で酒が飲めないのがアレだが、まあ良かろう。才人のおごりだ。堪能させてもらうぞ」
まあ、エヴァは言うほど食わんだろう。
「分かってるよ」
今回の事で色々と関係がこんがらがってきたから、それの整理も踏まえて葉加瀬以外の全員で食事会としゃれ込むことになった。
「お、才人。なかなか珍しいフルーツワインがあるぞ。帰ったら開けよう」
この時代はまだ未成年が酒を買える時代だったのだ。
「いいけどあんまり公で言わないでくれよ」
「ふん」
「あそこやなー」
「あ、月詠ちゃん、待てー!」
ほのぼのしてるな。
ここで食い終わったら次はスプリングフィールド姉弟に施設の紹介だ。なんだか今日は忙しいな。
「ほら、才人、行くぞ」
「分かった。今行くよ」
今日はスプリングフィールド姉弟が麻帆良に来る予定だ。夏休みの間にこちらに移住しようと言う計画だ。
「あ、お兄さーん!」
ネギ少年が駆け寄ってくる。子犬のようだ。
「あらあら、ネギったらはしゃいじゃって・・・・・・平賀さん、今日はよろしくお願いします」
「はい、承りました」
通常だったらここに高畑先生が付くんだけど、長期出張だからね。仕方ないね。
「一応何件か見繕っておきましたので、気に入るのがあればいいんですが」
「それは平賀さんなので大丈夫だと信頼しています」
この姉弟、日本語で話しているんだぜ? 信じられないだろう?
「しかし本当に日本語がお上手になった」
「ふふっそれほどでもありません」
「お姉ちゃん、お兄さん、早くー!」
「はいはい、もうちょっとゆっくり行こうねー」
迷子になられたら事だ。
さて、どこから回ろうか・・・・・・。
まずはエヴァの別荘の近く。自然も多く、田舎にかこまれていたウェールズ育ちにとってはなじみやすいだろうと配慮してのことだ。もちろんミカンの縄張り圏内だから魔法使いがこそこそやっていても即座に発見される。
「空港の後だと空気が美味しいですね」
「そう言って貰えると候補に選んだ甲斐もありますよ」
「お兄さん、見てみて、カブトムシ!」
「おー、もう見つけてきたのかい? 凄いねー」
「ふふふっ、ネギったら・・・・・・」
次は俺の家に近い住宅地。
「最近月詠と言う子と兄妹の関係になりまして、それでこちらに移ってきたんですよ」
「まあ、以前はどちらに?」
「寮生活でしたね」
「お兄さん、あれ食べたい!」
「おーよしよし、ネカネさんも食べよう」
「では、お言葉に甘えて」
3人で並んでクレープを食べた。
最後に学園に比較的近い場所だ。
「ここが一番交通の便が良いですね」
「そうですか。しかしちょっと人が雑多ですね」
「そこは仕方ないですよ。便利なところには人が集まりやすいですし」
「・・・・・・ここはちょっと候補から外させてもらいます」
「分かりました。どこが一番良いとかありますか?」
「平賀さんのご自宅が一番かなって・・・・・・てへっ」
「いいですよ」
「えっ」
「ですから構いませんよ。あなたはまだ学生だ。もうちょっと頼ってくれてもいいんですよ」
「ネカネ」
「えっ」
「ネカネって呼んでください。あの時村のみんなを・・・・・・スタンおじいさんを救ってくれたのはあなたでした。陳腐かもしれませんが、一目惚れってやつかもしれません。サイトさん・・・・・・貴方が好きです」
うーむ、これは流石に想定の範囲外だ。
「俺はエヴァと決して綺麗とは言えない道を歩んでいこうと思っています。それでもいいのなら、一緒に来ますか?」
「それは正義の魔法使いでは無く・・・・・・?」
「はい、場合によっては悪を成し、それによって少数を救うかもしれません。いや、それすらも無いかもしれない。それでも貴女は私と一緒に来ますか?」
「・・・・・・はい! 私はサイトさんの治療を見て、こんな治療師になれたらと思っていました。だから、恋人とは言いません! 私の先生になって下さい!」
ん、まあいいか。
「分かった。ならこれから君の事はネカネちゃんと呼ばせてもらうよ。いいかい?」
「はい!」
なんか最近どんどん弟子とかが増える傾向にあるなー。どうなってるんだこりゃ?
結局スプリングフィールド姉弟は俺の勧めでエヴァの家の近くに住む事となった。そこからなら魔法実験をしても目立たないだろうとの配慮だ。少しネカネちゃんが寂しそうな顔をしてたが、まあしょうがないだろう。
ネギたちも引っ越してきたし、これから騒がしくなるかもしれませんね。