ソードアート・オンライン 黄昏の剣士   作:京勇樹

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遅くってすいません

最近、仕事が忙しくって


嵐の前兆

74層 迷宮区

 

「ねえ、キリトくん……あれって」

 

「ああ、間違いないだろうな……ボスの部屋だ」

 

気づけば俺達の前には、荘厳で巨大な門がそびえていた

 

そして、マップを確認すると残っている空白部分が埋まる位置だった

 

間違いなく、ボスモンスターの間だろう

 

「ボスモンスターは部屋から出ないが、念のために転移結晶を用意しとけ」

 

「わかった」

 

俺の忠告をアスナは素直に聞いて、ポシェットから転移結晶を取り出して握った

 

俺はそれを確認すると、両腕で門を押した

 

最初は暗くって中が見えなかったが、手前のほうから炎が灯り始めて

 

次々に奥が見え始めた

 

すると、部屋の全貌が見えた

 

部屋はドーム状になっていて、中央に巨大な人影が出現してきた

 

見上げるような体躯は、全身を縄のごとく盛り上がった筋肉に包まれている

 

肌は周囲の炎に負けない深い青

 

分厚い胸板の上に乗っている頭は、人間ではなく、山羊のそれだった

 

頭の両側からは、ねじれている太い角が後方にそそり立っている

 

眼は、これも青白く燃えているかのような輝きを放っているが、その視線は明らかにこちらを捕らえているのがわかった

 

下半身は濃紺の長い体毛に包まれていて、炎に隠れてよく見えないが人の足ではなく動物のものだった

 

簡単に言えば、いわゆる悪魔の姿だった

 

俺達の居る入り口から、奴の居る部屋の中央まではかなりの距離があった

 

にも関わらず俺達は、すくんだように動けなかった

 

今までそれこそ無数のモンスターと戦ってきたが、悪魔型というのは初めてだった

 

色々なRPGでお馴染みと言ってよいその姿だが、こうやって<直>に対面すると、体の内側から湧き上がる原始的な恐怖心を抑えられなかった

 

恐る恐る視線を凝らして、出てきたカーソルの文字を読んだ

 

<The Gleameyes>

 

間違いなく、この層のボスモンスターだ

 

名前に定冠詞がついてるのがその証拠だ

 

グリームアイズ、輝く目、か

 

そこまで読んだ時だった

 

青い悪魔が突然、長く伸びた鼻面を振り上げて、轟くような雄叫びを上げた

 

炎の行列が激しく揺らいで、ビリビリと振動が床を伝わってきた

 

口と鼻から青白く燃える呼気を噴出しながら、右手に持った巨大な剣を振りかざして

 

と思う間も無く、青い悪魔はまっすぐにこちらに向けて、地響きを立てながら猛烈な速度で突進してきた

 

「うわあああああ!」

 

「きゃあああああ!」

 

俺達は同時に悲鳴を上げて、その場で反転すると全力でダッシュした

 

ボスモンスターは部屋から出られない

 

という原則を頭では判ってても、とても踏みとどまれるものではない

 

鍛え上げた敏捷度パラメータに物を言わせて、俺とアスナは長い回廊を疾風の如く駆け抜け、遁走した

 

キリトSideEND

 

第三者Side

 

あれから、キリトとアスナの二人は止まることなく迷宮区の途中に設置されてる安全地帯まで駆け抜けた

 

途中でモンスターに接敵しなかったのは、奇跡と言える

 

安全地帯に走り込んだ二人は、その場で座りこんだ

 

「いやぁー、走った走った! こんなに走ったの久しぶりかも! でも、私よりもキリトくんのほうが凄かったけどね」

 

アスナは笑いながら言うと、キリトを見た

 

キリトとしては反論したいが、その通りだったので口をつぐんだ

 

すると

 

「ずいぶんと慌ててたみたいだけど、どうしたの?」

 

と第三者の声

 

「ん? ヨシアキ達か」

 

キリトは視線を声の方に向けると、そこにはヨシアキを筆頭に黄昏れの風のメンバーが居た

 

