それにしても今日から7月ですね、少しずつ迫る夏の暑さに負けないよう皆さんも健康にはお気をつけください。
殺せんせーが生徒達に用意した、暗殺肝だめし。
場所はこの島にある全長300メートルの海底洞窟。
だが、今回の肝だめしはただ歩いて帰って来れば良いというものではなかった。
道中に置かれているアイテムを持って帰ってくること、それが殺せんせーが生徒達に与えたミッションだ。
初めに杉野・神崎ペアが洞窟へ入っていく。それから5分経過し、木村・矢田ペア、渚・茅野ペアと洞窟へ入っていった。
それから磯貝が5分経過したことを確認し、鮫島を呼びかける。
「5分経ったぞ鮫島」
「はいよ〜」
そう言って洞窟へ向かう鮫島の後ろを倉橋が追おうとした時だった。
「頑張ってね〜陽菜乃ちゃん」
笑みを浮かべながらそう言う中村に倉橋は少し頬を染めながら言い返した。
「な、何を頑張るの?」
「わかってるくせに〜」
「おーい、倉橋行くぞー」
ニヤニヤと笑みを浮かべる中村に返す言葉が見つからず、倉橋は鮫島の方へ走り出していった。
「莉桜ちゃん、陽菜ちゃんに頑張れってどういうこと?」
「んー?ちょっと甘酸っぱい匂いがしたからさー」
ニヤニヤと笑みを浮かべる中村の言葉を矢田はまだ理解できなかった。
その後もどんどんペアが洞窟へ入っていく中、ミナトと速水の番が回ってきた。
「ガストロの時のカリしっかり返さないとな」
そう言うミナトの手には先生用ナイフが握られていた。
そんな光景を見つつ片岡は呟いた。
「殺す気満々だね津芽君」
「全く…今は暗殺よりも凛香の方を優先しなよ」
片岡に続き中村がため息まじりに呟くと、不破が2人の状況を再確認していた。
「あれだよね、お互いに好意を抱いているけど相手の気持ちには気づいてないってやつ。例えるならニセコ◯がいいかな?」
「あー、あの漫画私も読んでるけど面白いよね♪あんな高校生活送りたいなー」
「私はヒロイン達の女子力を少しでも分けて欲しい…」
そんな事を話していると、入口の前にいるミナトの元へ速水が駆け出して行った。
「殺す気満々だね、ミ…ミナト」
「まぁな、でも…楽しむ事も忘れないぜ!行こうぜ凛香」
(((あれ?)))
海底洞窟の中は真っ暗で懐中電灯が無いと進むのは少し困難だった。
そんな中倉橋は、懐中電灯で先を照らす鮫島に寄り添い歩いていた。
「鮫ちゃんよかったの?バイトの途中だったんじゃ…」
「お客さんもいないし暇してたからな、問題無いだろ♪それより体の調子大丈夫?」
「もう大丈夫だよ♪心配してくれてありがとう」
そう言って倉橋は鮫島に笑顔を向けるが突如現れた殺せんせーに驚き声を上げた。
「ひっ!」
「ここは血塗られた悲劇の洞窟…戦いに敗れた王族達が離合の死を遂げた場所…決して2人離れぬよう1人になればさまよえる魂にとり殺されます…」
そう言い残すと殺せんせーはスゥっの姿を消した。
「結構本格的だなあのタコも」
「鮫ちゃんはこういうの苦手じゃないの?」
倉橋に問われ鮫島は少し悩みつつも視線を倉橋に移し応えた。
「まぁ、目の前でこんなビクビクしてる子がいるのに、俺がビビるわけにはいかないでしょ〜」
「び、びびびってないよ‼︎」
そう返すと共に勢い付いた倉橋は足を滑らせ転びそうになる。
「あぶねっ!」
だが、とっさに鮫島が倉橋の手を掴み転ばないよう支えていた。
「まったく気をつけろ「ありがとう」
鮫島が言い終える前に倉橋は言った。
「鮫ちゃんは昔から私のこと助けてくれた。他の人は鮫ちゃんに暴力とか、喧嘩のイメージを持つかもしれないけど、私は鮫ちゃんが優しいの知ってるから。本当にありがとうね」
倉橋の笑顔に鮫島は顔をそらしつつも応えた。
「そいつはどうも、まったくお前は昔から危なっかしいんだよ」
鮫島の言葉にへへへと笑う倉橋、そんな倉橋の笑顔を鮫島も笑顔で眺めていた。
「あ!」
そんな中倉橋が突然叫び、何かを見つけたの指差した。
「あれじゃない?殺せんせーが言ってたアイテムって」
倉橋が指差す方にはこの海底洞窟には合わない、派手な装飾が施された机。そしてその上に《アイテム》とかかれた看板が備え付けられていた。
「ったく、少しは配色を考えろあのタコ…」
