津芽湊の暗殺教室 『更新停止中』   作:ケチャップ

97 / 171
納得のいくとこまで書いたら文字数が3994に⁉︎
とても長くなっておりますが、ニヤニヤしつつお読みくださいv(`ゝω・´)


おちる時間

いつからだろう俺の視界にあいつが入ってきたのは…

 

 

人を避けて生きてきた、気づかれるのが怖かったから。そんな俺を周りの人達も避けてきた、そんな雰囲気を放っていたから。

 

「はぁ〜、そしていつの間にか俺の周りには喧嘩で知り合った奴等が集まって…俺の人生悲しいな〜」

 

そんな事を言いながらも海莉は倉橋について考えていた。

 

(あいつと出会ったのは…確か小3の時か?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

下校途中海莉がいつも通り家に向かっていると、1人の女の子が上級生3人に囲まれていた。

そしてその女の子はダンボールに入った犬を庇うように立ちはだかっていた。

 

(あれって確か…倉橋陽菜乃…って言ったっけ)

 

 

「おい!そこどけよ。俺等はただその犬と遊んでやろうとしてるだけだぜ?」

 

少しぽっちゃりめの男の子がそう言うと後ろの2人は笑みを浮かべた。

 

「嘘!だってこの前このワンちゃんいじめてるの見たもん!なんでそんな事するの?このワンちゃんだって生きてるんだよ?」

 

「お前バカだなぁ〜、そいつは捨てられたんだろ?なら誰も心配する奴いねぇじゃんかよ!」

 

そう言って男の子は倉橋めがけ手をあげるが、

 

「バスケットボール、名前が分からないからそう呼ぶね」

 

そう言って倉橋の前に立ちはだかった海莉によって、その手を受け止められていた。

 

「バスケットボール⁉︎」

 

「そう見た目で決めた」

 

海莉の言葉を聞き、バスケットボールの後ろにいる2人がクスクスと笑うのをバスケットボールは叫んでやめさせた。

 

「お前何年生だよ?」

 

「3年だけど?」

 

「へへへ、いいのか〜お前みたいなチビが6年生の俺に勝てると思ってんのかよ?」

 

笑いながら言うバスケットボールを前に海莉はため息を吐きつつ睨み返した。

その目にバスケットボールはギョッとし、海莉はそれを見逃す事なく足をかけ彼を転ばせた。

 

「思い出した、こいつ最近空手の大会で優勝して表彰されたやつだ」

 

「なぁ、バスケットボールここは早く逃げた方がいいって」

 

「う、うるせー‼︎てかお前までバスケットボール言うな‼︎こ、今回は仕方ないから見逃してやる、覚えてろよー‼︎」

 

そんな事を叫びながら3人は去っていった。

 

海莉はそんな光景を前にため息を吐きつつも、ランドセルを手に取りその場を立ち去ろうとしたが……後ろからガシッと倉橋に抱きつかれた。

 

「……え?」

 

「…怖かった」

小さな声でそう言いながら倉橋は海莉の背中に顔を埋めた。

 

「ならなんでこの犬を助けようとしたの?」

 

海莉の問いに倉橋は少しずつ顔を話し応えた。

 

「この前このワンちゃんがいじめられてるのを黙って見てる事しか出来なかったから…だから今度はちゃんと助けてあげようって思って…」

 

「そんなに心配ならこの犬飼っちゃえばいいじゃん?」

 

「それが…お家にはもういっぱいいて、これ以上は増やせないってお母さんに言われちゃった」

 

「じゃあ学校の裏でこっそり飼う?