「やっほ。で、なにがあったの?」

 

ヨシアキは片手を上げて挨拶すると、再度問い掛けた

 

「ああ……実は、ボス部屋を見つけたんだ」

 

「ボス部屋を!?」

 

キリトの言葉にヨシアキ達は驚いていた

 

「ああ。それが見た目はまんま悪魔だぜ」

 

「どういうことじゃ?」

 

「あー、ほれ。本とかで、上半身は人間だけど下半身と頭は山羊ってやつがよく書かれてるだろ? あのままだ」

 

ヒデが問い掛けると、キリトは詳細に説明してくれた

 

「なるほどな。で、その悪魔やろうの得物は?」

 

「大きな剣が一本だけよ。だけど、あの様子じゃあ、特殊攻撃もしてくるでしょうね」

 

「なるほど、それは苦戦しそうだなぁ……うーん、せめて楯装備の壁プレイヤーが10人は欲しいかな?」

 

アスナの言葉を聞いたヨシアキは、腕組みをして唸った

 

すると、同じように唸っていたアスナが頭を上げ

 

「楯といえば……キリトくんにヨシアキさんは、なんで楯を装備してないの?」

 

アスナの言葉に、二人は一瞬固まった

 

「楯を装備出来るのが、片手剣の利点でしょ? それなのに、なんで装備してないの?」

 

アスナの問い掛けにキリトとヨシアキは口を開けないでいた

 

「私は細剣のスピードが落ちるからだし、スタイルを気にする人も居る。けど、二人は違うよね?」

 

アスナの指摘に、二人は内心で動揺していた

 

確かに、二人には切り札があった

 

そしてそれは、誰にも見せたことがないのだ

 

ヨシアキに関しては、ギルドメンバーにもだ

 

スキル情報が大事な生命線だということも大きい

 

そして、その技が知られたらヨシアキ達は周囲と大きな隔絶を生んでしまうだろう

 

二人が言おうか迷っていたら

 

「まあ、いいわ。スキルの詮索はマナー違反だもんね」

 

と、アスナは笑った

 

二人は、そんなアスナの行動に内心でずっこけた

 

アスナは視線をちらりと動かして、時計を確認すると

 

「わ! もう3時だ。遅くなっちゃったけど、お昼にしましょうか」

 

と手を叩いた

 

「あ、本当だ。それじゃあ、僕達もお昼にしようか」

 

ヨシアキは気を取り直して、ウインドウを開いた

 

気付くと、アスナも開いている

 

「て、手作りですか」

 

キリトの言葉に、アスナは無言ですました笑みを浮かべると、手早くメニューを操作して、白革の手袋を装備解除して小ぶりなバスケットを出現させた

 

ヨシアキのほうも個人サイズのバスケットを人数分出して、全員に渡していた

 

すると、キリトがなにか変なことを考えていたのだろう

 

アスナがキッとキリトを睨んで

 

「……なんか考えてるでしょ」

 

「な、なにも。それより、早く食わせてくれ」

 

キリトの言葉に、アスナはむー、という感じで唇を尖らせながら、アスナはバスケットから大きな紙包みを二つ取り出して、キリトに一つ渡した

 

キリトは慌てながら紙包みを開いた

 

中には、丸いパンをスライスして焼いた肉や野菜をふんだんに挟み込んだサンドイッチが入っていた

 

キリトが視線を動かすと、ヨシアキ達も似たような物を食べていた

 

鼻孔を胡椒に似た香ばしい匂いが襲った

 

その途端にキリトは猛烈な空腹を感じて、何も言わないで大口を開きかぶりついた

 

「う……うまい……」

 

そう呟くとキリトは一心不乱に食べた

 

キリトの口の中には、アインクラッドのNPCレストランで出される西洋風の味付けに似た食べ物ではなく、日本でも馴染み深いファーストフード店の味が口一杯に広がった

 

その味付けに思わず、涙が出そうになるが堪えて食べ終わると

 

「おまえ、この味、どうやって……」

 

