津芽湊の暗殺教室 『更新停止中』   作:ケチャップ

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刀の時間 毒刀・鍍

生徒達は篠宮を倒しその場で崩れ落ちるミナトに歩み寄っていった。

磯貝に肩を借りつつミナトはやっとの思いで立ち上がっていた。

 

「ミナト、お前無茶しすぎだよ」

 

「はは、悪い悪い」

 

「とりあえず応急処置だけはしておくぞ」

 

「ありがとうございます、烏間先生」

 

 

一方、寺坂、吉田、カルマ、木村、千葉、菅谷は倒れた篠宮に歩み寄り簀巻きの準備をしていた。

 

「しっかし、すげーデザインだよなこの刀」

そう言って菅谷が斬刀・鈍に手を伸ばした時、触るな!とミナトが叫び彼の動きを静止させた。

 

「触るなってどういうことだよミナト」

ミナトの発言に疑問を抱いた木村が問いかける。

 

「じいちゃんから聞いたんだ、完成形変体刀にはそれぞれ人を斬りたくなる毒ってのがあるらしいんだ」

 

「それじゃお前がさっき持ってたのは」

 

「俺は絶刀・鉋を長いこと使ってない、それにもう刀も壊れたから大丈夫だよ」

 

「でも、津芽君のおじいさんとおばあさんもその完成形変体刀を持ってるんじゃ…」

 

片岡が不安そうな表情で問いかける。

 

「それも大丈夫だよ、じいちゃんが使う王刀・鋸は毒気が無い刀なんだ。ばあちゃんの微刀・釵も直接触れる必要が無いし毒気に犯されることは無い」

 

「そっか、なら良かった」

 

 

その後、ミナトの応急処置も終わり皆はホールを出て上の階へ向かおうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時だった……

 

烏間が元後輩の姿を見ようと後ろを振り向くと、簀巻きにされているはずの篠宮の姿が無かった。

 

「気をつけろ!奴はまだ襲ってくるぞ‼︎」

 

烏間の声に生徒達は一斉に振り返る中、ミナトは肩を貸してくれていた磯貝を弾き飛ばす。

 

「ミナト何を……」

弾き飛ばされた磯貝が次に見た光景は、負傷したミナトと狂った笑顔を見せ、鍔の無い大きく反った黒刀を振り下ろす篠宮の姿だった。

 

振り下ろされた刀により床は破損し砂埃が立ちこめていた。しばらくして視界が晴れると倒れるミナトを見下す篠宮がそこにいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

烏間が生徒達に離れるよう指示をする中、篠宮は他の生徒に目もくれず倒れるミナトに淡々と話し始めた。

 

「お前のせいで俺の刀が壊れちまったよ……お前のせいで‼︎おまえは俺の刀を壊したんだぞ‼︎」

 

そう言いながら篠宮はミナトの頭を踏みつける。

 

「許さない…お前は俺が…殺す。でも簡単には殺さない…少しずつ刀を深く入れ、おまえの悲鳴を聞きながら殺してやる…」

 

そう言って篠宮は、禍々しくオーラを放つ毒刀・鍍を振り下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生徒達、烏間、殺せんせーは目の前の光景に驚愕していた。

 

 

「なんだお前…」

 

刀を振り下ろす篠宮の前には、ミナトをかばうように立ちはだかる速水の姿があった。

 

「津芽は…ミナトは今まで私を何度も守ってくれた、だから今度は私が助ける‼︎」

 

「ふるえてるよ?怖いんだろ?いいね〜その表情‼︎奴との契約なんて関係ない‼︎お前も殺してやる…少しずつお前の苦しむ表情を楽しみながらな…」

 

そう言うと篠宮は速水に平手打ちを当て、速水を弾き飛ばした。

 

「いいか〜?お前らが動けばこの速水っていうのも、津芽も斬り殺す。分かったら黙ってそこで見てろ」

 

毒刀・鍍を見せつけ言い放つ篠宮に対し、寺坂やカルマは怒り抱き拳を強く握っていた。

 

そんな中速水はよろめきながらも立ち上がり、再びミナトをかばっていた。

 

「へぇ〜、あと何発耐えられるかな?人柱」

 

篠宮は不可解な発言をし、再び速水に歩み寄っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミナトは朦朧とする意識の中、暗闇を歩いていた。

 

(死んだのか?俺……上も下もわかんねぇや…)

 

次第に光が見え始め、ミナトは無意識のうちに手を伸ばした。

そんなミナトの手を掴んだのは……

 

 

 

 

 

 

「情けないよ?ミナト」

 

