ソードアート・オンライン 黄昏の剣士   作:京勇樹

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動き出す者達

ギリーマントの男のセリフを聞いて、旧SAOプレイヤーのキリト達は思わず立ち上がった

サジとクラインに至っては、持っていたグラス(プレイヤーメイドの高級品)を落とした

 

「え!? お兄ちゃん!? 皆さん!?」

 

「なんだ?」

 

「どうしました?」

 

何があったのか分からず、ALOプレイヤーのリーファ達は困惑していた

しかし、そんな三人を置いてきぼりにしてキリト達は

 

「サジ、クライン……今の……」

 

「俺達が聞き間違えるかよ……」

 

「ああ、間違いねぇ……」

 

と怖い表情を浮かべて、会話していた

そんな中、フィリアは自分の体を抱いて震えていた

その表情は、恐怖に染まっていた

 

「フィリアちゃん!」

 

それにいち早く気付いたアスナが、フィリアを抱き締めた

するとフィリアは、そんなアスナに抱きついて

 

「私……あのセリフを、間近で聞いたことある……っ!」

 

と呟いた

それを聞いて、アスナは息をのんだ

フィリアはギリーマントの男が映ってる画面を見ながら

 

「レッドギルドのリーダー……PoH!」

 

と言った

その瞬間、部屋の空気がピリピリとした物に変わった

特に、キリト、クライン、サジ、ケイト、エリスが強かった

 

「レッド、ギルド……?」

 

意味が分からないらしく、リーファは首を傾げた

しかし、キリト達はそんなリーファ達に気づかず

 

「あの野郎じゃねぇな……」

 

「ああ……あのマシンガンみたいな口調じゃないな……」

 

「だが、幹部クラスなのは間違いないな……」

 

「ええ……あのセリフは、間違いありません」

 

「三巨頭の誰かなのは、間違いないですね……」

 

と話していた

するとリーファが、近くに居たシリカの肩を揺すって

 

「あの……レッドギルドってなんですか?」

 

と問い掛けた

するとシリカは、ハッとした様子で

 

「えっと、レッドギルドっていうのはね……」

 

と説明を始めた

犯罪者ギルドをオレンジと言うならば、レッドギルドというのは殺人ギルドを指し、嘗てのSAOには笑う棺桶(ラフィンコフィン)という最恐最悪のレッドギルドが存在したということを

そして自分達攻略組は、幾度か戦い、更には討伐隊を結成して討伐したことがあることを

それを聞いて、ツユカが驚愕した表情で

 

「殺人を楽しんでた……? SAOじゃあ、HPが無くなったら、本当に死ぬんだろ? それだっていうのに、殺人を楽しんでたっていうのかよ……っ!」

 

と言った

すると、リズベットが

 

「ラフコフのリーダー、PoHの話じゃあ……殺人もプレイヤーに許された正当なプレイだって……全ては、茅場晶彦が罪を被るからって……」

 

と呟くように言った

それを聞いて、ツユカは憤った様子で右手を左掌に叩きつけた

すると、ユーヤが

 

「剣士の血塗られた一面だな……人を斬ることに、血を見ることに魅いられて……人ではなくなる……」

 

と呟いた

 

「あれは、PoHじゃないのは確かだな」

 

「ああ……だが、誰だかは思い出せない……っ」

 

サジはそう言うと、乱雑に頭を掻いた

そして、一息ついたのか

 

「なんにしたって、情報が足りない……今何が起きてるのか、はっきりしてない」

 

と言った

すると、キリトが

 

「だったら、情報を知ってそうな奴を呼び出すか」

 

と言った

そう言ったキリトに対して、その場に居た全員の視線が集まった

そして、フィリアが

 

「キリト、誰が知ってるの?」

 

と問い掛けた

するとキリトは、ウィンドウを開きながら

 

「全員も知ってる奴だよ。きく……じゃなかった。クリスハイトだ。ちょっとログアウトして呼んでくる」

 

と言うと、ログアウトした

そして、彼らは知る

GGOで行われている、恐ろしい殺人を……

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

その頃、ヨシアキとシノンの二人は橋を降りて川原を走っていた

先頭をヨシアキ。その少し後ろをシノンが走っていた

ヨシアキはシノンに、自分がなぜGGOのBoBに参加したのかの理由を教えた

まず、現実で見つかった二人の遺体

そして、その二人の死亡時刻頃にGGOで死銃と名乗る人物が行った銃撃とそれ以後ログインしてこない二人

その原因の究明を依頼されて、コンバートしてBoBに参加したこと

そして、あのギリーマントの男と自分が前に居たSAO(ゲーム)で敵対していたこと

そしてそいつが、SAO(前のゲーム)で積極的にPK(殺人)を楽しんでいたこと

ヨシアキはそう説明すると、一人でギリーマント

死銃を追いかけようとした

だが、そんなヨシアキをシノンは制止

一緒に今回のことの調査することを提案した

最初、ヨシアキは断った

あまりにも危険だからと

だが、シノンは決意が籠った表情で

 

『許せないのよ。ゲームでのPKじゃなくって、本当に殺人をしてる奴が居ることが』

 

と言った

シノンの表情を見て、ヨシアキはシノンが本気だと悟った

だから、ヨシアキは自分の体を盾にしてでも守ると誓った

そして、走っていた

しかし、ステータス的にはヨシアキはSTR優先AGI型

しかも、装備は軽量なものばかり

だから、ヨシアキは時々後方を振り返ってシノンが付いてこれてるか確認しては速度を合わせた

しかも、足下を見て罠が無いか確認しながらである

それを、後方を走っていたシノンは気付いていた

 

(あいつ……どういう気の配り方してるのよ……しかも、前方に罠があっても、石を然り気無く蹴って破壊してるし……)

 

ヨシアキは前方に罠を見つけたら、走りながら石を蹴り飛ばし、その罠を無力化していた

そして、少しすると納得した

 

(私の予想通りなら、あいつが居たのは、あの伝説のデスゲーム……それくらい出来ないと、生きられなかったのね……)

 

しかも、シノンは知らないがヨシアキはSAOでもトップランクの攻略組だった

スキル熟練度も並ではなく、十種類の剣技と料理スキル、索敵スキル、識別スキル、罠解除スキルといったスキルは全てコンプリートしていた

そこに付け加えて、生来のお人好し

これにより、広範囲で気配りが出来ていた

今だって、シノンの足の位置に来るだろう少し大きな石を川に蹴り落としていた

 

(本当に、お人好しって言うか、何て言うか……)

 

シノンはそう思いながら、走っていた

そして、目前には広大なフィールドの中央に位置する市街地フィールド

廃都市が近づいてきていた

 

シノンはここで、過去と向き合うことになる


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