「それで……間違いないの?」
「ああ、間違いない……あんな鎧着てるけど、間違いなくライカだ……」
ヨシアキの問い掛けに、リヒトは頷いた。
今二人が居るのは、セントラルカセドラル内の牢屋だった。
二人はそこで、片手を鎖で拘束された状態で会話していた。
「けど……僕を覚えてないなんて……」
「もしかしたら、神聖術かもしれないよ?」
ヨシアキの発言を聞いて、リヒトが
「けど、そんな神聖術聞いたこと……」
思い出すように呟いた。それに対して、ヨシアキは
「秘匿するに決まってるさ。そんな術を作っても、何に使うのかって指摘されるに決まってるからね……記憶を書き換える神聖術なんて……言い替えれば、洗脳だからね……」
「だけど……それなら、確かに有り得る……」
ヨシアキの話を聞き終わったリヒトは、どうしようか考えているらしく、ぶつぶつと呟き始めた。
そして、ふと気になったらしく
「そういえば、ステイシアの窓は使えるのかな?」
と首を傾げた。二人を牢屋に入れたライカの話では、牢屋の中では神聖術は使えなくしてあるとのことだったからだ。
「ああ、それは確かに気になるね」
そう言ったヨシアキは、手を動かした。すると、窓が開いた。
「開いたね」
「だねぇ」
ヨシアキが開いたのは、鎖の窓だ。そこには、鎖の優先度が40と表示されていた。
それを見たヨシアキは
「優先度40か……僕達の優先度は42だから、どうにかなるかもだけど……引っ張っても簡単にはいかないだろうし……」
と呟き始めた。すると、リヒトが
「鎖同士をぶつける……ってのは、どうかな?」
と提案した。
「なるほど……同じ優先度だから、ぶつければ壊せるかも……よし、やってみよう!」
リヒトの提案に従って、ヨシアキは二人の鎖を絡ませた。そして
「いくよ」
「うん……1……2の……」
『3!』
二人は息を合わせて、一気に鎖を引っ張った。その結果、鎖は甲高い音と共に引きちぎれた。
「よしっ! これで、動けるようになった! 後は……」
そしてヨシアキは、牢屋のドアを見た。
その数秒後、牢屋のドアは轟音と共に吹き飛んだ。
「よし、開いた」
「開いたっていうより、開けたでしょ」
と会話していると、少し離れた牢屋のドアが吹き飛んだ。驚いた二人が視線を向けると、牢屋の中からキリトとユージオの二人が出てきた。
「キリトにユージオ!」
「二人も、捕まってたんだ……」
「それはこっちのセリフだ」
「嫌な偶然だね……」
四人は短く会話すると、外に出ることにした。
道順は、入れられる時に歩いたから覚えていた。だが、今は武器が手元に無いために戦うことは難しい。
だから四人は、接敵しないように道を確認しながらゆっくりと進んでいた。そうして、数十分後に外に出られた。もう既に日は沈み、月が空に出ていた。
最初は月を見ていたリヒトとユージオだったが、塔に視線を移して
「けどまさか、セントラル・カセドラルに来るなんて……」
「長年願っていた場所に……」
と呟いた。二人はそれぞれ、連れていかれた幼馴染みを連れ戻すためにずっとセントラル・カセドラルに来ることを願い続けてきたのだ。
そしてようやく、その場所まで来た。
後は、どんな方法を駆使してでも、幼馴染みを連れ戻すのみ。
そうして四人は、綺麗な薔薇の庭を歩いていた。そして、一つの門を潜った時だった。
「まったく……我々の師の先見の明は素晴らしいな……」
「同意する……見事、こいつらが脱出することを予期していたからな……」
その先の庭には、二人の騎士が立っていた。
「あんた達は……」
「我々は、栄えある整合騎士! 我が名はエルドリエ・シンセンス・サーティツー!」
「同じく、カイエン・シンセンス・サーティスリー」
一人は顔を露出した美青年だが、もう一人は頭まで兜を被っていて、顔は分からない。
「我々が貴様らを、牢屋に再び入れてやろう!」
「覚悟せよ」
二人の騎士はそう言って、武器を構えた。
これが、対整合騎士の最初だった。