「…かあ…さん?」

笑顔で手を差し伸べる母 美月の姿にミナトは涙を流した。

 

「なに泣いてんの?」

 

「だって…俺は…俺はあの時…」

 

「ミナト、あなたはあの時私達を助けられなかったことを後悔してる」

 

ミナトは美月の言葉にあの日のことを思い出し、何も応えることが出来なかった。

 

「今はいないの?守りたい人」

 

「いるよ…何があっても守りたい人。でもまた守れなかったらって思うと…怖くて…」

 

「その人がいなくなったらミナトはどう思うの?」

 

「凄く嫌だ…いなくなってほしくない…」

 

美月の問いにミナトは即答だった。

 

「ならちゃんと守りなさい。ミナト、あなたは私から戦い方を教わった。私と同じような力も身についている、だからその力守る為につかいなさい」

 

「でもどうやって…刀だってもう壊れちゃった…俺だけの力じゃ」

 

「刀ならまだ残ってるわ」

 

美月の言葉に疑問を抱くミナト、そんなミナトの背中に弱々しいパンチが放たれた。

 

「ちぇりお〜♪」

 

「ミヤコ⁉︎」

 

「へへ〜練習してるお兄ちゃんかっこ良かったよ♪」

 

その言葉にミナトは涙を拭き、美月の言葉を理解し思い出していた。

 

「正直その刀はミナトの方が上手く扱える、悔しいけどね…もうどこを目指して進めばいいか分かるでしょ?」

 

そう言って美月はもう一つの光を指差した。そこから聞こえてきたのは守りたい人の声。

 

『津芽は…ミナトは今まで私を何度も守ってくれた、だから今度は私が助ける‼︎』

 

「あの子もあなたのこと大切に思ってるのね…それなのに守らないでどうすんの?失いたくない大切な人なら、ちゃんと守りなさいミナト」

 

「もしお兄ちゃんが守れなかったら、私がお姉ちゃんいじめてる奴倒しちゃうからね!」

 

そう言いながらミヤコは拳を前に突き出した。

 

「お前には無理だろ、ミヤコ」

 

「無理じゃないもん‼︎」

ミヤコは頬を膨らませミナトの背中をポカポカ叩き始める。

 

「はは、ちょ痛いよミヤコ、分かった分かったお前は十分強いよ」

 

ミナトがそう言うとミヤコは満足げに微笑み、えっへんと腕を組みながら言った。

 

「あいつは…」

そう呟きミナトは立ち上がる。

 

「いつもそばにいてくれて、こんな俺を支えてくれる大切な人だから、俺はあいつを失いたくない‼︎だから…俺があいつを守る‼︎」

 

 

「分かったら早く行ってこい!ミナト!」

 

そう言って美月はミナトの背中を叩いた。

痛みに耐えながらもミナトは後ろを振り向き、笑顔で見送る2人に言った。

 

「また会いに行ってもいい?」

 

「待ってるから、いつでも来なさい」

 

「待ってるよーお兄ちゃん♪」

優しい眼差しで見送る美月と、笑顔で手を振るミヤコに別れを告げ、ミナトは守るべき人がいる場所へ走りだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「飽きたな…」

そうぼやきつつあくびをする篠宮は速水に毒刀・鍍を向けていた。

対する速水には切り傷が付けられていた。

 

「いい加減庇うのやめたら?」

 

「やめない…」

 

「どうして?」

 

「私にとってミナトは…大切だから…」

 

「…くだらねー理由だな」

 

そう言って篠宮は速水に向かって毒刀・鍍を振り下ろした。

 

「死ね、人柱」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺は凄く嬉しいけどね」

 

そう言い放ちミナトは毒刀・鍍を受け止めていた。

 

「なにしにきたんだよ津芽」

 

「守りにきた」

ミナトの言葉に篠宮は疑問を抱く。

 

「刀もねぇ、力じゃ俺に敵わねぇお前がどうやって戦うんだよ⁉︎」

 

「こいつだよ」

そうしてミナトは手刀を差し出して見せた。

 

「はぁ?そんなんで守れると思ってんのかよ」

 

「言ったろ?俺は…凛香を守りに来た、これ以上傷つけさせないために、俺は守るために戦いにきた‼︎」

 

強く言い放つミナトはそのまま静かに構えた。

 

 

 

 

 

 

 

「一の構え『鈴蘭』」

 

 

 

 

 

 

 




再び相見えるミナトと篠宮 美月から託された刀は完了の域へ達していた。

次回 津芽湊の暗殺教室 虚刀・鑢
ご期待ください‼︎

湊・速「ちぇりおーーー‼︎」

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