飼い主が見つかるまでっていう条件で」

 

その言葉に倉橋は、ぱあっと明るい笑顔を見せると大きく頷いた。

 

「あの…助けてくれてありがとう」

 

「ああ、そんなたいした事じゃないよ」

 

「同じクラスの鮫島君だよね、私倉橋陽菜乃、よろしくね♪」

 

そんな言葉に知ってるよと応えつつ、海莉は無愛想な顔つきをしつつも内心喜んでいた。

 

 

 

 

 

そして次の日から、朝学校に着くと倉橋と共に犬の様子を見に行くのが日課になり。それはいつの間にかクラス全体で行うようになっていた。

途中先生に気づかれた時はドキドキしたが、先生は笑顔で私も協力するよと言ってくれた。

 

ちなみに、犬の様子を見に行く時に倉橋が鮫ちゃんと呼ぶことがきっかけで俺は周りの人と関わる機会が増えた。

 

鮫ちゃんって呼び方に抵抗はあるが……

 

そして3年生が終わる頃には、新しい飼い主が見つかり、俺たちはクラス全員でみんなで可愛がった犬を見送った。

 

女子は全員、男子も数名泣いていた。1番悲しんでるのは倉橋だと思ったが、倉橋は涙目になりながらも”よかったね”と言って微笑んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(引っ越すことになった時はもう会えないかと思ってたけど、まさか同じ中学にいるとはなw)

 

 

そんなことを考え笑みを浮かべると、病院近くの公園のベンチで座る倉橋を見つけた。

 

 

海莉はそっと近づき、後ろから声をかけた。

 

「よ、さっきは悪かったな… あんなキツイこと言って」

 

 

「ううん、私が意地はっただけだから…」

 

それから倉橋はしばらく黙り込み、海莉が隣に座ってもその口を開くことはなかった。

そんな中、海莉は意を決して口を開いた。

 

「お前が近くにいたらさ、いつかバレちゃうんじゃないかって思った……でも隠すことはもうやめにしたよ」

 

そう言って袖をめくり上げる。

その姿を露わにした腕には楽譜の様なものが刻み込まれていた。

 

「俺の父親は弁護士だった。周りからの評価も高く、優秀な弁護士。でも実際はそんな事ない、裁判で負けた日にはその腹癒せに俺たちを虐待する。そんな父親だった…これもその時につけられたやつだよ…」

 

腕に刻み込まれた楽譜を目に、倉橋は言葉を失っていた。

 

「悪いないきなりこんなもの見せて…お前には知られたくなかったけど、隠し事をするのも嫌だったからごめ」

 

「知ってたよ」

 

「は?」

 

倉橋の応えに海莉は驚き、困惑していた。

 

「鮫ちゃんは隠そうとしてたけど、たまに見えたんだ、傷跡が。でもあの時の私はどうすればいいか分からなくて力になれなかった。だからもうそんな思いしたくないと思って、さっきは意地はっちゃった…」

 

倉橋が俯きながら応えるなか、海莉は未だ困惑していた。

 

「え?倉橋はこれを見て引いたりしないの?腕に楽譜が刻まれてんだよ?」

 

「引いたりしないよ!だって……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鮫ちゃんのこと好きだもん…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………はぁぁぁあああ⁉︎」

 

突然の告白に海莉はますます困惑した。

 

「ちょっと待って、えっといつから?」

 

「うーんと…小学校3年生の時、鮫ちゃんが上級生に囲まれた私を助けてくれた時から…」

 

「マジか…結構前からだな」

 

「うん…だからね、また会えてすごく嬉しかったの………鮫ちゃん、鮫ちゃんさえよかったら」

 

「ストップ!」

そう言って海莉は倉橋の口元を手で抑えていた。

突然のことに驚く倉橋を相手に海莉はそのまま話し続けた。

 

「なんで俺が助けたか分かる?」

 

海莉の問いに倉橋はぶんぶんと首を横に振った。

 

「お前が鮫ちゃんって呼んだことがきっかけでクラスに馴染めた。いつも笑顔で楽しそうに話すお前を自然と見てた。上級生を前にしても捨て犬を必死に庇うお前を見てた。」

 

今までのことを振り返ると、海莉はふぅと息を吐き、真剣な顔つきで倉橋を見つめた。

 

「気づいた時には俺はお前のことが好きになってた。だから助けたんだよ陽菜乃」

 

そう言って抑えていた手を離し、その手でデコピンをすると、海莉はニッと笑顔を倉橋に向けた。

 

