ソードアート・オンライン 黄昏の剣士   作:京勇樹

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ファントムバレット編
銃の世界へ


「僕は男、僕は男、僕は男、僕は男………………」

 

そう繰り返しながら頭をビルの壁にぶつけているのは、見た目美少女に見える少年

 

ヨシアキだった

 

彼が居るのは、眩くネオンが輝くビル街だった

 

そのビル街の看板には、実在する企業のマークが書かれてあり、これが彼が普段居るALOだったら、GMに苦情のコールやメールが殺到しただろう

 

だが、彼が今居る世界ではそれが正解だった

 

彼が今居るのは、居慣れたALOでも、ましてやSAOでもない

 

通称でGGOと呼ばれている、ガンゲイル・オンラインという銃を題材にしたVRMMOの世界である

 

なぜ、ヨシアキがそんな世界に居るのか

 

それは今から数日前、ヨシアキこと吉井明久は総務省の職員である菊丘清二郎から呼び出されたのである

 

呼び出された明久は、雄二から格安で手に入れたバイク(バッテリー主体になってきているのに、今時ガソリン式)に乗り、菊丘が呼び出した新宿まで行った

 

そして菊丘から言われたのが、ガンゲイル・オンラインに行ってくれないかい?

 

ということだった

 

理由を聞いたら、菊丘は二件の不審死の話を始めた

 

そして、その二件の不審死で共通しているのが、その二人がGGOでのプレイヤーであること

 

そして、死亡推定時刻にGGO内で不審な行動をした人物が居たことだった

 

それはダメージが起きない圏内で、拳銃を発砲したというのだ

 

そして、その拳銃を発砲した奴は金属質的な声で

 

『死銃、デス・ガン』

 

と名乗ったらしい

 

それに関する調査を、明久に頼みたい。と菊丘は言ってきたのだ

 

それを聞いた当初、明久はキリトこと桐ヶ谷和人にしたらどうか。と言った

 

すると、菊丘は肩を竦めて

 

『先に連絡したんだがね。『明日菜とデートがあるから無理』と断られてしまったよ』

 

と言った

 

それを聞いて、明久は内心

 

(流石だよ、和人……明日菜ちゃんが最優先なんだね)

 

と賞賛した

 

そして、菊丘に拝み倒されたのと、報酬が良かったので、渋々ながら明久は菊丘からの依頼を受けたのだ

 

そして今日、菊丘が用意した場所に行って、GGOにアカウントを作り、ALOのデータを使ってアバターをコンバートしたのだ

 

以前に、ヨシアキとキリトが茅場から貰った《ザ・シード》

 

これによって作られたVRMMOには、ある共通点があった

 

まず、ペインアブソーバーのレベルの変更の制限

 

これは、茅場なりのプレイヤーへの配慮かもしれない

 

ペインアブソーバーというのは、攻撃を受けた際に起きる痛みを遮断する機能で、これを弱めることで痛覚が発生する

 

しかし、このペインアブソーバーを弱め過ぎると、現実の肉体に後遺症が起きるのだ

 

皮肉なことだが、それは須郷が証明している

 

姫路の大剣に刺し貫かれた右目が、麻痺していたのである

 

そしてザ・シードでは、そのペインアブソーバーが一定値以下に弱めることが出来ないように調整されているのだ

 

そして二つ目

 

ザ・シードを使って作られたVRMMOにて、他のゲームで育てたステータスを引き継いで、別のゲームにアバターを作ることが出来るのである

 

これを、コンバートと言う

 

ヨシアキはそのコンバートを使って、SAOとALOで育てたステータスを引き継いで、GGOにアバターを作成したのである

 

本音としては、一から育てたアバターで行きたいが、今回は調査が目的なので、手段は選べない

 

そして銃の世界に来たのだが、ヨシアキのアバターがトンデモなかった

 

なんと、見た目が美少女だったのだ

 

緩くウェーブが掛かった淡い茶髪に、華奢な体格

 

クリッとした目に、ピンク色に細い唇

 

どこからどう見ても、美少女としか言いようがなかった

 

だが幸いなことに、男の象徴はキチンと有ったのがヨシアキとしては一番良かった

 

そして、気を持ち直して主街区である《SBCグロッケン》を歩き始めのだが、歩いているだけで、ヨシアキは十数人のガタイの良い男達にナンパされたのである

 

ヨシアキはナンパされる度に、僕は男です、と断っていた

 

だがその後もナンパは後を断たず、ヨシアキは人影の無い路地に入ると今の状況に陥った

 

はっきり言うと、この時のヨシアキの精神はガタガタであった

 

それは過去に、ヨシアキの姉がヨシアキを女装させようとしたことを思い出したからである

 

そして、ヨシアキが頭をゴンゴンとぶつけていると

 

「あなた……何してるの?」

 

と声を掛けられた

 

ヨシアキが振り返ると、そこに居たのは孤高な猫を彷彿させる雰囲気の少女だった

 

水色の髪に、茶色いコートを着ていた

 

これが、ヨシアキとGGOにて《氷の女王》と呼ばれていた少女

 

シノンとの出会いだった


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