ソードアート・オンライン 黄昏の剣士   作:京勇樹

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到着と違和感

ツルハシが折れた為に、リヒトは早めに天職を切り上げて村に戻ることにした。

 

「なんか、ごめんね……仕事の邪魔をして……」

 

「構わないさ。それに、たまには早く帰るのもゆっくり出来る」

 

ヨシアキが謝ると、リヒトは微笑みながらそう答えた。

すると、前から一人の少女が近づいてきて

 

「あれ? リヒトさん、早かったですね?」

 

と首を傾げた。

その少女に、リヒトは

 

「ライエ、ツルハシが折れたからね。今日は早めに切り上げたんだ」

 

と教えた。

すると少女、ライエ・シンフォースはヨシアキを見て

 

「あら? そちらの方は?」

 

と問い掛けてきた。

すると、ヨシアキは

 

「初めまして、ヨシアキ・カーバイドって言います。よろしくね」

 

と名乗った。

すると、リヒトが

 

「彼、ベクタの迷子みたいでね。しばらく、僕の家に住まわせようと思ってるんだ」

 

と教えた。それを聞いたライエは

 

「ベクタの迷子!? 初めて見た!!」

 

と興奮した様子で、ヨシアキを見た。

すると、ヨシアキは

 

「いやぁ、僕には分からないけどね」

 

と言いながら、後頭部を掻いた。

その直後、ライエは

 

「あ、私はライエ・シンフォースって言います。よろしくお願いします!」

 

と名乗りながら、チョコンとスカートを持ち上げた。

その後三人は、会話しながら村に入った。

ヨシアキから見た村の雰囲気は、中世ヨーロッパの開拓村と思えた。

 

「それじゃあ、ヨシアキは着いてきて」

 

「わかった」

 

ライエと別れて、ヨシアキはリヒトの後に着いていった。

リヒトが住んでいたのは、白い壁に青い屋根が特徴の二階建ての家だった。

 

「あ、御家族に挨拶しないと……」

 

「あ……その必要は無いよ……この家に住んでるの、僕だけだから」

 

ヨシアキの言葉に、リヒトは少し辛そうにそう告げた。

 

「え?」

 

「数年前に、父さんは病気で……母さんは、山で崖崩れに巻き込まれてね……」

 

ヨシアキが顔を向けると、リヒトはそう言いながらドアを開けた。

確かに、中には一切人の気配がしない。一人暮らしというのは本当のようだ。

 

「知らなかったとはいえ、ごめん……」

 

「いいよ、慣れたからね……」

 

ヨシアキが謝罪すると、リヒトはある部屋のドアを開けて

 

「この部屋を使って」

 

とヨシアキに部屋を見せた。

部屋の内装は、ベッドと机が一つずつ有り、その机の上にはランタンが一つ置いてある。

 

「夜になったら、神聖術で灯りを付けてね」

 

「神聖術?」

 

聞きなれない言葉に、ヨシアキは首を傾げた。

すると、リヒトが

 

「ああ、そうだったね。記憶が無かったんだったね……」

 

と呟いてから、ヨシアキに神聖術の事を教え始めた。

神聖術を発動するための始まりの言葉に、ヨシアキは内心で

 

(なんか、変な感じだな……システム・コールか……)

 

と思いながらも、神聖術の練習を始めた。

どうやら、ヨシアキにも神聖術の適性は有ったらしく、神聖術は使えた。しかし、発動するのに時間が掛かるので、まだまだ練習する必要があるとヨシアキは思った。

 

その頃、現実世界では

 

「どう、明日奈……和人と面会出来た?」

 

「ううん……面会拒絶だった……」

 

ある病院の前で、明日奈を含めて数人のメンバーが集まっていた。

集まっているのは、明日奈、琴音、詩乃、里香、直葉だ。

彼女達は、和人と明久の面会に来たのだが、面会拒絶だと言われて、面会出来なかったのだ。

 

「確かに、名前は有るみたいだけど……」

 

と言いながら明日奈は、病院を見上げた。

その時

 

『ママ、皆さん! 調べたら、ここにパパとお兄さんは居ないことが分かりました!』

 

と全員の視界に、ユイが現れた。

 

「ユイちゃん、どういうこと?」

 

『確かに、一度はこの病院に運ばれてます! しかし、すぐに移動してます!』

 

琴音が問い掛けると、ユイはそう言いながら全員に見えるようにマップを表示させた。

 

『これは、パパとお兄さんの携帯の電波を追跡したものです……最後に確認されたのは……ここです!』

 

ユイがそう言いながら拡大させた場所は、海際の施設。

東京ヘリポートだった。


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