ソードアート・オンライン 黄昏の剣士   作:京勇樹

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サブタイ、思いつかんかった………


動き出す乙女

「おい、クリスハイト……てめぇは、GGO(あのゲーム)で殺人事件が起きてるって知ってて、ヨシアキを送り込んだってのか!?」

 

クリスハイトの話を聞いて、サジは目くじらを立ててクリスハイトに詰め寄ろうとした

だがそれを、クリスハイトは右手を上げて制止して

 

「待った、サジ君。これは、殺人事件じゃない。それは、事前に僕とヨシアキ君で話し合って結論付けている」

 

と言った

だが、キリトが毅然とした態度で

 

「いや、これは殺人事件だよ。クリスハイト」

 

と言った

 

「どういうことだい、キリト君?」

 

「今回の事件には、ラフコフの生き残りが関わっている。しかも、間違いなく幹部クラスの奴がな」

 

キリトのその言葉を聞いて、クリスハイトは目を見開いた

 

「そ、それは、本当なのかい、キリト君?」

 

「ああ……PoHの口癖を言ってたからな……それに、ユイ」

 

「はい、パパ」

 

キリトが呼び掛けると、それまでキリトの肩に停まっていたユイがフワリと飛び上がって

 

「僭越ながら、私が説明します。ヨシアキお兄さんが関わっている事件を」

 

と言って、クリスハイトが来るまでに収集したのだろう情報を語りだした

過日に、死銃を語るプレイヤーに銃撃されたプレイヤー二名が突如に回線切断を起こし、それ以降二度とログインしてきていないこと

そして、そのプレイヤーらしき二名がアパートの自室で変死体として見つかっていること

更には、今現在行われているBOBにて一名が死銃に撃たれて回線切断を起こし、未だにログインしていないこと

それらの情報から察するに、殺人事件の可能性が高いとユイは語った

その直後、ユイは辛そうな表情を浮かべながら、ゆっくりと落ち始めた

だが、それは素早く駆け寄ったアスナが優しく抱き締めた

事情を知らないサジ達は心配そうにしたが、キリトが大丈夫と告げた

ユイは元々、今は存在しない旧SAOにてメンタルヘルスを目的に産み出されたAIだ

ただ、ユイの本来の役割は茅場からの命令で遂行不可能になり、ユイはSAOが始まってからずっと、プレイヤー達の感情の推移を見守るしか出来なかった

だからユイは、二年間に渡ってプレイヤー達の感情が悪化しているのに本来の役割が遂行出来ない

という悪循環に苛まれ続け、一時は幼児化するほどまでに至っていた

そんなユイにとって、人の悪意に触れることは非常に辛いことなのだ

クリスハイトはしばらく呆然としていたが、我に帰ったのか、数回瞬きをしてから

 

「これは凄いな……」

 

と呟いた

そして、ユイを見ながら

 

「ねえ、ユイちゃん。僕の職場でバイトしない?」

 

と問いかけたが、すぐに両手を上げた

なぜならば、キリトとアスナが剣をクリスハイトの眼前に突き付けていたからだ

キリトとアスナのクリスハイトに対する共通認識は、信用ならぬ人物だ

二人は落ち着いたのか、ゆっくりと剣を鞘に納めた

すると、キリトが

 

「クリスハイト、死銃のリアルネームを今すぐに調べろ。ラフコフ残党だ」

 

と言った

すると、クリスハイトは慌てた様子で

 

「ま、待ってくれ、キリト君。確かに、件の死銃はラフィン・コフィンの残党かもしれない。しかしね、調べるにはその人物の罪……まあ、この場合は殺人罪かもしれないが……立件するには、彼らの殺人手段。それと、死銃のプレイヤーネーム。それに、運営からプレイヤーのリアルネームを知る為には許可令状が必要になる! 幾らなんでも、簡単には!」

 

とまくし立てた

それを聞いて、キリトは歯噛みした

その時だった

 

「なるほどの……そういうことじゃったか」

 

とヒデが呟いた

その呟きを聞いて、全員の視線がヒデに集まった

 

「昨日の夜なんじゃがの……ヨシアキが恐い顔をしながら帰ってきておっての……もしかしたら、昨日に行われた予選で残党に会い、やってることを知り、思い出そうとしておるのではないかの? あの死銃のSAOの時の名前を」

 

ヒデのその話を聞いて、クラインがスツールを叩いて

 

「水くせぇんだよ、ヨシの字……」

 

と呟いた

それを聞いて、フィリアが

 

「一言言えば、私達も手を貸したのに……」

 

と言うと、今は消音状態の画面を見た

画面では、今も激しく銃火が交わされている

それを見て、フィリアは

 

「きっと今も、誰か守るために剣を振ってるんだろうなぁ……」

 

と言って、誰もが頷いた

SAOでもALOでも、ヨシアキは誰かを助けるために剣を振っていた

お人好しなバカ

それが、ヨシアキだ

画面から視線を外すと、フィリアはクリスハイトに詰め寄って

 

「ヨシアキは、何処に居るの? クリスハイトが依頼したなら、安全のために場所を用意した筈よ?」

 

と問い詰めた

するとクリスハイトは、眼鏡を直しながら

 

「まあ、確かに……場所と人員は提供したけど……あ、人員と言っても念のためであってだね」

 

と、何やら早口で喋り始めた

だが、フィリアはそれを無視してクリスハイトの襟首を掴み、引き寄せると

 

「何処に居るの?」

 

と再び問い詰めた

 

「お茶の水の総合病院です」

 

クリスハイトが素直に答えると、フィリアは手を離した

なお、この時のことをクリスハイトは後にこう語っている

 

『素直に喋ってなかったら、本当に殺されると思ったのは、初めてだよ』

 

恋する乙女は、時に手段を選ばないのだ

閑話休題

クリスハイトが告げた場所を聞いて、キリトとアスナが

 

「お茶の水の総合病院って……」

 

「キリト君がリハビリしてたって病院?」

 

と問い掛けると、クリスハイトは無言で頷いた

すると、ショウコが立ち上がり

 

「……皆、今何処に居るの?」

 

と問い掛けた

その質問の意図が分からず、殆どのメンバーが首を傾げた

すると、ショウコは

 

「……行くよ、ヨシアキの居場所に」

 

と言った


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