ソードアート・オンライン 黄昏の剣士   作:京勇樹

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対ファナティオ戦

「行くぞ、整合騎士ファナティオ……」

 

「来い、侵入者……!」

 

短く会話した直後、二人は激突した。二人の剣がぶつかり、火花が激しく飛び散る。ファナティオは整合騎士の中でも、古参の騎士なのだろう。かなりの腕というのが伺える。

 

「先ほどの者もだが、貴様……本当に修剣士か!?」

 

「ああ、ヨシアキと同じ上級修剣士だ!」

 

ファナティオの問い掛けに答えながら、キリトは剣を振るった。しかしそれをファナティオは、容易く受け流す。やはり、古参なのは間違いないだろう。

 

「ああぁぁ!」

 

「しいっ!!」

 

二人は気合いの声を挙げながら、連続で剣を振るった。その度にぶつかり、火花が空中で散る。何時までも続きそうだった剣劇だったが、唐突に終わりを告げる。その理由は、キリトが仕掛けた蹴りだった。キリトの蹴りを避けようと、ファナティオは僅かに剣を止めて本の少しだけ上半身を反らした。その隙を逃さず、キリトは剣を右斜めに振り上げた。キリトの狙いは分からなかったが、その一撃はファナティオの兜を掠り、兜を飛ばした。そうして露になったファナティオの顔を見て、キリトは

 

「女……だったのか」

 

と少し驚いた声を漏らした。その声を聞いたファナティオは、鋭い視線をキリトに向けて

 

「貴様も……貴様も、私が女だからと手を抜くのか!?」

 

と怒声を漏らした。

 

「今まで私と剣を交えてきた相手は、私が女だと気付くと手を抜き、負けると手加減したからだと言い訳をする……誰が手加減をしてほしいと言った……誰が手を抜けと言った……! 私は女であると同時に、一人の騎士だ……立ち会いの際に手加減をされる筋合いは無い……!」

 

そう語るファナティオの声には、純然たる怒りが込められている。その気持ちは、何となくだがキリトにも分かる。キリトも今まで、何回も様々な人物と立ち会ってきた。その中には、キリトが年下だからと手を抜いてくる輩も居た。そう言った輩は、問答無用で叩き潰し、そして言い訳は聞かなかった。しかしファナティオは、それを侮辱だと感じているようだ。

 

「だから私は、顔を兜で隠した! 女だからと手加減をされないように!! 貴様も、私が女だからと手加減をするか!?」

 

ファナティオは怒鳴りながら、剣をキリトに突き付けた。するとキリトは、改めて剣を構え直し

 

「いや、手加減なんてしないさ……剣士にとって、手加減は何よりも侮辱だ……」

 

と静かに告げた。キリトのその言葉が少し予想外だったのか、ファナティオは僅かに困惑した表情を浮かべた。するとキリトは、そんなファナティオに視線を向けて

 

「それにな、ファナティオ……俺の知り合いには、女でも強い剣士が何人か居る……けどそいつらは、女であっても毅然としている……分かるか、ファナティオ……そいつらは、女でもあり剣士でもある……あんたはどうなんだ……あんたは、確かに騎士だ……だが、女であることを恥じているんじゃないのか!?」

 

キリトのその言葉に、ファナティオは動きを止めた。本来だったら、戦闘中においては致命的な隙をファナティオは晒しており、キリトはそこを攻撃すべきかもしれない。だがキリトは、攻撃をせず

 

「さあ、行くぞ……ファナティオお嬢さん……手加減は抜きだ」

 

と告げた。それを受けて、ファナティオは笑みを浮かべ

 

「いいだろう、来い……上級修剣士キリト!」

 

とキリトの名を呼んだ。そして、キリトが駆け出した直後、ファナティオは剣を引くように構えて

 

「エンハンス・アーマメント!」

 

と式句を告げた。それは、武装完全支配術の起動式。その直後、剣の切っ先に光が集まっていく。それを見たキリトは、自身の直感に従って右に大きく避けた。その直後、激しい閃光が走った。

 

「これは!?」

 

「我が天穿剣(てんせんけん)は、一千枚の鏡を基に作った神器! その能力は、光を操る!!」

 

キリトが驚いていると、ファナティオは声高に自らの剣。天穿剣の能力を告げた。余程自信があるようだ。そしてファナティオは、天穿剣の切っ先から連続して閃光を放った。次々と放たれる閃光を、キリトは何とか回避しつつ、ファナティオに接近しようと走る。しかし

 

「近づかせると、思うか!?」

 

そう言って放った閃光は、広範囲に拡散された。接近封じ用の技のようだ。何とか直撃は避けたものの、着ていた制服の少し長かった上着の裾が焼けた。

 

「ちっ!?」

 

キリトは舌打ちしながら、不規則にジグザグに走り始めた。照準を着けさせないためだろう。

 

「甘いぞ!」

 

しかしファナティオは、慌てずに拡散式を撃ってきた。だがキリトは、柱の裏に隠れて耐えた。そして意を決したように、大きく深呼吸すると一気に走り出した。

 

「そう何度も!」

 

ファナティオはキリトを近づかせまいと、閃光を放った。しかしキリトは、回避は最低限にし、多少の被弾は無視して近づいた。

 

「なに!?」

 

まさか被弾を無視すると予想していなかったファナティオは、驚きで攻撃の手が緩んだ。その隙をキリトは逃さず、SS、ソニックリープを発動。ファナティオに直撃させた。直撃を受けたファナティオは、僅かに前屈みになりながら

 

「見事……」

 

と呟いて、倒れ伏した。


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