ソードアート・オンライン 黄昏の剣士   作:京勇樹

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適合者

ユウキの案内で、ユウキの家に向かい始めて、数十分後

 

「……ここ?」

 

『うん……そうだよ』

 

三人の前に、荒れ果てている一軒家が建っていた

庭には、錆び付いた小さいブランコや滑り台

庭自体も、雑草が鬱蒼としている

明らかに、人の手が入ってない証拠だった

 

『懐かしいなあ……あのブランコで、よく姉ちゃんと遊んだっけ……』

 

遠くからブランコを見て、ユウキは懐かしそうにそう呟いた

すると、和人が

 

「ご家族が亡くなった後、誰も住んでないのか……」

 

と呟いた

すると、ユウキが

 

『うん……親戚は、誰も生き残ったボクの親権を引き取ろうともしないしね……前に病室に来た親戚なんかボクに、この土地を明け渡す書類にサインしなさい。って来たっけ』

 

と言った

それを聞いた明日奈と和人は、その親戚に怒りを覚えた

余りにも、不躾だと思った

するとユウキは、何を思い出したのか

 

『ただボク、こんな姿で、書類書けませんけど? って返答したんだ。そしたらその親戚、トボトボと帰っていったっけ。あれは傑作だった』

 

と言いながら、笑った

見事な返しだ

それを想像した二人は、クスクスと笑った

するとユウキは

 

『うん……これで満足したよ……ありがとうね、二人共……もう、思い残すことはないや』

 

と言った

それを聞いた明日奈は

 

「諦めちゃダメだよ、ユウキ!」

 

と言った

それは、反射的に口から出た言葉だった

すると、和人が続くように

 

「そうだ、ユウキ。明久が言ってたじゃないか。とんでもない奇跡が起きるかもしれないって」

 

と言った

しかしユウキは

 

『だけど、ボクの白血病は……』

 

と沈んだ声で呟いた

ユウキの白血病は、最早末期と言っても過言ではないらしい

そして、何時病状が悪化しても不思議ではない

だが、生きることを諦めてほしくはなかった

だから二人は、声を挙げたのだ

 

『奇跡……ボクにも、起きるかな……』

 

ユウキはそう呟きながら、空を見上げた

その後二人は、ユウキの病院に向かった

そして、主治医たる板橋にユウキが言った言葉を教えた

すると、板橋は

 

「そうですか……ユウキ君は、そんなことを……」

 

と呟いた

どうやら、医師として悔いているようだ

まだ未来がある子供のユウキに、未来を与えてやれないことに

その時だった

 

「失礼します」

 

部屋の受話器が鳴り、板橋はそれを取った

そして、少しすると

 

「なに!? ユウキ君のと適合する人が出たのか!?」

 

と声を挙げた

それを聞いた、明日奈と和人の二人は驚いた

白血病を治すには、骨髄移植か投薬しかない

だが、投薬は治療費が高い上に、治るかは賭けになる

そして骨髄移植だが、誰でも良いという訳ではない

ユウキの骨髄パターンと適合した骨髄で無ければ、意味はない

しかし、その骨髄移植も完全に治る訳ではない

完全適合するかは、半々らしい

そして何より、骨髄の提供は任意だ

相手が提供するかは、分からないのだ

 

「よし、すぐにその吉井明久という人に、提供してもらえるように交渉を!」

 

板橋が告げた名前を聞いて、明日奈が

 

「待ってください! もしかしたら、私たちの知人かもしれません!」

 

と思わず、身を前に出したのだった


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