「ほらほら速く行こう?鮫ちゃん」
「おい、言ったそばから…っ‼︎」
倉橋はアイテムが置かれている机を目指し、鮫島の腕をひっぱり走り出すが、鮫島に腕を強く捕まれ阻止される。
「鮫ちゃん?」
「…危ないから歩いて行くぞ?」
倉橋の腕を掴みつつも、もう片方の手で引っ張られ捲り上げられた袖を戻しつつ鮫島は倉橋に呼びかけた。
(………………危なかった)
一方ミナトと速水は…
「しっかし”怖いと思われるアイテムをただ集めました!”って感じだな」
そう言うミナトの周りには和風と洋風の墓が混在していた。そう言いながらミナトは速水に目を移すと、いつものように涼しげな顔で隣を歩いていた。
(この前のゲーセンのこともあって凛香は怖いのダメなのかと思ったけどそうでも無いみたいだな)
そんなことを思っていると、速水はある方向を指差して言った。
「ねぇ、殺せんせーが言ってたアイテムってあれじゃない?」
指差す方を見ると、海底洞窟の暗さに合わない装飾が施された机がそこに置いてあった。
「ああ、すごく分かりやすい…」
準備した殺せんせーに呆れていると、速水は足早に机の元へ向かった。
「おい、凛香!今懐中電灯で照らすからそんな急ぐなって!」
「これぐらい平気よ!さっさとクリアしてこんなとこ…早く出ましょう…」
そう言って机の元へ走り出す速水。
ミナトはそれを追いかけるが先ほどの速水に対し違和感を抱いていた。
(凛香の声…震えてた?)
「きゃっ‼︎」
その時聞こえた速水の悲鳴、ミナトは迷うことなく駆け出していた。
「凛香!」
ミナトはそう言いながら懐中電灯で照らすがそこに速水の姿は無く、その代わりアイテムが置かれている机の前には殺せんせーの顔が描かれた提灯のようなものがぶら下がっていた。
「あれ?凛香は?」
「ミ…ミナト…」
その声に反応しミナトは目線を下に移すとそこには腰を抜かしたのかその場にへたり込んで、全身を震わせ涙で瞳を潤わせ、頬を染め、上目遣いでこちらを見る速水の姿があった。
「とりあえず……その顔は反則…」
心の中で止めきれずミナトは速水を前に口にしていた。
とりあえず俺は今、速水を背負って海底洞窟を進んでいる。何故こんなことになっているのかというと…
「大丈夫か?凛香」
そう言って俺は手を差し出す。
「うん…大丈夫…ありがとう…」
そう言って速水は俺の手を取り立ち上がると両腕を差し出してきた。
「あの…重かったら言って、懐中電灯も私が持つ、だから……怖いから道中はおぶっていって……………ください」
染まる頬、涙で潤う瞳、上目遣い
(っ‼︎………こんな可愛い奴に頼まれて断れるかよ)
俺は手で顔を覆い隠しつつも言葉を返した。
「わかった」
そして現在に至る…
背中から伝わる速水の温もり、速水の髪がミナトの首元を掠めている、なんかもういろいろアウトだと思いつつもミナトは先へ進んでいった。
そんな時不意に速水はミナトに言った。
「ごめんね、今回の暗殺旅行私…ミナトに迷惑かけてばかりで…」
「なっ!そんなことないって」
ミナトは慌てて返すが、速水はミナトの背中に顔を沈めていた。
「迷惑なんてかけられてないよ?凛香がいたから俺は篠宮に勝てた、凛香が守ってくれたから俺は今生きていられる……だからありがとう凛香」
速水の方へ振り向き、笑顔で話すミナトに凛香はドキッとしつつも応えた。
「私こそ、ミナトに守ってもらった、ガストロの時も不安だった私を助けてくれた………ミナト、ありがとう」
そう言う速水の表情は今まで見た中で一番可愛く見えた。
(…今なら言えるかも…)
ミナトは自分の中で意を決する。
「あのさ、凛香!」
「ど、どうしたの?」
胸の高鳴りが嫌という程聞こえる。
(今までこんな緊張したことなんて無かったよな…)
そう思いながらミナトは言い続ける。
「ずっと前から言いたかったことがあるんだ…」
彼が彼女に思いを告げるまで…あと……………………
今回はこんな感じで締めさせていただきました。
さて!ヘタレミナトは速水に告白できるのか⁉︎
鮫「ヘタレだから無理だな〜」
都「絶対無理ですね」
次回もお楽しみにv(`ゝω・´)
感想、ご指摘、またミナト達に対する質問などお待ちしてます!