ソードアート・オンライン 黄昏の剣士   作:京勇樹

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旧友

「ルクス……本当に、無事で……っ」

 

「ウィング……」

 

泣きながらひよりのプレイヤーネームを呼ぶみのりを、ひよりは優しく撫でていた

すると、その光景を見ていた里香が

 

「なに、どういう状況?」

 

と啓太に問い掛けた

すると、啓太は

 

「彼女達は、SAO事件の前にやっていたMMORPGで知り合っていたそうです。しかし、ひよりがSAO事件に巻き込まれた後、そのMMORPGが閉鎖してしまったから、安否確認が出来なかったそうで」

 

と軽く説明した

それを聞いた里香は

 

「なるほどねぇ……」

 

と頷いた

そして、少しすると

 

「すいません……お恥ずかしい姿を……」

 

とみのりが、頭を下げた

 

「いや、久しぶりの再会なんだ。仕方ない」

 

啓太がそう言うと、ひよりが

 

「だけど、なんでウィングが………」

 

と困惑していた

すると啓太が

 

「先日、俺たちの学校に来た板橋西高校の生徒会会長が彼女だ。今日は、俺が偶々買い物に居た場所で、男達にしつこく声を掛けられていてな……まあ、助けたんだ」

 

と説明した

それを聞いた里香が

 

「どうやって、助けたの?」

 

と啓太に問い掛けた

その問い掛けに、啓太は

 

「バイクで、割り込んだ」

 

とだけ、答えた

すると里香が

 

「また、映画みたいなことを……」

 

と半ば呆れていた

その時、ひよりが

 

「ありがとうございます。ウィングを助けてもらって」

 

と頭を下げた

すると啓太は

 

「いや、やりたくてやっただけだ。気にしないでくれ」

 

と答えた

その後、みのりはひよりと相対する形で座り

 

「ルクス……ううん、ひより……まだVRMMOをやってるの?」

 

と問い掛けた

その問い掛けに、ひよりは

 

「うん、やってるよ」

 

と答えた

するとみのりが

 

「なんで……あんな事件に巻き込まれたのに……」

 

とまるで、理解出来ないという風に呟いた

それを聞いて、ひよりは

 

「うん、そうだね……確かに、辛いことがあったよ……友達を、喪ったこともあるよ……」

 

と呟くように言った

 

「だったら……」

 

「それでもプレイし続けるのは、魅了されてるからなんだ……あの世界に」

 

ひよりはみのりの言葉に被せるように、そう告げた

 

「魅了……されてる?」

 

「うん……あの世界では、様々な人と出会える……古い仲間や、外国の人……そういった出会い……そして何より、あの世界だと普通じゃあ、出来ない体験も出来るんだ……それが、凄くドキドキする……楽しいんだ」

 

ひよりは目を輝かせながら、そう言った

その目からは、楽しんでいることが伺える

すると、みのりが

 

「そっか……だったら、私もやる」

 

と言った

 

「みのり……?」

 

「私も、ひよりと一緒にプレイする。それに、あの約束を果たしてないよ?」

 

みのりの言葉を聞いて、ひよりはうっと呻いた

あの約束というのは、ひよりがSAO事件に巻き込まれる前にした約束

 

《また、一緒にプレイしようね》

 

それは、些細な約束だったのかもしれない

しかし、みのりにとっては大事な約束だった

 

「実はね、もう買ってあるの……ALOとアミュスフィア」

 

「え」

 

みのりの行動の早さに、ひよりは固まった

まさか、既に買っているとは思っていなかったのだ

 

「何を驚いてるの? 私だって、根っからのゲーマーなんだよ?」

 

みのりのその言葉に、ひよりはみのりとの出会いを思い出した

二人の初めての出会いは、今はやっていないMMORPGだった

ひよりはそのゲームは初めてで、どこのギルドに入るべきか悩んでいた

そこに声を掛けたのが、みのりだった

そのゲームでは、メッセージチャットとボイスチャットの二つが使えたが、みのりはボイスチャットを使って、ひよりに声を掛けた

そこから、二人の付き合いは始まったのだ

 

「だから、また一緒に遊ぼう……前みたいに」

 

みのりはそう言いながら、ひよりの手を握った

その言葉に、ひよりは

 

「うん……ありがとう……」

 

と頷いた


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