ソードアート・オンライン 黄昏の剣士   作:京勇樹

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二人の冒険 その1

「あ、さっきアイツらが言った通り、僕はビーターだけど、大丈夫かな?」

 

とヨシアキが思い出したように問い掛けると、フィリアは頷いて

 

「私は別に、ビーター嫌いじゃないから平気よ」

 

と答えた

 

「良かった。それじゃあ、改めてよろしくね。フィリア」

 

「ええ」

 

ヨシアキとフィリアは握手すると、主街区に向けて歩き出した

 

少しすると、フィリアはヨシアキに視線を向けて

 

「そういえば、アイテムを探しに来たって言ってたわよね? 名前は?」

 

「ん? ヨルグズの牙ってアイテム。この層で得られる筈なんだけど、なかなか見つからなくって」

 

とヨシアキが肩をすくめていると、フィリアが数秒間黙考してから指を鳴らして

 

「ああ、知ってる!」

 

と声を上げた

 

「え、本当?」

 

ヨシアキが問い掛けると、フィリアは頷いて

 

「うん。間違いなく、この層で手には入るよ。私も持ってたし」

 

と言った

 

「よし! 希望が見えた! ……って待った。持ってたってことは、今は?」

 

ヨシアキが問い掛けると、フィリアは頬を掻いて

 

「昨日、クエストで消費しちゃったんだ……」

 

と言った

 

フィリアの言葉を聞いて、ヨシアキは肩を落として

 

「タイミング悪いなぁ……」

 

と呟いた

 

そんなヨシアキを見て、フィリアは少し考え込むと

 

「アイテムの回収、手伝ってあげる」

 

と言った

 

「え、いいの?」

 

ヨシアキが問い掛けると、フィリアは頷いて

 

「実を言うと、さっきのあいつら、結構しつこくって、何回も追い掛けられたの。これでようやく、あいつらとおさらば出来たから、そのお礼。それとドロップするモンスター、ヨシアキは知らないでしょ?」

 

というフィリアの言葉を聞いて、ヨシアキは短く唸って

 

「うん、知りません」

 

と認めた

 

ヨシアキの潔さに、フィリアはクスリと笑って

 

「それで、どうするの?」

 

とヨシアキに問い掛けた

 

「OK、商談成立ね」

 

フィリアはそう言うと、右手を振ってウィンドウを開くと操作した

 

すると、ヨシアキの前にパーティー申請のウィンドウが開いた

 

それを見たヨシアキは、一瞬の迷いもなくOKボタンを押した

 

「それじゃあ、これからよろしくね。フィリア」

 

「ええ。それじゃあまずは、一回街でアイテムの整理しよ」

 

フィリアのその言葉に、ヨシアキは頷いて

 

「そうだね。僕もポーションとか補充したいし」

 

と言った

 

その後、二人は主街区へと向かい、アイテムの整理と補充を行った

 

そして、二人はレストランに入り適当に注文を済ませた

 

「そういえば、フィリアはトレジャーハンターって言ってたよね?」

 

ヨシアキが思い出したように問い掛けると、フィリアは頷いて

 

「うん、そうよ。未踏破ダンジョンとか迷宮区に潜り込んでは、お宝を見つけるの」

 

とウキウキした様子で語った

 

「なるほどね……だったらさ、最前線の迷宮区の方が見つかってないアイテムとか多いと思うんだけど?」

 

とヨシアキが再び問い掛けると、フィリアは頬を掻きながら

 

「私のレベル、まだそこまでじゃないんだ」

 

と言うと、ヨシアキに自分のレベルを耳打ちした

 

「ふむふむ……ある程度は、武装で補えるな」

 

とヨシアキは言うと、ウィンドウを開けて操作を始めた

 

その数秒後、フィリアの前にウィンドウが開きフィリアは目を見開いた

 

「ちょっ!? こんなレア武装、貰えないよ!」

 

フィリアがそう言うと、ヨシアキは微笑んで

 

「大丈夫大丈夫。僕が持ってても使わないし、持ってても仕方ないから上げるよ」

 

と言うと、再びウィンドウを操作した

 

フィリアはウィンドウに表示されているアイテムを見て、しばらく唸ると

 

「ありがたく貰います……」

 

と呟いてから、ウィンドウのOKボタンを押した

 

するとフィリアは、再びウィンドウを開いて操作を始めた

 

ヨシアキから貰ったのを含めて、再びアイテムストレージの整理を始めたようだ

 

その時、両手にトレイを持ったNPCウェイターが近寄ってきて

 

「お待たせしました」

 

と料理の乗った皿とカップを置いた

 

「ごゆっくり」

 

と言うと、NPCウェイターはカウンターの方へと去った

 

「ねぇ、これは?」

 

とフィリアは、自分の前に置かれたカップを指差した

 

「ん? 僕が持ってた飲み物だよ。一杯飲むと、STR値が1上がるんだ。他には、AGIが上がるのも有るみたいだよ」

 

とヨシアキが説明すると、フィリアは驚いた様子で

 

「また、結構なレアアイテムじゃない……」

 

と呟いた

 

「一応、ギルドリーダーなんでね。結構、色々なアイテム持ってるよ」

 

「ギルドリーダーだったんだ!」

 

フィリアが驚愕していると、ヨシアキは頷いて

 

「うん。何でも屋ギルド、黄昏の風。聞いたことないかな?」

 

と問い掛けた

 

「ああ! 攻略系何でも屋ギルドの!」

 

「知ってて良かったよ」

 

フィリアが手をポンと叩きながら言うと、ヨシアキは安堵した様子で頷いた

 

「それじゃあ、ご飯食べよ」

 

「うん」

 

ヨシアキの言葉にフィリアは頷き、二人は出された料理を食べ始めた

 

そして数分後、二人は食べ終わるとレストランを出た

 

「それじゃあ、案内よろしくね」

 

「任せてよ」

 

ヨシアキがお願いすると、フィリアが先頭に立って主街区を出た

 

こうして、トレジャーハンターの少女、フィリアと攻略系何でも屋ギルド、黄昏の風リーダー、黄昏の剣士、ヨシアキの短くて長い冒険が始まった


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