ソードアート・オンライン 黄昏の剣士   作:京勇樹

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ユウキの願い

鉄人が教師の国語を終えて、明日奈は木綿季が意外と読書家だと思った

そう思ったのは、鉄人から指定されて、木綿季は朗読したのだが、一回もつっかえずに読みきったのだ

 

「ユウキ、スラスラと朗読したね」

 

『ボク、結構本は読んでたからね!』

 

明日奈の言葉に、木綿季は自信満々という様子でそう言った

その後明日奈は、バッテリーの許す限り校舎内を歩き回った

行く先々で、木綿季は楽しそうにしていた

無理もない

三年間も、VR世界にダイブしっぱなしで、外がどうなってるか把握していないのだから

そして明日奈は、学校に残っていた明久達に会いに向かった

 

「ほう……それが、桐ヶ谷とムッツリーニが開発してた物か」

 

「ムッツリーニ、カメラには拘ってたよねぇ」

 

「結局、予算の都合でダメだったがのう」

 

と言ったのは、雄二、明久、秀吉の三人だった

この三人は、ムッツリーニこと康太が、和人と共同開発しているのを、知っていた

すると、琴音が

 

「だけど、キリトも凄いよねぇ。プログラミング見たけど、全然分からなかったよ」

 

と言った

まあ、そう簡単に分からない分野だろう

 

『サジにヨシアキ、ヒデにフィリア! アスナを見て分かってたけど、本当にアバターとほぼ同じ姿なんだね!』

 

「まあ、アバターのほうが、若干小さいけどね」

 

木綿季の言葉に、明久はそう言った

すると、明久は

 

「学校、どうだった?」

 

と木綿季に問い掛けた

すると、木綿季は

 

『楽しかった! 久しぶりに、外の世界も見れたしね!』

 

と楽しそうに語った

それを聞いて、一同は満足気に頷いた

楽しんでもらえて、何よりだと

すると、和人が

 

「明日奈。バッテリーはどうだ?」

 

と問い掛けた

それを聞いた明日奈は、肩掛けバッグの中からバッテリーを取り出して

 

「残り、約三割ってところだね」

 

と言った

それを聞いた和人は

 

「んー……バッテリーの消耗改善もしないとな」

 

と呟いて、パソコンを見ていた開発チームの仲間と、話始めた

それを見ながら明日奈は、和人達のために紅茶を淹れようとした

その時

 

『アスナ……お願いがあるんだけど……』

 

と木綿季が言った

数日後の日曜日

 

「ありがとうね、キリト君」

 

「まあこれも、いいデータ収集になるさ」

 

和人はそう言いながら、明日奈の肩にまた双方向通信ブロープを装着していた

そんな二人が居るのは、木綿季が入院している病院だった

二人がそこに来ている理由は、木綿季のお願い

 

『今の、自分の家を見たい』

 

からだった

木綿季の家族は、全員死去しているらしい

明日奈は双子の姉が亡くなっていることは聞いていたが、両親まで死んでるとは予想していなかった

その両親は、事故で亡くなったらしい

そして今、木綿季の自宅は誰も住んでいない状態だとか

 

「それにしても、バッテリー小さくなったね?」

 

「ああ……彰三さんから、良いバッテリー有るよってな」

 

明日奈の問い掛けに、和人はそう答えた

すると、明日奈が

 

「キリト君……何時の間に、お父さんと仲良くなったの?」

 

「まあ、技術談義で盛り上がってな……」

 

明日奈の問い掛けに、和人は顔を反らしながらそう言った

恐らく、そのバッテリーもレクトの試作品辺りだろう

彰三は社長職から退いたとはいえ、未だにその影響力は大きい

恐らくは、何かの拍子に和人が双方向通信ブロープのことを話して、それを聞いた彰三が乗ったのだろう

そして彰三は、偶然にも小型大容量バッテリーをレクトで試作していることを知り、和人に売り込んだのだろう

と、明日奈は予想した

 

(今度、謝りに行こうっと)

 

明日奈はそう思いながら、和人がブロープを調整するのを見守った

そして、数分後

 

「どうだ、ユウキ?」

 

『うん! 前よりいいよ!』

 

和人の問い掛けに、木綿季は元気にそう答えた

どうやら、フィードバック済みらしい

和人は、ノートパソコンを仕舞い

 

「それじゃあ、道案内頼むぞ。ユウキ」

 

と言った

 

『うん! 任せて!』

 

そして二人は、木綿季の自宅に向かったのだった

 


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