「ふっふっふ……ヨシアキさんと一年間一緒に研鑽した成果よ。アインクラッドで手に入る約百種類の調味料が味覚再生エンジンに与えるパラメータをぜ~~~~んぶ解析して、作ったのよ」

 

「といっても、ほとんどがアスナちゃんのおかげだけどね」

 

「ううん、ヨシアキさんの直感も凄かったわよ。でまずは、グログワの種とシュブルの葉とカリム水」

 

アスナはそう言いながらバスケットから小瓶を二つ取り出し、片方の栓を抜いて人差し指を突っ込んだ

 

見た目はなんとも言い難く、紫色のドロりとした物が付着した指を引き抜き

 

「はい、口あけて」

 

キリトはポカンとしながらも、反射的に大口を開けた

 

そこを狙ってアスナは、ピンと指先を弾いた

 

キリトは口の中に入ってきた雫の味に、目を見開いて、心底驚愕した

 

「……マヨネーズだ!!」

 

「で次に、こっちがアビルパ豆とサグの葉とウーラフィッシュの骨」

 

最後のは、解毒ポーションの材料じゃね?

 

とキリトは思ったが、その答えを聞く暇も無く、再び、口の中に雫が飛び込んだ

 

「醤油だと……!」

 

キリトは驚愕しながら、アスナの手を掴んで、アスナの指を口に入れた

 

「うぎゃ!?」

 

さすがに予想外立ったらしく、少々、女の子らしくない悲鳴を出した

 

「キリト、大胆……」

 

ヨシアキは、そんなキリトの行動を呆然と見ていた

 

そして、ひとしきり舐め終わったらしく、アスナの手をキリトは離した

 

アスナは顔を赤くしながら、手を振って

 

「さっきのサンドイッチのソースはこれで作ったのよ」

 

と誇らしげに語った

 

「………凄い、完璧だ。おまえこれを売り出したら、すっごく儲かるぞ!」

 

この時、キリトにとっては昨日食べたラグーラビットの料理よりも今日のサンドイッチのほうが旨く感じられた

 

「そ、そうかな」

 

キリトの言葉に、アスナは照れたような笑みを浮かべた

 

「あ、やっぱりだめだ。俺の分が無くなったら困る」

 

「キリト……君って奴は……」

 

「意地汚いなあもう! 気が向いたら、また作ってあげるわよ」

 

言葉の最後をアスナは呟くように言った

 

するとアスナはキリトの肩に、ほんの少しだけ自分の肩を触れさせた

 

角度的に、ヨシアキ達からは見えない位置である

 

ヨシアキ達はアスナの行動に気づかずに、談笑している

 

この時キリトは

 

(こんな料理が毎日食えるなら、節を曲げてスルムブルグに引っ越すかな……アスナの家のそばに……)

 

とその時だった

 

下層側の出入り口が開いて、ガチャガチャと鎧を鳴らしながら数人の男達が入ってきた

 

その瞬間にアスナとキリトの二人は離れて、姿勢を正していた

 

入ってきたのは、六人のパーティーだった

 

その先頭の男を見て、キリトは肩の力を抜いた

 

そのカタナ使いの男は、キリトとはこの浮遊城で一番付き合いが長いのだ

 

「おお、キリトにヨシアキ! しばらくだな」

 

キリトとヨシアキと気付いて、長身の男は笑顔でキリトの方に近づいた

 

「まだ生きてたか、クライン」

 

「相変わらず、愛想のねえ野郎だ。珍しく連れがいるの……か……」

 

キリトの言葉に、クラインは少し不満そうにしながら、キリトの背後に居たアスナを見て、悪趣味なバンダナの下の目を見開いて固まった

 

「あー……っと、ボス戦で顔合わせしてるだろうけど、一応紹介するよ。こいつはギルド<風林火山>のリーダーのクライン。で、こっちは<血盟騎士団>のアスナ」

 

キリトの紹介に合わせて、アスナはチョコンと頭を下げた

 

が、クラインは目と口を大きく開いたまま、完全に停止していた

 

「おーい、なんか言えこら。ラグってんのか?」

 

クラインが反応しないから、キリトはクラインの目の前で手をパタパタと振った

 

