ソードアート・オンライン 黄昏の剣士   作:京勇樹

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終息と

そうして映ったのは、あの始まりの街だった

音声は無いが、広場に居たほぼ全員が踞ったりしていた

しかしその中で、機敏に行動していたのが居た

キリトとヨシアキだ

二人は一度、それぞれクラインとサジを連れて広場から出た

その後、キリトは一人で街を飛び出し、ヨシアキは広場に戻ってギルドメンバーを集めていた

そうしてヨシアキは集めると、次の街に一緒に向かった

この後アスナやフィリアは、少しの間宿屋に引き込もっていた

しかし、それは仕方ないだろう

謂わばSAOは、命懸けのゲームに突如に変貌したのだから

そこで一度映像は途切れて、映ったのは第一層攻略戦終結後だった

イガグリ頭の男が、何か喚いていた

その視線は、キリトとヨシアキに向けられていた

すると二人は、それぞれ黒とオレンジ色のコートを纏った

これが、チートをするチーターと、ベータ版テスターの造語

ビーターが誕生した時だった

キリトとヨシアキは、二人で憎しみを一身に集めたのだ

全ベータテスターが、一般プレイヤーに憎まれて殺されるのを防ぐために

そうしてまた、映像が変わった

今度は、約60人近いプレイヤー集団

攻略組が集まり、ラフィンコフィン討伐隊が集まっていた

そして洞窟に入り、それは始まった

最初は、ラフィンコフィン構成員の奇襲だった

それにより、討伐隊の指揮が一度崩壊した

それを支えたのが、キリトとヨシアキの二人だった

二人はラフィンコフィン幹部を含む複数の構成員と交戦し、戦線を維持

その最中で、討伐隊から死者が出た

その後から、二人はまるで鬼神の如き気迫で剣を振るった

この戦いで、ヨシアキとキリトはラフィンコフィン構成員を五人切り殺した

でなければ、討伐隊から更なる被害者が出ていただろう

この戦いにより、ラフィンコフィンは事実上壊滅

立役者は、間違いなくキリトとヨシアキの二人だ

そんな二人を、討伐隊の誰もが褒め称えた

だがそれが、二人にとって自身を苛む要因になった

キリトはその後、無謀とも思えるソロでの迷宮区攻略へ

ヨシアキは普段は何時も通りに振る舞いながら、誰かを助け続けた

それはまるで、誰かに罰してほしいと言わんばかりだった

特にキリトは、月夜の黒猫団の壊滅からソロでの行動時間が圧倒的に増えた

ヨシアキは寝る間を惜しみ、オレンジギルドに単身乗り込んでいた

ヨシアキの黄昏(オレンジ)の剣士

これは、ヨシアキのイメージカラーもあるが、犯罪者(オレンジプレイヤー)にとってのオレンジ

犯罪者キラーという意味合いがあったのだ

オレンジギルドと戦っているヨシアキは、暗い瞳で戦っていた

 

「もう、いいよ……」

 

と言ったのは、三人の誰だったかは分からない

だが、その映像を見て、アスナ、フィリア、シノンの三人には見ていられなかった

そしてまた、映像が変わった

それは、あの75層の戦いだった

75層フロアボス、スカル・リーパー

その戦いは、旧SAOプレイヤーでなくとも、絶望的だと分かってしまった

退路はなく、スカル・リーパーの圧倒的ステータス

一撃で死んでいく、攻略組プレイヤー達

その中で、キリトとヨシアキは殆どをスカル・リーパーと戦っていた

そしてスカル・リーパーとの戦いが終わった後、生き残ったプレイヤーの殆どが座り込んでいた

だがその中で、一人だけが立っていた

血盟騎士団団長ヒースクリフ

その正体は、茅場晶彦

SAOを開発した、張本人である

キリトとヨシアキは、その正体に気づいて攻撃

そこから、キリトとヨシアキ対ヒースクリフの戦いが始まった

一撃喰らえば終わりの、決闘が

その戦いは、ヨシアキの挺身でキリトとGM権限に勝ったアスナの攻撃で、ヒースクリフを倒した

実はヨシアキは、これを自身の罪の償いの場としようとしていた

だが、ヨシアキは生きた

そして始まった、ALO事件

須郷が起こした、旧SAOプレイヤー300人の拉致監禁及び人体実験事件

それを解決する為に動いた、キリトとサジ達旧SAOプレイヤー達

そして、協力した一部ALOプレイヤー達

それは、一重に人々の思い

誰かを助けたい、という真摯な思いだった

この映像は、ラジオを除くあらゆるメディアで流された

しかも、電波ジャックされていたらしく、各テレビ局の操作を一切受け付けなかった

だが気付けば、誰もがその映像に見魅っていた

そしてこの映像を境に、この事件は一気に終息に向かった

ニュース番組も他のネタを扱うようになり、ネットで誰かがその話題を上げようとしても

 

『ああ、そんなこともあったな』

 

で終わるようになった

そして、心理学者だった竹原だが、これ以降姿を見せることは無くなった

それどころか、大学を去った

その理由は、大学に殺到した苦情の電話だった

そして何より、ある弁護士の訴訟だった

その弁護士

吉井明恵はヨシアキの母親として竹原を訴えて、自分の部下に弁護士をさせて、名誉毀損で竹原を訴えた

竹原は自らの持論を曲げなかったが、有罪判決を受けた

それを受けて、大学側も竹原を解雇

竹原は、表舞台から姿を消した

そして、事件が始まってからギリギリ三ヶ月経つ前に二人は一同の前に帰ってきた

その時、アスナはキリトに

フィリアはヨシアキに飛び付いた(シノンは、少し離れた位置で見ていた)

そして二人は、以前の生活に戻ったのだった

 

 

「ちくしょう! なんだよあれは!!」

 

と憤っていたのは、あるマンションの一室に住んでいる男だ

その男が、件の掲示板に二人の名前を書いたのだ

 

「俺がやったのは、正義だろ!? あいつらは、ただの人殺しだ! だったら、裁かれるべきだろうが!!」

 

男はそう喚きながら、手当たり次第に物に当たっていた

そして男は、パソコンに向かい

 

「こうなったら、ネット上にあの二人のあらゆる情報をばら蒔いてやる! あいつらの人生を終わらせてやる!」

 

と言って、キーボードを叩こうとした

その時

 

『自分勝手な者ほど、醜いものはないな』

 

と声が聞こえて、パソコンが男の操作を一切受け付けなくなった

 

「な、なんだ!?」

 

『あれで辞めておけば、怖い思いをしなかったろうにな』

 

その声の直後、テレビの電源が勝手に点いて砂嵐が流れた

それに連動するように、ライトが不規則に点滅

男は恐怖に煽られて、玄関に向かった

そして、外に出ようとした

だがどういう訳か、電子鍵が開かなかった

 

「な、なんでだよ!? 開けよ!?」

 

男は必死に開けようとしたが、開かない

その時

 

『誓ってもらおう。二度と、あの二人に関わらないと』

 

と声が聞こえた

すると男は、藁にすがる思いで

 

「誓う! もう二度と関わりません!」

 

と土下座した

すると、ライトが元に戻り

 

『聞いたぞ。もし関わろうとしたら、この比ではないぞ』

 

と声が聞こえた

それを境に、部屋の状況は元に戻った

そしてこの日からこの男は、何かに怯えるように生きていったという


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