ソードアート・オンライン 黄昏の剣士   作:京勇樹

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騎士長

「あと……もう、少し……! 着いたぁ!」

 

あのあと休んだヨシアキは、夜明けとともに未だ起きないライカを背負って登り始めた。右手に愛剣、左手にライカの剣を持って壁登りを始めて、暫く。ヨシアキはようやく入れる場所からセントラルカセドラル内部に入れた。そして、床に倒れ付した時

 

「ん……ここは……」

 

とライカが起きた。

 

「あ、起きた……」

 

ライカが起きたのを確認したヨシアキは、ライカを背負ってる紐を緩めようとした。だが、それより先にライカがヨシアキの頭を叩き

 

「お前は! 一体! 何をしているんですかっ!?」

 

と言いながら、暴れ始めた。まあ、流石に目覚めたら背負われている、など予想していないだろう。

 

「待って待って待って!? まだ登ったばっかりだから!? 暴れないで!? 一緒に落ちるから!?」

 

ヨシアキは落ち着くように宥めるが、ライカは中々落ち着くことなく暴れた。そして、数分後。

 

「……すいません、取り乱しました」

 

「分かってくれて、何よりだよ……」

 

なんとか落ち着かせることに成功し、ヨシアキは柱に背中を預けて体を休ませていた。そこに

 

「ああ、やっぱりヨシアキだったか」

 

「ライカも」

 

キリトとアリスが現れた。よく見れば、アリスは右目を黒い布で覆っている。どうやら、アリスも右目の封印を破ったようだ。

 

「キリト……」

 

「アリス……貴女も、右目が……」

 

「ええ……貴女もでしょうが、最高司祭様のやり方に……」

 

アリスは最後まで口にしなかったが、ライカは同意するように頷いた。その後、四人で行動を伴にすることにして、先に行ったかもしれないユージオとリヒトの居場所を知るために探査術式で青薔薇の剣と流水の鎗の場所を探った。

 

「ん……下?」

 

「だね……90階?」

 

しかし、予想に反して下の階に反応があった。休憩を挟んだにしても、下の階とは予想していなかったのだ。

 

「90階は……」

 

「大浴場です!」

 

ヨシアキが告げた階数を聞いて、アリスとライカは駆け出し、その二人を追う形でヨシアキとキリトも走り出した。そしてその90階に到着。

確かに、大浴場と言われて納得した。フロアの半分以上が浴槽になっており、壁際には洗うための場所やサウナに繋がるだろうドアがあった。

しかし、一同は驚いていた。

なにせ、その大浴場が完全に凍りついていたからだ。

 

「これは……」

 

「一体……」

 

「……ユージオの武装完全支配術だ」

 

「それと、リヒトの会わせ技っぽい感じだよ」

 

アリスとライカが驚きで固まっていると、キリトとヨシアキがそう言いながらある場所を指差した。そこには、鎗と剣が突き立っていたのだが、それは確かにユージオとリヒトのものだったからだ。しかし、当の本人達が居ない。

だが変わりに、氷で全身を縛られている人物が居た。

 

「伯父様!」

 

「騎士長閣下!」

 

そこに凍りついていたのは、ベルクーリ・シンセンス・ワン。整合騎士団の最高の騎士にして、最古参の騎士。しかしてその正体は、ユージオ達が住む北帝国に於いて伝説的な騎士だった。

アリスとライカはベルクーリに駆け寄り

 

「伯父様! しっかりしてください! 伯父様!」

 

「騎士長閣下! 一体、何があったのですか!?」

 

と捲し立てるように問い掛けた。その間に、ヨシアキとキリトは気づいた。ベルクーリだが、まるで石化したように凍っていたのだ。

 

「これは……」

 

「ユージオのじゃない……縛ってるのは、確かにユージオのだが……」

 

「……ディープ……フリーズだ……」

 

ヨシアキとキリトが考えていると、少しぎこちないが声が聞こえた。気付けば、ベルクーリの目が開いていた。

どうやら、そのディープフリーズという術式の掛かりが浅いようだ。

 

「ディープフリーズ?」

 

「ああ……元老長チュデルキンと補佐役のハァシリアンが使える術式で……人の時間を止められる術式だ……」

 

キリトが首を傾げると、ベルクーリがそう教えた。

恐らくだが、そのディープフリーズで止めてる間に、整合騎士達の記憶を書き換えたりしていたのだろう。

そう予想していると、ベルクーリが

 

「……あの二人は、お前らの連れだな……?」

 

とキリトとヨシアキを見た。その問い掛けに、二人は無言で頷いた。するとベルクーリは、笑みを浮かべ

 

「あの二人……良い騎士になれる……実戦向きの技を修得しているからな……惜しむらくは、敵になってしまったことか……」

 

と呟いた。それは、かの伝説の騎士が認めたということになる。アリスとライカが驚いていると

 

「……あの二人は、上に連れていかれた……急げ」

 

と先程四人が下りてきた階段を指差した。どうやら、ベルクーリにディープフリーズを掛けた人物に連れ去られたようだ。そう察したキリトとヨシアキは、それぞれ剣と鎗を背負うと階段を駆け上がっていった。

そして、95階に戻ってきた時、そこには異形が居た。

 

「ミニオン!?」

 

「それも、こんなに!?」

 

95階には、10近くのミニオンが居た。セントラルカセドラルの外壁部分だけでなく、まさか内部にまで居るなんて予想出来なかったらしく、アリスとライカは残された左目を驚愕に見開いていた。しかし、すぐに気を持ち直し

 

「ならば、早急に排除するのみです!」

 

「押して通る!!」

 

と剣を構えた。


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