すると

 

「こ、こんにちは!! くくクラインと言う者です。二十四歳独身!」

 

「お見合いか!」

 

ドサクサ紛れに妙なことを口走ったカタナ使いの頭をヨシアキが

 

そのわき腹をキリトが強めにど突いた

 

が、後ろに居た五人も我先にと口を開いて、自己紹介を始めた

 

風林火山のメンバーは、全員がSAO以前からの馴染みらしい

 

それをクラインは、独力で仲間を一人も欠けさせることもなく守り抜いて、攻略組の一角まで育て上げたのだ

 

それは二年前

 

このデスゲームが始まった日

 

キリトが怯み、拒んで逃げた重みを、クラインは堂々と背負い続けている

 

キリトは胸中深くに自己嫌悪を感じたが、それを深く呑み下し、振り返り

 

「……ま、まあ、悪い連中じゃないから。リーダーの顔はともかく」

 

そう言ったキリトの足を、クラインが思いっきり踏んだ

 

それを見たアスナは堪えきれなくなったのか、体をくの字に曲げながら笑い始めた

 

それを見て、クラインは照れたようなだらしない笑顔を浮かべていたが、ふと我に返ってキリトの腕を掴んで、抑えているが殺気のこもった声で

 

「どっどど、どういうことだよキリト!?」

 

そんなクラインの様子にキリトが返答に窮していると、アスナが近寄って

 

「こんにちは。しばらくこの人とパーティーを組むので、よろしく」

 

アスナはよく透き通る声と共に、そう宣言した

 

キリトはその宣言に

 

え? 今日だけじゃなかったの!?

 

と驚いていると

 

「キリト! てンめえ、どういうこった!」

 

クラインが喚きながら、キリトを揺さぶった

 

「まあまあ、落ち着いてよ。クライン」

 

と、ヨシアキがクラインを宥めていると

 

ガシャガシャと規則正しい金属音が、下層側から聞こえてきた

 

それを聞いたアスナと、今まで黙っていたサチがそれぞれ、キリトとヨシアキに近づき

 

「「キリトくん(ヨシアキさん)、《軍》よ(です)!」」

 

と囁いた

 

それを聞いた二人は、緊張した顔でドアを見た

 

すると、ドアの向こうからお揃いの全身鎧《プレートアーマー》を装備したプレイヤーの集団が現れた

 

ただ、先頭の一人は兜に羽のような装飾が施されている

 

おそらく、リーダーなのだろう

 

プレイヤー集団は安全地帯の中央付近で止まりると

 

「休め!」

 

リーダーから休む許可が出ると、崩れるように座り込んだ

 

中には、倒れているプレイヤーすら居た

 

SAOでのモンスターとの戦闘は、常に緊張感を要する

 

それをリーダーは気にも留めず、ヘルメットを取りながらキリトたちに近づいた

 

よく見ると、男の装備は倒れてる十一人とは違っている

 

全身鎧も高級品で、胸部分にはアインクラッド全景を意匠化したらしい紋章が描かれている

 

ごく短い髪に角ばった顔立ち、太い眉の下には小さくも鋭い眼が光っていて、口元は固く引き結ばれている

 

ジロリとキリト達を睨むと、男はキリトに向けて口を開いた

 

「私はアインクラッド解放軍所属、コーバッツ中佐だ」

 

コーバッツの自己紹介を聞いて、全員驚いていた

 

確かに軍と呼ばれているが、まさか階級まであるとは思わなかったのだ

 

「ソロのキリトだ」

 

「KOB所属、アスナ」

 

「風林火山リーダークライン」

 

「黄昏れの風リーダーヨシアキ」

 

と全員が自己紹介すると、視線をキリトに向け

 

「君はボスの間までマッピングしたのか?」

 

と問い掛けた

 

「ああ、してあるが」

 

「だったら、データを渡してもらおう」

 

まるで当然のように発言したコーバッツに、全員目を見開いて

 

「はあ!? おめぇ、マッピングの大変さをわかって言ってんのか!?」

 