倉橋はしばらくキョトンとしていたがしばらくして泣き出した。

 

「ご、ごめん…デコピンそんなに痛かった?」

 

「ううん…痛くなかったよ……嬉しいの…ずっと好きだったから…鮫ちゃんが私のこと好きってことが分かって……私……今、すごい幸せ!」

 

涙を浮かべつつも笑みを見せ応える倉橋を、海莉は抱きしめていた。

 

「また母さんに顔見せてやってよ、喜んでたからさ」

 

「うん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな光景を恥ずかしそうに見つめる者と、ニヤニヤしながら見つめる者が……

 

「えっと…私達お邪魔だったかな?」

 

「何言ってんの桃花ちゃん、こんな最高のネタ見ずに帰ったら損でしょw」

 

 

そう言って携帯のカメラで盗撮する中村と、その隣で少し頬を染める矢田を前に倉橋は驚愕した。

 

「ふ、2人ともいつからそこに?」

 

「えっと…結構前から…」

 

「デコピンされた後の陽菜乃ちゃん、とても可愛かったよ〜」

 

そう言って携帯を見せる中村、そこには涙を浮かべながらも微笑んでいる倉橋が写っていた。

 

「だめー‼︎今すぐそれ消してー‼︎」

 

倉橋が慌てながら携帯を取り上げようとするのに対し、中村が嫌だよ〜と言って逃げる、そんな光景を海莉は楽しそうに見ていた。

 

 

「やっぱりこいつらのクラスは見てて飽きないわ」

 

(こんな風に思えるのも陽菜乃とあいつのおかげだな)

 

海莉は修学旅行の時に初めて絡んだE組生徒を思い出す。

 

(あいつがヘタレを卒業するのはいつのことやら…)

 

「もー莉桜ちゃん!鮫ちゃんも手伝ってよー」

 

「はいはい」

 

そう言って海莉はベンチから立ち上がり、倉橋と共に中村の携帯を奪おうと走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま…」

その声に返事は無い

(そっかじいちゃんとばあちゃんは旅行、姉ちゃんは仕事の都合でしばらく海外にいるって言ってたな)

 

そんなことを思いつつ、ミナトは電気をつける事なく真っ直ぐ道場へ足を運んだ。

 

「日和号、いる?」

 

「いますよ?どうしたのですか、明かりもつけず」

 

「省エネだよ省エネ、地球に優しくしないとね」

 

そう言ってヘラヘラ笑うミナトに対し、日和号はからくり人形でありながらも彼に違和感を覚えていた。

 

「稽古の練習相手になって欲しいんだ」

 

ミナトの言葉に日和号はわかりましたと応え、侵入者を退却させた時と同様に腕と足を出し、木刀を手に構えるが…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃダメだ……」

 

「どういう事ですか?稽古の相手をする時は木刀を用いるよう八重野から言われています」

 

そう応える日和号にミナトは壁に掛けられた刀を指差した。

 

「君が使う刀4本全て、真剣で相手してほしい」

 

「それはできません!大変危険な行為です」

 

日和号の言葉にミナトは苛立ちを込めつつ言い放った。

 

 

「それぐらいやってやる………いいから真剣を手に取れ!日和号‼︎」

 

「何があったか分かりませんが、真剣を使わなければ満足できないようですね…命令違反ですが使わせてもらいます」

 

そう言って日和号は4本の真剣を手にする。

 

「ありがとう日和号…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(…デュラハンを殺すのは他の誰でも無い……絶対に俺が殺す)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

親の心子知らず

ミナトは殺意を抱き、日和号に向かっていった。

 

1人の暗殺者によって大切な家族を失った少年は、少しずつだが、確実に堕ち始めていた。




おちる時間、今回のサブタイトルには二つの意味を込めました。

倉橋、海莉、互いにオチる2人
そして…堕ちるミナト

今後彼らがどうなるのか楽しみにしていただけたら幸いです(*´w`*)

感想、ご指摘、ミナト達への質問などお待ちしています!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。