「我々軍は、貴様ら一般プレイヤーのために戦っているのだ! 協力するのは当然のことだ!」

 

「だからってな、頼み方っつーもんがあんだろうが!」

 

「いくらなんでも、礼儀がなってないですよ」

 

とヨシアキ達が抗議していると

 

「わかった、渡してやる」

 

とキリトが、ウインドウを開いた

 

「おいおい、キリの字! いくらなんでも人が良すぎるぜ!」

 

「元々、街に戻ったら公開しようと思ってたんだ。マップデータで商売する気もないしな」

 

キリトは言いながら、ウインドウを操作した

 

すると、送信し終わったのだろう

 

「協力感謝する」

 

と、コーバッツが心にもないことを言った

 

「ボスにちょっかい出す気なら、やめといたほうがいいぜ?」

 

「……それは私が判断する」

 

「さっきちょっとボス部屋を覗いてきたけど、生半可な人数でどうこう出来る相手じゃないぜ? 仲間も消耗してるみたいじゃないか」

 

「……私の部下はこの程度で音を上げるような軟弱者ではない!!」

 

部下という部分を強調しながら、コーバッツは苛立ちを隠さずに言うが、その部下達は全員疲れていて、同意する気配は無かった

 

「貴様ら! さっさと立て!」

 

コーバッツが大声で命令すると、ノロノロと立ち上がって、二列縦隊に整列した

 

すると、コーバッツは前に立って、手を振り上げて降ろした

 

すると、ガシャっと金属音を立てながら、軍は歩き出した

 

見かけ上のHPは満タンでも、SAOでの緊迫した戦闘は眼に見えない疲れを残すのだ

 

現実世界に残されている肉体は微塵も動いてないだろうが、その疲労感はこちらで睡眠及び休息を取るまで消えない

 

キリトとヨシアキの見立てでは、軍のプレイヤー達は慣れない最前線での戦闘で限界近くまで消耗している様子だった

 

理由としては、軍はここ最近、最前線の攻略には参加してなかったのだ

 

「……大丈夫なのかよ、あの連中……」

 

規則正しい金属音が聞こえなくなったころに、クラインがポツリと呟いた

 

「いくらなんでも、ぶっつけ本番でボスに挑んだりしないと思うけど……」

 

アスナも心配そうに言った

 

それも仕方ないだろう。コーバッツの発言を聞くと、どこか無謀さを感じさせたのだ

 

「……一応、様子だけでも見に行くか……?」

 

「そうだね、流石に心配だし」

 

クラインの言葉に、ヨシアキは頷いた

 

すると、風林火山のメンバーも黄昏れの風のメンバーも頷いていた

 

ここで戻って、突入した軍のプレイやーたちが未帰還だと聞いたら、流石に寝覚めが悪すぎるのもあった

 

二人の発言に、キリトは内心で

 

(どっちがお人よしなんだか)

 

と思いながら、装備を手早く確認した

 

そして、ドアに向かって歩き出そうとした

 

その時だった、キリトの耳にアスナに話しかけようとしているクラインの声が聞こえた

 

まだ諦めてないのか、と呆れていたら、予想外の言葉が聞こえた

 

「あー、そのぉ、アスナさん。ええっとですな……アイツの、キリトのこと、宜しく頼んます。口下手で、無愛想で、戦闘マニアのバカタレですが」

 

その言葉を聞いた瞬間、キリトは全力でバックダッシュして、クラインのバンダナの尻尾部分を掴んで思いっきり引っ張った

 

「な、何を言っとるんだお前は!」

 

「だ、だってよう……」

 

クラインは首を傾けたまま、ひげをジョリジョリと触っていると

 

「キリトが誰かとコンビを組むなんて、アスナちゃんの色香に惑わされたにしたって、大進歩なんだし」

 

とヨシアキが引き継いだ

 

「ま、惑わされてない!」

 

ヨシアキの言葉にキリトは、顔を赤くしながらヅカヅカとブーツを踏み鳴らしながら歩き出した

 

しかも、キリトの背後では

 

「任されました!」

 

と、アスナの宣言がキリトに聞こえた


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